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写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ニコンD3sでISO102400超高感度撮影/裏面照射型CMOS採用リコーCX3の実力


2009年10月に発売されたニコンD3sは常用感度でISO12800相当で撮影できますが、増感というかHi3ではなんとISO102400相当の感度で撮影できるというのです。フィルム時代の一般フィルムではコニカカラーGX3200が最高感度であったわけですが、それを軽く超えて未知の感度分野を達成してしまったのです。『明日のデジカメの姿が見えてきた』では、写真家の小山伸也さんの作品でISO12800相当を披露してもらいましたが、“Hi3のISO102400相当”とはどんな画像が撮れるのだろうか?というお話しも何人かの方にいただきました。そこで、改めて常用と増感の最高感度を撮り比べてみることにしました。
またタイミングよく、やはり「明日のデジカメの姿が見えてきた」で紹介した、高感度タイプの撮像素子である“裏面照射型CMOS”を採用したコンパクトデジタルカメラ『リコーCX3』がこの2月に発売されましたので、こちらも合わせて使ってみることにしました。まずはニコンD3sのISO12800相当とHi3のISO102400相当の結果からご覧下さい。被写体は皆さんが憶えているだろう記憶色の範囲のシーンをあえて選びました。

ニコンD3s、ISO12800相当、ニッコール35mmF2、プログラムAE(F5・1/100秒)、AWB

ニコンD3s、Hi3・ISO102400相当、ニッコール35mmF2、プログラムAE(F8・1/250秒)、AWB
小山伸也さんの作品の時もそうでしたが、ISO12800相当の感度では、さすが常用感度といわれるだけあって、とくに問題ない発色となりました。一方、Hi3・ISO102400相当では、彩度も落ちノイズが浮き出てきます。適度に照明され、明るい部分ではそれなりの描写ですが、シャドー部ではノイズの浮きが目立ち、彩度の低下に加え、解像度も低下してきます。ちょうど、フィルム時代のE6カラーリバーサルフィルムを必要以上に増感したときの描写特性とかなり近似しています。もっともこのような増感をどのように評価するかは、最終的な画像サイズ、さらには被写体(撮影目的)によるわけで、すべてを使えない、使えるなどと決めつけるのは難しいことです。ただHi3・ISO102400相当の彩度低下、ノイズ浮きが気になる方はモノクロにして使うというのもひとつの方法です。まるでトライXを増感したような粒状感(ノイズ)?が生まれてきます。
さて、次は「リコーCX3」の画像を見てみましょう。4.9〜52.5mmF3.5-5.6というズームレンズが付いていますが、これは35mm判に換算すると28〜300mm相当になります。このカメラ使って驚いたのは、薄暗くてもとにかく目に見える被写体で、合焦したらシャッターを押すと必ずブレなくきれいに撮れることでした(いままでのカメラは感度は刻んであってもとてもこんな画質ではなかったはず)。シャッタータイミングのずれはあっても、ともかく押せば写ってしまうのです。感度・手ブレ補正のコラボレーションといったところでしょうか、初期設定のISOオートでISO1600相当まで、シャッター速度制限は1/30秒までの組み合わせで良く写るのです。さらに300mm相当画角のマクロセットでは、コンパクトカメラでは得られなかったボケ味も得ることができるのです。

■リコーCX3、焦点距離135mm相当(マクロモード)、プログラムAE(F5.1・1/39秒)、ISO1600、AWB。僕の経験では過去にコンパクトカメラでこれだけの高感度撮影は、普通にはできなかった。室内、蛍光灯照明下、もちろん手持ち撮影。

■リコーCX3、焦点距離300mm相当(マクロモード)、プログラムAE(F5.6・1/290秒)、ISO80、AWB。後ボケの感じを見て欲しい。
この“裏面照射型CMOS”を採用したコンパクトデジタルカメラは、ソニー(DSC-TX1現行、DSC-WX1現行、DSC-HX1、DSC-HX5新製品、DSC-TX7新製品) が先行していましたが、今回のリコーCX3に加え、カシオ(FC150現行、FH25現行、EX-FH100新製品)、ニコンP100国内3月5日発売」)、富士(HS-10海外のみ)と続いています。また素子メーカーも先行のソニーに加え、海外メーカー東芝パナソニックも裏面照射型へ参入といわれており、今後コンパクトデジタルカメラは一気にこのハイスピードタイプへと向かうかも知れません。高感度対応で見えるシーンではほとんどシャッターを押せば確実にきれいに写る。そしてやがてはコンパクトカメラからは内蔵ストロボが消えるのではなどが考えられます。まだまだデジタルカメラは進歩することを実感した次第です。