写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

カメラと拳銃

 僕は、仕事柄さまざまな写真やカメラに関した集いに誘われますが、ひとつだけ遠慮している会があります。「カメラ好きのガンマニアの集い」です。そもそもは、ネイチャー写真家のYさんと、とあるカメラメーカー技術者のGさんとが、カメラの話から発展して実はお互いにガンマニアであったことがあるとき発覚し、それならば改めてそれぞれの道具を持ち寄って、大いに語り合おうというのが「カメラ好きのガンマニアの集い」というわけです。それを聞きつけたKさんが、僕にも一緒に参加しようというのです。Kさんは大いなるカメラ好きで、どのような会合であってもカメラに関係するなら、どんな場所でも時間が許す限り参加するという雑食系カメラ大好きおじさんですが、ご自身はガンマニアではなくても、カメラを持ってくればOKとむりやり、ガンマニアのお二人を説き伏せたようです。僕は、それでも考えが違うからといって、ていねいにお断りしましたが、その後どうなったかは聞いていません。そんなときに、札幌のイマイ・コレクションに顔を出し、見つけたのが「マミヤピストル」と「ドリュー」です。もしこのカメラのどちらかでも自分の所有であったら、ぜひ参加したいと申し入れたであろうことは間違いありませんが、残念ながら僕の所有ではありませんので、改めて簡単に両機種をながめて見ることにしました。
●マミヤピストル

 マミヤ光機が1954(昭和29年)に警察用として製造。製造台数は100台とも250台ぐらいともいわれ極端に少なく、払い下げ品が一部に出回ったようですが、いまとなっては貴重なカメラです。使用フィルムは35mmで、画面サイズはハーフ判です。焦点調節は固定焦点。
●ドリュー 2-16

 ドリューカメラが1954(昭和29)年に警察用として製造したピストル型カメラ。使用フィルムは16mmで専用マガジンに入れて使います。画面サイズは10×10mm、フィルムカウンターは29まで刻まれています。弾倉のようになった部分には、ピストルの弾と同形の鉛のマグネシウム照明弾を6発装填できます。機種名は「ドリュー 2-16」とされていることが多いですが、この個体には“DORYU 2 FLASH CAMERA”と記されていて、照明弾装備がウリだったのでしょう。デザイン的にはマミヤよりもらしさがあり、撮影した個体は硝煙の臭いがするような感じでつい少し前まで使われていたような錯覚を起こしました。レンズは交換式でCマウントのようですが“DORYMAR WIDE 15mmF2.2 ANASTIGMAT”が付いていました。
 しかしそれにしてもなぜピストル型カメラなのでしょうか。マミヤ光機はいうまでもなく日本のカメラメーカーですが、ドリューカメラも日本のメーカーです。そして1954(昭和29)年に警察用としてどちらもが製造されたところが興味ある部分です。歴史を調べてみると1954年は警察法が改正され、警察庁と警視庁および道府県警察が設置され、改正に伴い国会で乱闘があり、警官が初めて国会内に入ったというときでもありました。そういう時代的背景はあったでしょうが、実際は射撃訓練に実弾が乏しく、ピストルそのもののカメラで狙って撃った後に現像してその射撃の確度を判定したらしいというのがピストル型カメラの存在理由のようです。そして「カメラ好きと時計好き」、「カメラ好きとオーディオ好き」など、まだまだ男ならではといわれてきた趣味の対象物ですが、僕自身はクラシックカメラ好きで時計好きの広告写真家先生とある会社のオーナーさんの話の間に入ったことがありますが、こちらも貧乏人はあまり近寄らない方がいいなと感じました。

この時期をもってブログ開設以来2年を経過しました。本年もご愛読ありがとうございました。