写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

テッサー付のローライフレックス

 ローライフレックスROLLEIFLEX)というと二眼レフの元祖であり、写真好きなら一度は触れてみたいカメラです。このローライフレックスには、さまざまなカール・ツァイスの撮影レンズが付いていて、最近ではプラナー(Planar)の付いている2.8Fという機種がボケ具合がいいということから人気ですが、実はローライフレックスへ最初に装着されたレンズはテッサー(Tessar)なのです。左写真は、その「テッサー75mmF4.5」の付いたローライフレックス・スタンダード(1932〜38年)です。このテッサー75mmF4.5の付いたモデルは非常に数が少ないようで、一般的にはテッサー75mmF3.8であったり、テッサー75mmF3.5であるのがほとんどです。このカメラは大中判カメラでは名の知れた写真家、玉田勇さんの所有です。玉田さんはその昔、カメラ毎日の記事で、ローライフレックスの最初のレンズはテッサー75mmF4.5であり、極めて短期の間にテッサー75mmF3.8に変更されたので、75mmF4.5付の個体は数少ないと書かれていたことが、脳裏に焼き付いていたそうです。そんな思いを抱いて、いまから10数年前に中国に撮影旅行に出向いたときに北京の道具屋さんで見つけたのが、このテッサー75mmF4.5付きのローライフレックス・スタンダードというわけです。何でも道具屋の親父さんは、同じ値段でもっときれいなのがあるからと勧めたそうですが、玉田さんはこちらのほうが古いから飾って置くのにいいとか言って買ってきたそうです。それにしてもこのローライフレックス・スタンダードはかなり使い込まれた感じですが、いまでもコンパーシャッターを含めしっかりしたもので、撮影はもちろん可能です。

左)レンズはTessar75mmF4.5 Carl Zeiss Jena、これが珍しいのです。中)二眼レフですからピントグラスで焦点を合わせるのが通常ですが、この透視ファインダーが面白いのです。このようにセットして、背後から覗くわけですが、十字の中央にドーナツ状にセットされているのは鏡で、この鏡に自分の目玉が写ったところのポジションが撮影画角だというわけですが、その後でいうスポーツファインダーというわけでしょうか。右)フィルムコマ送りのための赤窓。フィルムはコダック規格の120ブローニーでなく、ドイツ規格のB1 Film名が記されていす。ローライフレックスは、最初B1規格フィルムの6枚撮りからスタートしたようです。この赤窓のほか、ボディ底部にも赤窓がありますが、メクラ蓋があり選択して利用できるようになっています。
 ところで、ローライフレックスではなんのレンズ付がいいのかとマニアでは話題になりますが、上記テッサー3種以外には、クスナー75mmF3.5、クセノタール75mmF3.5、プラナー75mmF3.5、ビオメター80mmF2.8、プラナー80mmF2.8付などがあり、さらに普及タイプのローライコードにはトリオター75mmF4.5、トリオター75mmF3.8付などもあり、いずれも描写は素晴らしいというのが各オーナーの弁です。ちなみに僕の所有機は、テッサー75mmF3.5付のローライフレックス3.5MX-EVSですが、当然写りはいいです。 (#^.^#)

ブローニーフィルム・カメラ展
 さて、日本カメラ博物館では、「誕生から100年余 いまなお続くブローニーフィルム・カメラ展」を6月16日(日)まで開催しています。そのブローニー(Brownie)という言葉ですが、実はコダックのフィルムやカメラを指すものではなく、「ブローニー」はカナダ人の作家、パルマー・コックス(Palmer Cox:1840-1924)によって、1879(明治12)年によって生み出された妖精の名前なのです。このキャラクターは1880年代から1900年代にかけてアメリカで人気を得て、絵本をはじめゲームや弁当箱、時計など多くの製品に使用され、コダックのボックスカメラにも使われたというのが、最初です。会場には、ブローにフィルムを使う、ボックスカメラ、スプリングカメラ二眼レフカメラ、はては軍用カメラなどを含めて約420台も展示されています。特別展会期中には、ブローニーフィルムを使うカメラを持参すれば入場料が200円になります。


■特別講演会「よみがえれスピグラ」
 スピグラとは、「スピードグラフィック(Speed Graphic)」であり、アメリカのグラフレックス社が主に1930年代から1950年代頃に製造した4×5インチシートフィルムを使う大判カメラです。1945年マッカーサー厚木基地に降り立った姿を撮影したカメラがスピグラであったことなどが知られていますが、戦後の新聞・報道各社はスピグラを使うことが日常となり、報道用カメラとしての機動性の良さが認められ、その後35ミリ一眼レフにとってかわられた後も、昭和40年代初頭まで各社の報道機材として使われていました。このスピグラを操るには、さまざまな作法があり、熟練を必要としました。この講演会では、その時代を第一線報道カメラマンとして活躍された、元朝日新聞社出版写真部長の福田徳郎氏が当時の取材現場でのスピグラを交えたカメラ機材のエピソードを語っていただき、煩雑といわれたスピグラの撮影手順を、実機を使って早業としてご披露いただきます。受講料は300円ですが、当日に限り受講券提示でブローニーフィルム・カメラ展を無料で見ることができます。フィルムカメラ好きは見逃せませんよ!。