写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ある写真業界紙が最終号を迎えて

 暮れも押し迫ったころ、写真業界紙の月刊「AVレポート」の最終号が送られてきました。発行人は吉岡伸敏さん、編集スタッフは吉岡眞里子さん、つまりご夫婦で「AVレポート」を発行してきたのです。通巻347号というから約29年にわたって発行し続けてきたことになります。このAVレポートの売りのポイントは、最新カメラのチャートによる性能チェック、小売店による月別カメラ販売台数、カメラメーカー等企業責任者へのインタビューなど、B5判24ページ立ての冊子なのですが、歯に衣を着せぬカメラの判断評価やインタビュー内容は時には物議を呼ぶこともありますが、少なくともある一定層の熱烈な読者がいたことは間違いないようです。
 僕と吉岡さんとの関係は古く1970年代までさかのぼります。当時、吉岡さんはダイヤモンド社を辞して、写真業界紙の「カメラタイムズ」社に在籍していた時、同じビルにいたことから知り合っていましたが、その後別の業界紙を経て、独立してAVレポート社を興したというのです。この間、取り立てて親交があったわけではありませんが、吉岡さんは海外の写真関連フェアの取材に積極的で、フォトキナを始めとして、アメリカ(CES、PMA)、フランス(サロン・ド・ラ・フォト)、中国(China P & E)、韓国などの写真関連ショーを積極的に取材されていたこともあり、ここ10年程前からは海外の写真事情を聞かせてもらう立場にありました。現在の職に就いてからは、フォトキナやCESの会場でもお会いすることが多くなり、さまざまな現地情報を教えてもらうという関係にありました。ところが2016年のフォトキナで会った時に、今年でAVレポートを終わりにするというのです。

≪2016年9月フォトキナ会場にて、右から吉岡伸敏さん、吉岡眞里子さん、ノルウェーのフォトジャーナリストTor Wetherstoneさん、Tor Wetherstoneさんは1968年から毎回フォトキナに、吉岡さんは1998年から毎回フォトキナに来ているとのこと。2人とも今回が最後のフォトキナだと話していました≫
 なぜ休刊かということになりますが、「わくわくするカメラがなくなった」というのです。それ以上は、それぞれ事情があるでしょうからと思ったのですが、これからは写真の表現分野について論評していきたいというのです。そのためには、アルルやパリフォト、韓国のビザプールリマージュに行きたいなど計画をお持ちのようでした。それもWebマガジンとしてやっていきたいというのです。それは楽しみなことです。海外の写真イベントもいいですが、この時期はぜひ日本の写真美術館を見て歩き、今までのカメラ同様にバッサバッサと切って欲しいところです。 (^_-)-☆