写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

CP+2020パネルディスカッションで俎上に上げたかった事

 2月27日から3月1日まで開催予定であったCP+2020は、新型コロナウイルスの懸念により中止となりましたが、そのマイナスの波及効果は計り知れないものがあります。とはいっても私自身で完結できるものは何とかした方が良いだろうということから、このブログを使って『CP+2020パネルディスカッションで僕が俎上にのせたかった事』というテーマで自分なりに2020年パネルディスカッションの想定問答を行うことにしました。なぜそんなことをやるのかということですが、毎年3月のパネルディスカッションを区切りとしてカメラ技術の進歩を個人的に見てきましたが、2020年を休むと技術進歩の激しいカメラやレンズにおいて、その進歩状況をしっかりと書き留めておかないと、前後関係がわからなくなってしまうということが考えられたからです。以下にCP+2020のWebサイトに掲載された告知ページをそのまま拝借しました。

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  ご覧のようなメーカーの方々とのディスカッションをモデレーターとして機能するのが私の役割です。パネルディスカッションは、今回で11回目ですが時期に応じて話題を変えていくことにしています。また、その時の話題をアップデートにとらえて最新の話題をテーマにすることが、聞き手の方々に満足いただけるのではないかと考え、前日までのプレス発表の製品、さらには当日午前中見つけた展示品までを含めて話題にあげるようにしています。少なくともこの会場に来られている方は、最新の製品技術に興味を持たれているはずで、過去の事、さらには一般論では満足しないでしょう、というのが私の考えでした。今回は、それぞれのパネリストの方々のご専門を事前に調べてみますと、9人の参加者のうち、レンズメーカーを含めると7人の方々がレンズ関係の技術者なのです。これはまったくの偶然でしょうが、私としては少しレンズ関係に重点をおいて進行するのもよいのかなということになりました。

  とはいっても、2020年はテーマを「ミラーレスがもたらしたもの」としましたので、カメラそのものをまず見てみることにしますと、今年度はミラーレス一眼も、一眼レフもかなりの数が発表・発売されているのです。そこで簡単にグループ分けしたときの今年のカメラやレンズをピックアップして質疑応答的進行します。さらにここ数年は、最初に各社エンジニアさんたちのお顔とご自身で撮られた作品を前面スクリーンに映し出し、ご自身のご専門と撮影意図などをお話しいただいた後に本題に入るのです。

■フルサイズミラーレス一眼に関して

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≪CP+2020の時期までに発表・発売されたフルサイズミラーレス一眼は5機種≫

 今回初のフルサイズ、しかもベイヤーセンサーのミラーレス一眼「シグマfp」を市場投入したシグマに聞きたかったこと。1)かなり好評にfpは市場に受け入れられていると思いますが、スチルとシネ用カメラとしてはfpはどのくらいの割合で受け入れられていますか? 私は自分の周りを見ると圧倒的にスチルユースが多いとみていますが、いかがでしょうか。2)2月8日の「fpフェス2020春」において、フォビオンセンサーのフルサイズ判はゼロから仕切り直しだと山木社長は発表されましたが、これはセンサーの製造にかかわるとのことですが、私はレンズ、画像処理エンジン等全体にも難しさがあるのではと考えてます。もしセンサーだけだとするならば、現在までに発売されているフォビオンのAPS-CAPS-Hセンサーを使って、ライカCLのようなライカLマウントを使ったAPS判のミラーレスボディがあってもよいと思いますし、APSのフォビオンセンサーはそれでもある部分ではベイヤー方式のフルサイズ以上の潜在的パワーを秘めているとも思うのです。

 すでに第4世代にまでミラーレスフルサイズ一眼を進歩させてきた、ソニーに聞きたかったことソニーα7RⅣでは、6100万画素という高画素ながらISO32000までノイズを最小限に抑えたとしていますが、α7のラインナップを見ると、α7sⅢ・α7Ⅱ・α7RⅣ、α9Ⅱとあるわけですが、電気的な処理能力が上がってくると、画素数が少ないと高感度が得られやすいというような、バランス関係が崩れてくるのではないかと思うけど、いかがでしょうか。

 詳細と発売日は明確にはされませんでしたが、キヤノンはフルサイズ一眼ではEOS R(3,030万画素)、EOS RP(2,620万画素)と発売してきたのに加えEOS R5を発表しました。そこでキヤノンに聞きたかったことはEOS R5では撮像方式と画素数が公開されていませんが、従来の画素数に対する考え方に加え、高画素化を求めるのだけではなく、裏面照射方式のような新しいセンサーをも搭載してくるのではとも考えられますが、いかがでしょう。

 パナソニックに聞きたかったのはルミックスS1Hには放熱ファンを搭載していますが、これはシネ専用機ならではの機構でしょうか。また、先行のルミックスS1Rを使い思ったことは、USB端子より充電でき、特にUSBタイプA→タイプCでよいのは助かりました。S1Hでは、USBタイプC→タイプCとなりましたが、これはどういう考えなのでしょうか。記録メディアはS1RではSDとXQDカードのダブルスロットでしたが、S1HではSDカードのダブルスロットとなりました。シネ用を考えXQDカードだと思いましたが、このあたりのお考えをお聞かせください。

 実際は、ここにあげた話題を起点に各社に話を振りアドリブ的に展開しますが、あえて答えづらいことを聞くのがこのパネルディスカッションの妙味でありまして、お客さんに喜ばれることになりますが、ここではこれまでになります。

APS-C判ミラーレス一眼に関して

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≪CP+2020の時期までに発表・発売されたAPS-C判のミラーレス機は8機種≫

 8機種も登場したAPS-C判ミラーレス機はフルサイズより激戦区となりました。2010年にNEX3とNEX5を発売して以来10年の実績のあるソニー、2019年に参入のニコンまでと多彩です。そこには、フルサイズと併売するソニーキヤノンニコンAPS-C判に加え中判用大型センサーを使ったシステムを展開する富士フイルムとあるわけです。それぞれの最新機種を把握するために仕様を表に整理してみました。

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 APS-Cミラーレス機を比較して見えてきたのは、手振れ補正に対する対処の仕方で、フルサイズとAPS-C機を併売しているメーカーでは、交換レンズがフルサイズ用レンズとの併用、マウントアダプター使用でフルサイズとの併用ができるなどさまざまですが、各社で一番異なるのは手振れ補正に対する解決法の違いです。フィルムカメラの時代には交換レンズ側、デジタルになるとボディ内補正、さらに最近では、レンズとカメラ側の補正の併用、ボディ側で検知して交換レンズに反映させるなどとさまざまです。実際は、実用的な撮像感度のアップなどもあるわけで、そのあたりを各社聞いてみたかったです。そしてデジタルならではの最大の特徴は、フィルム時代と異なり一般的なユーザーが使用する範囲では画素数がある程度満たされていれば、大きく画質には影響ないということです。そのあたりで、各社に聞いてみたかったのです。

■マイクロ4/3と中判に関して

f:id:ilovephoto:20200304165535j:plainマイクロ4/3 ミラーレス機の最初は2008年のDMC-G1でした。以来各社がミラーレス分野に参入しましたが、小型コンパクトなオリンパスペンEPL10スタイルと、OM-DE-M5 Mak III、ルミックスDC-G99に見るように、従来からのハードな印象を受ける一眼レフスタイルに分かれますが、これらのカメラデザインというのはパナソニックオリンパスにとって、いまやハウスデザインとして到達したと見えますが、そのあたりについて聞いてみたかったです。

中判 もともとフィルム由来の呼び方で、かつてハッセルブラッドペンタックスやマミヤがブローニーフィルムを使った中判カメラを出ていた流れで、そのボディに43.8X32.8mmのセンサーを載せたのがリコーペンタックス645Zで、さらに43.8X32.9mmのセンサーを採用しミラーレス化したのが富士フイルムのGFXシリーズです。さらにこの時期発売のGFX100は1億200万画素という最多画素数を誇りますが、クロップなどのメリットを別にすれば、どのような写真の画作りが特徴か富士フイルムに聞いてみたかったです。個人的には先日フルサイズで2,400万画素から6,100万画素までのミラーレス一眼で、同じ場所を近似の条件で撮影し、同じプリンターで画素数をそのまま乗せてA3ノビにプリントして写真展を開いたところ、大多数の人は画素数差を見わけがつかなかったのです。同じことはA2レベルで中判1億画素とAPS-C 2,400万画素の関係でもいえるのではとも考えるのです。なお、富士フイルムは2018年フォトキナ時は、43.8X32.9mmのイメージャーをスーパーフルフレームと呼んでいましたが、最近はラージフォーマットと呼んでます。

 

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一眼レフ この時期注目されるのは6機種もの一眼レフが登場したことです。APS-Cでは、普及機のキヤノンEOS90D、とEOS Kiss X10i、片やAPS-Cのフラッグシップ機として開発され、ペンタックス100周年の記念イベントで発表されたのがペンタックスKマウント機で、CP+の中止で表にはでてきませんでした。このうちキヤノンEOS90DはAPS-C判で3,250万画素で、先行した同じAPS-C判のミラーレスのEOS M6 Mark Ⅱの3,250万画素と同じであり、これを同じ基盤でフルサイズに換算すると8,300万画素強となります。つまりこの時期のキヤノンAPS-C判3,250万画素イメージャーは、フルサイズにすると8,000万画素を超え、詳細未発表のEOS R5はソニーの6,100万画素を超えるのでしょうか?

 またニコンは一眼レフのAF機能とライブビューのAF機能を高めたD780を発売しました。本機のみならず残された一眼レフの“ライブビュー”は、技術的な発展過程でそのように呼んできましたが、この時期にはミラーレス機能と呼んでもいいのではないかと思うのです。そして、オリンピックの年には必ずフラッグシップ機が登場するわけですが「キヤノンEOS-1DX MarkⅢ」と「ニコンD6」はいずれも一眼レフであったわけです。両社ともわずかずつの従来機の機能アップを果たしていますが、ニコンキヤノンもこの分野はまだまだ一眼レフなのか、それともミラーレス機のオリンピック競技用のカメラ開発は間に合わなかったのでしょうか。興味は尽きません。

■交換レンズ

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 ミラーレスの交換レンズは大きく・重いということに挑戦したのでしょうか、タムロン28-75mm F2.8 Di III RXDは、高い解像力と柔らかなボケ味を両立したということで開放より2段絞るとシャープな画像が得られるといい、シグマ45㎜F2.8 DG DN|Contemporaryは、撮影距離70~90cmを超えたあたりからシャープになり近接ではソフトな描写ができる、キヤノンRF24-105mm F4-7.1 IS STMはレンズ面先端より2.3cmのマクロ撮影ができるわけですが、センターフォーカスマクロと称して中心部のみシャープな描写を特徴としてます。いずれも絞り込むことにより画質の向上はあるわけですが、ミラーレスになって設計の自由度が増したとは聞いてきましたが、逆に設計の制約ができたのではないかという印象を持つのです。どうでしょう? タムロン、シグマ、キヤノンに聞いてみたかったです。

蛍石と新光学材料

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キヤノン蛍石とBR光学素子≫

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ニコン蛍石とSRレンズ≫

 昨年2019年9月にニコンニコンFマウント60周年記念ということでニコンD6とAF-Sニッコール120-300mmF2.8E FL ED SR VRを開発発表しました。またキヤノンは、11月に蛍石を「キヤノンFL-F300mmF5.6」に採用して50周年だということでニュースレリーズをだしました。この時点で、私はCP+までに蛍石を使用した新レンズがキヤノンから発表されるのではと考えました。ところが、みごと外れ1月に発表されたニコンの「AF-Sニッコール120-300mmF2.8E FL ED SR VR」と「ニッコールZ 70-200㎜ F2.8 VR S」に蛍石が使われ、さらにSRレンズという短い波長の光を大きく屈折させる特性を持つ特殊高分散ガラスを採用しているというのです。このうちSRレンズは、キヤノンが2015年に発売した「キヤノンEF35mmF1.4L II USM」に採用されていたBR光学素子と同じような考えに基づくものと考えます。違いはキヤノン有機材料で、ニコンはガラスだということです。

 両社とも蛍石を一般撮影レンズに使うのは望遠レンズの小型・軽量化と色収差の軽減などに効果があるからだと考えますが、さまざまな硝材が開発されている現在においてCaF2単結晶を使う目的はどのようなところにあるのか、キヤノンニコンに聞いてみたかったことです。また2018年に発売された富士フイルムの「フジノンレンズ XF200mmF2 R LM OIS WR」には、“蛍石の性能に匹敵するスーパーEDレンズ”が使われているとされていますが、どんな硝材なのでしょうか気になります。さらにCP+2020のパネルディスカッションにコシナは登壇していませんが、昨年末に発売したソニーEマウント用の「フォクトレンダーAPOランター50mmF2」は、異常部分分散ガラスと非球面レンズを使い軸上色収差が少ないAPO仕様で画面周辺まで高解像を示すのは、多くのユーザーが知るところです。これからの交換レンズは、ソフトフォーカス的描写を兼備したものと高解像レンズへと2極化していくのでしょうか、個人的にはソフトフォーカス的な描写のレンズはかつてのズームマクロのように一過性の仕様であると考えるのです。

 このほか交換レンズでは、「タムロン20㎜ F2.8 Di III OSD M1:2」は、同時期の24mmF2.8、35mmF2.8と鏡胴を共通化したり、いずれも撮影倍率1:2のマクロ撮影を可能として廉価で販売して好感持たれてますが、カメラ側の歪曲補正をOFFにすると歪曲のある変わった写真が撮れるとされてます。同じように「ニッコールZ 58㎜ F0.95 S Noct」もRAWで撮影すると、Jpeg.で撮影したときと描写が異なると買って使った人が言ってますが、いかがでしょうか。このようなことは、一眼レフの時代からもあり、歪曲に関してはミラーレスが開始した当時から見受けましたが、現在の写真レンズは基本的にカメラ側の電子的な収差補正があるものとして設計するのでしょうか。タムロンニコンに聞いてみたかったです

■コンパクトカメラに関して

 表題は「ミラーレスがもたらしたもの」としてありますが、これは誘目性を高めるため電車のなかの中吊り広告のようなもので、実際は各社まんべんなくということで、カメラ、写真全体に話題を広げて進行します。

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≪主だったコンパクトカメラを5機種ピックアップしました≫

 コンパクトカメラは、APS-Cか1型の大型イメージャー搭載機が多く、APS-C単焦点レンズ、1型はズームレンズ搭載機に分かれます。このうち単焦点では、リコーはキャンディッド、富士はスナップフォトを指向しているのがカメラの性格を表しています。またリコーGRIIIでは、ライカQ2と同じようにクロップ機能で28mmに加え、35mm・50mm画角で撮影できる切り替えモードがあり、フジフイルムX100Vには光学ファインダーと電子ビューファインダー(EVF)を切り替えられる特徴あるファインダー方式が採用されています。富士フイルム光学ファインダー組み込みの意義を改めてこの時期に聞いてみたかったです。

■各社のカメラ/レンズづくり

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  ここ数年、登壇者にそれぞれの社のカメラ/レンズについて一言ずつ語ってもらっています。本来開催されていても、90分で9人の方にお話しいただくわけですから、1社10分もないわけです。最初にご自身のご専門と、ご自身で撮られた作品を見せていただき、締めでこれからの抱負を語っていただくというわけです。

 とはいっても90分の中でさまざまな討議がなされますが、上に紹介した画像は本来用意したスクリーン画面の1/3にも満ちませんが、お話を皆さんでキャッチボールする中でこれからのカメラについて見えてくることもあるわけです。私自身を含めて、来年もこのような機会があるかはわかりませんが、カメラ・レンズ技術の進歩をこの時期を一区切りとしてまとめてみたわけです。 (^^)/

※ここに記述した内容は、来る2020年6月3日(水)~5日(金)に京都工芸繊維大学で行われる画像関連学会連合会(日本写真学会・日本画像学会・日本印刷学会)の画像関連学会連合会第7回春季大会研究発表分野の特別講演で「仮:最新カメラ技術の動向 2020初夏」と題して、CP+2020タイミングの発表・発売にフォトキナ2020での発表内容までを加えてお話しする予定です。

2つの写真展に参加です。2020.02-03

急告 「第8回クラカメ雑談会」写真展は会場の富士フイルムフォトサロンがコロナウイルスへの対応から休館となりますので、残念ながら中止となりました。(2月27日決定)

 

「第8回クラカメ雑談会」

 2月28日(金曜日)~3月12日(木曜日) ≪ネオパン100アクロスIIの実力≫

 しばらくお休みしていたクラシックカメラ愛好家の写真展が、富士フイルムから「ネオパン100アクロスII」が発売されたのを機会に、“第8回クラカメ雑談会”としてフジフイルム スクエア ミニギャラリーで開かれます。こちらはプロから愛好家まで、ネオパン100アクロスIIを使ってそれぞれが自慢のフィルムカメラで撮影した結果を披露します。

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≪詳しくは:http://fujifilmsquare.jp/photos…/…/minigallery/20022803.html

 

「第13回 ノンライツRF友の会写真展 邂逅」

 2月11日(火曜日)~16日(日曜日) ≪最新フルサイズミラーレス機画質比較

 “邂逅”と少し難しいタイトルがつけられていますが、確かに思いがけず出会った人々との写真展です。ノンライツRF友の会はもともとはオールドレンズをライカレンジファインダー機に連動させて、ライカボディで撮影するのを目的とした人たちの集団でしたが、ミラーレス一眼が誕生して、マウントアダプターを組み合わせることにより、誰でも簡単にノンライツ的な写真の楽しみが写真行えるようになったのです。参加メンバーは8人、13年を経ることにより去る人、新しく加わる人など様々ですが、それぞれのメンバーの工夫した作品には光ったものがあります。

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 僕自身は以前オブザーバー的な立場でしたが、時間が経つと会員同様な作品展示が要求されます。そこで今回の展示では、ここ2年の間に登場したフルサイズミラーレス一眼、さらには交換レンズの実写データをA3ノビに同一条件でプリントして比較してお見せします。そのうち特にご覧いただきたいのが、各機種を同一条件で撮影した英国大使館の正面玄関、それぞれの組み合わせでランダムに撮影した写真を対にしてお見せします。また、1枚だけサプライズ画像としてA0プリンターで伸ばした大型プリントも用意しました。

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 展示機種は、ニコンZ7(4,570万画素、2018年)、ニッコールZ 35mmF1.8 S、Z24~70mmF4S、キヤノンEOS R(3,030万画素、2018年)、RF35mmF1.8 Macro IS STMレンズ、RF24~105mmF4 L IS USMレンズ、キヤノンEOS RP(2,620万画素、2019年)、RF35mmF1.8 Macro IS STMレンズ、RF24~105mmF4 L IS USMレンズ、ルミックスS1R(4,730万画素、2019年)、ルミックスS24-105mmF4、ソニーα7RⅣ(6,100万画素、2019年)、タムロン17~28mmF2.8 DiIII RXD、シグマfp(2,460万画素、2019年)、シグマ45mm F2.8 DG DN |Contemporary、コシナ フォクトレンダーAPOランター50mmF2ソニーα7RⅡ(4,240万画素、2015年)の7機種です。それぞれカメラとレンズが主体であるのですが、時にはレンズが主体であるのもあります。

 それぞれ同じシーンを撮影したとき、ランダムに撮影したとき、それぞれのベストショットのシーンをA3ノビに統一してプリントしたときにどのように画質に違いが出てくるでしょうか? 2,460万画素のシグマfpから6,100万画素のソニーα7RⅣ、ズームレンズのタムロン17~28mmF2.8 DiIII RXDとAPO仕様のフォクトレンダーAPOランター50mmF2とでは、それぞれどれだけ画質に違いがでるでしょうか?、その違いを感じ取っていただければ、現在のカメラ、さらにはこれからのカメラの在り方が見えてくるのです。そして、A0プリンターで伸ばしたプリントの精緻さをご覧いただければ幸いです。

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≪カメラ、レンズが変わっても同じ天候で、同じ時間帯で、同じアングルで、同じ絞り値で撮影した英国大使館正面玄関をA3ノビにプリント、そのカメラとレンズの組み合わせで撮影したランダムな写真を対にして展示します。それぞれの機種間でどのような相違があるか、拡大してゆっくり見ていただくために写真のわきには拡大ルーペを用意しました。意外な事実が明らかになります≫

≪場所:日本カメラ博物館JCIIフォトサロンCLUB25、2月11日から16日≫

 

コシナ フォクトレンダーAPO-LANTHAR 50mmF2 Asphericalを使ってみました。

■なんだこれ!

 コシナから「フォクトレンダーAPO-LANTHAR 50mmF2 Aspherical」がソニーEマウント用として2019年12月に発売されました。

 このレンズすごいことにAPOについてのうんちくを述べるまでもなく、カメラに取り付けてファインダーをのぞいたとたんに"なんだこれ!"となるのです。これはどういうことかというと、ファインダーをのぞいた時にピントを合わせる部分の分離が良く、ピントの山がつかみやすいのです。なるほど、これが軸上の色収差をとことん追いつめたレンズなのかと思うのですが、一瞬不思議な感じがするのです。僕がファインダーをのぞいた時に発した第1声が実は"なんだこれ!"だったのですが、写真仲間のYさんと新年の撮影に同行したときにAPO-LANTHAR 50mmF2を渡すと、Yさんがファインダーをのぞき操作したときに発した言葉が、やはり"なんだこれ!"だったのです。僕もYさんもAFレンズは使うのですが、MFレンズによる撮影もかなり多いのです。この言葉をYさんからも最初に聞いたときは思わず吹き出してしまいました。

 コシナの創業は1959年、レンズ研磨をその始まりとしてその過程では光学ガラス溶解からカメラ製造までを手がける光学機器メーカーとして知られ、2019年には60周年を迎えたのです。その記念製品として発売したのが「フォクトレンダーAPO-LANTHAR 50mmF2 Aspherical」なのです。このアポランターは、その名称からもわかるようにAPOクロマート設計つまり色収差をなくすのを主眼として開発されたレンズなのです。APO-LANTHAR名のレンズは、ドイツ・フォクトレンダー社で当初は大判用として作られ、さらに1950年に発売された距離計連動の6×9判フォクトレンダーベッサⅡにはAPO-LANTHAR100mmF4.5が搭載され高級レンズが搭載されたボディとして珍重されました。このAPO-LANTHAR100mmF4.5のレンズ鏡枠先端には色収差を補正したアポクロマート設計を示すRGBのラインがあり特別なレンズとして特長づけられ、デザイン的にも差別化がなされていました。 

 歴史的にAPOと名打ったレンズは製版用を含めいくつかありますが、個人的な経験では20年ぐらい前に知人の「ミノルタAF APO600mmF4」を借りて使わせてもらった時に、ファインダーをのぞいたら大変すっきりしていて、サービス判にプリントしても画面がクリアでキリッとしていたのがすごく印象的でした。最近では、ライカカメラ社のAPOズミクロンM50mmF2ASPH.とAPOズミクロンSL50mmF2ASPH.が、同焦点距離で同F値で良く知られていますが、いずれも1本100万円前後と高価なのはご存じの通り。

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ソニーα7RIIに装着されたAPO-LANTHAR 50mmF2≫ 現在はソニーEマウント用だけが発売されています。右は、専用フードを付けた状態。内側には反射防止溝が切られ、フレアやゴーストが起きないようにとかなり深く作られています。すでに発売されているソニーEマウント用フォクトレンダーのAPO-LANTHARにはマクロレンズの65mmF2Asphericalと110mm F2.5がありますが、今回はマクロとつけずに標準レンズのむりのないスペックで最高画質を目指したもので、いずれもレンズ鏡筒先端には、ベッサⅡ以来のRGBポイントがカラーリングされています。

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APO-LANTHAR 50mmF2はマニュアルフォーカスレンズですが、マウント基部内側には電気接点が設けられていて、フォーカシングするとレンズ内に組み込まれた距離エンコーダーと連動してファインダー内のターゲット部分の画像が5倍に拡大表示されます。同時にヘリコイドの位置を示す距離スケールに撮影ピント距離が示されピント合わせが楽に行え、絞り値情報も表示されます。これら絞り値、シャッター速度などの撮影データはExif情報としてファイルに記録されます。また、絞り羽根は12枚で構成され、絞り開放F2、F2.8は形状が真円になるように作られています。左から、F2、F2.8の絞り形状を示しました。右はレンズ構成図で、8群10枚構成のうち4面に非球面、異常分散ガラスを5枚使いアポレンズとしての性能をだしています≫

 ■いつもの英国大使館正面玄関を撮影

 この場所の撮影は定点観測的に行っていて、春夏秋冬を通して青空の日、朝10時から10時半ぐらいの間に、英国大使館の正面玄関屋根中央直下のエンブレムにピントを合わせ、絞りF5.6に設定して撮影しています。撮影にあたっては、ボディはソニーα7RIIですが、APO-LANTHAR 50mmF2に内蔵された距離エンコーダーと連動して5軸の手ブレ補正機構が効果的に働くというのです。かつてこの場面は三脚を立てていましたが、昨今のカメラではこのような状況下では手ブレすることもなくなりましたので、手ブレ補正機能を含めたカメラの性能を知るということから、すべて手持ちで撮影しています。

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≪英国大使館正面玄関≫ ソニーα7RII、APO-LANTHAR 50mmF2:絞りF5.6・1/640秒、ISO100、AWB。この場面で、左右640ピクセルの画像では色傾向ぐらいしかわからないのですが、元画像を拡大すると、画素等倍に近いところでヒマラヤスギの葉が1本ずつどうにか解像して見えます。通常だともわっとした固まりになって見えてしまうのです。もちろんカメラの解像力にもよるでしょうが、レンズの解像度に寄るところ大だと思います。

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≪英国大使館正面玄関エンブレムを画素等倍に拡大≫ α7R2の画素数4,240万に連動して大きく拡大されています。描写としてはエンブレムの各部ともしっかりと解像してますが、カメラの画素数と画像処理エンジンに大きく関連してくる部分で、ぎりぎりな感じです。

■ランダムな撮影を行ってみる

 ランダムな場所と時間での撮影ではありますが、私の生活圏の中での撮影ですので見た目は変化に乏しいですが、ご覧ください。

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≪作例1:鉄錆≫ソニーα7RII、 F4・1/200秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。正月のお天気のいい日に、自転車でぶらりと出かけたときにやっと見つけた被写体です。α7R2ボディは、マニュアルフォーカス撮影の場合“12.5倍”まで拡大してピント合わせができるのですが、驚くことに鉄錆びの表面のざらつきで、ピントの合った、合わない、をしっかりと検知できるのです。細かく比較していないので断定はできませんが、僕の経験では今までなかったことです。

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≪作例1a:鉄錆≫ソニーα7RII、上下中央・右から2個目を画素等倍に拡大してみました。鉄錆のざらつきでピントを合わせることができたということをご理解いただけるでしょうか。

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≪作例2:YS-11ソニーα7RII、F5.6・1/1600秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。いつもの退役飛行機です。ANKだから“エアー日本”時代の機体です。このシーンは、わりといつも撮影していますが、今回一番驚くいたのは、垂直尾翼の表面の凸凹感が妙にリアルに再現されているのです。左右640ピクセルでもわかるのですが、レンズの解像力が高いということは、こういうところの描写まで大きく関係してくるのですね。このほか画素等倍の作例に示しましたが、機体を囲うフェンスの直線の切れはすごく美しい描写です。

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≪作例2a:YS-11≫ 上のカットのフェンスの部分を画素等倍に拡大してみました。上のほうの機体だと、リベットの頭や継ぎ目、さらにはペンキの塗りムラなどもわかります。

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≪作例3:飛行機のヘッド≫ソニーα7RII、F5.6・1/500秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。同種のシーンを他機種でも撮影していまっすが、先端部の白のペイントの剥離や塗ムラ部分の切れ込みなどに、アポレンズならではのシャープさがうかがえます。

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≪作例4:常緑樹と山茶花ソニーα7RII、F5.6・1/500秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。冬の青空の中に繁茂する常緑樹の葉を狙ってみました。

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≪作例4a≫葉の部分を画素等倍に拡大してみました。絞りF5.6ですが、中距離であるためにフォーカスポイント前後にピントが来てますが、画像に崩れはありません。

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≪作例5:少年航空兵の像≫ソニーα7RII、F2.8・1/1600秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。背景のボケ具合を見るために絞りは1段絞り込みのF2.8としましたが、深度内に入っているところの石像の描写はムラなくシャープで、石像の背景の肩の高さまでにある樹木の葉のボケは丸く環を描いています。この写真をどの大きさまで引伸ばすか、拡大率によってもボケ具合は大きく見え方が変わってきます。

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≪作例6:古民家の前で≫ソニーα7RII、F2・1/160秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。絞りF2開放で、背景のボケ具合を見てみました。向かって左の目にピントを合わせていますが、女性は画素等倍まで伸ばすとあまりにも繊細に描写するので、嫌われますので画素等倍は控えました。背景のガラス部分が波打ってムラに見えるのは、平面性の悪い戦前のガラスだからです。

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≪作例7:昔の乾物屋さんにて≫ ソニーα7RII、F2・1/125秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。やはり絞り開放のボケ具合を見るための作例ですが、みごとに偏りのないボケが得られています。向かって左の目のメガネにピントを合わせてありますが、合焦部分はかなりシャープでクリアです。

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≪作例8:建設中の高層マンション≫ ソニーα7RII、F5.6・1/1000秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。建設中のマンションを下から上まで写し込もうと、さらに撮影可能な場所でぎりぎりまで下がりましたが、最上階上部のクレーンまでは50mmの画角では入りませんでした。撮影した後に、モニター上で見てみると、縦横斜め、円形、奥行きありとさまざまで、平面的なチャート撮影よりもしっかりと写真としての高解像を読み取ることができます。

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≪作例8a:建設中の高層マンション≫ 高解像を見るためにはどこを切り取るかあれこれ試したが、27Fの文字が見える所にしました。この場面は、たぶんプリントにした方が高解像であることはよくわかると思います。この時の最上階は30階を建設中でした。このカットあまりにもすごい描写なので、畳1枚の大きさにプリントする予定です。

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≪作例9:山茶花≫ ソニーα7RII、F2・1/1600秒、ISO100、-1EV、AWB、手持ち撮影。絞りF2開放で右下のメシベにピントを合わせてみました。バックの距離にもよりますが、口径食が表れています。

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≪作例9a:山茶花のメシベ≫ メシベ部分の画素等倍への拡大ですが、マクロレンズ的な描写を示しています。このカットもそうですが、基本的に現在のフルサイズミラーレスは高画素タイプなので、APOランターのようなマニアックなレンズを使う人は自分でトリミングすればいいわけです。

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≪作例10:ピラカンサスの実≫ ソニーα7RII、F2・1/1600秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。背景のピラカンサスの実のボケには方向性を感じますが、複雑に重なり合った画像だからでしょうか。このカットではあえて右後ろのボケを入れましたが、作例9と同じで、カメラ自体は必要以上の画素数があるわけですから、最終的にはトリミングしてボケ部分の強い描写部分はカットしてもまったく問題ない画質の範囲です。

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≪作例10:ピラカンサスの実≫ 絞り開放ですが、合焦部分を画素等倍までトリミングしました。まるでマクロレンズの描写です。

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≪作例11:落ち葉≫  ソニーα7RII、F5.6・1/500秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。いつもは、枯葉の葉脈を写して解像感を見ていましたが、新しく猫じゃらし(エノコログサ)を加えてみました。実は表面がヌッペリな被写体では解像感はなかなかわかりにくいですが、猫じゃらしのように細かいと、拡大すればズバリ解像力がわかります。猫じゃらしのほかにはサボテンの翁丸のような白い細い毛でおおわれているのも、解像力の判定はわかりやすいです。

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≪作例11:雑草に一輪の花≫  ソニーα7RII、F5.6・1/500秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。APO-LANTHAR 50mmF2はマニュアルフォーカスレンズですが、実はこのような場面では断然威力を発揮するのです。現在のミラーレス一眼のほとんどは、位相差検出とコントラスト検出を組み合わせたAFなのですが、このような場面でピントをAFで合わせるのはなかなか難しく、私の場合には撮影を途中で断念することも多々あります。もちろんMFに切り替えればいいのですが、AF性能も含めてカメラを見ているので、ついそのままAFまかせで、何度かチャレンジしてカメラの個体差としてあきらめるのです。
 

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≪左:「APO-LANTHAR 50mmF2」を「TECHART TZE01」マウントアダプターを介して「ニコンZ7」に装着してみました。右:APO-LANTHAR 50mmF2の絞りリングは、先端のリングを押し込みながら180°回転させるとF2~16までクリックのない無段階絞りリングとして動作でき、シネの撮影などで便利とされています≫

 しかし何でソニー用のレンズがニコンに取り付けるのでしょうか? ということですが、正月に出向いたカメラ居酒屋のお客さんに、先日の私のソニーα7RIVのレポートを読んだ人がいて、ソニー用シグマ45mm F2.8 DG DNコンテンポラリーの描写が気に入ったそうで、ニコンZ6用にシグマ45mm F2.8 DG DNを購入して楽しんでいる人がいたのです。ソニーのα7にシグマ45mm F2.8 DG DNならわかりますが、ソニー用のシグマ45mm F2.8 DG DNを「TECHART TZE01」マウントアダプターを介してわざわざニコンZ6で使っているのです。一般ユーザーにも進んでいる人がいるのですね、驚きました。

 というわけで私も、ニコンZ7にAPO-LANTHAR 50mmF2をつけてみたのです。デザイン的にはニコンZ7とマッチしてます。使ってみるとソニーα7とは動作は異なりますが、シャッターボタン半押しで距離リングを回転させていくと合焦時にはグリーンのフレームが点灯するのです。さらにタッチシャッターを押してフォーカシングしていくとグリーンランプ点灯でシャッターが切れるのです。ただ、やはりマニュアルですから、画面を最大限拡大してピントを合わせたいと考えると、精度的にどうかなと思うのです。絞り値表示、Exif記録の絞り値などは連動しませんでした。まぁ、使って問題はまったくないのですが、電子接点がフルに機能しないので、あまりお薦めの組み合わせではありません。ニコンZマウント用APO-LANTHAR 50mmF2の出現を待ちましょう。

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≪作例13:新宿ゴジラ通り≫ ニコンZ7、絞りF2・1/60秒、ISO100、-1EV、AWB。ゴジラの顔にピントを合わせてありますが、Z7は4,570万画素だから、50mmの画角だと画素等倍にトリミングすると歯の一部しか見えないのです。画質的には過去に撮影しこのシーンでは最高のシャープさを誇ります。また、シャドー部の文字の描写も良いです。f:id:ilovephoto:20200113224617j:plain

≪作例14:口径食と背景の点光源のボケ具合を見てみました≫ ニコンZ7、絞りF2・1/125秒、ISO100、-1.7EV、AWB。ボケ形状は合焦部までの距離、絞り形状、背後の点光源の位置によっても異なりますが、形状としてはごく普通の描写を示しています。

■ミラーレス機の標準レンズ

 2018年にニコンキヤノンからフルサイズのミラーレス機が発売されましたが、その時のうたい文句は、大口径マウントにショートフランジバックで高画質だったわけです。すでに先行していたソニーからはそのようなことはあまり聞かなかったことです。実際それぞれの社が、交換レンズをラインナップするにあたっては、大きく、重く、高価なものが続々と投入され、一般ユーザーが考えるミラーレスは小型・軽量であるということとはボディにはあてはまっても、交換レンズにはなかなかあてはまらないのです。結局、交換レンズが大きく、重くなったことにより、いまひとつフルサイズミラーレス化の動きには沿えなく、この先どのような展開がなされるのか楽しみです。

 そのようななかで最近の交換レンズの技術動向をWatchしていたら、キヤノンが2019年11月7日に人工蛍石結晶を採用したカメラ用交換レンズ「FL-F300mm F5.6」を1969年に世界で初めて一般消費者向けに発売し2019年で50周年を迎えたと発表したのです。またニコンも2020年1月7日に、2019年9月に発表していた「AF-S NIKKOR 120~300mmF2.8E FL ED SR VR」に加え、新しく「ニッコールZ 70~200mmF2.8 VR S」を2月に発売すると発表したのです。このニコンの2本のレンズは、EDレンズ1 枚、蛍石レンズ2枚に加えて、新開発のSRレンズ(SR:Short-wavelength Refractive)1枚を採用して優れた光学性能を実現したというのです。キヤノンの場合は新製品としての蛍石仕様の新製品レンズは発表されていませんが、やがて出てくるだろうと考えられます。このうちニコンのSRレンズは青色の波長を大きく屈折して色収差を抑えるものですが、キヤノンがすでに2015年に発表・発売していたBR光学素子も同種の考えをもつのではないだろうかと興味は大です。

 その点において「フォクトレンダーAPOランター50mmF2」は、特殊分散ガラスと非球面レンズを使いAPO仕様で50mm標準レンズをむりなく高画質化したというのは、この時点では先を行っているわけです。この先各社のフルサイズミラーレス用交換レンズがより高画質化に向かうであろうことは間違いないでしょう。コシナからのさらなるAPOレンズの出現も期待したいものです。  )^o^(


 

 

シグマfpを使ってみました。

  シグマからフルサイズのミラーレス一眼「シグマfp」が10月25日に発売されました。それも2018年の9月のフォトキナで発表されたように、ライカのミラーレス一眼ライカSLと同じライカLマウントを使う協業関係をライカパナソニックと結んだ結果の最初のボディなのです。その時点でシグマからは独自のフルサイズフォビオンセンサーを搭載して2019年には発売と予告されていましたが、その後3月のCP+の時点ではフルサイズセンサーのカメラは2020年に発売予定と変更されていたのですが、不意を突くかのようにように7月11日に突如としてフルサイズ2,460万画素、それもなんとベイヤーセンサーの「シグマfp」を発表したのです。つまりフォビオンセンサーのフルサイズ機は2020年発売で、ベイヤーセンサーのフルサイズ機を2019年に投入したのです。

 この時、私が紹介したFB記事への反響はすさまじいものがありました。私が書いたのは『やるねシグマ。エキサイティングだ。』この2フレーズだけ、あとは発表会での写真を4枚載せただけでした。これには多数の人が後に続いて投稿してくれましたが、その大半の人はfpの登場を好意的に受け入れていたのも印象的でした。

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≪シグマfpレンズキットの45mm F2.8 DG DN |Contemporaryをセットアップしたところ。このような場合通常はフードを外して撮影するのですが、本機の場合はフード共にデザイン加工されているので、両方を載せてみました≫

  そしていつものように発売日を待ち、早速fpと45mm F2.8 DG DN Contemporaryのキット販売品を入手してレポートを開始するべく準備を進めてきましたが、天候の不順なこと、さらにfpが一筋縄ではいかないカメラであることから、じっくりと考えながらレポートすることにしました。

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≪シグマfpを構えたところを上から撮影してみました。左手のひらでボディ下部を押さえ、左手の親指と人差し指でがっしりと挟み握ります。右手の人差し指はシャッターレリーズボタンを、親指は後ろダイヤルやOKボタンをの位置に、中指から小指まではボディ前面に置き、左右の手でしっかりと構えます。これでfpのボディがいかに小型か、さらに45mm F2.8 DG DNとフードと基本ボディがいかに一体化されているかお分かりいただけるでしょう。フードはレンズの操作リングに刻まれた平目ローレットよりピッチの粗いローレットが刻まれた約1mm厚のアルミ金属で、左右45°回転で脱着できます。昨今、ロック付きのフードが流行っていますが、いろいろとレンズ交換する身にとってはこのほうが素早く行え操作が楽です≫

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≪左:右側QS(クイックセットボタン)押し、背面液晶のメニュー画面を表示。これから先の細かい設定は後ダイヤルの左右上下押し込みと回転で設定できる。このあたりの細かい設定は、背面液晶パネルのタップ、スワイプで行えないのは残念ですが、タップによる撮影時のAFポイントの移動設定きわめて便利で、撮影後の再生画像のスワイプ、ピンチアウト・インが背面液晶で行えるのも便利です。右:カードはSDカードが使えます。バッテリーは専用のBP-51ですが、レンズ固定式のDPシリーズと同じなので専用ACチャージャーを含め共用できるのはありがたいです。なおfpはUSBのTypeA→TypeCの変換コードがあれば、パソコン、スマホ用充電器、バッテリーパック、車、飛行機などのUSBコネクターから充電できるのはうれしいです。

 もう2つうれしいこと、このボディ自社名の“SIGMAとは小さく背面液晶の右下に記してあるだけです。そしてボディ向かって左正前面にはfpと小さくプリントされているだけなのです。わざわざ社名を大きく表示しなくても外観を見れば、わかる人にはすぐシグマだとわかるのです。これは単にトップカバーに内蔵ファインダーの出っ張りがないからプリント位置が確保できないというようなことではなく、専用の付属ストラップにも同じ考えが貫かれていて、10ポイントぐらいの文字でタグ状にSIGMAと内側に控えめにプリントされています。ブランド名を背負って歩くのは嫌だという人は少なからずユーザーにはいるわけですから、こういう控えめな姿勢も評価されてよいはずです≫

 

 ■いつもの英国大使館正面玄関

 この場所の撮影は定点観測的に行っていて、春夏秋冬を通して青空の日、朝10時から10時半ぐらいの間に、英国大使館の正面玄関屋根中央直下のエンブレムにピントを合わせ、絞りF5.6に設定して撮影しています。撮影にあたっては、従来は三脚を立てていましたが、昨今のカメラではこのような状況下では手ブレすることもなく、手ブレ補正機能を含めたカメラの性能を知るということから、最近はすべて手持ちで撮影することにしていますので、手ブレ補正を効かせていない状態でfpも手持ちで行いました。

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≪作例1≫ 焦点距離:45mm、F5.6・1/400秒、ISO100、手持ち撮影。特に目立つところはないが、発色としては若干渋めな感じもするが、この場面での露出レベルの問題かもしれません。

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≪作例1a・英国大使館正面玄関≫ 作例1の屋根すぐ下にあるエンブレムをクロップして画素等倍で掲載しました。壁面に飛んだような描写もなく、ベイヤー配列2,400万画素イメージャーとしては十分な描写です。

 

■さまざまな場面での実写
 撮影は基本的に45mm F2.8 DG DN |Contemporaryレンズで行いました。これはfpがミラーレスであることから、ミラーレス用に専用設計されたレンズで行うのが最も性能を発揮できるからと思うわけです。

 とはいっても、シグマfpの描写評価をするのには、まず最初に大変難しいことにぶち当たりました。それは今回発売されたライカLマウントの45mm F2.8 DG DN |Contemporaryのレンズはきわめて個性的であり、遠い被写体つまり70cm~1mを超えた無限遠ではシャープで解像が高いのですが、近接距離になるとソフトな描写となるのです。レンズ交換式カメラの性能を語るとき、レンズの解像性能を無視して語るわけにいきません。fpの場合ボディ単独で考えるとベイヤー方式2,460万画素の描写ですが、45mm F2.8 DG DNだと無限遠に近い遠景で撮るか、近接で撮るかによってまったく解像性能が違うのです。もともとレンズ設計は一般的には無限遠で性能を発揮するように行うのですが、一眼レフの時代にはフォーカシング機構もわりと機械的な自由度があったようですが、フランジバックの少ないミラーレス一眼では、インナーフォーカスの採用などにより、機構的な制約もあり、薄型レンズでは近接撮影での描写性能を高めるのは難しいようなのです。

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≪作例2・新宿高層ビル≫ 焦点距離45mm、F5.6・1/640秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。ほぼ無限遠に近い距離のビル壁面を狙ってシャープさを見てみました。プログラムAEでの撮影ですが、F5.6というほどよい絞りが設定されていますが、この左右640ピクセル画面では見切れませんが、2,640万画素に対して、シャープさは十分であり、最上部の囲い部分からは立体感もほど良く感じさせます。

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≪作例2a・新宿高層ビル≫ 作例1のビルの屋上近くをクロップして画素等倍で掲載しました。立体感ある描写だというのはおわかりいただけるでしょうか?

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≪作例3・夜の国立博物館焦点距離45mm、F2.8・1/40秒、ISO2000、-2.7EV、AWB、手持ち撮影。夜景を絞り開放F2.8レンズで手持ち撮影するというのはどうだろうかと考えましたが、露出補正をマイナス側に加えたこともありますが、ISO2000と感度アップされて、ブレなく撮影できました。当然1カットだけの結果でなく数カットの中からのベストショットの抽出ですが、アングルは別にすれば1/40秒でかなり確立高くぶれていませんでした。ところでfpボディには手ブレ補正機構は入っていませんが、電子手ブレ補正機能が入っています。これは1ショットで4枚撮影し、画像合成でブレのない画面を作るというものですが、動きのある被写体には向かないでしょうし、出荷時の初期設定がOFFであることから使わないほうがよいのでしょう。手元にあるパナソニックルミックスS24~105mmF4ズームで焦点距離を可変させてプログラムAE時の動き方を見ていると、低輝度時のシャッター速度は、1/焦点距離・秒という約束事に対してかなり忠実であり、その速度をもってシャッター速度の変化は止まり、後は感度アップしていくということで45mmレンズでは実用上はあまり手ブレ補正機構の不足は感じませんでした。なお、今後の交換レンズには光学的な手ブレ補正機構が必要に応じて組み込まれる可能性もあるわけで、ボディ側のメニューにはON・OFFモードがあります。

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≪作例4・航空機のモニュメント①≫ 焦点距離45mm、F2.8・1/40秒、ISO2000、AWB、手持ち撮影。同じシーンを、ほぼ同時刻、同太陽位置、同照度の条件で、ライカLマウントアライアンスグループのルミックスS1Rで撮影したことがありますが、fpの場合は濃度分布もシャドーからハイライトまでバランスよく収まっていて、シャード部となる背景の樹木の葉もつぶれることなく描写されています。

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≪作例5・航空機のヘッド≫ 焦点距離45mm、F5・1/500秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。正午に近い太陽位置であるが順光の青空に銀色とオレンジの機体がまぶしいです。同じシーンを、ほぼ同時刻、同太陽位置、同照度の条件で、ライカLマウントアライアンスグループのルミックスS1Rで撮影したことがありますが、画素数が3,730万画素、2,460万画素の違いとしてはありますが、大きく変わる部分はありません。

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≪作例6・航空機のモニュメント②≫ 焦点距離45mm、F4・1/2000秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。晴天の青空を背景に手前右の複葉機のモニュメントにピントを合わせてあります。ほどよい露出成果ですが、わずか画面周辺光量の低下がありますが、このあたり好みの問題でもありますが、フィルム的な描写であって良いという人もいるでしょうし、電子的な補正で変わる部分でもあるわけです。いずれにしても周辺光量の低下は、CMOS撮像素子が裏面照射タイプであることからかなり抑えられていると考えます。このあたりの現象は、レンズなのかボディなのかということではどちらもが関係してでてきた画像なので、どちらがどうだとはいい切れません。レンズ固有としては、背景左側のアンテナを60~100%に拡大するとボケに暴れがあるのは気になりますが、実際はそこまで大きくするかどうかは別問題です。

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≪作例7・紅葉≫ 焦点距離45mm、F4・1/320秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。モミジの紅葉を狙って背景のボケ具合を見てみましたが、クセのあるボケは作例5と同じ傾向です。

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 ≪作例8・池のカモとススキ≫ 焦点距離45mm、F5・1/500秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。遠景の描写として、池の対岸にあるススキの穂に焦点を合わせていますが、この左右640ピクセルではわかりませんが、手前のカモもススキの穂もシャープに再現され、背景の樹木もほどよく描写されています。

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≪作例9・朝日に輝くクモの巣≫ 焦点距離45mm、F3.2・1/200秒、ISO100、+0.3EV補正、AWB、手持ち撮影。道を歩いていて道路わきの植栽にクモの巣がかかり、朝日に輝いていたのでこれだとばかりに、シャッターを切った内の1枚です。この写真に象徴されるのですが、このfpシステムの交換レンズの45mmF2.8DG DN Contemporaryの長所であり短所でもある描写なのです。このレンズはソニーの7RⅣでも書きましたが、シグマのHPのSEIN・大曽根語るでは描写として『ボケを美しくなだらかにするには球面収差が鍵となる。光学設計者からは、単に球面収差を「補正」するのではなく、球面収差を明確に残しつつしかも高度なコントロールを行い、特にボケが顕著に出やすい中~近距離では明確に球面収差によるフレアーを発生させ像を滲ませる、という手法が提案された』というのですが、この言葉に惑わされていろいろと撮影しさまざまな場面で考えましたが、最後にわかったことはミラーレス一眼において、パンケーキ的な薄型レンズの設計は難しく、いわゆるレンズ設計のセオリーを超えて近接撮影を可能にすると画質が劣化するということを利用して、近接時に球面収差によるフレアの発生を逆に特徴としたのが45mmF2.8DG DN であるわけです。したがって、このシーンでは実は穴の下にクモが写っているのですが、撮影した人ならかろうじて探し出せる描写なのです。この場面において、撮影した私からすると朝日に輝く白いベールのようなクモの巣の上に小さなクモがという所を狙ったので、その点においては短所といえるでしょう。

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≪作例10・髭おやじ先生≫ 焦点距離45mm、F2.8・1/50秒、ISO640、AWB、手持ち撮影。こちらは“髭おやじ”こと元日大芸術学部写真学科教授の鈴木孝史先生です。思いっきり近づいて、目にピントを合わせての1枚ですが、“髭おやじ”らしくヒゲはシャープな感じがして、肌はホワッと柔らかく描写され、とても70年近くの歳月を刻んだ肌には見えなく、すべっとした描写で好感持てます。事実、先生からは「ずいぶんボケの大きなレンズだな、でもこれなら公開されてもいいよ」と1発でOKをいただきました。確かにこのような人物ポートレイトには効果を発揮するレンズであり、特に女性の撮影には好まれること間違いない描写です。これは、まさに45mmF2.8DG DN の長所であり短所ではないわけです。その点においてはシグマ設計陣の狙いはまさにこのあたりにあるのでしょう。

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≪作例11・小さな紅葉(ハツユキカズラ)≫ 焦点距離45mm、F2.8・1/50秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。絞り開放F2.8、まずまずの近接ですが、このようなすべすべしたところの描写では解像感はなかなかわかりにくいのです。背景のアウトフォーカスした部分の描写は柔らかくいい感じです。

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≪作例12・わが家の紅葉≫ 焦点距離45mm、F6.3・1/640秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。作例11よりは近づいて撮影していますが、絞り込まれているので描写は解像度が増しています。ただどのくらいシャープかというともうひとつでありますが、この状態で印刷に使ったり、A2ぐらいに伸ばしても比較でもしない限りまったく問題ないと思うのです。

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≪作例13・わが家のお宝“アルマジロ”≫ 焦点距離45mm、F5.6・1/40秒、ISO100、+1.3EV補正、AWB、手持ち撮影。光沢感のある硬い表皮部分と毛が混在していますが、描写の感じはリアルです。かなりの昔のブラジル土産で、アルマジロとはモグラのようなもので、ペットであり食用にも供されたというのです。

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≪作例14・赤いバラの花_2.8≫ 焦点距離45mm、F2.8・1/125秒、ISO125、-0.7EV補正、AWB、三脚使用。ほぼ最短の24cmらいで撮影してます。このあたりの描写が45mmF2.8DG DN の特徴なのです。

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≪作例15・赤いバラの花_5.6≫ 焦点距離45mm、F5.6・1/40秒、ISO125、-1EV補正、AWB、三脚使用。作例13とほぼ同じ状態で絞りF5.6に絞り込んでみました。左右640ピクセルVGAではわかりにくいですが、近接でもF5.6に絞り込めば解像度は格段に上がります。

■マウントアダプターでシグマSAマウントレンズを使う

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≪シグマ18~35mmF1.8DC|Artを装着≫ SAマウントの18~35mmF1.8DCにSA-LマウントアダプターのMC-21を介して取り付けました。DCはシグマのAPS-C用レンズであるのでこの状態で組み合わせると自動的にAPS-C画面となるのです。ちなみにfpフルサイズの時は6000×4000ピクセルですが、APS-Cの時は3840×2560ピクセルとなりA3ノビぐらいまでは拡大してプリントできるデータ量です。

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 ≪作例16・赤いバラの花_シグマ18~35mmF1.8DC|Art≫ 焦点距離35mm、F1.8・1/320秒、ISO100、-1EV補正、AWB、三脚使用。作例13とほぼ同じ状態で18~35mmF1.8DC|Artで絞り開放F1.8で撮影しました。左右640ピクセルVGAではわかりにくいですが、拡大してみると近接で絞り開放という撮影ではありますが、浅さい深度の中にもArtラインらしいシャープな画像を確認することができます。

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≪作例17・サンタクロース_シグマ18~35mmF1.8DC|Art≫ 焦点距離35mm(52mm相当画角)、絞りF1.8・1/50秒、ISO160、-0.3EV補正、AWB、手持ち撮影。サンタクロースの右目にピントを合わせていますが、ズームレンズであってもF1.8と大口径であるためにボケは浅く、柔らかく描出されています。

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≪作例17・周防大島の日の出_シグマ18~35mmF1.8DC|Art≫ 焦点距離32mm(48mm相当画角)、絞りF1.8・1/8000秒、ISO100、-0.3EV補正、AWB、手持ち撮影。前の晩にサンタクロースを絞り開放で撮影して、そのまま朝、日の出だと飛び起きて撮影したらなんと風景写真をF1.8という大口径で撮影してしまいましたが、撮影後に気づき拡大して見ましたが、とてもF1.8開放とは思えない描写でした。

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≪作例17・山口県柳井の金魚ちょうちん_シグマ18~35mmF1.8DC|Art≫ 焦点距離35mm(52mm相当画角)、絞りF4.5・1/500秒、ISO100、+0.7EV補正、AWB、手持ち撮影。金魚ちょうちんにピントを合わせていますが、VGAではわかりにくいですが、金魚の生地の質感も細かくでています。

 

■LマウントアライアンスのルミックスSレンズを使ってみました

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≪左:“シグマfpにルミックスS24~105mmF4”、右:“ルミックスS1Rにシグマ45mm F2.8 DG DN Contemporary”をそれぞれ装着≫ どちらもいい感じで装着できてます。シグマ18~35mmF1.8DC|Artの時もそうでしたが、太い・長いレンズをしっかりホールドして、右手親指でフォーカシングポイントを決めて、軽くシャッターを切るという撮影は意外とブレないのです。これはちょっとした発見でした。

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≪作例20・裏山の紅葉_ルミックスS24~105mmF4≫ 焦点距離93mm、絞りF5・1/400秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。モミジの葉の紅葉ですが、あえて順光の状態で撮影し、背後のボケの具合を見てみました。背後のボケは大きく拡大してみても、ズームレンズらしい、おとなしい描写です。

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 ≪作例21・陽だまりの花_ルミックスS24~105mmF4≫ 焦点距離105mm、絞りF6.3・1/640秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。陽だまりの土手に咲く花。右後ろの赤いボケはは1輪だけ咲いている花ですが、その下の花にピントを合わせてあります。

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≪作例21a・陽だまりの花_ルミックスS24~105mmF4≫ 作例21のピントの合った部分を画素等倍に拡大してみました。大変シャープであることがわかりますし、2,400万画素の描写はこのクラスまでの作品には必要十分な解像だと思うのです。

 

■ライカLマウント用アダプターを使って距離計連動ライカ用レンズを使いました

 実は、ミラーレスカメラの元祖は距離計連動のライカなのです。そして初期のライカ用広角レンズでは、デジタルで使うと周辺光量が極端に低下したり、周辺がマゼンタ色に偏色したりして、モノクロ変換して使うしかなかったのですが、撮像素子のCMOSに裏面照射タイプが登場すると、そのような問題はほとんど消えてしまったのです。シグマfpも裏面照射タイプCMOSなのですが、従来ライカ型のレンズでそのような描写をするレンズの代表例としてフォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5ASPH.(1999年)とズミクロン35mmF2(第2世代、1969年)、キヤノン25mmF3.5(1969)を使ってみましたが、最も広角のスーパーワイドヘリアーだけ作例を載せてみました。この15mmは、1999年に発売されたコシナの超広角レンズですが、最新モデルはデジタル時代に合わせて光学系は一新されていますが、ここに用意したのは初代のライカスクリューマウントモデルです。当時は、ホロゴン15mmF8が100万円近くもしていたのに対し、10万円未満で、明るく、周辺光量補正フィルターも不要であることなどから、一大ヒット商品となりました。その初代スーパーワイドヘリアー15mmF4.5ですが、ライカ判フルサイズデジタルのライカM9がでたときには、周辺の光量が落ち、しかもマゼンタ味に色付きするということで、モノクロにしか使えないと判断されたのですが、マウントアダプターを使った最新のfpではどうでしょうか。

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≪左:フォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5ASPH.(1999年)、右:ズミクロン35mmF2(第2世代、1969年)≫

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≪作例17:YS-11フォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5ASPH.≫ F8・1/250秒、ISO100、AWB、三脚使用。このレンズの名誉のためにいいますと、フィルムで使うとここまで周辺の光量落ちはしませんでした。でも、裏面照射タイプCMOSを使ったfpでの周辺光量落ちは少ないほうです。オールドレンズファンには朗報といえる結果でしょう。

 

■電子シャッターのローリングシャッター現象は?

 シグマfpは機械的シャッターのない、全部電子式シャッターだけで構成されています。そこで気になるのはローリングシャッター現象ですが、いつもと同じようにチェックしてみました。

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≪作例18:なかなか適切には撮影できませんでしたが、過去の例から見るとfpのローリングシャッター現象は軽微だと考えられます。もちろんいつもと同じ場所でも、レンズ焦点距離、撮影距離、自動車のスピードなとから変わるものですから、問題にするほどではないということですが、やはり極端に早く近くで移動する被写体は苦手と考えたほうがよいと思います≫

 

■終わりに

 しかし、これだけ外観デザイン的にスチルとシネを等価に両立させたデジタルカメラは、過去にあったでしょうか。そしてカメラすなわちハードとしてはスチルとシネの両立はあったとしても、ユーザーとしては両立はありうるだろうか、などと考えながら本機「シグマfp」を使ってみました。一部の物知り顔の人は、fpはシネ用のカメラであってスチル用のカメラではないなどと声高らかに言い放っていますが、実際どうなのだろうというのが、僕のレポートのチェックポイントなのです。

 約1か月半にわたって連日使い続けた結果、そのようなことはまったくなく、通常のスチルカメラとして過不足なく使えるフルサイズの小型デジタルカメラなのです。もしシネ用のカメラであるなら、各操作部などに違和感があったり、操作しない部材などが邪魔になってくるはずですが、実際は、「CINE/STILL」切替スイッチ、「REC」ボタンの他は、GUIを含めまったく各部がスチルのためにあるという感じで、むだな機構がないと思わせるのです。これも、基本的な部分以外はすべて削ぎ落としたデジタルのボディだからそのように感じたのでしょう。結局、僕はスチルカメラとしてだけでfpを使ったのですが、それでも十分満足できたということなのです。つまりfpはシネカメラをスチル用としたものではないわけです。

 さらにfpの特徴は、ハードとしての拡張性に対し、従来は自社ですべて完結させるのが一般的でありましたが、昨今はソニー富士フイルムなどに見るように、マウント情報を公開し一部システムの製造をサードパーティーに依存するという手法をとっているのですが、シグマfpでは、ボディの3Dデータを公開し、ある意味でユーザー自身にもシステム展開を任せるという手法を取っているのも新しいことです。事実、僕の周りでは、発売と同時にfpを手にして、自分用のストラップを製作して装着しているような人もいるのです。時間が経てば、fpをベースにしたさまざまなシステムアクセサリーが企業、さらには個人レベルからも登場するでしょう。

 なお今回のレポートで一番苦労したのは、45mm F2.8 DG DN Contemporaryの存在です。結局、レンズ描写がカメラの描写を決するのですが、前述したようにその特性を良しとするのか、どうかだと考えるのです。このあたりは、すでに6,100万画素のソニーα7R4IVで同じ45mm F2.8 DG DN ContemporaryのソニーマウントFEレンズを使っているので、45mm F2.8 DG DN の画素等倍で見たりできる具体的な詳細は、そちらの方もぜひご覧ください。

 そして改めてデジタルにおけるレンズ交換式カメラの画質とは、ベイヤー方式の撮像素子を使ったボディの画質とは、レンズの画質とは、などということを考えてみるのも意義あることだと思うのです。そして来年登場が予告されている、フルサイズフォビオンセンサー搭載のボディがでてきたときに、改めてデジタルカメラの画質とはと考えてみたいのです。 (^_-)-☆

 

■おまけ

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≪去る11月7日にシグマは、フランスのパリで開かれた「サロン・ド・ラ・フォト」の会場で特設ステージを設け、新製品シグマfpのトークショーを開きました。シグマが、フランスでこのようなことを行うのは初のことだそうです。右からユーザーの質問に答える山木和人社長、大曽根康裕商品企画部長、シグマフランス・プロべ氏。いかにシグマがfpに力を入れているかおわかりいただけるでしょう≫

6,100万画素「ソニーα7R IV」をサードパーティレンズで使ってみました(タムロン/シグマ/サムヤン)

 

 この記事は作例を画素等倍まで拡大して見られるように京都メディアジョイのサーバーにアップされています。そちらをご覧ください。

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 9月6日に発売された「ソニーα7R IV」は、35mm判フルサイズでは最高の6,100万画素です。画素数の増えた4世代目のα7Rボディはどんな写りを示すか、ソニーFEマウント用でAF対応のサードパーティーレンズで使って試してみました。カメラの実力が活かされるのか、レンズの実力が発揮されるのか、いつものように使ってみました。

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 取り上げたレンズは、いずれもミラーレスフルサイズ専用設計で、左から、サムヤンAF35mmF2.8FE、シグマ45mmF2.8DG DN、タムロン17~28mmF2.8 DiIII RXDです。このうちサムヤン35mmF2.8は2017年8月の発売と少し時間が経っていますが、シグマの45mmF2.8 は2019年7月の11日に発表されたfpと同時に発表され、まずはソニーマウントで発売というわけです。タムロン17~28mmF2.8はタムロン最新のモデルで、やはりこの7月発売ですが、予想を大幅に上回る予約で生産が追い付かないとお詫びをだすほどの人気レンズです。すでにどちらも発売されてから時間が経過してますが、改めて6,100万という高画素で使ったレポートです。

 とはいっても、ここは「ソニーα7R IV」が発売されたことによるレポートですので、まずはボディそのものから見てみましょう。α7R IVは何が新しいのか、ソニーによれば『ライカ判で初の有効画素数約6100万画素、最高約10コマ/秒高速連写、高速・高精度AFを小型ボディに凝縮したフルサイズ一眼』ということになり、このためには『新規シャッターユニット、衝撃吸収ダンパーや進化した手ブレ補正など、微細な振動も許されない高解像撮影を支えるために細部にわたって見直しました』というわけです。

 高画素だとデータ量が増えるので連写速度は厳しくなるでしょうし、さらにボディ内でシャッター動作により振動があるとカメラブレを起こすことにもなり、いまやあたりまえの考え方ですが、初期の高画素タイプ一眼レフではさらにミラーショックなども加わり、高画質を達成するのに苦労した部分です。また低感度時は約15段のダイナミックレンジが得られるというのは裏面照射タイプCMOSと画像処理エンジンの能力であり、5.5段の補正効果を発揮する光学式5軸ボディ内手ブレ補正機構などと併せて、カメラとしての機能進歩は地味ではありますが、ユーザーとしてはその地味な部分の進化が大いに気になるわけでして、以下それぞれ3社のレンズを使っていくなかでレポートします。

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≪左:基本的にα7シリーズのデザインは正面から見る範囲では大きく異なることはなく、最新のα7RIVであることを明記してあるのはボディ左肩の上の銘板です。表面の加工はざらっとした感じで、ホールディング性も良く、グリップするとわずかにボディが厚くなったのがわかります。

右:SDカードスロットは2カ所。上がスロット1で、下がスロット2です。ここでの注目点は、ストラップの文字が刺繍になったことです。従来ソニーのカメラストラップはプリント文字しかなかったのですが、刺繍を採用することになったのは大きな違いです≫

 では、さっそく使ってみましょう。まず気づいたのが、ボディにレンズを脱着するのにかなり固いのです。実は前から思っていたのですが、α7Rから、α7R II、α7R III、α7R IVと進化するごとに徐々に固くなっているのです。この間にα9も使いましたが、α7R IIIとα7R IVの中間ぐらいの感じでした。しかし、今回使用したレンズをα7R IVに付けるといずれもかなり固く、両手でボディとレンズをしっかり握っても取り外すには僕自身の握力が弱くなっていることもありますが、かなりの力を要します。これはボディの剛性を増すことと同時に公差を狭めているかもしれませんが、α7R IVのレンズ交換の固さは半端じゃありません。もちろん交換レンズメーカーによっても若干その強弱は異なり、サムヤン→ タムロン→ シグマの順で固くなります。ここにたまたま手元にあるソニー純正(CZ16-35mmF4ZA)を入れると、ソニーがトップに柔らかいのですが、これは私の手元にあるレンズだけのことではないと思うのです。いずれにしてもα7R IVでのレンズ交換には力がいります。

タムロン17~28mmF2.8 DiIII RXDで使う

 タムロンソニーFEマウント用レンズとして、2018年5月に発売された「28~75mmF2.8 DiIII RXD」に引き続くシリーズレンズともいえるもので、従来このクラス前後のズームレンジを持つソニー・ツァイスのバリオテッサーFE16~35mmF4ZAから比較すると、ワイド・望遠端とも少し抑え気味ですが、ズーム全域でF2.8と大口径でコンパクトしかも軽量な鏡胴には驚きます。

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≪左:ボディに装着、中:マウント基部を見ると、外周のすぐ内側に防塵・防水のためでしょうか黒いゴム製のひだがついています。右:専用の花形フードを付けてみました。フルサイズ用とはいえ、小型であるために撮影時は苦になりませんでした≫

■いつもの英国大使館正面玄関

 この場所の撮影は定点観測的に行っていて、春夏秋冬を通して晴天の日、朝10時から10時半ぐらいの間に、英国大使館の正面玄関屋根中央直下のエンブレムにピントを合わせ、絞りF5.6に設定して撮影しています。撮影にあたっては、従来は三脚を立てていましたが、昨今のカメラではこのような状況下では手ブレすることもなく、手ブレ補正を含めたカメラの性能を知るということから、最近はすべて手持ちで撮影することにしています。

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 ≪焦点距離:28mm、F5.6・1/640秒、ISO100、AWB≫ 前日雨、午後から曇りの合間の晴れ間ですが、天候には恵まれました。まずは、タムロン17~28mmの最望遠側焦点距離28mm時を乗せました。直線性も良く、この画面からはディストーションなどまったく感じさせませんし、周辺の光量が低下するというのもありません。レンズに目盛られている、広角側17mm、20mm、24mmも撮影しましたが、ここでは28mmだけとしました。画面の各部を見てみてもこれといった難点はありません。左側のオレンジ色のポールの発色が幾分濃く感じますが、これはソニーの一貫した色づくりによるものです。

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 ≪上の写真を画素等倍まで拡大した画像≫広角だとこれから紹介するシグマとサムヤンは撮影倍率が高くなりますので、より解像感が高く感じるかもしれませんが、撮影距離が同じなので、そのようなことになります。この等倍画面からわかることは、6,100万画素にもしっかりレンズ性能がついていってることで、エンブレム表面の石調子が飛んでなくきれいに描出されているのは、ダイナミックレンジが15段と広いといっているα7R IVならではの性能が多分に影響しているようです。

■ランダムな被写体で

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≪ホテル、焦点距離:17mm、F6.3・1/160秒、ISO 100、AWB≫ 最広角端の17mmでの撮影ですが、青空の部分も光量落ちはないし、ほぼ逆光で、露出の設定の仕方にもよりますが、右側ビル壁面のハイライト部分は飛んではいますが、補正なしの状態でも玄関ロビーから出てきた人もつぶれなく描出され、ビル壁面左側もきれいに描出されています。左壁面の奥の方を画素等倍まで拡大するとわずかに色収差の影響がでていますが、アウトフォーカス部分でもあり、実用的にはまったく無視できるレベルです。

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半蔵門の御屋敷、焦点距離:28mm、F7.1・1/200秒、ISO 100、AWB≫中央の樹木にピントを合わせていますが、拡大すると1枚1枚の葉が必要十分に分離して見えます。

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ノウゼンカズラ焦点距離:28mm、F4.5・1/80秒、ISO100、AWB≫ ビルの飲食店の店頭に咲くノウゼンカズラの花です。このレンズは、ワイド側で19cm 、テレ側で 26cmの近接撮影ができるというもので、かなりマクロ的な撮影もできます。このノウゼンカズラの場合には、28mmで撮影ですが、最も近接できるところまで近づいてこの範囲が写りますから、マクロレンズ的な使い方も十分できました。この画面からではわかりませんが、雌しべを画素等倍に拡大すると、胞子の粒々がきれいに分解して見えるほど解像力は高いです。

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クヌギのどんぐり、焦点距離28mm:F8・1/320秒、ISO100、AWB≫ 逆光状態で木のテーブルの上に並べた中央のどんぐりにピントを合わせてみました。左右640ピクセルの画像ではわかりませんが、フルピクセルで画素等倍に拡大すると左背後の葉の葉脈まで描出される解像度をもっていることがわかり、背後の草のボケ味もクセがなく、テーブルのエッジの直線性もまずまずで好感持てる描写です。ボディの側から見ると、シャドー部も拡大するとわかりますが、つぶれていなく低感度時は約15段のダイナミックレンジが得られるというのは、このあたりをいうのでしょう。

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≪ほっこり広場にて、焦点距離24mm:F6.3・1/160秒、ISO100、AWB≫ 夏草の生い茂る中のベンチとテーブル。人はいませんが、人の温もり感じさせる場所です。画像を拡大して見ると、草の1本1本が解像している均質のシャープさには驚きます。

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≪八国山のきのこ、焦点距離28mm:F2.8・1/120秒、ISO50、AWB≫ 山の麓を歩いていたら、切り株にきのこが自生していたのでクローズアップ撮影。何も考えずにフレーミングとピントだけを確認しましたが、ブレずに高解像に撮影できました。まさにカメラとレンズの合体で撮影できたというわけです。

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≪国宝正福寺、焦点距離:28mm、F8・1/80秒、ISO 100、AWB≫かつてこのシーンでは屋根に吹かれた杉板の重なった目にモアレが必ず発生した時期もありましたが、今回のα7RIVとの組み合わせでは、タムロン、シグマ、サムヤンのいずれもモアレの発生はありませんでした。

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≪わが町の富士山頂上のケヤキ焦点距離26mm:F6.3・1/160秒、ISO50、AWB≫ 同じ場面をかつて、CZ16~35mmF4で撮影したことがありますが、中央ケヤキ大木の右下枯れ木の枝が色収差の影響か赤くなりました。カメラは7RIIでしたが、α7RIVとタムロン17~28mmF2.8 DiIII RXDの組み合わせではそのようなことはありません。拡大して見ると木々の葉はきれいに分離して見えることは当然のことでした。

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≪ご自身の作品「Player and Alter」の前に立つアーティスト小野サボコさん、焦点距離17mm:F2.8・1/30秒、+0.7EV補正、ISO500≫ 表面を細かく凹凸に加工されたアルミ箔の前に立っているので、明らかにアンダーになるだろうと+0.7の補正を加えてみましたが、露出補正なしでも拡散光状態なので反射が多いためでしょうか顔はつぶれることなく、まずまずの結果が得られました。(Roonee 247 fine artsにて)

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≪夜のゴジラ通り、焦点距離:28mm、F2.8・1/15秒、ISO 50、AWB≫カメラ操作に慣れていないので、いつの間にかISOオートにしていたはずが、ISO50にマニュアルセットされていました。気づいた時には一瞬すべて撮影し直しかと思いましたが、みごとブレないでピントが合っているのです。ということでゴジラにピントを合わせてありますが、画素等倍にしてみるとびっくりするほどのシャープなのです。手ブレ補正機構の働いたカメラもすごいし、レンズもすごいといったところです。左の中央には海の家(かつてはマリンの家)と書かれた看板が見え、当時のマスターKさんの写真もあります。縁があって何度か通いましたが歌舞伎町にも40年ぐらい変わらない店があるのには驚きました。

 ここにはタムロン17~28mmF2.8 DiIII RXDで撮影の代表的な作例だけ掲載しましたが、使っていてズーム全域でF2.8という性能をもち、小型・軽量で描写特性も良いなど、素晴らしく好感を持てるレンズです。今回このレンズをα7RIVで使うと公言しましたら、2人のプロカメラマンから声かけられました。1人は、明るくても小型で、描写も良く安いというのです。もう1人は女性でAPS-Cのボディで使いたいというのです。APS-Cで使うと25.5~42mmレンズ相当の画角となるわけですから、それはそれで使いやすいわけで、小型レンズならではの発想でしょう。とはいっても、すべてがベストかというとそうではなく、ズームレンズとして広角・望遠端の歪曲はわずかながらあるのも事実です。ただこのような場面に遭遇するのはきわめて少なく、日常の撮影では気にならない範囲です。いずれにしても注文待ちという現実を垣間見た気がします。

●シグマ45mmF2.8DG DNで使う

 昨今のシグマレンズでは、Artレンズが多く知られ人気ですが、この45mmF2.8DG DNは 、❝Contemporary❞というグループに属するレンズで、シグマによると『最新のテクノロジーを投入、高い光学性能とコンパクトネスの両立で、幅広い撮影シーンに対応するハイパフォーマンス・ライン』だそうで、Art、Sportsなどのラインに比べると少しわかりにくいですが、コンテンポラリーの意味からすると現代的なとか言うことになるのでしょうか。とはいっても、このレンズは7月11に発表したシグマ初のベイヤー方式フルサイズセンサーを搭載した「シグマfp」と同時に発表されたもので、ソニーマウント用にfpボディより先にソニーマウントで発売されたのです。

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≪左:α7R IVボディに装着。レンズ先端のローレットはマニュアルフォーカスリングで、その左側にはAポジション付きの絞りリングがあります。絞り値はF2.8~22までで、1/3刻みでクリックストップが効くのです。フードは約1mm厚のアルミ金属で、外側は平目のローレット加工が施され、内側には反射防止の溝が円周状に刻まれています。装着は位置合わせして45°の回転でクリックストップし、取り外しボタンはなく、単純にその逆回転だけで行え、ひっくり返してそのままレンズ本体にかぶせて収納できます。

右:カメラを構えてレンズ左側側面にはAF/MF切替のフォーカススイッチがあり、その上にはコンテンポラリーを示すⒸのマークが銀色に輝いています≫

 ご覧のように、レンズ外観からはオールメタル仕上げでメカメカな感じで直線を主体にして仕上げられています。このうちレンズ側のAポジション(AUTO、AE)と1/3段刻みの絞りリングは、ボディ側のモードダイヤルをA(絞り優先AEマニュアル露出)にセットした時に機能し、プログラムAE、シャッター速度AEに設定の場合には絞りリングはどの位置にあってもボディ側から制御されます。

■いつもの英国大使館正面玄関

 撮影はレンズを手にした日が遅く、タムロンとは別の日に撮影しましたので微妙に異なりますが、天候、時間、絞り値、フォーカスポイントなどすべて同じです。

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 ≪焦点距離:45mm、F5.6・1/800秒、ISO100、AWB≫ 午前中は曇りの予報でしたがうまく晴れて青空となり、午後から曇りとなりましたが撮影の天候には恵まれました。左右640ピクセルのこの画像から見えることは、だいたいの色調と天候の具合ぐらいでしょうか≫

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 ≪上の写真を画素等倍まで拡大した画像≫すでにタムロンの項で述べていますが、焦点距離が異なると撮影倍率が異なるので、焦点距離が長いほうが解像的には有利です。さてこの解像度は、過去同一条件で撮った中ではトップクラスの画像となりました。もちろんα7R IVの6,100万画素と45mmF2.8DG DNレンズのなせる業だと考えますが、過去の例からするとこの条件を超えているのは、シグマのクアトロHと35mmF1.4DG HSM Artであるというのもなんか皮肉なものです。このあたりの評価にはそれぞれ考えがあるでしょうが、京都MJの「ライカに始まりライカに終わる」のバックナンバーを引き出してもらえれば幸いです。

■ランダムな撮影

 さてこのレンズはシグマのHPのSEIN・大曽根語るでは描写として『ボケを美しくなだらかにするには球面収差が鍵となる。光学設計者からは、単に球面収差を「補正」するのではなく、球面収差を明確に残しつつしかも高度なコントロールを行い、特にボケが顕著に出やすい中~近距離では明確に球面収差によるフレアーを発生させ像を滲ませる、という手法が提案された』となっていて、絞り効果を効かせなく、開放でフレア成分が多いというと私が知る限りでは、過去に2本のレンズがあります。1本は、ヘクトール73mmF1.9(3群6枚構成、1932年)、もう1本はメディアジョイ SOFT type1:90mmF2.8(1群1枚構成、シグマが設計製造したとメディアジョイから聞いています)の2本です。この2本は、いずれも開放で使うとフレアがバリバリでボケボケの感じなのですが、ところが細部を拡大すると絞り開放でも素晴らしく解像力が高いのです。つまりどちらもソフトフォーカス系、絞り込むことによって、通常のレンズ描写になるというのですが、シグマの45mmF2.8DG DNでは、撮影距離が短いとフレアが発生し、0.7~1mあたりから解像の高いコントラストある画像が得られるというのです。絞り効果でなく、撮影距離によってフレアが制御される設計だというのが、クラシックレンズでなく、現代のレンズであるというわけです。レンズ設計のことはわかりませんが、像面の湾曲にも関係あるのではということもありますが、まさにコンテンポラリーな現代レンズなのでしょう。そのあたりを念頭に置き、さまざまな場面で撮影した写真をお見せしましょう。

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≪夕暮れの新宿モード学園焦点距離45mm、F2.8・1/50秒、ISO160、AWB≫ 絞り開放場ですが、画素等倍に拡大して見ても、モード学園ビルの窓の輪郭もしっかりとして解像しています。とはいっても固い描写というわけではなく、全体的には柔らかな調子再現という感じです。

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≪西武園大観覧車、焦点距離:45mm、F8・1/400秒、ISO100,、AWB≫ さすが絞りF8まで絞られるとシャープになります。解像力は絞り開放より数段絞ったF8、F11あたりで最も高くなるといった、昔からの法則通りですね。観覧車の1つ1つを画素等倍まで拡大して見ると、中にいる人が識別できるほどの解像度です。6,100万画素とレンズの組み合わせででてくる解像性能です。

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≪ボケの感じを見る、焦点距離45mm:F3.5・1/80秒、ISO100、AWB≫背景のボケ味を調べるために右の花のつぼみにピントを合わせ、撮影距離は約30cmだったと思います。確かに、撮影距離が短い部分は描写が柔らかいようです。背景の女性は、柔らかなボケにとけ込んでしまいました。

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サルスベリの花、焦点距離45mm:F6.3・1/250秒、ISO100、AWB≫サルスベリの花が草の上に落ちていました。コンパクトやミラーレスなどのコントラスト検出のカメラだと、通常このような場面では花にピントがいかずに、背景に合うのですが、花びらが大きかったせいかしっかりとピントを合わせることができました。かなり近接していますが、合焦した部分はシャープです。

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≪枯れ木にツタ、焦点距離45mm:F5.6・1/200秒、ISO100、AWB≫ 枯れ木に絡まったツタにピントを合わせ、背景からぐっと浮き上がった感じを狙ってみました。ピントが合った場所のシャープさはなかなかですが、背景の樹木のボケ具合を見てください。特に葉の間から見えるボケはこの左右640ピクセルでも確認できます。木漏れ日を背景に絞り開放、近距離でフレアを発生させたポートレイト撮影などに良いかもです。

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クヌギのどんぐり、焦点距離45mm:F7.1・1/320秒、ISO100、AWB≫ まったくの逆光状態ですが、同じ場面を撮ったタムロンと比較すると鮮鋭度は別にして、発色とコントラストがわずかに違うという感じですが、焦点距離の違いは背景の草のボケ具合が大きく異なります。

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≪スタジオBT深谷さん、焦点距離45mm:F2.8・1/60秒、ISO100、AWB≫  中古カメラ市で今若い人に人気だというフィルムカメラを持ってもらいました。近距離で球面収差を残した描写とは、こういう場面をいうのでしょうか。このカットだと、絞り開放で、前ボケも、後ボケもわかります。ここまで人物を近接すると、カメラが自動認識して瞳AFとなりました。実際は、向かって左の目を認識し合焦しています。ピントから外れた髪は柔らかな描写をしています。ボケはきれいでも顔は見にくいなんて言わないでくださいね。

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西武新宿駅前の大道芸、焦点距離45mm:F2.8・1/3200秒、ISO32000、AWB≫  AFで演者の顔にピントを合わせて、ここぞという所のチョイ前でシャッターを押していますが、拡大して見るとISO32000ということでざらつき感はありますが、目にしっかりピントがきていますし、上空を舞うピンの光沢感もなかなかですし、夜撮った感じがいいです。1/3200秒でISO32000、まさに最新のカメラ技術が可能とした撮影です。

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≪夜のゴジラ通り、焦点距離:45mm、F2.8・1/20秒、ISO 50、AWB≫ やはり左右640ピクセルではわかりにくいですが、ゴジラにピントを合わせていますが、元データを画素等倍まで拡大すると、レンズの解像力の実力はわかるところです。 ISO感度設定50は、愛嬌です。

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≪口径食を見ました、焦点距離:45mm、F2.8・1/13秒、-1.7EV補正、ISO 50、AWB≫ レンズの長さを考えると致し方ない口径食でしょうか。こちらもISO感度設定50は、愛嬌というかケガの功名です。

 シグマの45mmF2.8DG DNは、使い方は簡単ですが、設計者の意図を汲んでレンズ特性を生かして使いこなすには難しいレンズです。今までレンズは絞り開放でどれだけシャープかなどで評価してきましたが、そうではなく、このレンズは撮影距離によって球面収差が発生しホンワリとした描写がされるというのですが、ピントはあくまでも合わせた所はシャープにというのがコンセプトなようです。実はそのあたりに関しては、すべて撮影し終えて原稿を起こすときに初めて読んだシグマ商品企画部長の大曽根康弘さんが執筆する、同社Web情報誌SIENの「大曽根、語る」で初めて知ったのです。なぜ使い終えてから読んだかというと、特定の商品に先入観を持って使いたくないからで、レンズ評価も自分の撮影結果だけで、他の人のレポートは極力読まないようにしています。改めてここで取扱説明書を読んでみるとそのような光学特性には一切触れられていないのです。これは、もったいないです。製品名にそのような機能を示す名称を入れ込むとか、取扱説明書に何らかの解説がないと設計者の真意が伝わらずに混乱します。私の友人のレンズグルメの達の多くは、絞り開放でどのような描写をするかですべてを判断しているので、簡単にダメだしされてしまう恐れがあります。

 また、近距離ソフトの描写はどんな被写体を想定したかですが、SIENの「大曽根、語る」にはテーブルの上の花が作例として出ていましたので、このあたりのテーブルフォトを狙ったのだなとわかります。今回、私のランダムに撮影した作例の中から開発意図に見合うものを探し出しましたが、お眼鏡にかなったかな?と思うのです。もともとはシグマfp用のレンズかとも思うのですが、設計時にはソニーゾナーT*FE 35mm F2.8 ZAをかなり意識したものであったようです。このあたりは、フルサイズミラーレス後発のニコンキヤノンにはないスペックのレンズです。数の上ではソニー用かもしれませんが、ニコンキヤノン用も待ち望まれているはずですから、一層の奮起をと思うわけです。せっかくだから、ネーミング考えました「シグマ45mmF2.8DG DN nsf」なんてどうですか? 私は何も権利を主張しません。ご自由に。

●サムヤンAF35mmF2.8FEで使う

 ケンコー・トキナーが発売する「SAMYANG 35mmF2.8FE」はシグマ45mmF2.8DG DNがそうであるようにソニーゾナーT*FE 35mm F2.8 ZAをかなり意識した設計であることは間違いないようです。そのことは同じ焦点距離・開放F値でありながら、さらなる薄型のパンケーキタイプを目指したことや軽量であることなどからわかります。

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≪左:ソニーα7R IVに装着、右:㊧専用フード、㊥本体、㊨専用ケース≫ このレンズのおもしろい所は、フィルターがフード(40.5mmΦ)と本体(49㎜Φ)の2カ所に取り付けられることで、堅牢ながら妙に軽量な専用ケース(右端)が付属してくることです。また軽量を目指したことからでしょうが、レンズの鏡筒、フードなどはすべて樹脂製です。レンズ鏡胴のターレットが刻まれた部分がマニュアルのフォーカスリングであり、カメラに装着した状態で外観的に特に違和感あるところはありません。

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≪左写真:㊧シグマ45mmF2.8、㊨サムヤン35mmF2.8のマウント部、右表:ソニー、サムヤン、シグマの仕様比較≫
  サムヤンのマウント部を見てみると、マウント結合部は梨地にアルマイト加工された金属で、さらに電気接点が他社より2個多い12個となっているのです。考えるところ、たぶん余分の接点2個は独自なものでレンズのファームウェア書き換えなどに使われるものだと考えますが、この2年間でその必要性は感じたことはありません。

 写真の関係でここに書きますが、シグマのマウント部外周部には、防塵・防水のためにタムロンと同様、ゴムのひだが付いてます。

 比較表を見てわかるのは、サムヤン、シグマがソニーゾナーをスタートに何を頑張ったかよくわかります。

■いつもの英国大使館正面玄関

 撮影日時はシグマと同一、撮影条件はタムロン、シグマと同じということで、絞りF5.6で屋根中央直下の大使館エンブレムにピントを合わせています。

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焦点距離35mm、F5.6・1/800秒、ISO100、AWB≫VGA画像で全景からわかることは、画角とか色合いですが、左下がたる型に湾曲しているように見えるのは、地面がそのように曲がっているからで、お間違いのないように。

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≪上の写真を画素等倍まで拡大した画像≫  すでにタムロンとシグマの項で述べたことですが、画素等倍で見たときには焦点距離が長くなるほどターゲットゾーンのエンブレムは大きく見え、解像力が高いように見えます。その点においてはサムヤンにおいてもかなりの高解像な像をだしていますが、やはり6,100万画素という高解像機であるα7R IVの効果によるものも大だと思いますが、基本的にはレンズ性能が大切なわけです。このレベルがどのようなものか、京都MJの「ライカに始まり、ライカに終わる」に同じ画面を見比べてもらえれば幸いです。

■ランダムな撮影

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 ≪ネットの向こうは西武ドーム焦点距離35mm、F8・1/400秒、ISO100、AWB≫ 手前と奥に緑色のネットが張られていますが、F8に絞られているとこの画面ではわかりませんが、元データで拡大すると前後のネットがすべてピントが合っているように見えます。ドーム屋根の質感、ネットの描写とも文句ありません。

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≪ソクハイ・バイク、焦点距離35mm、F4.5・1/100秒、ISO100、AWB≫ 塗装されたバイク、荷物ケースなどの光沢感がいい感じで再現されています。撮影距離約2mぐらいでしょうか、アスファルトの路面を見ると深度がわかります。

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≪ボケの感じを見る、焦点距離35mm:F4・1/80秒、ISO100、AWB≫ ピントは右端の花のつぼみに合わせてあります。画面左上を見ますと、樹木の葉の間からこぼれる背面の光の部分が球面状に見えますが、大きく伸ばすとより顕著に見えてきます。同じ場所でシグマ45mmで撮影していますが、ボケ具合がサムヤンの方が元の形状を残していますが、これはシグマとサムヤンの焦点距離10mmの違いによるところが大きいでしょう。

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≪ススキの穂、焦点距離:35mm、 F2.8・1/2000秒、ISO100、AWB≫ 絞りF2.8と開放でススキの穂にピントを合わせました。画素等倍まで拡大しても十分解像しているのがわかります。このカットで気に入ったのは、青空の周辺がフィルムカメラで使ったようになだらかに減光していることです。ただし、このような効果はレンズの性能によることはもちろんですが、α7R IVとの組み合わせでの描写特性であって、撮像素子の特性に依存する部分が大です。 

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≪バラの花、焦点距離:35mm、F4.5・1/1000秒、ISO100≫ 西武園のイングリッシュガーデンに咲くバラの花ですが、左中の花の雌しべにフォーカスしましたが、ジャストピントでα7R IVのAF特性も良いということになりますが、雌しべの部分を拡大して見るとしっかりと解像し花粉粒まで見えます。同じ場面を他のレンズで比較していないのでわかりませんが、アウトフォーカスした背景の樹木の葉の間のボケはリング状を示しているので、残存球面収差があるようです。ボケ描写は好みもあり判断が難しいです。

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クヌギのどんぐり、焦点距離35mm:F6.3・1/200秒、ISO50、AWB≫ タムロン、シグマと同じ時に撮影しましたが、ISO AUTOで撮影したのに50になったのは不思議です。3種のレンズともこのようなシーンでは、十分な解像をもって質感描写されました。背景のボケ具合も良くご覧ください。

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≪夜のゴジラ通り、焦点距離:35mm、F2.8・1/30秒、ISO 50、AWB≫ 35mmという画角分の描写ですが、やはりゴジラにピントを合わせてあります。ゴジラを画素等倍まで拡大するとF2.8という開放絞りであるということも手伝ってか、十分解像はしているけれどわずかに柔らかいかなという印象はありますが、この差がわかるのは極端に拡大した極大プリントではないかと思うのです。

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≪口径食を見ました、焦点距離:35mm、F2.8・1/20秒、-1.7EV補正、ISO 50、AWB≫ 左右ボケに口径食が見えるのは致し方ないとして、よく見ると丸のボケの周辺がわずかに輪郭がでているので、使い方によっては昨今の若い人たちが好む玉ボケ、シャボン玉ボケというような表現も可能になってくるのではと思ってしまいました。

 サムヤンAF35mmF2.8FEはケンコー・トキナー取り扱いのレンズですが、製造は韓国の三洋光学(サムヤン)であって、ソニー用のAF交換レンズを早くから手がけていました。実はこのレンズ発売時に入手していましたが、当時は7Rと7RIIで使ってみたのですが、なんとなくなじめなくそのままでしたが、この時期元祖ソニーゾナーT*FE35mmF2.8を規範にしたレンズとしてシグマも登場しましたので、サードパーティのAF交換レンズというくくりで、改めて比較してみました。結果はご覧の通りですが、カメラボディが変わり画素数が増えると画質が良くなるのかと思うほど健闘しました。実際はセンサーの特性、画像処理エンジンなどによるものなのでしょうが、改めてデジタルカメラにおけるボディと交換レンズの関係を考えさせられる結果となりました。

●最新「ソニーα7R IV」とタムロン、シグマ、サムヤンのソニー用レンズ

 今回はフルサイズ6,100万画素という高画素機で、ミラーレス専用に開発された3本の交換レンズを使ってみた使用記ですが、改めてクイックなAF、シャッター音の軽減、ファインダーの見えやすさなど、最新ボディの仕様には表れない進歩を十分に感じさせ、写真画質というのはレンズだけでなくカメラ本体と組み合わせて性能がでてくるのだ、という当たり前のことを再認識させられました。また6,100万という高画素も、最初はいかがなものかと考えていましたが、やはりそれだけのメリットがあり、それぞれ用意したサードパーティのレンズもすべてボディについてこれたということです。今回、過去のボディでの結果をいくつか振り返ってみましたが、明らかに最近のボディは発色もクリアで色抜けが良く、画素数分だけ解像も上がってきているのです。

 タムロンの17~28mmズームは、なぜこんなに明るくて、軽く小さくて画質が良いのか?。シグマの45mmF2.8は新しい考え方のレンズですが、確かに柔らかい描写だけどシャープなことも確かなレンズです。ところが今回のシグマ、サムヤンのレンズを付け替えながら使用中に、知人のプロ写真家がα7R IVのファインダーを室内で覗き、簡単にサムヤンがクリヤでいいと言い切ってしまいました。この時点では僕もシグマSAIN「大曽根、語る」の文章を読んでなく、すでに大半の実写を終えていたので意外でしたが、プロ写真家TKさんは、しっかりとシグマ設計者が意図するところをファインダーを覗いただけで、一目で見抜いてしまったのです。やはりこのレンズは、絞り開放で近距離はソフトな描写だという特徴をしっかりとアナウンスするなり、製品名に盛り込まないとこれからも誤解は生じるでしょう。もったいない話です。そしてサムヤン、確かに開放では少しあまい所はありますが、少し絞られるとその描写はご覧の通りとなりました。結局、どれがいいかなどということでなく、みんな良く写るし、自分の好みで財布と見比べて買ったらいいというのが結論です。

 すでに、ミラーレスフルサイズには、ソニーに加え、ニコンキヤノン、シグマ、パナソニック、ライカが参入しているわけですが、ソニー、シグマを別にすれば、皆、性能、大きさ・重さ、価格ともヘビーな部分を目指しているようですが、レンズメーカーとしてはこのあたりに生きる道が十分にありそうです。 (^_-)-☆

※本レポートは、京都メディアジョイのサーバー「ライカに始まりライカに終わる」にデータを編集し直して、画素等倍で拡大して見られるように移行しました。MJのサイトでは、過去の主だった機種がアップされていますので、常に共通した被写体である英国大使館の正面画像などのバックナンバーを見ることができます。