写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

くつがえるカメラ技術の常識 「CP+2016を終えて」

 パシフィコ横浜で開かれた「CP+2016」も無事終了しました。今年は例年になく各社からCP+のタイミングに合わせた新製品の発表が相次ぎ、少なからず関係者でもある僕も、それぞれの技術発展を見ていると新しい動きが見えてきて久しぶりに楽しいカメラ月間でした。昨年から今年になって発表された機種から大きな流れとして見えてきたのは、イメージセンサーの高画素化と高感度化、画素子に対する集光効率の向上が図られたことです。僕が参加したパネルディスカッションはそこが論点でした。
 イメージセンサーの高画素化はキヤノンが2015年にキヤノンEOSD5sとEOSD5sRを5,060万画素で発売して、その後同社の技術展示で35mmフルサイズで1億2千万画素、APS-Hで2億5千万をやればできますよと発表して、何となく高画素競争はピリオッドが打たれた感じです。

≪25日、15時から行われた各社上級エンジニアによるパネルディスカッション。一番左が僕です≫
 そしてもう1つは高感度化、ニコンD5では拡張でISO300万相当、D500も拡張で200万相当だというのです。この2機種のセンサーは画素数が2,000万というわけですから1画素のピッチも6.4μmと4.2μmとそれぞれが大きいのですが、それにしてもISO300万相当の感度というのは僕にとっては未体験ゾーンです。そしてリコーのペンタックスK-1は、拡張感度というくくりはありませんがISO20万相当で使用できるのも驚異です。このカメラのセンサーは3,640万画素で、画素ピッチは4.87μmと、ニコンD810、ソニーα7Rと近似だと思うのですが、一気にISO20万相当というのは、ニコンもそうでしたが、何か増感現像回路とか、新しい考え方が導入されたのでしょうか。そして極め付きは集光効率の向上です。こちらはソニーα7R MarkIIで裏面照射タイプCMOSの採用で、ライカの広角レンズが周辺光量の低下がなく、色付きがなく、そして高感度を喜んでいたら、α6300は新開発のExmor CMOSセンサーで、配線層に銅を採用して集光効率の向上とうたっているのです。自社の新技術に対し別の技術を追いかけでぶつけてくる、これらの技術進歩には驚きです。
 いままでデジタルにおいては、1画素の寸法が大きければ、高感度が得られ、高画素だと1画素が小さいので高感度に弱い、デジタルは撮影レンズのテレセントリック性が大事とかいわれてきたのですが、わずかここ数年ですべて逆転してしまった感じがするのです。そして最近は、手ブレ補正機構をONのままで三脚撮影はOKなど、いままでの常識が常識でなくなってしまったのです。これでは、写真をアマチュアの方に教える先生方も大変です。フィルムの時代には写真知識の常識は長い時間を経ても、ここまではでに逆転するようなことはなかったのです。だからデジタルの時代は面白いのです。

≪25日のオープニングテープカット≫
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≪最初からアウトレットコーナーや中古カメラフェアにに並ぶ人もいるのです≫

≪今年から新設されたCP+に向けて発表された新製品の中から入場者が選ぶ“ワールドプレミアムアワード”には、レンズ交換式カメラ部門:キヤノンEOS-1D X MarkII、レンズ一体型カメラ部門:キヤノンPowerShot G7 X MarkII、交換レンズ部門:シグマ50-100mm F1.8 DC HSM Art、フォトアクセサリー部門:ケンコー・トキナー激落ちくんカメラレンズクリーナー。なお「CP+2017」は、2017年2月23日(木)〜2月26日(日)に開催が予定されています≫