写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

これもカメラなのです

 これは何だかわかりますか? ある種のカメラですが、3社6機種あります。

 6機種を並べて正面から見てみました。後列左から:フジノンFG110-15W、フジノンFG110-HD、フジノンFG110 HALF、前列左から:オリンパスSC16-10、ペンタックスPS-PE、オリンパスSC16-3となります。

 6機種を配置はそのままで後面から見てみますと、前列左から:フジノンFG110 HALF、フジノンFG110-HD、フジノンFG110-15W、後列左から:オリンパスSC16-3、ペンタックスPS-PE、オリンパスSC16-10となります。
 お分かりいただけたでしょうか。最近話題の内視鏡用のカメラです。何が話題なのかということですが、ペンタックスのカメラ事業がHOYAからリコーに移った後、現在もHOYAPENTAXブランドで残っているのが内視鏡すなわち胃カメラをはじめとした医療分野です。また、この内視鏡分野で圧倒的に強いのがオリンパスですが、昨年10月にソニーと資本業務提携を結び第三者割当増資で500億円を調達し、さらに外科用内視鏡の開発・製造・販売などを行う医療事業の合弁会社を設立などと話題を提供したのも、医療器すなわち内視鏡関連ならではのことです。
 そしてこれら6機種は、今となっては使われなくなったフィルム用の内視鏡カメラですが、どのような働きをするか専門家に聞いてみました。まず、フジノンFG-15Wは、内視鏡に装着するのではなく、電子内視鏡の画像を記録するためのハードコピー装置だそうです。白黒の電子管の前にRGBの回転式カラーフィルターを置き、1秒ほどの時間で露光させることで、解像度のあるカラー画像を110カセットフィルムに記録しました。保険点数から写真記録が必須なのでした。電子内視鏡は、現在は単板モザイクフィルター式撮像板が一般的ですが。以前は面順次式と称して、照明側でRGB光を切り替え画像を撮り込み、カラー画像としていたそうです。また、フジノンFG110-HD、フジノンFG110 HALF、オリンパスSC16-10、ペンタックスPS-PE、オリンパスSC16-3は、いずれもファイバータイプの内視鏡の接眼部に装着して、ファインダーを介して、ファイバー内視鏡の画像を観察しながら、110カートリッジまたは専用マガジンに入れられたフィルムに露光するカメラです。イメージファイバーの本数は、胃腸用で8,000〜1万数千本です。ただし撮像素子とは異なり、RGBというようなことはないので、電子式に比較すると数倍相当か?。でもイメージファイバーの本数(解像度)が非常に少ないので、ボツボツの画像でした。硬性鏡に装着した場合は、リレー式の光学系にて画像を送られるため、かなり良い画像だったのです。このうち110カセットを使うカメラには、富士フイルムよりかなり早い時期に感度400のリバーサルフィルムが用意されていました。この110カートリッジフィルムを使う胃カメラは、一般の110カメラとは少し異なり、1コマ1パーフォレーションの機械的な爪によりフィルム送りをすることも可能ですが、フォトカプラーによりコマ送りを可能にし、胃カメラ像が円形であることを利用し、FG110-HDではハーフ判にして撮影枚数が増えたようです。なおこのために、フジクローム110-400ME(だったと思う?)には一般撮影用の110フィルムとは異なり画面枠は焼きこまれていなかったと記憶してます。
 内視鏡は、1950年に当時東京大学医学部附属病院の宇治達郎氏とオリンパス光学工業の杉浦睦夫氏、深海正治氏により「ガストロカメラGT-I」として開発されたのが最初とされてます。この開発の経緯は、1980年に作家吉村昭氏が読売新聞の朝刊に小説「光る壁画」として連載し、現在も1冊の本として新潮文庫から発売されていますので、カメラ愛好家ならぜひ一読することをおすすめします。このうち杉浦睦夫氏はその後にオリンパス光学工業を退社され、1958年に杉浦研究所を設立しています。僕は1970年代に仕事の関係で故・杉浦睦夫さんから、いろいろなお話をお伺いする機会がありましたが、胃カメラのことではなく普通のカメラの話を聞くことが多かったのです。実際、杉浦さんと胃カメラのことを詳しく知ったのは「光る壁画」を読んでからで、当時世田谷の玉川にある杉浦研究所を訪ねると、ミノルタ16のカセットフィルムが山のように積まれていたのが印象的です。またそのころ、東大病院でドクター論文の手伝いをして夜の教授とか帝王などと呼ばれ呼ばれていたとか、ある意味伝説の人でもあったわけですが、僕自身今でもはっきりと記憶しているのは、あの6×9判“マミヤプレスのS字型ロールフィルムホルダーの開発は杉浦睦夫さんだった”ということをご自身からはっきりと聞き出したことです。そして、なぜあんな横長な形をしているのかと聞いたところ、単に120フィルムの巻癖をとり平面性をよくしたかったからだと豪快に笑ったのを今でも覚えています。  (*^_^*)

●ご指摘をいただきました
 『電子内視鏡では、現在でも大半が「面順次方式カラー」です。白黒のCCDあるいはCMOS素子を搭載したカメラを先端に配置し、光源を順次切り替えます。オリンパスがこの方式では圧倒的に得意で、他社は競合する使用分野の製品を出さずに「残りの隙間」の製品を手がけています。 このため、「誰に聞くか」で、返答にかなりの色がついてしまいます。オリンパスと利害が対立する所属の方は、面順次方式が劣勢という偏ったことをいう場合が多いと思います。人数的にはこの偏った話をする人のほうが多いと思います。電子内視鏡では面順次方式のカラーの利点がますます増えるので、方式としては本流であり続けると思います。内視鏡は小口径化の要求がいつもあり、画面内の解像力が高い光源切り替え方式の利点はますます大きくなると思います。また、診断の能力を高める「狭波長域」の分光撮像でも、光源切り替え方式の利点が増えています。内視鏡は、カラーの像を「見る」ことが目的ではなく、病変を健康な領域から弁別することが目的です。実際の色と異なる「フォールスカラー」の利用がこれからますます増えると思います。』
なお、ご指摘下さったのはオリンパスの方ではありませんことをお断りしておきます。(ー_ー)!!