写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

執念のカワセミ写真、佐藤信男さん

 写真を見た時に一瞬、あれ!これは何だという軽い衝撃がありました。“小さな恋人(日光カワセミ)”と題がつけられていましたが、カワセミが何といろいろなクラシックカメラの上にとまっているのです。佐藤信男さん(写真左)、自らを翡翠写真家と名づけ、JCIIのクラブ25で2月14日から19日まで写真展を開いていました。作品は全部で70点近く、カワセミをテーマにした写真をいままでにも何回も見てきましたが、なにか違うのです。それまでに見たカワセミの写真は、小枝や岩の上にとまり小魚をくわえていたり、飛翔していたりというわけですが、佐藤さんの写真にはもちろんそのようなカットもあるのですが、カワセミが花の上にとまったり、クラシックカメラの上にとまっているのです。そこで冒頭に戻るわけですが、“あれ!これは何だ”となったわけです。
 佐藤さんにお話を聞いてみました。15歳で写真館に丁稚奉公し、独立して鬼怒川や日光東照宮で記念写真を撮る営業写真館を営んできたそうです。昭和16年生まれ、71歳です。今回の写真は約8年、延べ2,000日をかけて撮影したということですが、途中脳梗塞で倒れ、2年間お休みした後の撮影結果だそうです。以前は、フィルムカメラでハクチョウを撮っていたそうですが、カワセミでは高感度を必要とすることから、デジタル一眼レフを使ってきました。まずは、ニコンD70→ D2X→ D2H→ D200→ D700と5機種を使い代えてきたそうです。撮影時の感度はISO1600相当にして使うことが多く、ISO6400で使うこともあるそうです。佐藤さんによると高感度に設定し、トリミングが可能であることが大切なようで、そういう意味ではまともに使えるようになったのは、D200D700からだということです。その高感度という点ではこれから発売が予定されているD4はかなり期待できるということです。フィルムカメラの時代には、ニコンF4を予備も含め4台をそろえて撮影に臨んでいたそうで、デジタルになってからは2Gのメモリーを複数枚用意しておいての撮影だそうです。カメラコレクションも趣味で、かつては保有は1,000台を超えていたということですが、現在は200台ぐらいに整理し、好きなカメラはコダックレチナとローライフレックスで、ローライフレックスはさまざまなバリエーションで43台も所有しているそうです。カワセミの写真は、現在5,000点ぐらいお気に入りあるそうで、カワセミの目にキャッチライトが入っていないカットは剥製と疑われるのがいやなので、すべてボツにしているとのこと。次はこの写真から選りすぐって、写真集を作りたいそうです。ところで、なぜカメラにカワセミがとまるのか、そのコツを教えてもらいました。まず花にとまるようにするのに、半年ぐらいかかったそうです。そしてカメラにとまる写真はいままでに50カットほど成功したそうですが、今回の写真展ではニコンキヤノン、ツァイス・イコン、コダックレチナ、ローライフレックスなど国産・海外の各5台づつ、合計10枚カワセミクラシックカメラとまる写真を展示してありました。撮影は栃木県日光市大野川。撮影のコツは、まずカワセミと仲良くなること。そしてどこにカメラを置くか。つまりカメラにカワセミがとまるとえさが見える位置にカメラを配置するのがコツだそうです。最後に、今回の写真展は、第3回目だそうで、副題に“古希記念 天国の妻にささげる”となっていたのが、印象的でした。カワセミに使ったお金はベンツ1台ぐらいかな、と豪快に笑うのでした。