写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ベイヤー配列の撮像素子

 最近“ベイヤー配列”なる言葉が話題になっています。というのも、富士フイルムのレンズ交換式ミラーレス機「X-Pro1」は、“X-Trans CMOS”と呼ぶ新しいフィルター配列のCMOS撮像素子を使っていると発表したからです。その配列方式の詳細は、富士フイルムの関連ページでもご覧いただくとして、ここではそのもととなったベイヤー配列に関して貴重な資料を入手しましたので紹介しましょう。
 まず最初にお断りしておきますが、ベイヤー(Bryce E Bayer)さん(写真右)は米国イーストマン・コダック社の技術者であったということです。イーストマン・コダック社は、1月19日に米連邦破産法を適用申請し、2月にはデジタルカメラ事業からの撤退を発表しましたが、初期のデジタルカメラの技術的な開発は、イーストマン・コダック社による功績が大であったという事実です。その1つが“ベイヤー配列”であり、もうひとつは1991年に発売された世界初の業務用デジタル一眼レフコダックDCS”であったわけです。コダックデジタル一眼レフの歴史はこのブログでも過去に紹介していますので、必要に応じてご覧ください。
 右上は、固体撮像素子カメラの色再現において、どのようにカラーフィルターを配列すべきかについてアイディアを1974年5月24日に記したベイヤーさんのノートの一部です。これによると、『1/2はグリーンの市松模様、1/4はレッドとブルーの長方形の配列。レッド、グリーン、ブルーの記録は普通の配列と同様にサンプリングされる。グリーンは他の色の2倍になるが、これは画像の鮮鋭度どに大切な要素となる。このような一般的な配列は、最終的に表示される時点で、サンプリングによる問題を避けるためのフィルタリングをやりやすい。』というようなことがノートには書かれていますが、ここでは簡単のためにベイヤーパターンが描かれているページだけを紹介しました。


 右写真の左には、実際の撮像素子の上に貼り付けられたベイヤー配列のフィルターを示しています。またその右の写真の左は、1976年に最初のベイヤー配列のフィルターを使った固体撮像素子により撮像されたカラー画像で、さらにその右には初期のベイヤー配列のフィルターが付けられたCCDを示しました。ところで僕はこの方面はさっぱりで、しっかり理解するのは難しいのです。たとえば、緑のフィルターはなぜ他のフィルターの2倍あるのかというような根本的な問題に対し、目の視感度が緑の部分が最も高感度だからというようなことは理解できますが、エイリアシングナイキスト周波数がどうのこうのとなってくるとかなり難しくなります。
 そこで『X-Trans CMOSのフィルター配列はベイヤーフィルター配列を超えたか』となるわけですが、これはあくまで理論上のこと。X-Pro1はレンズ交換式ミラーレスのデジタルカメラであることから、とにかくシャッターを押して写し、プリントしてみればわかることです。やがて純正のアクセサリーとしてライカM用のマウントアダプターも発売されるということですから、同じAPS-CフォーマットのソニーNEXやリコーGXR+A12マウントや近似フォーマットのAPS-HのライカM8で同じレンズを使って撮影してみればX-Trans CMOSの実力がわかるというものです。すでに基本ボディとアクセサリーは発売されていますので、そのうちマウントアダプターが純正で発売されたら、使用記でも報告できたらと考える次第です。その時のタイトルは『X-Trans CMOSのフィルター配列はベイヤーフィルター配列を超えたか』とか、かっこよくいきたいものです。