写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

いまどきの黒白フィルム


上の写真の135フィルムが、それぞれ何だかわかればあなたは、国際的な黒白写真愛好者です。このフィルムは本ブログ「写真にこだわる」の愛読者である偽並木さんから連絡をいただき、アメリカ・カリフォルニアのWeb通販業者“freestyle”から取り寄せた黒白フィルムがあるので、興味があるならプレゼントしてくれるというのです。もちろんということで、各1本ずつ6種類をいただいた次第です。freestyleフリースタイルに関しては、先日のPMAでも唯一黒白フィルム、黒白印画紙、薬品などを出展していましたが、最近銀塩感材や薬品が手に入りにくくなったなどとお嘆きの方には、ぜひ覗いていただきたいWebサイトです。
まず、それぞれのフィルムを紹介すると、左から「ADOX CHS 100 PET Art series」、「Legacy 400 PRO」、「Premium ARISTA 100」、「Premium ARISTA 400」、「ARISTA.EDU ULTRA 100」、「ARISTA.EDU ULTRA 400」となります。このうち僕が前から知っているというか歴史的な銘柄はADOXアドックスだけです。そしてLegacyレガシー、ARISTAアリスタはフリースタイルのプライベートブランドです。いただいたフィルムを見てみると、アドックスはドイツ・ベルリンとなっていますが、製造はMade in Croatia。レガシーはMANUFACTURED IN JAPANとなっていますから日本製で、有効期限の印字フォントから富士フイルム製でプレスト400のようです。Premium ARISTA プレミアム・アリスタ100と400はMANUFACTURED IN USA,PACKGED IN MEXICOと記されていますから、コダックアメリカで製造し、メキシコでパッキングしたということでしょうか。そしてアリスタ・エデュ・ウルトラ100と400はMade in the Czech Republicとなっていますから、チェコ共和国製となります。このうちプレミアム・アリスタはプロフェッショナル・チョイス、そしてアリスタ・エデュはEDUCATORSチョイスということですから教育用ということでしょうか。でも教育用といっても価格には差がないのは、気になりますが、価値観の相違でしょうか。
さて、本来ならこれらのフィルムを使って試用記でも書けばいいのでしょうが、そこのところはいずれまたということでご勘弁いただきましよう。僕が興味あったのは、アドックスです。PETベースなので薄いわけで、それだけ鮮鋭度が高いのではないかということです。ベースが薄いと、トンネル方式のフィルムゲートでの微妙な焦点調節はどうなるのだろうか?とも思うわけですが、使ってみればわかることです。もうひとつ、かつて1960年代始めにはアドックスは日本にも輸入されていました。僕は当時、新宿東口駅前のさくらや(2010年2月28日全店閉店)でアドックスKB17というフィルムを買って使ったことがありますが、先日、必要があってその現像後フィルムを引っ張り出しましたが、みごときれいなネガ状態でした。不思議なのは、他銘柄フィルムですが、同じように現像し、同じネガケースに入れておいてもカビのようなものが付着していたことです。このフィルムの印象は低感度なので微粒子でしたが、それ以上に赤いハレーション防止層が背面に塗布されていたことです。今回のアドックスCHS100PETフィルムも、子細に見ていたら同じような感じでしたので、乳剤面の裏面のベース面を濡らしてみたら、ずばりコーティングされた青色のハレーション防止色素が溶け出しました。これは現像液に浸せば溶けてフィルムは透明になるのですが、他社の135フィルムはハレーション防止剤をベース面に混入してグレーベースとしているのに対し、半世紀以上も変わらない方式にこだわっているのを発見したのはちょっとした驚きでした。アドックス社の創立は1860年、現在はカナダ資本で、今回のフィルムはクロアチアのフォトケミカで製造されていますが、ひとつのポリシーを持ったフィルムとして大いに興味をそそりました。
さて、黒白フィルムは日本では純正の富士フイルムに加え、コダックの製品もあるわけです。そしてアメリカにはプライベートブランドとしてもこれだけ存在しているわけですから、それだけの数が見込めて製造販売されているのです。このほかに海外ではクロアチアチェコのほか、MACO、ローライ、アグファブランド、さらにはイタリア・フェラニア、中国にもというわけで、まだまだたくさんありますね。そして、黒白感材の減少を嘆くよりも、まずは使って作品づくりをと考えるわけです。