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写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

キヤノンの超大型CMOSセンサー実用される

 昨年このブログでも紹介しましたキヤノンが開発した、チップサイズ202×205mmの世界最大面積超高感度CMOSセンサーが、東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センター木曽観測所(長野県木曽郡)のシュミット望遠鏡に搭載され、視野角3.3°×3.3°の広視野で10等級相当の流星の動画撮像に成功したと9月15日に発表されました。チップサイズ202×205mmの超大型CMOSセンサーは、直径約300mm(12インチ)ウエハーから製造できる最大級のCMOSセンサーです。キヤノンが製品化しているEOS-1Ds MarkIIIやEOS 5D MarkIIの35mm判フルサイズ(約2,110万画素)のCMOSセンサーと比較(右上写真)すると約40倍の大きさで、わずか0.3 lxの暗い環境でも動画撮影が可能とされています。
 この世界最大面積の超高感度CMOSセンサーを、今年1月、木曽観測所にある口径105cmのシュミット望遠鏡の焦点面に搭載し、約60コマ/秒の動画を撮影。その結果、視野角3.3°×3.3°の広い領域で、10等級相当の暗い流星を動画で撮像することに成功したというものです。従来の観測技術では、7等級より暗い流星の検出は困難とされ、10等級相当の流星の観測事例は年間にわずか10個程度でした。しかし、世界最大面積の超高感度CMOSセンサーを、広視野観測を特徴とするシュミット望遠鏡と組み合わせて動画を撮像したことにより、1分間の撮像記録の中から、従来の年間観測個数を超える数の10等級相当の流星を検出することができたそうです。今後、この動画データの統計的な解析が進めば、流星が地球と生命の進化に及ぼしてきた影響について理解が進むことが期待できるそうです。
 またこの時期、アメリカの大気観測衛星「UARS」が大気圏に突入するだろうと予測され、9月24日には日本上空を3回通過する可能性があるとされていました。最初は24日午前2時ごろに北方領土周辺の上空。2度目は午前3時半ごろ、福井、滋賀、愛知各県の上空。3度目は午前5時ごろ、沖縄本島と台湾の間の海域だと予測されました。今回の「UARS」は地球に落下する際、金属破片が燃えずに残ると考えられていましたが、実際は燃え尽きたようですが、このようなスペースデブリや上空を高速に移動する物体を高い効率で探査することが可能なため、流星以外のや太陽系内移動天体などの検出数が大幅に増大し、それらの位置と速度の測定精度も向上することが期待されています。

左上の木曾観測所観測ドームの写真は、0.1〜0.3 lx程度の環境で超大型CMOSセンサーで撮影。上の写真は、口径105cmのシュミット望遠鏡の焦点面に超大型CMOSセンサーを搭載して撮影された画像です。