写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ましかく画面のカメラ展

 「ましかく画面のカメラ展」という展示会が3月6日から7月1日まで日本カメラ博物館で開かれています。デジタルの時代になって最近は、マルチフォーマット的にさまざまな画面縦横比を決められるようになりましたが、フィルムの時代は二眼レフの「ローライフレックス」に代表されるように、スクエアサイズの画面は報道関係などでも主力カメラとして一時代をつくりました。歴史をさかのぼると、もともとレンズの画像は丸い円を描いて結像するわけですから、四角い画面のカメラというのは最も合理的で、湿板カメラの時代から存在しました。
 ところで、僕が父親にカメラを与えられて、初めて楽しんだのはボルタ判の「スタート35」からでした。次ぎに与えられたのが66判の「フジペット」、さらに次は「リコーフレックスダイヤ」というわけで、不思議と四角い画面から写真の世界にのめり込んでいったのです。いまはフィルムカメラ時代の四角い画面のカメラは、人にはいえないほどいくつか所有しているわけですが、そのなかでもお気に入りは1959年に発売された「マミヤスケッチ」です。日本製で135フィルムを使う正方形画面のカメラとしては唯一とされています。カメラとしてはこのカメラとハーフサイズの登場とが時代的にオーバーラップし、マミヤスケッチはきわめて短命に終わりましたが、描写はマミヤらしくきわめてまじめというか端正な写りをします。このカメラは、ましかくという画面にこだわったようで、取扱説明書も正方形で作られています。ストックフィルムから、35mm画面ノートリミングのましかくを見ていただくように、全画面を示しました。撮影したときのフィルムは、いまはなきコニカミノルタローム100SRAです。この3月1日にはコダックもカラーリバーサルフィルムの製造販売から撤退を発表しましたが、寂しい限りです。やはりそこには、止めることのできない時代の移り変わりを感ぜざるを得ません。
 僕のコレクションカメラのもうひとつの自慢は、1950年代、戦後日本の復興期にさまざまな二眼レフカメラが作られたということですが、そこで「二眼レフカメラの A to Z」をコレクションするには、まずはAとZを持てばいいだろうということで、「アルペンフレックス」と「ゼノビアフレックス」を所有しています。そのすべてをコレクションするのは大変ですが、以前浅草の早田清さんに聞いたところによると、国産の二眼レフで修理に持ち込まれるので一番数が多かったのは「リコーフレックス」で、その次は「ビューティーフレックス」だったそうです。だいぶ僕のコレクション自慢となりましたが、そんな湿板カメラから、66判スプリングカメラ二眼レフカメラ一眼レフカメラから最新トイカメラデジタルカメラまで、400近い数の“ましかく画面の”カメラおよび関係書籍や作品などが展示されています。展示の圧巻は、AからZまでの日本製二眼レフカメラの数々です。戦後日本のカメラ発達史を知るうえでもぜひご覧下さい。

 ■「ロールフィルムとカメラの歴史」講演会■
 ―フィルムはどのようにして1コマを巻き取られたか―というテーマで、2012年3月17日(土)午後1時〜3時まで日本カメラ博物館でカメラ・フィルム研究家の伊藤二良氏による講演会が写真感光材料工業会の後援を得て開かれます。久しぶりのフィルムカメラの講演会です。フィルムファンのみならず、すべてのカメラに興味のある方はその技術進歩を知る上でもぜひご参加下さい。当日講演会に参加された方は、博物館で開催されている「ましかく画面のカメラ展」を無料でご覧になれます。講演会の参加費は300円、事前申し込み制で、くわしくはこちらまで。