写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ニコン1 V1を使ってみて

 ニコン初のレンズ交換式ミラーレス一眼の「ニコン1」が去る10月20日に発売されましたので、早速、旅に引っ張り出しました。ご存知のようにニコン1には、ビューファインダー付きのV1となしのL1とありますが、この時期入手したのは、ホワイトボディのV1です。まずカメラを手にした印象を簡単に述べてみましょう。白ボディですが、後ろ半分は黒色のモナカ構造なのです。薄く見せるための配慮なのか、コストの問題でしょうか、せっかくレンズとレンズキャップ、ストラップの色をボディ色に合わせたのに!と思ってしまいました。まずは梱包箱を開き、電池をフル充電してセットするのですが、バッテリーはEN-EV15で、D7000と同じものを使います。基本ボディが小さいだけに意外な感じがしますが、像面位相差検出方式のAFなどを採用したので、それだけの容量を必要とするのでしょう。実際、見た目より、ボディを手にしたときの質量感はしっかりとあります。
 電源ONでまず撮影モードを選びます。静止画/スマートフォトセレクター/動画/モーションスナップショットの各モードの中から選びます。各モードの紹介は取扱説明書の掲載順によりましたが、モードダイヤルは左写真のようになっていてかなり静止画と動画の積極的な切り替え使用を前提にデザインされていて、かなり動画を意識したカメラであろうと思うわけです。実際“静止画撮影モード”で動画を撮影するために専用“動画撮影ボタン”が独立して設けられていたり、“スマートフォトセレクターモード”では動いている被写体を1回のシャッター押し込みでベストショット候補の静止画が合計5コマ記録でき、“動画撮影モード”ではHDの動画に加えスローモーション撮影ができ、“モーションスナップショットモード”では1回シャッターを切ると静止画に加え約1秒間の動画撮影を行うというもです。このあたりをどう評価するかは、写真というか映像にどのように関わっていくかというユーザーの理解度というか技量によるわけですが、ここでは僕自身の能力から静止画だけでニコン1 V1を見てみることにしました。

 まず交換レンズは、3本のズームレンズと10mmF2.8のパンケーキレンズがラインナップされていますが、ここでは10mmF2.8のパンケーキ付きとしました。この10mmという焦点距離は35mm判に換算すると27mmの広角レンズの画角に相当します。さて、実際の使用は基本的にオートで行ないました。また、AFは像面位相差検出方式とコントラスト検出方式の併用型ですが、実際の撮影場面ではどうなんだろうということで、混然としたとした被写体での撮影を試みて見ました。結果はご覧の通りですが、かなりピントの合ったところはシャープです。実際撮影されたコマのexifデータを見てみますと、F2.8・1/40秒、ISO-AUTO 400です。10mmという焦点距離でF2.8ならばほとんどパンフォーカス状態ですが、最至近20cmに近い、かなり近接した撮影ですので、遠方はかなりのボケ具合すら感じさせます。全体の画面からも植木鉢を超えた部分からボケを感じますが、画面右上最遠方の人物3人の部分を拡大トリミングして掲載しました。いかがですか、まずは好感もてる描写でした。

とにかくシャープ。画素等倍まで拡大すると、ロープ、注連縄のわらの目がはっきりと見えます。このレンズはさまざまな場面で撮影しましたがディストーションはあまり感じさせません。F3.2・1/100秒、ISO-AUTO 100、木次線出雲横田駅

出発進行。こういう場面を静止画モードで撮るには至難の業。F4.5・1/500秒、ISO-AUTO 100。木次線三井野原駅にてトロッコ列車奥出雲おろち号

目で見るともっと暗い夜景ですが、ニコン1は13.2×8.8mmという小型撮像素子なので低照度下ではどんな感じか見てみました。ピクセルピッチは3.4μmということになりますが、高感度ノイズ処理が適切なのでしょうかISO3200という高感度でもまずまずの描写です。このカメラにはストロボが内蔵されていませんが、これからのカメラの在り方を示すものかも知れません。F2.8・1/8秒、ISO-AUTO 3200、手持ち撮影、境港にて
 最初手にしたときはさまざまな撮影モードがあるので、とまどいましたが、静止画を実際写してみるとかなり描写はシャープで、発色もクセがなく好感もてるものでした。ただ、位相差検出AFがどのように作用するかは、一眼レフのような感じを個人的には期待したのですが、静止画撮影モードでは確認するのはもうひとつでした。またこの手のカメラは、基本的にはプログラムオートで撮影するのですが、露出補正だけはマニュアルで動かさなくてはなりません(今回あまり操作はしませんでしたが)。この露出補正が、目盛りを変えてボタンを決定するまで、液晶モニターに補正具合が反映されないのは、多機能で高価であるのにと考えると残念です。いずれにしても1000万画素あり、かなりシャープな描写ですので、全紙サイズぐらいまでの引き伸ばしには充分耐えるわけですから、小型撮像素子であることを考え十分に光のあるシーンでは十分な描写が期待でき、作品づくりにも活用できます。レンズ交換式のミラーレス一眼はコンパクトカメラ寄りか、一眼レフ寄りかと考えると、やはりコンパクトカメラ寄りというのが今回の印象です。