写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ニコンZシリーズはこれで最強となった

 ミラーレス一眼の発表が各社一巡し、それぞれの社の交換レンズシステム化が構築されつつあります。2019年のCP+で発表されていた、ニコンZマウントボディにソニーFEマウントを変換装着するマウントアダプターは早い時期に発売されましたが、ニコンZマウントボディにキヤノンEFマウントを取り付けられるアダプターは、約1年遅れで複数のブランドがこの時期までに発売されるようになりました。今回はこのうち焦点工房から発売された『fringer FR-NZ1』を使って、身近にあるキヤノンEFレンズをニコンZ7に取り付けてさまざまな場面で撮影した結果をレポートしましょう。

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≪今回ニコンZ7に取り付けたキヤノンEFレンズ5本≫ 左から、EF28-135mmF3.5-5.6 IS、EF70-200mmF2.8 L IS USM、EF28mmF2.8、EF16-35mmF2.8L、EF24-70mmF2.8L USM。いずれも最新レンズではありませんが、このうちEF28mmF2.8はEOSシステムが発売された当時の1987年の発売ですから33年も前のレンズです。この5本のうちEF28mmF2.8だけはモーター式で超音波モーターUSMではありません。いずれも5本の交換レンズはすべてAFがごくごく当たり前のように作動しますので、つまらないぐらいです。

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ニコンZ7にfringer FR-NZ1を介してキヤノンEF28mmF2.8を装着、ニコンZ7にTECHARTTZE-01を介してZeissバリオテッサーFE16-35mmF4 ZA OSSを装着。見た目はどちらもフィットしている感じです。ニコンZ7にソニーFEレンズを取り付けたレポートはこちらを参照ください。≫

■レンズを変えてランダムな撮影

 単にキヤノンのレンズがニコンZボディで動いた、というだけではおもしろくないので、あちらこちらでのランダムな撮影結果を紹介しましょう。撮影は、すべてプログラムAE、ISO-AUTO、露出補正なし、JPEG撮影で行っています。これは、私のカメラチェック法ですが、カメラがどれだけそれぞれに対応しているかを見るためですが、AFだけはどこにピントを合わせるかということでかなり自分の意思を盛り込んでます。ただ、今回作例には示しませんでしたが、瞳AFにも連動したことを最初に記しておきます。

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≪EF28-135mmF3.5-5.6 IS:焦点距離135mm≫F8・1/1000秒、ISO100。羽田→関空間の機上から狙いました。晴天で明るいということもありますが、まったく問題ない写りです。このレンズも発売は1996年ということで、フィルムカメラ時代のEOS-1Nボディで使うために購入したものですが、24年前のレンズとなります。

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≪EF28-135mmF3.5-5.6 IS:焦点距離135mm≫F5.6・1/125秒、ISO 25600。洞窟内で波が押し寄せ、飛沫が上がる瞬間をとらえました。ISO 25600という数字がオートで出てくるのも最新デジタルカメラならではです。拡大してみると、画素等倍辺りでは、絞り開放で、超高感度であるためにノイズ感があり、さすがシャープさには欠けますが、波の飛沫の感じも写真のクオリティーとしては十分成立しています。

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≪EF28-135mmF3.5-5.6 IS:焦点距離75mm≫F5・1/400秒、ISO100。海岸淵に置かれた石像の手の上に松かさがありました。松かさにピントを合わせぎりぎりにズーミングしましたら、明るかったのでISO100の感度で、焦点距離75mmで絞り開放のF5となりました。拡大してみると松かさの前後ぎりぎりまでピントの合う焦点深度でしたが、石像の前後が適度にぼけて柔らかさをもって描出されました。

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≪EF28-135mmF3.5-5.6 IS:焦点距離135mm≫F5.6・1/160秒、ISO 8000。古いカナダ製の蓄音機。画面右端のレコード針にピントを合わせてあります。やはり絞り開放で撮影されていますが、ピントの合ったところ以外のボケ具合も自然であり、画質的に不満はありません。このような暗い室内で撮影してみるとわかるのですが、最低シャッター速度が、「1/焦点距離」よりわずかに速めにシャッターが切れているのです。つまり、焦点距離135mmだから、1/135秒以上の高速1/160秒で切れています。プログラムAE、さらに昨今のデジタルカメラならではのISO8000の露出成果です。

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≪EF28-135mmF3.5-5.6 IS:焦点距離65mm≫F5・1/125秒、ISO100。赤ちゃんのこぶし大のイチゴが売られてましたので何も考えずにパチリと1枚。もちろん撮影後に購入しましたが甘くておいしかったです。拡大してみるとイチゴ表面の黒いタネの1粒ずつ、緑のヘタの繊毛も描出され十分な解像です。

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≪EF70-200mmF2.8 L IS USM、200mm(300mm相当)≫F3.5・1/800秒、ISO100。こちらも1995年発売のものです。撮影はDX(APS-C)モードですから、焦点距離200mmですが300mm相当の画角となります。この写真水中のカモをよく見ると、小さな魚をくわえているのがわかります。暗い所でプログラムAEでだと、フルサイズとAPS-C判を切り替えると、やはり焦点距離が長くなるとみなせるAPS-C判では、シャッター速度はそれなりに速くなるのがわかります。

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≪EF70-200mmF2.8 L IS USM、135mm≫F5.6・1/500秒、ISO100。同じレンズですがこちらはフルのFXモードで撮影しています。ニコンZ7は、フルサイズのFXに加え、APS-CのDX、5:4、1:1、16:9の撮像範囲の画面変更が可能で、これらはメニュー画面で設定することになります。

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≪EF28mmF2.8≫F10・1/400秒、ISO100。カモのいる池の脇に生えている枯れたカヤを狙いましたが、F10と絞られたこともありますが、拡大してみても十分な画質です。今回撮影した中では好きなカットです。

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≪EF28mmF2.8≫F8・1/250秒、ISO100。カヤが中距離なのに対し、こちらは近距離の切り株に芽吹いた光沢ある葉です。こちらのカットも申し分ない描写です。

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≪EF28mmF2.8≫F8・1/250秒、ISO100。こちらは遠距離の風景ですが、まだ芽吹きの前ですから、元画像を拡大してみると木々の枝先から実用上は問題ないまずまずの解像特性であることがわかります。

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≪EF16-35mmF2.8L:焦点距離16mm≫F8・1/250秒、ISO100。今回使用した中では最も広角な焦点距離16mmで撮影しました。このシーンでわかることは、解像・発色などは十分なのですが、Z7側の“自動ゆがみ補正”はONにしてありますが、広角ズーム特有なワイド端ではたる型の歪曲がでてしまうことです。これは当たり前のことで、ニコンのカメラが他社のレンズの補正具合を組み込むわけないし組み込めるわけもないのです。この歪曲、気になるシーンもならない場面もあるし、気になる人も、ならない人もいるわけで、どうしても気になるならばレタッチソフトで簡単に手直しできるわけです。このシーンの青空は個人的にはニコン的な発色、つまりボディ由来の発色傾向だと思うのです。

■使ってみたら

 ニコンZマウントボディにソニーFEマウントを変換できる「TECHARTTZE-01」の時も、今回のニコンZマウントボディにキヤノンEFマウントを取り付けられる「fringer FR-NZ1」の時も感じたのは、どちらも存在を感じさせないほどに普通に使えたことです。もちろんレンズのAF作動も今回使ったレンズの範囲でしかないのですが、レンズメーカーのキヤノンマウントレンズではどうだろうかなどの問題はありますが、これはボディが新しくなれば、それなりの変化が伴うのは当然のことです。

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 このような変化に対してfringer社はファームアップで応じるというのです。実際、今回の使用中にファームアップが発表されたので早速やってみました。fringer FR-NZ1の下部には取り外し可能な三脚座とUSBマイクロBタイプの端子があるのですが、このUSB端子を使って簡単にファームアップすることができました。その操作は、FR-NZ1をボディに装着し(レンズは取り付けなくてもOK)、USB端子を使ってパソコンに接続し、カメラの電源をONにするとfringerのホルダーができるので、あらかじめfringerのサイトからダウンロードしておいた.binファイルをホルダー内に入れるだけで完了するのです。ファームアップは、1.00から1.10となりましたが、シリアルナンバー、バージョンとも含めて管理されているようですが、今回はキヤノン、シグマ、タムロン、ツァイスの非対応であったものが対応するようになったということですから、私のレベルでは支障はなかった範囲だとなります。

 今回は、33年も前のEF28mmF2.8レンズがまったく問題なく、ニコンのZ7で動作したのですから、キヤノンのEOSシステムがすごいのか、fringer FR-NZ1がすごいのか、それともニコンZ7がすごいのかとなりますが、いずれにしても、こういうことが可能になるのがミラーレス一眼のもう1つの隠れた特徴となるのでしょう。もちろんマウント口径55mm、フランジバック16mmという、ある意味フルサイズミラーレス機の極限を目指したZマウントならではのものであることは言うまでもありません。TECHARTTZE-01のレポートの時には、ツァイスのレンズがニコンZシリーズで使えるとしましたが、今回のfringer FE-NZ1では、キヤノンのEFレンズがニコンZで使えるのです。それぞれレンズの描写特性は各社各様ですが、高性能化した中においてどれだけ特徴ある描写ができるか微妙なところです。知人の舞踏写真家氏は、キヤノンEFレンズでマウントアダプターを介してニコンZ6で使っているのです。理由はレンズが軽いからだそうです。さらにうがった見方をするならば、マウントアダプターをボディ側に残してソニーキヤノンのレンズ使えば、レンズ交換が生理的に楽になるとか、いろいろなことが考えられます。いずれにしてもミラーレス最強のニコンZマウントならではのことであることは間違いありまりません。 (^^)/