今回のテーマは「カメラのマウントアダプターに関して」です。やっとどうにか時間がとれるようになりました。いくつか宿題がたまってしまいましたので、イベント告知以外のブログを開始というわけです。
数か月前ですが、写真仲間のOさんが、おもしろい物があるから使ってみて欲しいというのでした。何でもAF・AEに連動した『コンタックス645レンズ⇒キヤノンEFボディへのマウントアダプター』だというのです。ちょっと待って、キヤノンのカメラは持っていても、コンタックス645の交換レンズは持っていないのです。その旨を伝えると、マウントアダプターに加えレンズも貸してくれるというので、お借りしたのが『コンタックス645/EFアダプター』というわけです。つまりコンタックス645の交換レンズが、このマウントアダプターを介することによりAFとAEが生きてキヤノンのEFボディで使えるというのです。なるほどというわけで、EOS-1Ds MarkIIに装着したのが右の写真です。なぜか、EOS-1Dsのボディに、マウントアダプターでプラナー80mmF2レンズを取り付けた状態が寸法的にもマッチするのです。
コンタックス645は、1999年2月に京セラから発売された645判のフィルムカメラですが、MFとAFの操作性を重視したフォーカスシステムが特長でした。1999年というと、デジタルの一眼レフとしてAPS-C判266万画素の“ニコンD1”が発売された年で、コンパクトデジカメとしては200万画素のオリンパスキャメディアC-2000ZOOM、ニコンクールピクス950、リコーRDC-5000が発売され、フィルムカメラとしてはレンジファインダー式の“安原一式”が発売された時期でもありました。つまり、フィルムからデジタルへの変換のまさに前夜であったわけです。コンタックス645はフィルムバック交換式で、当然のこととして開発時にデジタルバックを取り付けられることが視野に入れられていたことです。発売時の交換レンズは、ディスタゴン35mmF3.5、プラナー80mmF2、ゾナー140mmF2.8、ゾナー210mmF4、アポマクロプラナー120mmF4と6本のカール・ツァイスT*レンズが用意されました。このうち80mmF2が標準レンズで、当時の記録によると、5群6枚構成、全体繰り出し方式のフォーカスで摺動抵抗が少ないセラミックガイドレールが採用されているのだというのです。当時、やはり写真を趣味とする仲間のOさんが、ボディとディスタゴン35mmF3.5とプラナー80mmF2を付けて購入し、後にコンタックスサロンで個展を開かせてもらったという思い出の深いカメラでした。
それにしても、ずいぶんレアなレンズのマウントアダプターを作ったものです。京セラがカメラから撤退したのが2005年ですから、約6年間にわたって販売されたのですが、京セラがカメラ事業そのものから撤退したとはいえ、中判カメラとしては異例の短い寿命でした。その間、身近なところでは、先ほどのOさんと、知人のコマーシャル写真家のTさんがツァイスレンズであることから購入された例を知っていますが、高価なこともあったでしょうから、何セット売れたかはわかりません。それだけコンタックス645の交換レンズは数が少ないと思うのです。
上の写真は、左から、EOS-1Ds、マウントアダプター、プラナー80mmF2を示しました。これを組み付けると、右上の写真となり、コンタックス645のプラナー80mmF2.8がキヤノンEOSで使えるようになるのです。写真を見てお分かりのように、コンタックス645は完全電子マウントなのです。したがって、キヤノンEFマウントも完全電子マウントなので、どちらにもマウウント接合部分には機械的な駆動部分がないために、電気的な信号のやりとりが可能なわけです。電気接点はコンタックス側が9個、キヤノン側が8個です。このあたりはどのようになっているかは、アダプターを分解してみればいいのでしょうが、ここは目的とするところではありませんので、不問とすることにします。とはいっても気になるのは装着した後の動作です。この操作にあたっては、特に難しいことはなく、絞りリングを最小絞り値(このレンズの場合はF22)以外のどこかにセットすればよく、絞り値の設定はボディ側で行います。
実際撮影してみましたが、動作はレンズ内のモーター駆動であるためにわずかにジッジッという音がして、最新の超音波モーター仕様とは違い若干緩慢な感じはしますが、使用上は特に問題はありません。さらに加えるならば、これも当然のことですが、6×4.5cm判の中心部を24×36mmのライカ判で使用するわけですから画質も悪いわけがありません。そんなことですが、撮影結果をいくつかお見せしましょう。
≪photo01≫お寺の庫裡。645判80mm単焦点の中心部だけに、さすがディストーションは感じさせません。絞り優先AE(F5.6・1/250秒)、−0.7EV、ISO400
≪photo02≫長ネギ。6×4.5cm判の画像中心部を使うだけにシャープでネギの質感もいいです。しかも背景のボケ具合はムラなく均質です。プログラムAE(F9・1/250秒)、ISO800
≪photo03≫水の引いた蓮沼に舞い降りた小鳥を狙いました。小鳥のシャドーの描写もつぶれなくいい感じ、さすがツァイスレンズです。プログラムAE(F8・1/1600秒)、ISO400
≪photo04≫連写で走行してくる電車を狙ってみました。動体予測AF機能も十分に追随しました。絞り優先AE(F5.6・1/320秒)、AI-SERVO AF、ISO400
使ってみて思ったのことは、特に気になる部分はなく、コンタックス645交換レンズを所有するユーザーには朗報だと思うのです。最近はミラーレス機の台頭で、フランジバック差を利用して、異種カメラからの交換レンズの乗り入れが可能になったというわけですが、言葉を変えると、ボディが製造中止になったレンズでもマウントアダプターを介すれば、機械的に結合が可能となり、撮影ができるようになったのです。その結果、今のようにミラーレス機でのマウントアダプター利用がちょっとしたブームになったというわけです。とはいっても、ほとんどは機械的な結合だけで、絞り動作、AF動作はマニュアルになるわけです。そのような中で今回の『コンタックス645/EFアダプター(Contax645>CanonEOS AF/AE-adapter)』は、完全電子マウントの特徴を活かして、キヤノンEOSボディでAF・AEを可能にしたのです。さらに最近はAF・AEに連動した『コンタックス645/ニコンFマウントアダプター』もあるということです。
もっとも完全電子マウントのキヤノンEFレンズを他社のミラーレス機に使うには、単なるマウント部分の機械的な結合だけではうまくいかないのです。僕の知る範囲では、このようなマウントアダプターで一番すごいのは“ソニーマウントアダプターLA-EA4”で、かつてのミノルタαのボディ内モーター用の交換レンズをAF・AEは当然のこととして、ミラーレスの完全電子マウントのソニーαで使えるようにしたことです。このためにマウントアダプター内にトランスルーセントミラーを入れ、アクチュエーターを3つも組み込んであるというのです。つまり、ミラーレスフルサイズのα7にマウントアダプターLA-EA4を付けるとミラーレスα7が旧ミノルタαボディになってしまうというわけです。しかも、使ってみると当時のミノルタαのボディより素早く合うのです。いずれにしても、技術的な権利関係はわかりませんが、フルサイズのキヤノンEFレンズがフルサイズのソニーα7ボディでAF・AEが可能となるマウントアダプターもできる(できている)わけです。かつて京セラコンタックスの時代は、カール・ツァイスのレンズが使えるというのが、ひとつのステータスであったわけですが、やはり製造中止となったレンズが他社のボディで使えるというのはうれしいことです。
なお、この『コンタックス645/EFアダプター』は中国製で、ブリコラージュ工房NOCTOが日本国内総代理店となっている製品です。