写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

フジフイルムXハーフを使ってみました。

 いま、富士フイルムデジタルカメラが元気だ。2025年2月6日「インスタックスワイドEvo」、4月21日中判のレンズ非交換式の「GFX100RF」を、そして6月26日には今回取上げた1型センサーの「Xハーフ」を発売し、さらに8月にはAPS-C判のレンズ交換式「X-E5」を発売ということで、矢継ぎ早に新製品を市場投入できるのはさすがです。それぞれの成果がでるのには時間を必要とするでしょうが、高度に進化したデジタルカメラ分野で、技術的にはサチったような環境下で、新機軸を打ち出そうというわけで、さまざまな仕掛けが組込まれているのが本機「Xハーフ」です。ボディカラーは、ブラック、シルバー、チャコールグレーの3種あり、シグマBF、フジフイルムGFX100RFとシルバーボディを購入してきましたので、今回はブラックボディとしました。 

《Xハーフ ブラック》正面から見ると、左から、セルフタイマーランプ・タリーランプ、フラッシュ・ビデオライト・AF補助光ランプ(LED)、光学ビューファインダーです。この外観を見て、かなりの専門家である人が光学的なレンジファインダー機構を備えていると勘違いしましたが、それだけらしく作られています。トップカバーの作りは樹脂ですが感触は良好で。GFX100RFがトップカバー、底部がアルミ削り出しだったのに対し、Xハーフは体感温度と等価といった感じで、これから真夏に向かい、さらに厳冬の時期になっても、気楽に使えるような感じがします。レンズはSUPER EBC 10.8㎜F2.8で、非球面レンズ3枚を含む5群6枚構成で、35㎜判換算32㎜相当の広角レンズとなり、最短撮影距離はレンズ先端より約10㎝ですから、かなりの近接撮影が可能です。AFはコントラスト検出方式で、ふだんは位相差検出のミラーレス機を使用していると合焦への時間が長く感じるのは致し方ないです。

《トップカバー上部から見ると》大変シンプルで、目視的に認識しやすい露出補正ダイヤル、かつてのフィルムカメラ時代の巻上げレバーらしきものが付いているのが最大の特徴で、機構的にはレバーに予備角まで備えていて、巻上げは何に使うかは別項で紹介しますが、いかにもフィルムメーカーがこだわって作ったという感じです。写真では、シューカバーを外して見せていますが、電気的な接点は設けられていないので、単なるアクセサリーシューとなっていますが、やはりRF機をイメージさせるには、デザイン的に外せないということでしょうか。

デジタルカメラなのに巻上げレバー》デジタルカメラなのに巻上げレバーがあった「エプソンR-D1」。R-D1は2004年3月の発売で、フィルムカメラコシナフォクトレンダーベッサをベースに開発されたので、シャッターのチャージに巻上げレバーが使われましたが、「Xハーフ」は24年後の登場となります。エプソンR-D1APS-Cサイズ、Xハーフには1型(1インチ)のイメージャーが使われています。Xハーフは、105.8(W)×64.3(H)×45.8(D)㎜、重さ240gと小型・軽量で時代の進歩を感じます。

 ところで1インチ(1型)の撮像素子というと、撮像面が13.3×8.8㎜だそうで、3:4の画面に3648×4864ピクセルの画像が得られます。ラフに画素ピッチを計算してみると3.6μmとなるので、1億200万画素のGFX100RFやソニーα7RⅤの3.7μmと0.1μmの差があるものの、その差がどの程度画質に効いてくるかはわかりませんが、昨今の高級コンパクトデジタルカメラが1インチセンサーを使うのはこのあたりが理由でしょう。この画素数でA3にノートリミングで短辺方向にあわせて拡大プリントしようとすると、約320dpiの解像度となるので必要十分な画質となります。実際は、プリンターの画像補完能力や出力解像力設定により変わる部分でもありますので、A3ノビ、場合によってはA2ぐらいにも耐えられるといえるでしょう。

《左側面》上から補助光の強制発光とOFFの切替えスイッチ。バッテリー充電などに使うタイプCのUSB端子。《右:底面蓋を開けると》記録メディア(SDカード)、バッテリーが収納でき、蓋の裏には、中国語で富士フイルム株式会社、中国で製造されたことや、シリアルナンバーなどが記されています。

《ストラップ》左:同梱されてきた純正のストラップと紐のついたレンズキャップ。キャップは最初からボディに紐が通してありました。右:50年以上前に購入したライカ用ネックストラップ。私はネックストラップが両手が空くので好きです。片手で気楽に人物スナップなら、純正がいいかも。1972年発売のフジカGER用にはこのライカ用に似た布製のネックストラップがあり、けっこう便利に愛用していましたがXハーフの重さからするとちょうどそんなネックストラップが復刻されるとよいですね。

《カメラ背面》ボディ背面にはフィルムシミュレーションモードを示すサブLCDパネルとメインの背面LCDディスプレーモニターがあり、上下、左右と指でスライドさせるとさまざまなメニュー画面に入れる。フィルムシミュレーションでは、①プロビア(スタンダード)、ベルビア(ビビッド)、アスティア(ソフト)、クラッシッククロームリアラエース、クラシックネガ、ノスタルジックネガ、⑧エテルナ、⑨アクロス(STD、Ye、R、G)、セピアと13種あり、フィルム世代の私にはそれぞれ発色を何となくイメージできますが、フィルム知らない世代だと難しいですね。ただそれをどのように使いこなすかはユーザーの能力次第といった感じです。

 また、さらにフィルターとして、レトロ、ビネット、ぼかし、魚眼、色ずれ、ミラー、2重露光、光線漏れ、ハレーション、期限切れ(C,R,N)、トイカメラ、ミニチュア、ポップカラー、ハイキー、ローキー、ダイナミックトーン、ソフトフォーカス、パートカラー(R,O,Y,G,B,P)、キャンバスと27種あり、さらにグレイン・エフェクトという粒状度をOFF・強・弱と可変でき、それぞれを組違えると、いくつになるかなというぐらいバリエーションがあります。かつてフィルム時代に高解像・高画質・忠実な色再現を目指してきたわれわれの世代にとっては、めまいがするほどのバリエーションであり、昨今の一部写真界では古典的なプリント技法で他人より抜きん出ようと考えている写真愛好家には、かなり魅力的な存在のカメラといえるのかもしれません。

 

■いろいろとフィルターや特殊効果を入れて撮ってみました

 この「Xハーフ」は普通に撮影するだけなら、カメラ単独でも撮影できるのですが、Xハーフの持つ機能をフルに活かすには、専用アプリをスマホに入れる必要があるのです。巻上げレバーの使用を含めて、それぞれ作例の場面で紹介しますが、スマホと通信しながら使うカメラなのです。

《いつもの英国大使館、フィルムシミュレーション:プロビア》F6.3・1/600秒、ISO-Auto200。絞りリングをF5.6にセットしての撮影ですが、絞り優先AEにしていなかったためかプログラムAEで撮影されました。焦点距離10.8㎜、AFポイント9個所ということですから、大きくは変わらないでしょう。Xハーフは元画面が縦位置ですが、横にして撮影したために、少し右下がりになってしまいました。同様に日付写し込みがデフォルトですが、この日はあえてOFFにしました。また、このときXハーフアプリをスマホにインストールして画像転送すれば、撮影画面をスマホで大きくして見ることができ、さらに設定すればスマホからオンラインプリントやチェキインスタントプリントも可能となるのです。

《いつもの英国大使館、フィルムシミュレーション:アクロスSTD》1コマ撮影した後に、巻上げレバーを操作して、もう一度シャッターを切れば2in1の合成画面になります。このときのデータは、アスペクト比3:2の7296×4864ピクセルのLサイズデータとなります。また、Xハーフアプリをスマホにインストールしてあれば、任意の画像を組合わせたり、コマ間の色を変えたりすることができるとされています。この場面は、あえて撮影時に1コマ目と2コマをわずかに横にずらして撮影して、ひょっとしたら立体で鑑賞できるかなという実験を兼ねてみました。このような、2in1の画像では、Exifデータは消えてしまので注意が必要です。

《イングリッシュガーデン:プロビア》F7.1・1/850秒、ISO-Auto200。こんな感じで、普通の写真も撮れました。

《ヤツデの葉:プロビア》F4・1/320秒、ISO-Auto200。ヤツデの葉に太陽光がスポット的に入り込んできれいでしたのでシャッターを切りました。ハイライトが若干飛び気味なのは富士フイルムのカメラらしい露出レベルという印象です。

《いつもの歩道:プロビア》F6.3・1/600秒、ISO-Auto200。解像感、発色とも文句ない描写ですが、右側の建物を仔細に見るとわずかに糸巻き的な歪曲を感じさせます。

《いつもの飲み屋さんで・1:プロビア》F2.8・1/42秒、ISO-Auto800。左端には日付が入っていますが、これが初期設定です。色調は少し電灯光色的な感じでしたので、トーンカーブをわずかに持上げました。これは、フィルムのプロビアがデーライトタイプだからかなとも考えましたが、プロビアというモードは色調がスタンダードという意味なので、デジタルカメラとしてはほどほどにオートホワイトバランスが効いてるようです。このカメラはインスタントのチェキと同様パーティーや飲み会向きです。

《いつもの飲み屋さんで・2:プロビア》F2.8・1/42秒、ISO-Auto800。持参した色紙にEdiさんからイラスト入りのサインをもらってご満悦の若者。右の女性幸さんは、デジタルカメラなのに巻上げレバーのあるエプソンR-D1を掲げています。

《いつもの飲み屋さんで・3:アクロスSTD》F2.8・1/38秒、ISO-Auto800。電灯光下の撮影ですが、もう少し明るくした方が自然かもしれませんが、この画面の中にハイライトからディープシャドーまである感じです。アクロスといってもモノクロネガ調でなく、単なるモノクロ再現です。さらに細かくYeモードを選べば肌はもう少し明るくなるかもしれません。モノクロモードですが、日付がオレンジ色なのはご愛嬌です。

《いつもの飲み屋さんで・4:プロビア》撮影後につい巻上げてしまいましたら、縦横混在の2in1の合成画面となりました。左カットはミラー効果に設定してあります。

《ご近所で・1》左はノーマルなプロビアモード撮影、右はさらに魚眼モードに設定して撮影。

《ご近所で・2》左はノーマルなプロビアモードで光線もれ設定、右は退色モードに設定して撮影。光線もれは、撮影するごとにランダムな位置に発生します。

 

フィルムカメラモード

 このカメラで、一番の特長は“フィルムカメラモード”があることです。このモードは、専用アプリのXハーフを自分のスマホにインストールすることにより、疑似的なフィルムカメラ的な撮影感を味わえるというのです。撮影は、36枚、54枚、72枚から選択が可能で、ハーフサイズなので元は………枚のフィルムとかうるさいこと言わないで楽しむのが良いでしょう。撮影は、レバーを巻上げることにより1回シャッターが切れ、撮り終えると、スマホのアプリを使い現像処理ができるのです。以下は、36枚に設定して撮影しましたが、シャッターを押す前も、押した後も背面液晶には画像は見えなく、唯一光学透視ファインダーを見ながら撮影し、1コマシャッターを切ったら巻上げるという動作を繰返した結果です。

 下は、36枚撮りにセットして撮り終えて、スマホ内の専用アプリで現像処理進行中の画面をスクリーンショットでキャプチャーしました。

《現像中のフィルムカメラモードのデータ》

 現像処理中のフィルム状画像は、1枚目から順次現像されて行きますが、その以前の未現像部分はオレンジ色というのがおもしろいです。下の現像を中止という部分を押せば、進行を停止できるようですが、やっていません。これもご愛嬌ですね。

 

《36枚撮り現像後のベタ焼き画面》専用アプリを起動させて現像画面にすると、未現像フィルムのパトローネが示され、撮影時の36・54・72枚の設定に応じたスペースに、現実より短いフィルムのベロが示され、さらにはエッジプリントにはFUJI FILM記されとハーフ判に対応したコマナンバーが、各コマが一定のコマ間隔をもって№1から並ぶのは圧巻で、芸は細かいです。いずれにしても、富士フイルムならではのエネルギーの注ぎ方です。下のブラックスペースは、72枚撮影したらフルに埋まるようです。

 このフィルムカメラモードで撮影・現像するとメモリーカードに「例:103FPATR」というようなホルダーができ、フィルム1本分相当の各コマデータ(例:FPTR0001.JPG~FPTR0036.JPG)とベタ焼き相当分のファイル(例:FCTS0037.JPG)が別に作られ、さらにFPTRMGMT.txtというテキストファイルができて、ます。103FPTRは富士パトローネの103番、FPTR0001.jpgは富士パトローネ103の中の01番の画像、FCTS0037.JPGは富士コンタクトシートの0037番かと思われ、さらにFPTRMGMT.txtというテキストファイルができて(Filmpatrone_information,Date_Start,20250708T212800,Date_End,20250709T124647,Film_Type,80000000,Film_State,2,Film_Total,36,Film_Used,36,Contact_Sheet,FCTS0037.JPG,Card_Space,2354479104,MD5_hash,f3908168d78b183d062c7947b3ad6fff,EOF)と書込まれていて何となくはわかりますが、詳しくは富士フイルムの技術担当者に聞かなければわかりません。

《Xハーフアプリを組込んだスマホの画面》左:撮影したフィルムのアルバム、右:撮影画面のギャラリー、順次送ることにより撮影画面を見ることができ、スマホとの接続はBluetoothを介して行われます。

 

■使ってみて

 今回は、発表と同時にいつものお店に注文したので発売日に入手できましたが、天候や諸般の事情でレポートの仕上げには時間がかかりました。それでも、このXハーフは人気のようで、写真仲間が初日には手にできなかったけどと、白ボディを購入して、私に見せに来たのです。彼と私の評価は大きく分かれるところがいくつかありましたが、びっくりしたのは、私の所のボディがSK700515であるのに対しSK704227と飛びぬけて番号が加算されているのです。それだけ製造されているのでしょう。やはり市場では人気なのでしょう。このほか分類記号では、XハーフがFF240003となっているのに対し、先に発売されていたGFX100RFではFF240004となっているのです。これは、ひょっとしたらXハーフのほうが先に出来上がっていたのかなとも考えるわけです。

《左:Xハーフブラックとシルバーボディ》個人的にはブラックが好きです。この黒ボディはライカカメラ社のオーナーのDr.カウフマン氏がデザインの類似性を指摘していましたが、そこから脱出れないのは致し方ないのでしょうか、《右:銘板》銘板からすると中国製、“instax wide Evo”はインドネシア製、GFX100RFは日本製でしたので、富士フイルムのカメラ製造拠点は国内外で3か所となります。なおXハーフは記号で「X-HF1」となっています。GFX100RFはそのままでしたが、Xハーフには「X-HF2」が用意されているのでしょうか。気になるところです。

 久しぶりに力の入ったレポートとなりました。このような多機能な小型カメラがどこまで受けるかはわかりませんが、写真がデジタル主流になって25年近くたった現在、フィルム写真のベタ焼き(コンタクト、密着)を活用していた人は、現在若くて50歳ぐらい、また、このようにスマホとあれこれ連携する機能を駆使できるのは、1990年代後半から2012年頃に生まれた、いわゆるZ世代といわれるようなデジタル時代の30歳未満の人たちで、その相反する部分が1台のカメラの中に存在するというのが注目される点です。

 設計の現場では、フィルム時代の写真を知るシニアエンジニアがその昔のシステムを教え、若い設計者がプログラムを組んだという感じです。今回使い込んでいて思ったのは、まずは普通の写真が撮れ、デジタルの先端技術やフィルム時代の機能が付加されたのは面白いですが、やはり基本的に普通の写真が撮れるのをメインにしたほうが、正統だと思うのです。今回はカメラの性格上、飲み会のような場に持ち込むのが最適だと思い、皆さんに感じを聞くと、面白いけどもう少し安ければ手を出せるというのです。

 前述しましたが2型が登場してもおかしくないので、画面をハーフでも横型にしたり、AFもコントラスト検出の山登り方式なので合焦にはワンポイント時間のずれを感じさせますので、レンズの焦点距離10.8㎜F2.8という特性を生かしパーンフォーカス的な特性を活かしたスナップモードを作るなど、もう少し現代的に機能をスッキリさせれば、さらに市場で受入れられるのではと思いました。勢いある富士フイルムならではの新規軸が確立できるようなカメラへの進化を期待したいものです。 (^^♪