写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

シグマfpを使ってみました。

  シグマからフルサイズのミラーレス一眼「シグマfp」が10月25日に発売されました。それも2018年の9月のフォトキナで発表されたように、ライカのミラーレス一眼ライカSLと同じライカLマウントを使う協業関係をライカパナソニックと結んだ結果の最初のボディなのです。その時点でシグマからは独自のフルサイズフォビオンセンサーを搭載して2019年には発売と予告されていましたが、その後3月のCP+の時点ではフルサイズセンサーのカメラは2020年に発売予定と変更されていたのですが、不意を突くかのようにように7月11日に突如としてフルサイズ2,460万画素、それもなんとベイヤーセンサーの「シグマfp」を発表したのです。つまりフォビオンセンサーのフルサイズ機は2020年発売で、ベイヤーセンサーのフルサイズ機を2019年に投入したのです。

 この時、私が紹介したFB記事への反響はすさまじいものがありました。私が書いたのは『やるねシグマ。エキサイティングだ。』この2フレーズだけ、あとは発表会での写真を4枚載せただけでした。これには多数の人が後に続いて投稿してくれましたが、その大半の人はfpの登場を好意的に受け入れていたのも印象的でした。

f:id:ilovephoto:20191103181224j:plain

≪シグマfpレンズキットの45mm F2.8 DG DN |Contemporaryをセットアップしたところ。このような場合通常はフードを外して撮影するのですが、本機の場合はフード共にデザイン加工されているので、両方を載せてみました≫

  そしていつものように発売日を待ち、早速fpと45mm F2.8 DG DN Contemporaryのキット販売品を入手してレポートを開始するべく準備を進めてきましたが、天候の不順なこと、さらにfpが一筋縄ではいかないカメラであることから、じっくりと考えながらレポートすることにしました。

f:id:ilovephoto:20191102000902j:plain

≪シグマfpを構えたところを上から撮影してみました。左手のひらでボディ下部を押さえ、左手の親指と人差し指でがっしりと挟み握ります。右手の人差し指はシャッターレリーズボタンを、親指は後ろダイヤルやOKボタンをの位置に、中指から小指まではボディ前面に置き、左右の手でしっかりと構えます。これでfpのボディがいかに小型か、さらに45mm F2.8 DG DNとフードと基本ボディがいかに一体化されているかお分かりいただけるでしょう。フードはレンズの操作リングに刻まれた平目ローレットよりピッチの粗いローレットが刻まれた約1mm厚のアルミ金属で、左右45°回転で脱着できます。昨今、ロック付きのフードが流行っていますが、いろいろとレンズ交換する身にとってはこのほうが素早く行え操作が楽です≫

f:id:ilovephoto:20191104220057j:plain

≪左:右側QS(クイックセットボタン)押し、背面液晶のメニュー画面を表示。これから先の細かい設定は後ダイヤルの左右上下押し込みと回転で設定できる。このあたりの細かい設定は、背面液晶パネルのタップ、スワイプで行えないのは残念ですが、タップによる撮影時のAFポイントの移動設定きわめて便利で、撮影後の再生画像のスワイプ、ピンチアウト・インが背面液晶で行えるのも便利です。右:カードはSDカードが使えます。バッテリーは専用のBP-51ですが、レンズ固定式のDPシリーズと同じなので専用ACチャージャーを含め共用できるのはありがたいです。なおfpはUSBのTypeA→TypeCの変換コードがあれば、パソコン、スマホ用充電器、バッテリーパック、車、飛行機などのUSBコネクターから充電できるのはうれしいです。

 もう2つうれしいこと、このボディ自社名の“SIGMAとは小さく背面液晶の右下に記してあるだけです。そしてボディ向かって左正前面にはfpと小さくプリントされているだけなのです。わざわざ社名を大きく表示しなくても外観を見れば、わかる人にはすぐシグマだとわかるのです。これは単にトップカバーに内蔵ファインダーの出っ張りがないからプリント位置が確保できないというようなことではなく、専用の付属ストラップにも同じ考えが貫かれていて、10ポイントぐらいの文字でタグ状にSIGMAと内側に控えめにプリントされています。ブランド名を背負って歩くのは嫌だという人は少なからずユーザーにはいるわけですから、こういう控えめな姿勢も評価されてよいはずです≫

 

 ■いつもの英国大使館正面玄関

 この場所の撮影は定点観測的に行っていて、春夏秋冬を通して青空の日、朝10時から10時半ぐらいの間に、英国大使館の正面玄関屋根中央直下のエンブレムにピントを合わせ、絞りF5.6に設定して撮影しています。撮影にあたっては、従来は三脚を立てていましたが、昨今のカメラではこのような状況下では手ブレすることもなく、手ブレ補正機能を含めたカメラの性能を知るということから、最近はすべて手持ちで撮影することにしていますので、手ブレ補正を効かせていない状態でfpも手持ちで行いました。

f:id:ilovephoto:20191103225424j:plain

≪作例1≫ 焦点距離:45mm、F5.6・1/400秒、ISO100、手持ち撮影。特に目立つところはないが、発色としては若干渋めな感じもするが、この場面での露出レベルの問題かもしれません。

f:id:ilovephoto:20191103225501j:plain

≪作例1a・英国大使館正面玄関≫ 作例1の屋根すぐ下にあるエンブレムをクロップして画素等倍で掲載しました。壁面に飛んだような描写もなく、ベイヤー配列2,400万画素イメージャーとしては十分な描写です。

 

■さまざまな場面での実写
 撮影は基本的に45mm F2.8 DG DN |Contemporaryレンズで行いました。これはfpがミラーレスであることから、ミラーレス用に専用設計されたレンズで行うのが最も性能を発揮できるからと思うわけです。

 とはいっても、シグマfpの描写評価をするのには、まず最初に大変難しいことにぶち当たりました。それは今回発売されたライカLマウントの45mm F2.8 DG DN |Contemporaryのレンズはきわめて個性的であり、遠い被写体つまり70cm~1mを超えた無限遠ではシャープで解像が高いのですが、近接距離になるとソフトな描写となるのです。レンズ交換式カメラの性能を語るとき、レンズの解像性能を無視して語るわけにいきません。fpの場合ボディ単独で考えるとベイヤー方式2,460万画素の描写ですが、45mm F2.8 DG DNだと無限遠に近い遠景で撮るか、近接で撮るかによってまったく解像性能が違うのです。もともとレンズ設計は一般的には無限遠で性能を発揮するように行うのですが、一眼レフの時代にはフォーカシング機構もわりと機械的な自由度があったようですが、フランジバックの少ないミラーレス一眼では、インナーフォーカスの採用などにより、機構的な制約もあり、薄型レンズでは近接撮影での描写性能を高めるのは難しいようなのです。

f:id:ilovephoto:20191130144449j:plain

≪作例2・新宿高層ビル≫ 焦点距離45mm、F5.6・1/640秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。ほぼ無限遠に近い距離のビル壁面を狙ってシャープさを見てみました。プログラムAEでの撮影ですが、F5.6というほどよい絞りが設定されていますが、この左右640ピクセル画面では見切れませんが、2,640万画素に対して、シャープさは十分であり、最上部の囲い部分からは立体感もほど良く感じさせます。

f:id:ilovephoto:20191205220741j:plain

≪作例2a・新宿高層ビル≫ 作例1のビルの屋上近くをクロップして画素等倍で掲載しました。立体感ある描写だというのはおわかりいただけるでしょうか?

f:id:ilovephoto:20191130144521j:plain

≪作例3・夜の国立博物館焦点距離45mm、F2.8・1/40秒、ISO2000、-2.7EV、AWB、手持ち撮影。夜景を絞り開放F2.8レンズで手持ち撮影するというのはどうだろうかと考えましたが、露出補正をマイナス側に加えたこともありますが、ISO2000と感度アップされて、ブレなく撮影できました。当然1カットだけの結果でなく数カットの中からのベストショットの抽出ですが、アングルは別にすれば1/40秒でかなり確立高くぶれていませんでした。ところでfpボディには手ブレ補正機構は入っていませんが、電子手ブレ補正機能が入っています。これは1ショットで4枚撮影し、画像合成でブレのない画面を作るというものですが、動きのある被写体には向かないでしょうし、出荷時の初期設定がOFFであることから使わないほうがよいのでしょう。手元にあるパナソニックルミックスS24~105mmF4ズームで焦点距離を可変させてプログラムAE時の動き方を見ていると、低輝度時のシャッター速度は、1/焦点距離・秒という約束事に対してかなり忠実であり、その速度をもってシャッター速度の変化は止まり、後は感度アップしていくということで45mmレンズでは実用上はあまり手ブレ補正機構の不足は感じませんでした。なお、今後の交換レンズには光学的な手ブレ補正機構が必要に応じて組み込まれる可能性もあるわけで、ボディ側のメニューにはON・OFFモードがあります。

f:id:ilovephoto:20191130144605j:plain

≪作例4・航空機のモニュメント①≫ 焦点距離45mm、F2.8・1/40秒、ISO2000、AWB、手持ち撮影。同じシーンを、ほぼ同時刻、同太陽位置、同照度の条件で、ライカLマウントアライアンスグループのルミックスS1Rで撮影したことがありますが、fpの場合は濃度分布もシャドーからハイライトまでバランスよく収まっていて、シャード部となる背景の樹木の葉もつぶれることなく描写されています。

f:id:ilovephoto:20191130144641j:plain

≪作例5・航空機のヘッド≫ 焦点距離45mm、F5・1/500秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。正午に近い太陽位置であるが順光の青空に銀色とオレンジの機体がまぶしいです。同じシーンを、ほぼ同時刻、同太陽位置、同照度の条件で、ライカLマウントアライアンスグループのルミックスS1Rで撮影したことがありますが、画素数が3,730万画素、2,460万画素の違いとしてはありますが、大きく変わる部分はありません。

f:id:ilovephoto:20191130144739j:plain

≪作例6・航空機のモニュメント②≫ 焦点距離45mm、F4・1/2000秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。晴天の青空を背景に手前右の複葉機のモニュメントにピントを合わせてあります。ほどよい露出成果ですが、わずか画面周辺光量の低下がありますが、このあたり好みの問題でもありますが、フィルム的な描写であって良いという人もいるでしょうし、電子的な補正で変わる部分でもあるわけです。いずれにしても周辺光量の低下は、CMOS撮像素子が裏面照射タイプであることからかなり抑えられていると考えます。このあたりの現象は、レンズなのかボディなのかということではどちらもが関係してでてきた画像なので、どちらがどうだとはいい切れません。レンズ固有としては、背景左側のアンテナを60~100%に拡大するとボケに暴れがあるのは気になりますが、実際はそこまで大きくするかどうかは別問題です。

f:id:ilovephoto:20191130144853j:plain

≪作例7・紅葉≫ 焦点距離45mm、F4・1/320秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。モミジの紅葉を狙って背景のボケ具合を見てみましたが、クセのあるボケは作例5と同じ傾向です。

f:id:ilovephoto:20191130144918j:plain

 ≪作例8・池のカモとススキ≫ 焦点距離45mm、F5・1/500秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。遠景の描写として、池の対岸にあるススキの穂に焦点を合わせていますが、この左右640ピクセルではわかりませんが、手前のカモもススキの穂もシャープに再現され、背景の樹木もほどよく描写されています。

f:id:ilovephoto:20191130144943j:plain

≪作例9・朝日に輝くクモの巣≫ 焦点距離45mm、F3.2・1/200秒、ISO100、+0.3EV補正、AWB、手持ち撮影。道を歩いていて道路わきの植栽にクモの巣がかかり、朝日に輝いていたのでこれだとばかりに、シャッターを切った内の1枚です。この写真に象徴されるのですが、このfpシステムの交換レンズの45mmF2.8DG DN Contemporaryの長所であり短所でもある描写なのです。このレンズはソニーの7RⅣでも書きましたが、シグマのHPのSEIN・大曽根語るでは描写として『ボケを美しくなだらかにするには球面収差が鍵となる。光学設計者からは、単に球面収差を「補正」するのではなく、球面収差を明確に残しつつしかも高度なコントロールを行い、特にボケが顕著に出やすい中~近距離では明確に球面収差によるフレアーを発生させ像を滲ませる、という手法が提案された』というのですが、この言葉に惑わされていろいろと撮影しさまざまな場面で考えましたが、最後にわかったことはミラーレス一眼において、パンケーキ的な薄型レンズの設計は難しく、いわゆるレンズ設計のセオリーを超えて近接撮影を可能にすると画質が劣化するということを利用して、近接時に球面収差によるフレアの発生を逆に特徴としたのが45mmF2.8DG DN であるわけです。したがって、このシーンでは実は穴の下にクモが写っているのですが、撮影した人ならかろうじて探し出せる描写なのです。この場面において、撮影した私からすると朝日に輝く白いベールのようなクモの巣の上に小さなクモがという所を狙ったので、その点においては短所といえるでしょう。

f:id:ilovephoto:20191130145039j:plain

≪作例10・髭おやじ先生≫ 焦点距離45mm、F2.8・1/50秒、ISO640、AWB、手持ち撮影。こちらは“髭おやじ”こと元日大芸術学部写真学科教授の鈴木孝史先生です。思いっきり近づいて、目にピントを合わせての1枚ですが、“髭おやじ”らしくヒゲはシャープな感じがして、肌はホワッと柔らかく描写され、とても70年近くの歳月を刻んだ肌には見えなく、すべっとした描写で好感持てます。事実、先生からは「ずいぶんボケの大きなレンズだな、でもこれなら公開されてもいいよ」と1発でOKをいただきました。確かにこのような人物ポートレイトには効果を発揮するレンズであり、特に女性の撮影には好まれること間違いない描写です。これは、まさに45mmF2.8DG DN の長所であり短所ではないわけです。その点においてはシグマ設計陣の狙いはまさにこのあたりにあるのでしょう。

f:id:ilovephoto:20191130145125j:plain

≪作例11・小さな紅葉(ハツユキカズラ)≫ 焦点距離45mm、F2.8・1/50秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。絞り開放F2.8、まずまずの近接ですが、このようなすべすべしたところの描写では解像感はなかなかわかりにくいのです。背景のアウトフォーカスした部分の描写は柔らかくいい感じです。

f:id:ilovephoto:20191130145203j:plain

≪作例12・わが家の紅葉≫ 焦点距離45mm、F6.3・1/640秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。作例11よりは近づいて撮影していますが、絞り込まれているので描写は解像度が増しています。ただどのくらいシャープかというともうひとつでありますが、この状態で印刷に使ったり、A2ぐらいに伸ばしても比較でもしない限りまったく問題ないと思うのです。

f:id:ilovephoto:20191130145253j:plain

≪作例13・わが家のお宝“アルマジロ”≫ 焦点距離45mm、F5.6・1/40秒、ISO100、+1.3EV補正、AWB、手持ち撮影。光沢感のある硬い表皮部分と毛が混在していますが、描写の感じはリアルです。かなりの昔のブラジル土産で、アルマジロとはモグラのようなもので、ペットであり食用にも供されたというのです。

f:id:ilovephoto:20191130145420j:plain

≪作例14・赤いバラの花_2.8≫ 焦点距離45mm、F2.8・1/125秒、ISO125、-0.7EV補正、AWB、三脚使用。ほぼ最短の24cmらいで撮影してます。このあたりの描写が45mmF2.8DG DN の特徴なのです。

f:id:ilovephoto:20191205215507j:plain

≪作例15・赤いバラの花_5.6≫ 焦点距離45mm、F5.6・1/40秒、ISO125、-1EV補正、AWB、三脚使用。作例13とほぼ同じ状態で絞りF5.6に絞り込んでみました。左右640ピクセルVGAではわかりにくいですが、近接でもF5.6に絞り込めば解像度は格段に上がります。

■マウントアダプターでシグマSAマウントレンズを使う

f:id:ilovephoto:20191205212318j:plain

≪シグマ18~35mmF1.8DC|Artを装着≫ SAマウントの18~35mmF1.8DCにSA-LマウントアダプターのMC-21を介して取り付けました。DCはシグマのAPS-C用レンズであるのでこの状態で組み合わせると自動的にAPS-C画面となるのです。ちなみにfpフルサイズの時は6000×4000ピクセルですが、APS-Cの時は3840×2560ピクセルとなりA3ノビぐらいまでは拡大してプリントできるデータ量です。

f:id:ilovephoto:20191205221457j:plain

 ≪作例16・赤いバラの花_シグマ18~35mmF1.8DC|Art≫ 焦点距離35mm、F1.8・1/320秒、ISO100、-1EV補正、AWB、三脚使用。作例13とほぼ同じ状態で18~35mmF1.8DC|Artで絞り開放F1.8で撮影しました。左右640ピクセルVGAではわかりにくいですが、拡大してみると近接で絞り開放という撮影ではありますが、浅さい深度の中にもArtラインらしいシャープな画像を確認することができます。

f:id:ilovephoto:20191212162706j:plain

≪作例17・サンタクロース_シグマ18~35mmF1.8DC|Art≫ 焦点距離35mm(52mm相当画角)、絞りF1.8・1/50秒、ISO160、-0.3EV補正、AWB、手持ち撮影。サンタクロースの右目にピントを合わせていますが、ズームレンズであってもF1.8と大口径であるためにボケは浅く、柔らかく描出されています。

f:id:ilovephoto:20191212164308j:plain

≪作例17・周防大島の日の出_シグマ18~35mmF1.8DC|Art≫ 焦点距離32mm(48mm相当画角)、絞りF1.8・1/8000秒、ISO100、-0.3EV補正、AWB、手持ち撮影。前の晩にサンタクロースを絞り開放で撮影して、そのまま朝、日の出だと飛び起きて撮影したらなんと風景写真をF1.8という大口径で撮影してしまいましたが、撮影後に気づき拡大して見ましたが、とてもF1.8開放とは思えない描写でした。

f:id:ilovephoto:20191212164921j:plain

≪作例17・山口県柳井の金魚ちょうちん_シグマ18~35mmF1.8DC|Art≫ 焦点距離35mm(52mm相当画角)、絞りF4.5・1/500秒、ISO100、+0.7EV補正、AWB、手持ち撮影。金魚ちょうちんにピントを合わせていますが、VGAではわかりにくいですが、金魚の生地の質感も細かくでています。

 

■LマウントアライアンスのルミックスSレンズを使ってみました

f:id:ilovephoto:20191212165839j:plain

≪左:“シグマfpにルミックスS24~105mmF4”、右:“ルミックスS1Rにシグマ45mm F2.8 DG DN Contemporary”をそれぞれ装着≫ どちらもいい感じで装着できてます。シグマ18~35mmF1.8DC|Artの時もそうでしたが、太い・長いレンズをしっかりホールドして、右手親指でフォーカシングポイントを決めて、軽くシャッターを切るという撮影は意外とブレないのです。これはちょっとした発見でした。

f:id:ilovephoto:20191212175633j:plain

≪作例20・裏山の紅葉_ルミックスS24~105mmF4≫ 焦点距離93mm、絞りF5・1/400秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。モミジの葉の紅葉ですが、あえて順光の状態で撮影し、背後のボケの具合を見てみました。背後のボケは大きく拡大してみても、ズームレンズらしい、おとなしい描写です。

f:id:ilovephoto:20191212175704j:plain

 ≪作例21・陽だまりの花_ルミックスS24~105mmF4≫ 焦点距離105mm、絞りF6.3・1/640秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。陽だまりの土手に咲く花。右後ろの赤いボケはは1輪だけ咲いている花ですが、その下の花にピントを合わせてあります。

f:id:ilovephoto:20191212175731j:plain

≪作例21a・陽だまりの花_ルミックスS24~105mmF4≫ 作例21のピントの合った部分を画素等倍に拡大してみました。大変シャープであることがわかりますし、2,400万画素の描写はこのクラスまでの作品には必要十分な解像だと思うのです。

 

■ライカLマウント用アダプターを使って距離計連動ライカ用レンズを使いました

 実は、ミラーレスカメラの元祖は距離計連動のライカなのです。そして初期のライカ用広角レンズでは、デジタルで使うと周辺光量が極端に低下したり、周辺がマゼンタ色に偏色したりして、モノクロ変換して使うしかなかったのですが、撮像素子のCMOSに裏面照射タイプが登場すると、そのような問題はほとんど消えてしまったのです。シグマfpも裏面照射タイプCMOSなのですが、従来ライカ型のレンズでそのような描写をするレンズの代表例としてフォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5ASPH.(1999年)とズミクロン35mmF2(第2世代、1969年)、キヤノン25mmF3.5(1969)を使ってみましたが、最も広角のスーパーワイドヘリアーだけ作例を載せてみました。この15mmは、1999年に発売されたコシナの超広角レンズですが、最新モデルはデジタル時代に合わせて光学系は一新されていますが、ここに用意したのは初代のライカスクリューマウントモデルです。当時は、ホロゴン15mmF8が100万円近くもしていたのに対し、10万円未満で、明るく、周辺光量補正フィルターも不要であることなどから、一大ヒット商品となりました。その初代スーパーワイドヘリアー15mmF4.5ですが、ライカ判フルサイズデジタルのライカM9がでたときには、周辺の光量が落ち、しかもマゼンタ味に色付きするということで、モノクロにしか使えないと判断されたのですが、マウントアダプターを使った最新のfpではどうでしょうか。

f:id:ilovephoto:20191103225559j:plain

≪左:フォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5ASPH.(1999年)、右:ズミクロン35mmF2(第2世代、1969年)≫

f:id:ilovephoto:20191103230030j:plain

≪作例17:YS-11フォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5ASPH.≫ F8・1/250秒、ISO100、AWB、三脚使用。このレンズの名誉のためにいいますと、フィルムで使うとここまで周辺の光量落ちはしませんでした。でも、裏面照射タイプCMOSを使ったfpでの周辺光量落ちは少ないほうです。オールドレンズファンには朗報といえる結果でしょう。

 

■電子シャッターのローリングシャッター現象は?

 シグマfpは機械的シャッターのない、全部電子式シャッターだけで構成されています。そこで気になるのはローリングシャッター現象ですが、いつもと同じようにチェックしてみました。

f:id:ilovephoto:20191207224903j:plain

≪作例18:なかなか適切には撮影できませんでしたが、過去の例から見るとfpのローリングシャッター現象は軽微だと考えられます。もちろんいつもと同じ場所でも、レンズ焦点距離、撮影距離、自動車のスピードなとから変わるものですから、問題にするほどではないということですが、やはり極端に早く近くで移動する被写体は苦手と考えたほうがよいと思います≫

 

■終わりに

 しかし、これだけ外観デザイン的にスチルとシネを等価に両立させたデジタルカメラは、過去にあったでしょうか。そしてカメラすなわちハードとしてはスチルとシネの両立はあったとしても、ユーザーとしては両立はありうるだろうか、などと考えながら本機「シグマfp」を使ってみました。一部の物知り顔の人は、fpはシネ用のカメラであってスチル用のカメラではないなどと声高らかに言い放っていますが、実際どうなのだろうというのが、僕のレポートのチェックポイントなのです。

 約1か月半にわたって連日使い続けた結果、そのようなことはまったくなく、通常のスチルカメラとして過不足なく使えるフルサイズの小型デジタルカメラなのです。もしシネ用のカメラであるなら、各操作部などに違和感があったり、操作しない部材などが邪魔になってくるはずですが、実際は、「CINE/STILL」切替スイッチ、「REC」ボタンの他は、GUIを含めまったく各部がスチルのためにあるという感じで、むだな機構がないと思わせるのです。これも、基本的な部分以外はすべて削ぎ落としたデジタルのボディだからそのように感じたのでしょう。結局、僕はスチルカメラとしてだけでfpを使ったのですが、それでも十分満足できたということなのです。つまりfpはシネカメラをスチル用としたものではないわけです。

 さらにfpの特徴は、ハードとしての拡張性に対し、従来は自社ですべて完結させるのが一般的でありましたが、昨今はソニー富士フイルムなどに見るように、マウント情報を公開し一部システムの製造をサードパーティーに依存するという手法をとっているのですが、シグマfpでは、ボディの3Dデータを公開し、ある意味でユーザー自身にもシステム展開を任せるという手法を取っているのも新しいことです。事実、僕の周りでは、発売と同時にfpを手にして、自分用のストラップを製作して装着しているような人もいるのです。時間が経てば、fpをベースにしたさまざまなシステムアクセサリーが企業、さらには個人レベルからも登場するでしょう。

 なお今回のレポートで一番苦労したのは、45mm F2.8 DG DN Contemporaryの存在です。結局、レンズ描写がカメラの描写を決するのですが、前述したようにその特性を良しとするのか、どうかだと考えるのです。このあたりは、すでに6,100万画素のソニーα7R4IVで同じ45mm F2.8 DG DN ContemporaryのソニーマウントFEレンズを使っているので、45mm F2.8 DG DN の画素等倍で見たりできる具体的な詳細は、そちらの方もぜひご覧ください。

 そして改めてデジタルにおけるレンズ交換式カメラの画質とは、ベイヤー方式の撮像素子を使ったボディの画質とは、レンズの画質とは、などということを考えてみるのも意義あることだと思うのです。そして来年登場が予告されている、フルサイズフォビオンセンサー搭載のボディがでてきたときに、改めてデジタルカメラの画質とはと考えてみたいのです。 (^_-)-☆

 

■おまけ

f:id:ilovephoto:20191108061129j:plain

≪去る11月7日にシグマは、フランスのパリで開かれた「サロン・ド・ラ・フォト」の会場で特設ステージを設け、新製品シグマfpのトークショーを開きました。シグマが、フランスでこのようなことを行うのは初のことだそうです。右からユーザーの質問に答える山木和人社長、大曽根康裕商品企画部長、シグマフランス・プロべ氏。いかにシグマがfpに力を入れているかおわかりいただけるでしょう≫