写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

マウントアダプターで、あれれ?

 僕のここ数年の楽しみは、実はレンズ遊びなのです。とくに最近“ライカM”が発売されてからは、フルサイズで古典ライカスクリューマウントはいうに及ばず、ほとんどの各社一眼レフ用の交換レンズがマウントアダプターを介して取り付けられるようになり、前にも増して楽しさが倍加されてきました。そんなある日、ライカMにとある交換レンズをマウントアダプターを介して取り付けて、ライブビュー(LV)撮影しようとボタンを押したら『注意 レンズが装着されていません』と警告がでたのです。しかしどうして?ということなのです。それまでは、ライカMでライカカメラ社オリジナルのMマウントの「ズマリットM35mmF2.5」、コシナフォクトレンダーのMマウント「ノクトン50mmF1.1」レンズを使っていたのですが、そのようなことはありませんでした。 これは、困りました。せっかくマウントアダプターを介して、マクロ撮影から超望遠までフルサイズでさまざまなレンズでライブビュー撮影できると思っていたのですが、ライブビューができないのでは何のために“ライカM”を買ったのかと、一瞬、血の気が引けましたが、思い直して、その原因を探ることにしました。そしてわかったことは、A)光学ファインダーを通した通常の撮影ができ、ライブビュー撮影も可能なアダプター、B)光学ファインダーを通した通常の撮影はできるけど、ライブビュー撮影ができないアダプター、C)光学ファインダーを通した通常の撮影もライブビュー撮影もできないアダプターがあるということまで突き止めました。それらのうちあるメーカーのものがC)に該当するということがわかりましたが、何が原因なのかいまひとつ明確にはできませんでした。これらの一部の形状を示すと、以下のようになります。

 (1)は、ライカM3についていたズマリット50mmF1.5のもので、僕が1970年ごろに中古で購入しました。ボディはシュミットのSマーク入り、革ケース付きのライツ社純正のセットです。機能としてはB)タイプです。(2)は2012年に求めたものですが、中国製のKIPONのもので、機能としてはB)タイプです。(3)は、2012年に求めたものですが、中国製のKIPONのもので、手書きで6ビットコードを付加できるタイプで、機能としてはA)タイプです。(4)は、いまから15年ほど前に購入したアベノン製のものですが、焦点距離によって3種類求めていましたが、いずれもタイプC)でした。(5)は、2012年に求めたものですが、中国製のKIPONのもので、手書きで6ビットコードを付加できるタイプで、機能としてはA)タイプです。(6)は1971年ごろ新宿コマ劇場地下の「カメラのイガラシ」で中古ですが9,000円で求めたものですが、すべてOKの、A)タイプです。ということであれこれ考えたのですが、原因はなかなかわかりませんでした。最初は、アベノンの左の切欠きに問題がありそうだ、焦点距離の切欠きに関係がありそうだとか考えましたが、結局わからずじまいで、ライカカメラ社のサービス部門へそのままMのボディと各種マウントアダプターとレンズを持参して、『ライカの純正の物はすべてに機能すると書いてあった気がするけどライブビューで使えない』と持ち込んだのですが、実に簡単に答えがでてしまったのです。つまり、無限遠ストッパーのための切欠きがあるために、ボディ側の6ビットコード受光部に光が入るとロックがかかるというのです。確かに135mmレンズにはストパーなどついていませんから、40年も前の物でも最新のライカMの6ビットコード受光部をふさぐから使えるわけです。なるほどなというわけです。でもいままでのM8・M9ではそのようなことはありませんでした。

 上の写真、左)はライカMボディの6ビットコード検知部、中)は、ライカ純正マウントアダプターにズマリット50mmF1.5を付けた6ビット検知部で、B)の動作となります。右)は、(6)の135mm用マウントアダプターですが、すべてが隠れているためにA)のタイプとして機能するわけです。つまり同じKIPON製でも、6ビットコード対応の物は受光部を覆うわけですからOKなわけです。では、光学ファインダーはOKでも、ライブユーができないのはなぜ?というわけですが、試しに光学ファインダー状態でOKな写真中の状態で、近くに光源を持っていっても、シャッターロックにはならないのです。でもライブビュー撮影ができなければ意味がないので、これ以上の深追いはやめました。ついでにいうならば、僕は、ニコンF、ペンタックスK、キヤノンFD、ミノルタMD、旧コンタックスレンズなどをライカに取り付けるマウントアダプターをを持っていますが、いずれもマウント基部は6ビットコード受光部をきれいに覆っていますので、シャッターロックはかかりません。わかってしまえば実に明快ですが、わからないときはあれこれと心配しました。それよりもライカカメラのサービスでは、持参したMボディを3週間預からせてほしいというのです。なんでも、初期不良でアイレットが外れるものがあるので、ドイツ本国で対策するというのでした。
 ■続くときは同じようなことが起きるのです。キヤノンのEOS-1DsMarkIIで、とあるレンズの新旧比較をしようと撮影に出たのですが、新レンズではよかったのですが、マウントアダプターを介した旧レンズではシャッターが切れないのです。過去にも同じような組み合わせでやったのですが問題ありませんでした。今回は、急きょ中国製のマウントアダプターで準備したのですが、撮影地に行って撮影できない事態になったのです。
 さぁ、困りました。現地から同じEOS-1DsMarkIIを使い、この方面に詳しい、深川精密工房の大澤さんに電話を入れ、わかったことは、EOS-1系にはフィルムカメラの時代から、ミラーと撮影光学系の機械的接触を避けるためにセンサーが入っているというのです。同じフルサイズでも5Dならセンサーがないから問題ないはずだというのです。とりあえず、帰宅してからEOS5DMarkIIで動作するのを確認しました。さらにEOS-1DsMarkIIとEOS5DMarkIIのマウントをレンズを外してのぞきこみましたが、わずかな違いはあるものの、これだ!という確証は得られませんでした。

 そこで、手元にあったキヤノンEF用のマウントアダプターの代表例を写真で示します。(1)は宮本光学製ですが、EOS-1DsMarkIIで使えます。(2)は中国製ですが、何と電気接点がついているのです。購入は北九州のカメラ屋さんで2,500円だというので衝動買いしましたが、電気接点の働きはなんだかわからないというのです。これもEOS-1DsMarkIIで使えます。(3)は今回の撮影のために購入したものですが、EOS5DMarkIIでは使えましたが、EOS-1DsMarkIIには使えません。
 結局、撮影はEOS5DMarkIIを使って後日行うことにより事なきを得たのですが、ひと騒動でした。その後、時間がたってから深川精密工房の大澤さんから連絡があり、作動しない原因は100%解明できましたというのです。それによると、使えるものと使えないものを比較して、切り替え部が電気接点だと思って、絶縁材などを使ってボディのピンにあててみてもうまくいかないのが、機械的な感圧式で、それも移動量がわずか0.25〜03mmぐらいのところでうまくいくことがわかったというのです。そして使えないというマウントアダプター側のある出っ張りををわずかに削ることにより、使えるようになったというのです。さらに、興味深いことも教えてくれました。電気接点付のマウントアダプターは、香港のマウント会社がROMを解析して組み込んだもので、フォーカスエイドが効き、さらに50mmF2を使ったというようにExif情報が書き込まれるというのです。実際、(2)のマウントアダプターを取りつけて撮影した後は、焦点距離50mmで、開放絞りF2とでるのです。いずれにしても、たまたま僕の手元にあるものの代表的なアダプターの場合でして、市場にでているものすべてが、結果良好というわけではありませんので、サードパーティーのアダプターを使うときはある程度のリスクは覚悟しなくてはなりません。ちなみに、僕のEOS用のマウントアダプターは、ニコンF⇒EOS、M42⇒EOS、Tマウント⇒EOS、タムロンアダプトール⇒EOSの4種類です。いろいろ苦労はありますが、フルサイズセンサー・ライブビューでのレンズ遊びはおもしろいです。


結局、「ライカM」に使えないMバヨネットマウントアダプター5個持っていましたので、使えるようにしました。100円ショップで1mm未満厚の黒いポリエチレンカバーのファイルを購入し、サークルカッターでくり抜き、6bitコードが隠れるようにアダプターの切欠きをリングで埋めました。材料費、ファイル、接着剤で210円で仕上がりました。