写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

リコーGRⅣを使ってみました。

 リコーのコンパクトデジタルカメラであるGRシリーズがGRⅢからGRⅣへとリニューアルされ9月12日に発売されました。私は、ながらくGRⅢを使い続けてきて特に不満はないのですが、やはり新型がでたら気になります。GRシリーズには、すでにソフトフォーカスフィルター付きや40㎜相当画角付き、さらにはモノクロ専用機の発売も予告されるなど、さまざまなバリーエーションがありますが、私のお気に入りのGRは、28㎜相当画角付きの最もスタンダードな機種です。使い方はさまざま、ふだん使いのコンパクト機として、新型はどうなのか、私なりの視点でレポートしてみました。

《リコーGRⅣの外観》すでにGRシリーズを使っている人ならお判りでしょうが、この角度から見てもGRⅢとの違いはわかりません。そもそも、GRシリーズは内容が進化しても外観が変わらなく、旧型を使っていても、古さを感じさせずに同じように使えるのもGRならではのデザイン的な特徴なのです。

《GRⅢからGRⅣになり大きく変わったところ》細かく言えば変わったところはいくつもありますが、内蔵のメモリーが2GBだったのが52GBになり、SDカードからマイクロSDに替わり、バッテリーが大きくなったことです。特に、バッテリーの大型化は容量が増えるのは歓迎で、GRⅢのときは予備を2本持ち歩いていましたが、GRⅣでは1個で私の1日の撮影レベルでは十分カバーしそう。外観寸法・重さは、厳密にいえば違いはありそうですが、見た目と持った感じはほとんど同じとみてよいでしょう。

《GRⅢとGRⅣ》外観的にもっとも異なるのは、背面右側面だ。奥は、GRⅢ、手前はGRⅣですが、ご覧のように手前GRⅣには上下シーソー式の露出補正レバーが新設され、モードダイヤルにはSnというポジションが新設されました。Snはスナップを意味し、セットすればダイヤル操作で距離と深度を調整できるのです。GRⅢではダイヤル押してを左右にスライドさせることで露出補正を行いましたが、GRⅣでは右肩部分に新設されたシーソースイッチを上下操作することで、両機種とも1/3段刻み±5EVの補正ができます。

■さまざまな場面で使ってみました

 撮影するにあたって、私好みのスタイルに仕上げてみました。まずは、ストラップ。これは首から吊り下げて使うために自作したもので、岡山の児島で購入した岡山緞通の組みひもを既存のストラップの部品を取り外し、適度な長さに調整して取付けました。このストラップの良いところは、軽く、柔らかく首筋に違和感がないこと、さらにカメラを両手で持ち、カメラを前面にぐっと引きシャッターを切れば手振れ防止にもなるし、長いところを縛れば簡単に長さ調整でき、胸位置、腹位置に吊り下げて、水平を気を付ければスナップ撮影にバッチリで、お気に入りの自作ストラップです。アクセサリーシューの光学ファインダーは「コシナ フォクトレンダーのミニファインダー」で、炎天下時に活用するのですが、28㎜と35㎜に枠があるので、大まかなフレーミングが行え便利です。

《お気に入りの岡山緞通のストラップと外付けファインダを装着してみました》実は、ふだんGRⅢを使うのは、このような物撮りのときにも便利なのです。撮影場面の照度にもよりますが、手持ち撮影に加え、三脚での使用も多いのです。この場合のライティングは天井のLEDランプと、手持ちではがき大のLEDを適度なところを照明して撮影しています(GRⅢで撮影)

 もうひとつ、GRシリーズは基本の画角に加え、クロップ機能を持っていて、疑似的なズームレンズ組込みコンパクト機のように設定ができますが、GRⅣでは、28・35・50㎜相当画角が選べますので、私のように小さなものを物撮りするときには便利です。使用にあたっては、メニュー画面からいちいち呼び出し設定するのも面倒なので、モード設定ダイヤルのユーザーカスタム設定U1に35㎜、U2に50㎜相当画角を割り振っていますので、ワンタッチで切替えられ便利です。このようなステップズーム的クロップ機能を持った機種としてはライカQシリーズ、フジフイルムGFX100RFがあります。なおGRⅢでは、クロップ撮影と同様に撮影時のアスペクト比を3:2と1:1を選べましたが、GRⅣでは、さらに4:3、16:9のアスペクト比画面が加えられました。その有効性は別として、GRシリーズでは選んだ画面比内だけの画像しか見えないのは、すっきりしていて撮影時に迷いを生じないのがいいです。

《いつもの時間のいつもの露出の英国大使館正面玄関》F5.6・1/800秒、ISO-Auto200。特に目立った点はないですが、シャドーもつぶれず、再現色も普通です。ピントはストラップを首にかけ、つっぱらせて屋根頂点直下のエンブレムにタッチAFでピント合わせしています。

《開進堂のフラワーポッド》F5.6・1/500秒、ISO-Auto200。拡大するとそれぞれがシャープなのは当然ですが、必要以上にシャープがかかっているようなこともなく、色もスタンダードの設定ですが、おとなしい発色です。

《開進堂の側面壁》F5・1/400秒、ISO-Auto100。グレーの色再現とディストーションを見てみました。最近の使用機種は同じ場面を撮影してますので、他機種の色傾向はバックナンバーをご覧ください。

《白いヒマワリ》F5.6・1/1000秒、ISO-Auto200。実焦点距離18.3㎜だから、F5.6に絞られれば、パンフォーカス的に無限遠までピントがきそうな感じはしますが、近接しているからでしょうか、それなりに背景の樹木はボケてます。ということで、遠近感が十分に出ています。

《セルフポートレイト》F2.8・1/160秒、ISO-Auto200。キヤノンミュージアムにて、それぞれのレンズは遠方まで何本あるのでしょうか?

《写真展にて》F2.8・1/30秒、ISO-Auto640。写真展やさまざまな展示会場に行ったとき、写真と解説を同時に写し込んできて、後日ゆっくりと解説文を読むようなことは、私の良くやることですが、レンズの周辺までの解像性能と画素数が大切です。

《写真仲間との写真展撤収時の記念写真》F2.8・1/30秒、ISO-Auto1250。このとき写真を見に来てくれていた女性に預けたら、カメラを構えたとたんにシーソー式露出補正をマイナス側にめいっぱい5EVまで押してしまい、4回ほどやっても画面が真っ暗になって撮れないということで、若い男性に替わってもらったのですが、やはりカメラを持った途端に一気に-5EV補正になり、3度目ぐらいにどうにか撮れたのがこのカット。カバンやケースに入れておくときは電源をOFFにしておくから問題ないけれど、ONのまま構え直したり、ストラップから持上げると露出補正がかかりやすいからシャッター切る前には注意が必要です。この点に関してはGRⅢのほうも簡単に設定はできるけど、設定後は簡単に動かないのが良いのです。このあたりは、簡単に操作できるのは便利だけど、意図せず簡単に動いてしまうのは困りものです。

《マイタケ蕎麦》F2.8・1/30秒、ISO-Auto2000。テーブル上の蕎麦を簡単に撮影。ちょっとした旅に出たようなときは、食事もメモ程度に写しておくのも楽しい。

《食事後のスイーツ》F2.8・1/30秒、ISO-Auto320、+1.3EVの露出補正をかけて、白のクリームが飛ぶぐらいに明るくしてみました。

《散歩の途中で①》F5・1/400秒、ISO-Auto200。西日にススキの穂とほとんど流れのない川の水たまりが、輝いていたので、特別に露出補正はかけていませんが、高輝度部が2個所もあるわりには影響なく、適度に全体が見えるレベルの露出が得られました。

《散歩の途中で②》F4・1/250秒、ISO-Auto200、35㎜相当画角。私の住む地域は、1歩裏道に入ると花き農家が多く、時節柄、クリスマス、正月を前にした出荷直前の花キャベツ(葉牡丹)の畝がきれいだったので縦位置で撮影してみました。

《散歩の途中で④》F4・1/250秒、ISO-Auto200、-0.7EV。背中に太陽を浴び、自分の影を撮影してみました。やはり、実焦点距離18.3㎜とは言え、パンフォーカス的には全面に合わないのが気になります。この場合のアウトフォーカス部分のボケ具合は、被写体が煩雑なためでしょうか、あまりきれいとはいえません。

《新宿ゴジラ通り》F2.8・1/50秒、ISO-Auto400。いつものようにゴジラにピントを合わせての撮影ですが、あえてゴジラの画素等倍拡大は載せていませんが、かなり手前の部分までピントがきています。

《新宿通りの点光源》F2.8・1/50秒、ISO-Auto250、-1.3EV。手前の手すりの丸の部分にアウトフォーカス部の口径食を見てみました。やはり中心部は真円で、周辺は口径食と色収差らしきものが見えます。

《物撮りもこなします》F9・1/30秒、ISO-Auto1250、-1.7EV。たまたま手元にあったゴールドとプラチナ仕様のミノックス。焦点距離が短いので、F9と絞ったので前後までピントが来るかと思いましたが、奥のプラチナボディはボケてしまいました。というわけで、私の自家本、ヤシマデジタル750、コンタックスAX、エプソンR-DIの研究は、すべてGRⅢで撮ってきましたが、特に問題はありません。つまり、GRⅣも同様ですね。

専用ストロボを取付けたGRⅣ》GRⅣには専用ストロボリコーGF-2が別売で用意されました。GN3(ISO100・m)ということですが、フィルム時代には考えられない発光量ですが、ISO感度をAUTOにしておけば、あとは自動で露出は合います。また、USBタイプCコネクター充電というのはうれしいですが、価格は16,400円。なお、GRⅢよりホットシューの接点は4から6へと増えています。なおリコーGF-2をGRⅢに付けるとISO-Autoでは、近接は極端にオーバーとなり、遠方は感度が上がった状態で絞りコントロールすると、いがいと便利に使えますが、GN3(ISO100・m)という従来の基準では計算も難しいので、とりあえず1カット撮影し、絞りをわずかに変えればほとんど問題なく使えます。

リコーGRⅣでGF-2ストロボを使ってみました》F2.8・1/30秒、ISO-Auto1250、-0.3EV。GNも小さくどんな配光をするのかと縦横・近距離とさまざまな場面で使ってみましたが、光もよく回りきれいに写っています。もう少し遠距離だとどうなるかも知りたいです。デジタルならではの小型ストロボです。撮像板調光といったところでしょうか。

■使ってみて

 新型GRⅣとGRⅢはどっちがいいか、などと悠長に使っていたら、GRⅢは製造中止になってしまいました。考えれば当然のことで、新旧をダブって販売していくということは、生産過剰で余剰在庫があるときは別ですが、もともと人気で抽選販売というようなGRシリーズには現実としてあり得ないことなのです。

 そこで大切なのはむしろGRⅣをいかに使っていくかということが大切なのです。今回のレポートにあたって、初期の段階でレンズの挙動に不思議な見え方をする場面をいくつか見つけました。それは私的な使い方なのですが、さまざまな展示会場で場景とともに文字の情報を写すのですが、なぜかGRⅣでは文字の周辺が薄くコメットのように尾を引いて見えたのです。このようなことはGRⅢではなかった現象です。改めてさまざまな場面で、GRⅣとGRⅢの1対1比較を行ったら、GRⅣのほうが絞り開放・絞っても画面周辺までしっかりと解像しているのです。新しくなったGRⅣの18.3㎜F2.8レンズは5群7枚構成で、GRⅢの4群6枚より、1枚増えているのです。この違いは、ボディそのものの薄型化に寄与していると思ったのですが、実は最後部に1枚増やすことにより、薄型化とともに像面の平坦化を狙ったようで、あえて作例には示しませんが、画面左右周辺の解像力はかなり向上しているのが認められました。このほか、GRⅢでは2424万画素であったのが、GRⅣでは2574万画素へと増加していますが、これは画質の向上には関係しないだろうと考えました。

 となると、文字がコメットのように薄く尾を引くのはなぜだろうかと考えると、どうやら手振れ補正機構が3軸から5軸に替わったことに関係ありそうだと考えたのです。3軸の補正というと角度と回転、5軸というとさらにX軸とY軸方向の補正が加わることなのです。コメットのように尾を引いて見えというのは、この運動に関係しているように思うのです。しかも私の撮影法は、カメラを両手で構えてネックストラップを前面にピーンと引っ張ってブレが起きないようにしてシャッターを切るのですが、このような撮影法だとX・Y方向の移動には弱いのではないかと考えが至りました。これは、あくまでも私の推察でしかないですが、しっかりとぶれないように撮影すると良像面積が広く、気軽に撮ると場面によってはコメットのように尾を引くということへの考察なのです。間違っていたらごめんなさいですが、実写の場面ではまったく問題ないことで、あまりにも特殊な例でした。

 結果としてGRⅣは、わずかに小型になり、レンズの画質が向上し、バッテリーの持ちがよくなり、などなど良いことづくめですが、私としては露出補正のシーソー式レバーだけは残念で、納得できません。

■終わりに

 2025年の各社新型カメラを見るとギミック的な要素を持たせたカメラが多い中、根本的な小型化や画質という目立たないところで、進化を見せたのは好感を持てます。その反面、GRⅣの露出補正のスイッチは、フィルム時代の裏蓋が開けやすい、不用意に開いてしまう、裏蓋が開きにくいとは、対極に位置することなど昔の論争を思い出してしまいました。カメラというのは購入した人が、カメラに近づいて慣れていくことも大切ですが、やはり多くの人がそうであれば、何かご一考をと願う次第です。

 最後に、GRⅢはベトナムで製造されていましたが、GRⅣは中国での製造になりました。一般的には中国から他国へというのもよく言われますが、逆に中国へというのも注目するところです。過去の歴史をさかのぼると、各社とも中国でのカメラ製造はそれなりの長い歴史があったわけで、業界スズメとしてはちょっと気になるところでした。