写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

カメラのシリアルナンバー

 中野にあるカメラ店の部長さんから連絡が入りました。何でも“シリアルナンバー13100001”という新品の「フジフイルムGF670プロフェッショナル」があるけれど、普通に販売するのはもったいないので、しかるべくところを紹介して欲しいというのす。そのカメラの身元に関しては、製造元の社長さんにも確認したから問題ないというのです。そしてしかるべくところというのは、僕のことではないことは確かで、だから紹介して欲しいということなのです。さらにこの時期はメーカーで3万円のキャッシュバックキャンペーンが行われているからお買い得ですよと、甘い言葉で誘われ、あれこれ浮かんだのですが、快諾いただいたのは、以前からこのブログでも2回ほど紹介したことのある「札幌イマイコレクション」今井貞男さんでした。

 在庫の確保をお願いし、さっそく支払いに行ってきましたが、仲介者としての唯一の楽しみは、記念写真を撮ることだろうと思ったわけです。機体はご覧のように蛇腹の引き出しに注意するようにシールが貼られた紛れもない未使用ボディです。とりあえず写真を撮り、そーっと元箱に戻し宅配便で送りました。 

 そこで思い出したのが、1988年に発売されたフロッピーカメラ「キヤノンRC-250」(キヤノンQ-PIC)の“シリアルナンバー00000001”のボディです。写真を見ればおわかりのようにシリアル1番なのです。こちらも、GF670同様に保証書もあったのですが、何を血迷ったか箱とともに捨ててしまったのです。いまになって悔やんでも後の祭りです。
 そんな話を写真業界の先輩であるHさんと話していたら、もっとおもしろいのがあるよと、その場で見せてくれたのが東ドイツ製「カール・ツァイス・イエナ MCテッサー50mmF2.8」なのです。これには驚きました。シリアルナンバー1は、製品を作るときに必ずでてくると思うのですが、“1234567”を読むと、百二十三万四千五百六十七となります。もちろんカール・ツァイス・イエナのテッサーですから通算100万本以上の生産があってもおかしくないのですが、その数字の並びがわざとらしいのが気になります。M42マウントのプラクチカ用標準レンズですが、時代的には50mmF1.8がでていたときのものですから開放F値からいうと普及タイプとなるのでしょうか。やはり受けを狙ったシリアル番号のような気がします。
 そこでシリアルナンバー1のボディですが、一般的にそれは3台ほどあり、社長、担当事業部長、功労者用などに記念品として作られ贈呈されるようです。そしてここで紹介したフジGS670とキヤノンQ-PICも同じような考えで作られたようです。でも、昨今のようにめまぐるしく切り替わるコンパクトデジタルカメラの世界ではどうなのでしょう。
 これがライカだとモデル名が変わってもシリアルナンバーは一貫しているので、そのときどきの切れのよい番号が、それぞれの時代の功労者に寄贈されてきました。そのほんの一部を紹介しますと、SN10,000:Dr.Hugo Eckner(1928、ツェペッリン飛行船発明者)、SN150,000:L.Godowsky(1935、コダクローム方式発明者)、SN175,000:L.Mannes(1935、コダクローム方式発明者)、SN200,000:Dr.Paul Wolff(1936、小型カメラ開発)、SN300,000:Dr.Gustav Wilmanns(1941、アグファカラー創始者)、SN350,000:Dr.Wilhe Schneider(1941、アグファカラー創始者)、SN750,000:Henri Cartier-Bresson(1955、写真家)、SN919,000:Q.Elizabeth(1958、エリザベス女王)、というわけです。初期のころには小型カメラの発展というか進歩に寄与した高性能フィルムの発明者に寄贈されたところが、興味ある点です。それでは、なぜ僕の手元にキヤノンQ-PICのシリアルナンバー00000001があるのでしょうか。ご想像におまかせします。(●^o^●)