写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

白の「ライカM」と黒の「ライカM9」

 ライカMが発売されました。昨年9月のフォトキナで春、それも3月ぐらいにと予告されていましたが、みごと3月20日に発売されたので予定通りでした。いくらドイツ製で独自思想のライカでも、デジタルの時代にあっては、発売を延期することはつらいはずです。いつものように、さっそく手にすることができましたので、簡単に僕なりの使用感を報告しましょう。ブログタイトルは、“白の「ライカM」と黒のライカ「M9」”としましたが、別に意味はありません。手元にシルバークロームのライカMとブラックペイントのライカM9があり、基本的には塗りの黒か、梨地クロームメッキの白ボディです。僕は戦場カメラマンではありませんので、目立ってもかまわないので、どちらかというとライカは白が好きです。

 「ライカM」がなんなのかということはあちこちで紹介されてるでしょうから、僕のレベルでは、簡単に写真で従来の同じデジタルでそれもフルサイズのM9と比較しようと考えたわけです。まず、左のM9をご覧ください。トリエルマー16-18-21mmF4と専用光学ファインダーを付けましたが、右のMにこのレンズを付けたときには専用光学ファインダーはいらなくなります。つまり、Mはライブビューが可能なわけですから、光学式レンジファインダーでピントを合わせることができ、さらに背面液晶モニターやオプションのEVFフレーミングやピント合わせができるわけです。ピントは、1倍に対し、当然、5倍、10倍と部分拡大して焦点を合わせることができ、ライカではこの機能をフォーカスエイドと呼んでます。さらに日本の各社がそうであるようにピントがあった所が赤くなるピーキング機能をもっています。ちなみにライカM用の外付けEVFファインダー2はライカX2と共用です。
 右のMには、ニッコール70-300mmF4-5.6をマウントアダプターを介して取り付けていますが、距離計の連動しない他社のレンズでも使用可能なこと、さらには距離計の機能しない焦点距離135mm以上の望遠レンズもライカボディで利用できるのは、ライブビュー機能があるからです。このほかMでは、フルHDの動画撮影が可能ですが、ほとんどのライカユーザーには無用のものかもしれません。救いは、M8、M8.2、M9、Mと流れてきたときに、動画機能の付加が、価格に反映されていないような感じがする設定になっていることです。さらに細かく見てみましょう。M9のファインダーにはブライトフレームファインダー枠のための採光窓がありますが、Mでは電気的な表示のためありません。このブライトフレーム枠は赤または白色をメニューで選べます。ライカもライブビュー機能が加わり、これで本当のミラーレス(ノンレフレックス)となったわけです。
 さらに最も大きな相違点は、イメージャーにあります。M9がイーストマン・コダック社製の1,800万画素のCCDであったのが、Mは2,400万画素CMOSであることです。ライカがMを発表した時期に、ソニーが盛んにフルサイズで2,400万画素のイメージャーを発表していたために、一時期はソニー製のCMOSとうわさされましたが、フォトキナ直後に毎回来るライカカメラ社の技術スポークスマンによると、ベルギーのCMOSIS社製であると発表されました。CMOSIS社とは初耳の会社ですが、2007年11月設立されたベルギーのアントワープを拠点とするCMOSイメージセンサーの専門メーカー(ベンチャー企業)です。産業、科学技術用途に適した高解像度、高速、低ノイズのグローバルシャッターCMOSイメージセンサー製作を特徴としています。 とはいっても設計開発だけの会社で、製造はフランスの企業に委託しているようです。ライカ用のセンサーの特徴は、画素間クロストークを減らしSN比を稼ぐためにRGGBカラーフィルターとフォトダイオード受光部の距離を短くしているようです。M9、Mとも、最近流行の光学ローパスフィルターレスで、このクラスではライカが元祖です。いずれにしても、これらの部分がどのような性能を示すかが最大の注目点で、これから時間をかけてじっくりとひもといていかれると思うわけです。
 まずは、シャッターを切ってみましょう。4Gの同じSDカードをいれましたが、DNG+jpgFineに設定するとM9で140枚、Mで81枚の撮影が可能と表示されました。この違いは、画素数が違うのだから当然です。なお、DNGファイルは圧縮ありに設定しました。あくまでも僕の印象ですが、M9はシャッターを切るとカタコンといった感じで、Mはガチコンといった感じです。Mはライブビューだとまた感じが違いますが、M9ではまるでフィルムを巻き上げているかのようにシャッターが切れた後にジーッカシャンと音がするのです。

【僕の町にも春がやってきた】ライカM、ズマリット35mmF2.5、絞りF5.6・1/500秒、Cモード、ISO200、AWB。菜の花が咲く線路わきに、マンサク、タムシバ、サクラの木が植えられていて、いっせいに花をつけたところに、黄色の西武線が走ってきました。1回目はSモードでタイミングを外し、2回目はCモードで連写して成功。僕はテッチャンではありませんが、久しぶりに楽しい撮影でした。
 さらに僕的な興味では、スーパーアンギュロン21mmF4がどのような写りを示すか興味ありましたが、M8、M9同様に周辺はM味をもつのは、やはり同じでした。これは昨年9月に来日したライカカメラ社のステファン・ダニエル氏に聞いたときは、F2.8のレンズを使ってくださいということでしたので、完全対称型の光学系では対応できないのだなと思っていました。これでスーパーアンギュロン21mmF4はリコーGXR+A12マウント専用で使うことへのあきらめができました。
 今回思ったことは、ライカをCモードで使うなんていうのは、ライカ使いの先生にもってのほかと怒られそうですが、透視ファインダーと連写は、一眼レフ以上にピッタリきました。また最近思ったのは、シグマDPメリルシリーズのような高画質・高画素のカメラを使うと、フィルムや通常画素数時代では考えられなかったトリミングも、かなり思い切ってできるのだということを学びました。いずれにしても技術の進歩で撮影法も変わってくるのだということを再認識した次第で、かつてオリンパスOM-2の登場でストロボマクロ撮影がアマチュアでも簡単にできるようになりましたが、技術の進歩と表現領域の拡大が一緒にあるところが、まさにそれが写真なのだと思うわけです。  (#^.^#)

 ところで現物を手にしてわかったことが1つあります。それは機種名の「ライカM」というつけ方です。もともとMの名称は1954年発売のライカM3に始まるわけですが、その後、M2、M4、M5、M6、M7、M8、M9ときて、さらにこの派生機種がそれぞれの世代にありました。確かにこのまま順番を増やしていくにはむりがあります。これからモデルチェンジするときはどうするのだろうと思いましたが、底蓋のシールを見て納得しました。“LEICA M [Typ 240]”となっているのです。つまり基本をMにして、タイプで分けていこうというようで、Typ 240とは2,400万画素を意味するのでしょう。基本ボディはこれを発展させ、Typ 240-2とか、3,600万画素ならTyp 360とか変えていけばいいわけです。またMのバリエーションには、すでにライカM Monochrom(モノクローム)、ライカM-E(エコノミー?)が発売されているのでわかりやすいのです。