写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ライカM11を使ってみました ver.1

 
 2022年1月14日に発表されたライカM11は、6000万画素と高画素機で、価格は118万8千円。1月21日に発売されました。デジタルのレンジファインダーイカは、2006年発売の①ライカM8(CCD、APS-H)からで、②M9(CCD、フルサイズ)、③M(Typ240、CMOS、フルサイズ)、④M10(CMOS、フルサイズ)、⑤M11(CMOS、フルサイズ)で5代目となり、フルサイズ化、CMOS化、高画素化などとスペックアップさせてきましたが、M11ではどのような変化を見せたのでしょう。M11の特徴は、64GBのメモリーを内蔵、ブラックボディはトップカバーをアルミニュームとしたことにより、M10より20%軽く、フィルムカメラのM6ぐらいの重量であるなどがあげられています。ライカカメラ社自身がミラーレス機を発売しているなかで、レンジファインダー式のカメラとして、最新のミラーレス機とどのように折り合いをつけたのかなど、大変興味がわく部分です。そんな視点をもって、ライカM11をレポートしてみましょう。

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≪外箱と内部梱包材≫ 外箱はかつてのような引き出しのついた箱から普通になりました。中の緩衝梱包材は黒いウレタンはスポンジが使われていますが、これは現在の日本のカメラが段ボールなどで構成しているのに対して最も異なる部分です。右上の白い紙にはiPhoneiPadの製品に関しての動作の注意書きです。

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≪取扱説明書≫ 中央:箱に同梱されていたのはクイックスタートガイドだけでした。左:ダウンロードして自分で出力したPDF版、右:請求したら航空便で送ってきた取扱説明書。発売までに間に合わなかったのでしょうか?。ドイツからきたのが見やすくわかりやすかったです。

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≪ライカM11と35mm、50mm交換レンズ≫

 今回ここで使うレンズは、ライカM11の機能を十分に引き出すためにクラシックや他社製品でなく、6ビットコード付きのズマリット50mmF2.4とズマリット35mmF2.5を用意しました。

■ライカM11の各部

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≪操作する感じでボディを斜め上から見ると≫ 左から、①ISO感度ダイヤル(ISO64・200・400・800・1600・3200・6400とマニュアルMでISO64~50000、オートAのポジションが刻まれています。写真はオート(A)にセット。設定はダイヤルを持ち上げて行えます、②ホットシュー右脇はシャッター速度ダイヤルで、絞り優先オートの(A)ポジションにセットしてあります。シンクロ同調は1/180秒。その右は③電源スイッチとシャッターボタン(写真はOFFの状態)。右上④はファンクションボタン(初期設定では押し込むことによりライブビューの時に拡大表示される)、右肩⑤サムホイール(再生画面の表示を操作できます)、ボケていますが、背面右⑥センターボタンとセレクターボタン

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≪バッテリーと記録メディアのセット≫ 底蓋は、フィルムカメラ時代からの取り外し式ではなくなり、左写真の白いレバーを回転させるとバッテリーがポンと飛び出しますが、このままでは取り出せないのです。もう1段軽く押すと取り外しできるセーフティー機構となっていますが、1度わかれば簡単ですが、知らないとからくり箱のようで苦戦します。右写真はバッテリーを取り外した状態ですが、バッテリーの頭部がボディ底面の構成パーツになっているのは新しい発想です。この部分にマークシールでも貼れば複数のバッテリーの使い分けも便利かもしれません。SDカードは、バッテリーを取り外した状態での押し込みで出し入れできます。

 

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≪バッテリーの充電≫ 左は、純正の電源変圧器。入力:AC100~240V、出力:5Vと各社のカメラ用充電器、スマホ用充電器と大きく変わることはない規格で、「USBタイプA⇒タイプCコード」で専用のバッテリー充電器(バッテリースタンド)にセットして充電を行います。この純正の充電器を介した状態で、タイプC側コネクターをボディに直接つないでも充電は行えます。右の写真は、試しにサードパーティーの「GREEN HOUSE」の携帯バッテリーと100円ショップで買った“タイプA⇒タイプC”コードを介してボディ内バッテリーへ充電してみましたが問題なく行えました。したがって、市販のスマホ用充電器や車からの電源からもチャージはできるわけです。必要以上に長く、太いコードより、短い“タイプA⇒タイプC”コードの方が取り回しはいいです。なお、右の写真でグリーンに点滅してる部分は「ボトムランプ」と呼ばれ、充電中やメモリーアクセス中に作動します。

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≪メニュー画面≫ ボディ背面左下の“MENU”ボタンを押してみました。見れば大体わかる感じですが、これにタッチパネル、セレクターボタン、センターボタン、サムホイールなどを操作して設定します。左の“LV”に打ち消し線が入っていますが、ライブビューを使わないモードにセットされています。その右“横長の□”は1コマ撮りですが、3コマ/秒の低速連写・4.5コマ/秒の高速連写を選べます。上半身マークはユーザープロファイル、“24/50”は50mmF2.4レンズが付いていることを表示してます。無効化、マニュアルセットもできます。下列左はJPGをセット、その右はJPG+DGN、さらにその右はL・M・Sとファイルサイズを選択できます。その右はメモリーのフォーマット、一番右はメインメニューのリストです。

■ビゾフレックス2

 別売アクセサリーとして用意されたライカの外付けEVFは、ライカならではの歴史的な名称ビゾフレックスとつけられています。「ライカM(Typ240)」の時からVISOFLEXの1型が用意されていましたが、M11用には「ビゾフレックス 2」と新しくなりました。写真に示しましたが、大型になりアクセサリシューへの専用接点もシンクロ用の3点のほか16点もあるものです。「ライカM」のときは、ライブビューがないので理解できましたが、一見するとM11では不要ではとも思いましたが、しっかりとファインダーで覗いてピントを合わせたり、細かく構図を決めたりするのには必要なのでしょう。価格は約10万円です。

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 上の写真左は、ビゾフレックス2をアクセサリーシューに差し込み、少し上に向けましたが、このようにするとローアングルでの撮影も可能となるのですが、上に向けないままではしっかりとのぞくけてライブビュー撮影するときはEVFとして大変便利です。手前を下に押し込むと手前左右にある強力なマグネットにより固定され不用意に上がるようなことはありません。右の丸いのは視度補正用ダイヤルです。写真右は、アクセサリーシューの電気接点を示しましたがストロボシンクロ用の奥には16もの接点があります。

 随分と前置きが長くなってしまいました。本当はまだまだ書かなくてはいけないのですが、以下さまざまな条件で撮影していくなかで各種技術を紹介していくことにします。

■いつもの英国大使館の正面玄関を撮影

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≪ズマリットM35mmF2.5≫ F5.6・1/400秒、ISO-AUTO 64、AWB。ピント合わせはライブビューと拡大で行いました。画素等倍で拡大した画像は載せませんが、わずかにほかのレンズより解像度が低い感じがしますが、これはピント合わせが甘かったのかもしれません。ただズマリットM35mmF2.5の描写は柔らかな描写とボケ味が特長なので、そのあたりとの兼ね合いであり、ふだん使っている限りはまったく不足は感じませんし、むしろ好みの描写特性です。現行品にはこのほかに、ズミクロンM35mmF2 ASPH.、APOズミクロン35mmF2 ASPH.もあるので、価格に合わせて描写の異なるのも納得いきます。

 いままでライカのレンズの設定絞り値はメモしておかなくてはなりませんでしたが、6ビットコード付きのレンズの場合には「算出された大まかな絞り値をExifファイルに記録する」ということでしたので、Exifデータを読むとF5.6とでてきました。この設定絞りのF値は、撮影データを何で展開するかによって異なり、Exifデータを読めてもF値を表示できないソフトもあるので注意が必要です。ちなみにズマリット50mmF2.4で同じ場面を同じ絞り設定で撮影してみましたがF5.6とExifデータは記録されました。手元にあったM9では設定より半段ほど違う値がでましたが、撮影条件の違いか、ボディの違いによるのかは判りませんが、「算出された大まかな絞り値をExifファイルに記録する」ということなので理解しました。この設定絞り数値の表示はないよりはあった方が絶対いいわけで、私のように絞り値変化の描写を楽しむ者にとっては便利です。“ライカというと使用レンズはオールドレンズ”という思い入れが強く、6ビットコード付きレンズはレンズ名と焦点距離Exifへの書き込み、広角では周辺光量の補正というレベルの認識でありましたが、反省です。

■M11のCMOSセンサー

 ライカM11の特徴に撮像素子であるCMOSが基準感度ISO64であることがあげられています。ライカの場合には大口径レンズを開放絞りで使うことも多く、ISO感度が低く設定できることは、最高シャッター速度にもよりますが高輝度撮影環境下でも絞り開放での撮影が可能となります。また、RAWデータであるDNGの解像度が、60Mピクセル、36Mピクセル、18Mピクセルと選択できるのにどの解像度でもすべてのピクセルを使うトリプルレゾリューションテクノロジーという技術を使い、高いディテールの再現と幅広い感度を実現したというのです。

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≪トリプルレゾリューションテクノロジーとは≫ 左はライカカメラ社のカタログからの転載ですが、60Mピクセル(9504x6320)、36Mピクセル(7392x4896)、18Mピクセル(5248x3472)それぞれが、単純に画素が間引かれるのでなく、複数画素を組み合わせを変えて低解像度としているので、1ピクセル当たりの面積が広くなるので階調再現が良くなり高感度が可能になるというのです。右の写真は、ライカMマウントの高解像度レンズをF2.8にして60Mピクセルと18Mピクセルで撮影した画面中央付近の描写を画素等倍近くに拡大したときの描写ですが、この撮影ではその差を見出すことはできませんでした。その差が著しくでるようだと逆に問題なのかもしれません。なお、撮像素子の前面には極薄のガラスを2層に重ねたUV/IRカットフィルターが配置されていて、薄いことにより急な角度で入射する光線も効果的に取り込むことができるととされています。

■M11は撮像面測光

 ライカがデジタルになって歴史的な一部広角レンズではTTL測光ができなく、私の場合にはスーパーアンギュロン21mmF4が使えなく、すっかりその存在を忘れていましたが、M11ではどうだろうかということが一部で盛り上がっていましたが、レンズ後部やガードがシャッター幕に物理的に接触するようなことがなければ、原理的に考えるとM11は撮像面測光なので問題なく撮影できるだろうと考え試してみました。

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≪M11とSUPER-ANGULON 21mmF4≫ F5.6・1/320秒、ISO-AUTO 80。巻頭の英国大使館の撮影を行ったときにスーパー・アンギュロン21mmF4でも撮影してみました。ご覧のとおり写ります。周辺光量の低下は裏面照射型CMOSセンサーなのでまずまずですが、これが一時代前の同じフルサイズのM9では測光センサーをレンズ本体が邪魔するのでまったく使えませんでした。この撮影データのExifを読んでみると、焦点距離は0mm、開放絞りはF4、設定絞りはF5.6とでました。6bitコードのないレンズですが、偶然でしょうか?実写でもう少し追いかけてみる必要がありそうです。

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≪M11とM9の測光機構≫ 左:撮像面測光のM11には暗箱内部にはセンサーはないのです。右:M9のシャッター幕面は上下中央は白色に近い薄いグレーで、上下は18%グレーに塗装されています。この部分を暗箱下部から測光するので中央部重点測光となると考えられます。測光センサーはメインの中央以外に小さいのが2つ配置されていますが、それぞれの役割は不明です。右下のインサート画面は、別の場所でM9にスーパー・アンギュロンで撮影した画像、まったく使えないのがわかります。

≪お知らせ≫

「ライカM11」の全記事と多数の作例を画素等倍にして見られるように京都MJのサーバーにアップされました。引き続きそちらをご覧ください。

 

オリジナル・ノクトン50mmF1.5を使ってみました

本記事は京都MJのサイトで再掲され、作例を画素等倍まで拡大して見ることができます。

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 ノクトン(Nokton)といえば最近はコシナフォクトレンダー・ノクトンがよく知られていますが、元は1950年に西独・フォクトレンダー社(Voigotalnder)から発売されたレンズ交換式のレンジファインダーカメラ『プロミネント』の交換レンズのうちの1本が「ノクトン50mmF1.5」でした。
 ミラーレス一眼の普及によりクラシックレンズに光があたるようになって久しいですが、クラシックレンズは何が魅力なのか人それぞれです。そこで大きく分けると、1)クラシックゆえの収差の取り切れていない描写をあえて強調させて作品づくりをするのと、2)古いレンズの中にデジタルの現在にも通用する結像の良いレンズを探し出し、作品づくりをするのが楽しみ、という方々ということになります。ここでは、クラシックレンズとしてのノクトン50mmF1.5の描写を紹介してみましょう。

■ライカスクリューマウントのオリジナル・ノクトン50mmF1.5
 1950年に西独・フォクトレンダー社から発売された「プロミネント(Prominent)」≪写真1≫の交換レンズのなかで最も明るいレンズとしてノクトンがありました。

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≪写真1≫ ノクトンを装着したフォクトレンダー・プロミネント(1950~60)とノクトン50mmF1.5のレンズ構成(5群7枚)。プロミネントは距離計連動でレンズ交換が可能ですが、シャッターはビハインド式のレンズシャッターです

 NOKTONとは、ドイツ語で夜を意味するNachtであり、英語のnocturnal=夜行性のということで、つまり夜の撮影に向いた大口径レンズであり、ライカノクチルックス50mmF1.2(1966)、ニコンのノクトニッコール58mm F1.2(1977)など大口径として同じような意味で使われています。プロミネントのレンズマウントはプロミネント専用のマウントで、このプロミネント用ノクトンの中にきわめて少数のものがライカスクリューマウントとコンタックスマウント用として初期の段階からで発売されていました。今回の使用レポートは、2本のライカスクリューマウントの「オリジナル・ノクトン50mmF1.5」レンズを、シグマfpとソニーα7RⅡにマウントアダプターを介して取り付けて≪写真2≫撮影してみました。

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≪写真2≫ ソニーα7RⅡとシグマfpにマウントアダプターを介して装着

 外観からするとレンズ形状は一見したところ同じように見えますが、左側のノクトンは絞りリングの後ろ側とマウント側のリングが黒く仕上げられていて、右側のノクトンはクロームメッキのシルバーだけです。シリアルナンバーを見ると左は№3161601で製造年は1950年、右は№3339596で1952年製のようです。どちらもフォクトレンダー社の出荷番号リストの中にライカスクリューマウントとして記載されています≪写真3≫

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 ≪写真3≫ 同じライカスクリューマウントのノクトン50mmF1.5でも鏡胴の仕上げが異なります。

 またこのノクトンは、途中から2層の多層コーティングがなされたとも一部に伝えられていますが、少なくともこの2本のノクトン≪写真4≫は右がシアン系の単層コート、左がシアンとアンバー系の単層コートというわけで、同じ単層コートであっても、異なるコーティング素材を組み合わせて使用しているということから、コーティング種からも左側のノクトン3161601のほうが古いことがわかります。このほかの身近にあるプロミネントマウントのノクトン50mmF1.5を調べてみますと、№3259883はシアンとアンバー系のコーティングが施され、№3712804はシアンとアンバー、パープルの組み合わせであり、時代とともに徐々に同じ単層コーティングでも変化していったのがわかります。

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 ≪写真4≫ 同じライカスクリューマウントのノクトン50mmF1.5でも製造年でレンズコーティングが変化しています  左は開放絞りのF1.5、右は絞り形状を見るためにF16に絞ってあります。もう1つ注目したいのが、レンズの最大口径比の書き方が、左はF1.5、右はF1,5となってる点です。“,”カンマ表記はツァイスレンズの最大口径比の表記に今でも使われています(すべてではありません)が、フォクトレンダー社がツァイス・イコングループに加わったのは1969年であったので、それ以前にどうであったかは不明です

 このノクトンはドイツのレンズ設計者であるトロニエ(アルブレヒト・ウィルヘルム・トロニエ:Albrecht Wilhelm Tronnier、1902~1982)が設計しました。トロニエ自身は、シュナイダー(Schnider)、イスコ(ISCO)、フォクトレンダー、ツァイス(Zeiss)などと光学メーカーを転々としていますが、その過程でクセノン(Xenon)、アンギュロン(Angulon)、ウルトロン(Ultron)、ノクトン、カラースコパー(Color Skopar)、アポランター(Apo Lanthar)等々多くの名玉を設計しています。

 なお純正のライカ用の50mmF1.5レンズには、ライツ・クセノン(Leitz Xenon、1936)とズマリット(Summarit、1949)があります。この2本のレンズはクセノンであり登場が同時代であることから、一部にトロニエが設計したという考えがありますが、最新の研究によればノクトンはトロニエの設計ですが、同じ50mmF1.5のレンズであるライツ・クセノンとズマリットはライツの設計だとされています。

■いろいろと撮影してみました

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 ≪作例1、英国大使館≫ α7RⅡ、F5.6・1/320秒、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。カメラボディとレンズをチェックするときにいつも英国大使館の正面玄関を同じ場所から、同じ時間帯、同じ絞り値で撮影していますが、残念なことに天候が晴天でなかったことです。撮影時期が雨季でズバリ青空とはいきませんでしたが、描写はF5.6まで絞ってあるので、ピントを合わせたエンブレムや壁面など、昨今のレンズと大きく変わる部分はありません。

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 ≪作例2、ハスの花・Ⅰ≫ シグマfp、F1.5・1/5000秒、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。お寺のわきにある小さな池に咲く1輪のハスの花を中央に配してねらってみました。太陽光がちょうど花の部分を取り巻くようにスポット的にあたっていましたので、背後の影の部分はつぶれてしまいました。絞り開放F1.5ですが距離があるためにピントはうまくハスの花芯を含む前後に合っています。この画面からすると感覚的に絞り開放でもシャープな描写をすると思われますが、周辺まで仔細に見ていくとかなり崩れていることがわかります。しかし1950年に登場したという時代を考えると立派な描写だといえます。

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 ≪作例3、ハスの花・Ⅱ≫ シグマfp、F1.5・1/5000秒、-0.7EV補正、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。同じお寺の裏庭に大きなハス池がありました。背景の庫裡をぼかしてボケ具合を見てみました。ハスの花までは最短撮影距離の1mですが、画面中央ということもあり、A3ノビにプリントしても花びらの葉脈も描出されしっかりとした描写でした。背景の左右のボケは口径食の影響でレモン型をしていますが、それぞれの輪郭が濃くなっているので、2線ボケの影響が出ているようですが、絞り込めばこのようなボケは減少します。

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 ≪作例4、葉陰から≫ シグマfp、F2.8・1/320秒、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。口径食によるボケを出すのには、木漏れ日を背景にすればいいのです。ということでF2.8に絞り込んでの撮影ですが、撮影距離にもよりますが、リング状のボケは小さくなりますが、レモン形になり輪郭が濃くなるなどの傾向は変わりません。本来なら手前に人物を配したポートレイトなどの背景効果として利用すると面白く使えるでしょう。

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 ≪作例5、つつじの芽≫ α7RⅡ、F1.5・1/500秒、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。近接時の前ボケと後ボケを見るために撮影してみました。ピントは飛び跳ねて育ったツツジの芽とカズラの葉に合わせました。合焦部の描写の良さは言うまでもありませんが、前ボケには癖を感じさせませんが、後ボケには、グルグルと回る残存収差を感じさせます。このあたりの描写特性はオールドレンズならではのものでして、絵作り生かすこともできます。

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 ≪作例6、しぼんだアサガオの花≫ シグマfp、F2・1/1000秒、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。背景のボケ具合を見るのにちょうど良い被写体を見つけました。ピント位置は画面下1/3ぐらいの左右中央にあるしぼんだアサガオの花の部分です。背景のボケ具合を見ると、氷のノボリの文字とイラストのボケ方になんとなく癖があるのが気になるところです。左画面周辺を見るとレモン形の丸ボケが見えます。またその左下には縦方向に線が流れていますが、これは拡大して見るとわかりますが、縦の棒が横に等間隔を持って配置されているからであり2線ボケではありません。

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 ≪作例7、トクサと板壁≫ シグマfp、F2.8・1/640秒、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。まっすぐに伸びるトクサと、横に目の通った板壁の色を含めた対比が面白かったので狙いました。画面中心部は解像度的には立派なものですが、周辺に行くと甘くなるのはF1.5と大口径でF2.8に絞ったぐらいでは、致し方ないことでしょう。後ろの板塀のボケ方も癖はなく自然です。

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 ≪作例8a、絞り開放:ゴルドニア・ラシアンサスの花≫ α7RⅡ、F1.5・1/640秒、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。同じ場面で、絞り開放と絞りF2.8を比較してみました。こちら絞り開放F1.5では花のメシベの描写があまく見え、背景の石にはわずかに回転を感じますし、背景の植え込みが楕円の方向性を持ったボケであり、うるさく感じます。

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 ≪作例8b、絞りF2.8:ゴルドニア・ラシアンサスの花≫ α7RⅡ、F2.8・1/125秒、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。わずか2段F2.8に絞ることにより、花がシャープになるのは言うまでもなく、背景植栽の癖あるボケが消えました。

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 ≪作例9、カシワバアジサイ α7RⅡ、F2.8・1/125秒、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。このレンズは絞り込み効果の大きいレンズで、少し絞り込むことにより、画質はぐんと向上し、葉の表面の微細な部分も質感を伴い良く描出されています。

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 ≪作例11、消火栓≫ α7RⅡ、F4・1/125秒、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。最初は絞り開放で撮りましたが、いまひとつでした。改めて絞りF4で撮影しますと、消火栓上部金属の光沢感、さらに前後のボケ具合も素直で、ほどよい感じで写りました。

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 ≪作例12a、居酒屋≫ α7RⅡ、F1.5・1/200秒、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。手前の提灯にピントを合わせて、左右の背後に流れていく裸電球がどのような描写をするかと考えてシャッターを切りましたが、意外と素直に写りました。裸電球とはいってもどうやらLEDランプのようです。ただし拡大していくと、画面左のアウトフォーカスした女性の足がクロスしていて消え入るような感じが面白く、さらに背後の赤い信号灯、さらに手前のランプなどコマ収差がさまざまな形で出現しています。大きく拡大してプリントするとその形状をいろいろと楽しむことができそうです。

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 ≪作例12b、居酒屋≫ 上の左側を拡大して見ました。小さければわからない程度の収差です。

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 ≪作例13、スタンドカフェ≫ α7RⅡ、F2.8・1/125秒、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。あらかじめカフェの店内にピントを合わせておき、人物が通りかかったときにシャッターを切ったのですが、手前の人物は深度が浅くボケているのではないかと思いましたが、右足はジーンズの布目が見えるほどシャープで、地面の敷石もピントはきているようなので、歩行による単なる被写体ブレでした。写真的には完全に止まっているよりは、ブレていたほうが結果として効果的でした。

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 ≪作例14、Ra Sikiさん≫ α7RⅡ、F2.8・1/125秒、ISO-AUTO100、LED補助光使用、AWB、手持ち撮影。写真家でありアーティストであるRa Sikiさんの写真展会場で撮影させてもらいました。画面中央の被写体となったRaさん、上部左右の写真クロスとも申し分ない描写ですが、背後のアウトフォーカスした部分の額縁の縁を拡大して見るとわずかな色収差の影響からか色付きが見えます。このレンズが登場したのは1950年のこと、まだまだ黒白フィルムが主流であり、ここまで大きくして見ることはなかった時代でした。

■70年前のレンズをデジタルで写して見るということ
 今回のオリジナル・ノクトン50mmF1.5の撮影は2000年に行いました。実はその後、関係する写真クラブでの2022年9月の写真展テーマが“トロニエが設計したレンズを使う”と決まったのです。しかしその展示をこの時の写真だけでは埋めるのには少し物足りなく、その写真展までは時間もたっぷりあるので、新たに撮影テーマを決めて、トロニエ設計によるプロミネントマウントのノクトン50mmF1.5、ウルトロン50mmF2、ビテッサTのカラースコパー50mmF2.8の3本を使って撮影しようとなったのです。2002年9月に向けたその3本での撮影も終わりかけた時に、2000年に撮影した希少なライカスクリューマウントのオリジナル・ノクトンの撮影結果をそのままお蔵入りさせてしまうのも惜しいので、改めてこの時期にまとめてみたのがこのレポートです。
 2002年写真展に向けたトロニエの設計した3本のレンズの撮影には、ライカスクリューマウントのオリジナル・ノクトンで撮影したときの結果が大いに役立ちました。今回のオリジナル・ノクトン50mmF1.5の撮影は基本的に、1950年代のレンズがどれだけ写るかということを趣旨にして行い、2022年写真展に向けた撮影は良く写るということを二の次にして、アウトフォーカス部のボケ具合を比較してみせるという形で落ち着きました。どのようなレンズでも絞り込めば諸収差は減少してよく写るわけですが、オリジナル・ノクトン50mmF1.5では絞り込みを必要最低限にして撮影してあります。良く写るとは、現代レンズに比較してですが、このあたりを見ていくと、昨今の最新レンズとはどのようなものか見えてくるのです。先人たちのレンズ設計技術レベルの高さには驚きます。 (^_-)-☆

注)ここに掲載した2本のライカスクリューマウント「オリジナル・ノクトン50mmF1.5」は、いずれも北海道「IMAIcollection」収蔵のものです。

超廉価なTTArtisanレンズ3本セットを使ってみました

 中国のTTArtisanレンズ3本を使って評価して欲しいとわがスポンサー氏から言われ、興味大で早速購入してみたのですが、まず最初に困ったのがこの「写真にこだわる」に掲載時のタイトルでした。そのレンズはいずれも単焦点で、銘匠光学(DJ-OPTICAL)のTTArtisan APS-C 17mmF1.4、TTArtisan APS-C 35mmF1.4、TTArtisan APS-C 50mmF1.2の3本なのです。注目点は、①7月23日のニコンZfc発売わずか1週間後にZfcのボディカラーに合わせて白梨地仕上げでだしてきた、②販売代理店の焦点工房は3本セットで33,000円という恐ろしく安い価格を設定、③最新の中国レンズの実力は、ということで何を表題に盛り込むかを悩んでしまったのです。結果として上掲のようにしましたが、どのようなタイトルにするかは、なるべく多くの方々に読んでもらうためには重要なことなのです。

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≪3本のTTArtisanレンズとニコンZfc≫ 左から、TTArtisan APS-C 17mmF1.4、TTArtisan APS-C 35mmF1.4、ニコンZfc(ニッコールZ DX16-50mmF3.5-6付)、TTArtisan APS-C 50mmF1.2。ニコンZfc発売わずか1週間後に発表されたといっても、TTArtisan APS-CレンズはすでにフジフイルムXマウント用に黒色で発売されていましたので、表面を梨地シルバーにしてニコンZfc用にしたのでしょう。17mmと35mmの鏡部分にはそれぞれのレンズ構成図がプリントされています。マウント部分の口径が大きいのはフルサイズと兼用のニコンZマウント用ならではのもので、光学系は同じと考えられるフジXマウントを始めとした他社APS-C判用はもう少し細くなるでしょうから、鏡胴部のくびれはここまで目立たないかもしれません。

■外観並びに操作感

 Zfcの発売に合わせて追いかけ発売したというだけあって、表面シルバーの感じはボディにうまくマッチしています。細かく言うと、TTArtisanレンズのほうがボディ、レンズとも梨地の色がわずかに明るく感じますが、ボディ、Zニッコールレンズの表面処理仕上げと仔細に比較してみてもその差は元素材の差異からくるものではないかと考えられるレベルです。装着しようとして、マウント側を見るとまったく電気接点がありません。マニュアルフォーカスレンズだから当然ですが、何もないからexif情報が撮影したファイルに書き込まれないのは当然のこととなります。

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≪マウント後部とレンズ鏡胴部≫ レンズマウント基部には電気接点はない完全なマニュアルレンズです。絞り環と距離リングの回転方向は注目していただきたい。

 レンズの距離リングの回転方向はカメラを構えたほうから見ると、右側が∞、左が至近寄りとなり、絞りリングは、左が絞り開放、右が最小絞りとなっていて、いわゆるライカ以来の基準です。一方、ニッコールレンズはレンズ交換、距離リング、絞りリングともRFコンタックス以来の方向ですが、AFになった現在それが気になる人はあまりいないようです。TTArtisanレンズは、ライカM、富士フイルムX、マイクロ4/3、キヤノンEF-M用もあるので、それぞれマウント部分だけを除いて部品を共用させるには当然のことでしょう。さて、このレンズカメラに装着して最初に感心するのが、ヘリコイド回転のトルク感がヌメッとしてムラなく重くも軽すぎる感じもないのです。さらにこのヌメッとした摺動感は絞りリングにも共通していて他に例を見ないのですが、操作感は半絞りクリックを含めてヌメッとしてなかなか感じ良いです。

 実際ファインダーをのぞいてフォーカシングしてみると、妙にピントの山がつかみやすいのです。いままでミラーレス機でマニュアルでピントを合わせるときには、それぞれの機種によって拡大倍率は違いますが、とりあえずはターゲット部分を拡大して細かくピント合わせしていましたが、ZfcとこのTTArtisanレンズでは拡大しないでもピントが合わせやすい(合う)のです。この要因としては、ZfcのEVFが良い、レンズが大口径だから、レンズの収差が良く補正されていて解像度が高いなどが考えられます。そこで、Zfcに他の大口径レンズを着けてマニュアルでフォーカシングするとここまでは分離が良くなく、TTArtisan50mmF1.2をニコンZ7に付けてピントを合わせるとほぼ近似した感じでピントの合わせができる、他の最大口径F2レンズをマウントアダプターを介してZfcに装着してマニュアルでフォーカシングすると拡大しないでピントを合わせることができるが素早くとはいかない、となりました。つまりレンズ性能に依存する部分は大なわけです。各レンズのヘリコイドと絞りリングの摺動感、マニュアルでのピント合わせは多くの人に試してもらいましたが、異口同音にすばらしいということでした。

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≪TTArtisanレンズのレンズ構成とMTF 左から、50mmF1.2、35mmF1.4、17mmF1.4、青色部分:高屈折低分散ガラス、赤色部分:非球面レンズ、絞りはいずれも絞り羽根は10枚、最短撮影距離は各0.5m、0.28m、0.2m。

■いつもの英国大使館正面玄関を写す

 いつもならフルサイズの焦点距離35mmを基準にして撮影していますが、ZfcはAPS-C判なので、標準画角に近いということで35mmF1.4を使うことにしました。35mmだとフルサイズ換算で画角的には52.5mm相当となりますので、いつもよりは狭角になります。撮影距離、時間、天候とも同じ条件で絞りF5.6で撮影してます。

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≪英国大使館正面玄関、TTArtisan APS-C 35mmF1.4≫ 52.5mm画角:F5.6・1/1000秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。ピントは建物屋根中央直下のエンブレムに合わせました。撮影時に空をたくさん入れるか、下の地面を入れるか悩みましたが、結局間をとって屋根は切れても左下の車止めのポールの発色具合が各社で微妙に異なる注視点なので、このようになりました。

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≪エンブレム部分を画素等倍に拡大≫ このところニコンZfc(ニッコールZ DX16-50mmF3.5-6付)、リコーGRⅢxとAPS-C判が続きましたが、比較して見ていただければお分かりのようにそれぞれがきれいに問題なく写っています。わずかにTTArtisan  35mmF1.4の場面がコントラストが高く立体感があるように感じますが、撮影倍率、晴天の度合い、日影などによっても 変わりますので、はっきりとレンズの性能からくるとは決めつけられない部分でもあります。

■近距離で絞り開放の解像とボケ味を見てみました

 3本のレンズを絞り開放で画面中央の葉にピントを合わせ、前後のツツジ葉のボケ具合でそれぞれレンズの性質を知ることができます。撮影は50mmをスタートに徐々に接近しています。

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≪50mmF1.2≫ 75mm画角:撮影距離約60cm、絞り開放F1.2・1/4000秒、ISO-AUTO125、AWB。ボケ具合を見ると撮影距離にもよりますが、前側に焦点深度が深く、後側は浅く感じますが、計算によると許容錯乱円を0.03mmにとると、前側は4.7mm、後側は4.8mmとなり、合計で9.5mmとなります。背後と前側をよく見るとゆるやかな円弧を描いていますが、一般撮影ではまったく目立たない程度です。画面全体で見ると柔らかなボケを期待できます。

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≪35mmF1.4≫ 52.5mm画角:撮影距離約50cm、絞り開放F1.4・1/4000秒、ISO-AUTO110、AWB。枯葉を同じような寸法で写るようにと10cmぐらい近づいて撮影しました。50mmF1.2同様に前側の被写界深度が深いのですが、後ろ側のボケはあまり方向性を感じさせません。画角的には52.5mmですから、主要被写体を手前に置き背後を大きくぼかすような撮影に向くような感じです。

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≪17mmF1.4≫ 25.5mm画角:撮影距離約40cm、絞り開放F1.2・1/4000秒、ISO-AUTO125、AWB。撮影距離40cmですが、主要被写体の枯葉にはもっともっと接近してよかった感じです。フルサイズの画角にすると25.5mmですから、かなりワイドです。背景のボケ具合を見ると、枯葉を中心に大きく円弧を描いているのがわかります。撮影対象によってはうまく利用すると面白い写真が撮れるでしょう。枯葉の表面を写した部分の解像感は高く画素等倍まで拡大すると葉脈が見えるほどです。

■ランダムな場面で使ってみました

 何を何ミリのレンズを使って何を撮るかということですが、せっかくの大口径レンズですから、なるべく開放に近い状態で撮影することにしました。すでにこちらのZシリーの交換レンズとしては、Zfc用にニッコールZ DX16-50mmF3.5-6があるので、絞り込んで使うならばTTArtisan レンズの価値がなくなってしまうのです。

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≪50mmF1.2、Ra Sikiさん≫ 75mm画角:絞り開放F1.2・1/80秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。写真家であり、アーティストであるRa Sikiさんの個展にお伺いしての1枚。ピントは彼女の右目に合わせていますが、撮影後画素等倍にまで拡大して見ても十分な画質です。Zfcボディには手振れ補正機能はなく、ニコンの場合レンズ側に手振れ補正のVR機能がついています。ということで、このレンズには手振れ補正機構など何もついていません。F1.2絞り優先AEの結果ですが、ISOオートで125となり、シャッター速度1/80秒で画素等倍まで拡大できるほど手振れの影響はなかったのです。ピントを合わせた部分のシャープさはかなりのものですが、画面右上の文字の部分を画素等倍にして見ると、ごくわずかに色にじみがありますが、これはきわめて少ない部類に入ります。

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≪50mmF1.2、とよけん先生・Ⅰ75mm画角:絞り開放F1.2・1/125秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。写真業界ではユーザー向けの技術解説を一手に引き受ける豊田堅二さんです。さすが日芸の写真学科で教鞭をとっていただけに、撮影をお願いするとさっと半身になりにっこり笑うというのはその成果でしょう。ピントは左目に合わせていますが、画素等倍まで拡大すると眉毛が1本1本崩れないで解像してます。Raさんの時のカットでは左背後のボケはどのような写真であったかまったくイメージできませんが、こちらのカットでは背後のボケも見たかったのであえて人物を配しましたが、癖のない柔らかなボケ味を確認できました。

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≪35mmF1.4、とよけん先生・Ⅱ≫ 画角52.5mm相当:絞り開放F1.4・1/125秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。せっかくですから、レンズ交換して52.5mm相当画角でも撮影させてもらいました。身の構え方、微笑み方などまったく50mmの時と同じなのはまるでプロのモデルを感じさせます。レンズの解像感は50mmF1.2と大きく変わる部分はありませんが、背景のボケ具合を見ると、それぞれが誰だかわかるのですが、人間の画像解析能力もすごいということですが、撮影シーンにもよるかもしれませんが、個人的には扱いやすさを含めて50mmF1.2が私の好みとなります。

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≪17mmF1.4、YS-11・Ⅰ≫ 画角25.5mm相当:絞りF5.6・1/800秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。いつもの場所からの撮影です。この位置からですと、28mmとか35mm画角が良いのですが、さすが25.5mm画角では広すぎます。空には青空が見えますが、天候としてはほぼ曇天です。それだけに光は柔らかく、ハイライトが飛ぶようなことはありません。(航空公園駅前にて)

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≪35mmF1.4、YS-11・Ⅱ≫ 画角52.5mm相当:絞りF5.6・1/500秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。画角52.5mm相当だとはみ出てしまいます。ピントは17mmも35mmも同じというか、他機種を含めいつもと同じようにプロペラ右にあるエンジンケースの表面に合わせていますが、画素等倍にしてみると、フルサイズの場合には文字がどうにか読めるのに、読めません。背後の建物の避雷針もそうですが、微細な部分がわかりません。これはレンズの解像力以前にAPS-Cで2,151万画素の画素数に依存する部分が大きく関係していると思われます。(航空公園駅前にて)

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≪35mmF1.4、路傍のオブジェ≫ 画角52.5mm相当:絞りF2・1/800秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。金属の光沢感と背後のボケ具合を見るための撮影です。アルミの鋳造品だと思いますが、アルミとしての質感は十分に再現されています。背後道路のグリーンベルトはムラなく軟らかくきれいにでていますが、左背後の焦点の紫色看板の文字が連続した固まりに見えるのがまずかに気になります。(航空公園駅近くにて)

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≪35mmF1.4、コスモス・Ⅰ≫ 画角52.5mm相当:絞りF1.4・1/2000秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。秋の風物詩といえば漢字で書くとわかるように“秋桜”でありコスモスなのです。35mmF1.4レンズでわりと周辺を入れ込んで、花を中央に配してめしべにピントを合わせてありますが、めしべの部分を画素等倍に拡大して見るとかなりシャープであることがわかります。中央の花を囲むように背景のボケは緩やかに円弧を描いているように感じますが、この種のボケ具合は方向性を感じさせないほうがベストなのでしょうが、ボケの具合いは撮影距離の違いや個人の受け止め方によっても評価は大きく変わります。(所沢航空公園・Ⅰ)

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≪35mmF1.4、コスモス・Ⅱ≫ 画角52.5mm相当:絞りF1.4・1/800秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。同じ35mm1.4レンズで、やはり絞り開放で花の中心のメシベに合わせましたが大変シャープです。背景も少しはすっきりした感じになりましたが、もともとコスモスの花の撮影はごちゃごちゃした葉や花を背景のボケに置くのでなく、青空の中に背景にして花を撮るとと、秋らしく撮影することができます。(所沢航空公園・Ⅰ)

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≪17mmF1.4、コスモス・Ⅲ≫ 画角25.5mm相当:絞りF2.8・1/1600秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。やはりコスモスは青空がいいということで、青空を確認し再度出向きました。ところが青空の下でF1.4のレンズは絞り開放だとZfcのシャッター最高速度1/4000秒では露出オーバーとなってしまうのです。やむなく安全を見込んでF2.8に絞っての撮影となりましたが、ピントを合わせたコスモスのメシベの描写は深度も深くなり、数段上った感じでシャープになりました。(所沢航空公園・Ⅱ)

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≪50mmF1.2、少年航空兵の像≫ 画角75mm相当:絞りF2・1/400秒、ISO-AUTO125、-1EV露出補正、AWB、手持ち撮影。背後の緑に引っ張られて像の表面のハイライト部分が飛び、露出オーバー気味になることを避けるために-1EVの露出補正をかけました。ピントは中央の少年の鼻のあたりに合わせましたが、左右640ピクセルにリサイズしてあるために、このカットからは像のシャープさはわかりません。背景の樹木の葉の間に見えるボケは特筆することもない普通の感じです。(所沢航空公園・Ⅰ)

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≪50mmF1.2、フリスビーを投げる≫ 画角75mm相当:絞りF2・1/400秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。少年航空兵の像を撮影後背後の広場でフリスビーをやっている2人を見つけ素早く近づきシャッターを切りました。投げるときは上半身を振るだけぐらいで大きく動きませんが、受け取るときにはフリスビーの投げられた方に走って行くので、体が大きく動かない投げるときに素早くピントを合わせシャッターを切りました。レンジファインダー機やAF以前の一眼レフでは当たり前のこととしてやっていた、マニュアルフォーカスでのスナップ撮影です。私はあまりやりませんが、17mmレンズでしたら少し絞り込んでパンフォーカス撮影も可能でしょう。(所沢航空公園・Ⅰ)

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≪17mmF1.4、大樹≫ 画角25.5mm相当:絞りF5.6・1/30秒、ISO-AUTO1600、-1EV露出補正、AWB、手持ち撮影。樹木の表皮部分と表面の苔がオーバーになり重厚感がなくなるのを避けるためにマイナスの露出補正を加えましたが、このVGAの左右640ピクセルでは重厚さを感じるのも難しいですね。(所沢航空公園・Ⅰ)

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≪17mmF1.4、戦闘機のエンジン≫ 画角25.5mm相当:絞りF2.8・1/30秒、ISO-AUTO720、+0.3EV露出補正、AWB、手持ち撮影。背景の色ライティングの関係で+0.3EVの露出補正を加えましたが、無視しても後でレタッチソフトでカーブを少し持ち上げる程度で済みます。金属の質感は十分にでています。(所沢航空発祥記念館

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≪35mmF1.4、大型ヘリコプター前部≫ 画角52.5mm相当:絞りF2.8・1/40秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。機種名は記録してこなかったので不明ですが、ヘリコプター操縦席の全部がパカリと観音開きになるのです。薄汚れた赤い開閉扉レバー、リベットの打ち込まれた黒色のヘッド部、それぞれの質感もいい感じで再現されました。(所沢航空発祥記念館

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≪17mmF1.4、ヘリコプターと小型機≫ 画角25.5mm相当:絞りF2.8・1/30秒、ISO-AUTO280、+0.7EV露出補正、AWB、手持ち撮影。ピントは黄色い小型機のプロペラに合わせてあります。撮影場所の関係で背景光が強いのとオレンジ色をきれいに出したかったので露出補正は+0.7EVとしました。拡大するとわかりますがプロペラはシャープにしっかりと描写され、機体の光沢感もよく出ています。(所沢航空発祥記念館

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≪17mmF1.4、ヘリコプターとHONDA小型機≫ 画角25.5mm相当:絞りF2.8・1/30秒、ISO-AUTO280、+0.3EV露出補正、AWB、手持ち撮影。背後からの自然光の影響を受けないように+0.3EV露出補正。ピントはヘリコプター機体わき腹の“JG-0002”に合わせました。(所沢航空発祥記念館

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≪35mmF1.4、シンボルタワー≫ 画角52.5mm相当:絞りF2.8・1/1600秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。やはり写真は青空の下で撮るべきですね。ということで晴天を確認して出向いてきて撮影した1枚です。絞りはF2.8と絞り込んでいますが、周辺光量の落ちも感じさせません。(所沢航空公園・Ⅱ)

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≪50mmF1.2、いつもの飛行機≫ 画角75mm相当:絞りF5.6・1/640秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。この飛行機は今までに複数のカメラで撮影してきましたが、かなり高画質に撮れています。(所沢航空公園・Ⅱ)

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≪50mmF1.2、英国大使館外灯≫ 画角75mm相当:絞りF2・1/3200秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。英国大使館から返還された皇居外苑工事の行われている門柱の上にある外灯の頭部の冠にピントを合わせ、背後の大ケヤキの葉のボケ具合を見てみました。(千鳥ヶ淵

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≪50mmF1.2、九段方面遠望≫ 画角75mm相当:絞りF2.8・1/4000秒、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。久しぶりの青空、75mm相当といえば準望遠クラスであるが、あまり絞り込まずに遠くのビル群を狙ってみました。画素等倍に拡大すると窓枠がひとつひとつきれいに分離して見えます。前ボケも気になることはありません。(千鳥ヶ淵

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≪35mmF1.4、黄葉≫ 画角52.5mm相当:絞りF2.8・1/400秒、ISO-AUTO125、+0.3EV露出補正、AWB、手持ち撮影。左手前に色づいた葉を配しピントを合わせ、右背後の常緑樹の葉をアウトフォーカスして丸ボケを作り出してみました。ピントを合わせた葉はセンターより外れていますが産毛のような感じと葉脈まで写り、絞りF2.8での解像感はなかなかです。(東村山北山公園)

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≪17mmF1.4、モミジ≫ 画角25.5mm相当:絞りF1.4・1/4000秒、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。レンズを前に写真仲間のHTさんと話していたら、逆光時はどうだろうというのです。何でもポートレイトでは逆光での撮影は多用されるというのです。そこで、紅葉前でしたがモミジの葉の下にもぐり撮影したカットです。絞りも開放ですから中央の少し色づいたモミジの葉の間から太陽を中央に配置してシャッターを切りましたが、フレア、ゴーストの類は見れなかったです。極端に太陽を左端においてファインダーをのぞいた時に薄くフレアが発生しましたが、もともと私は逆光で写真を撮るのは日の出と日没だけなので、あまり他のレンズを含めて気にならないのです。(東村山北山公園)

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≪35mmF1.4、ゴジラが戻ってきた≫ 画角52.5mm相当:絞りF1.4・1/200秒、ISO-AUTO125、-1EV、AWB、手持ち撮影、小雨。久しぶりに新宿に写真展を見に行った帰りにゴジラ通りをのぞくと歌舞伎町のゴジラに照明があたっていました。コロナ禍において、長い間消灯されていたのが再び点灯されたのです。小雨でしたが、カメラを取り出し撮影。ピントはゴジラの顔に合わせましたが、35mmという焦点距離は十分に深度内に入るのでしょうか、手前の看板まで含めてシャープでした。(新宿歌舞伎町)

f:id:ilovephoto:20211024002639j:plain≪画素等倍に拡大してみました≫ 左:マツモトキヨシの看板の左の看板、右:ゴジラの顔と歯。左の看板から、ゴジラまでは数十メートルあると思いますが、EVFでのピント合わせはしっかりとゴジラの顔をつかんでピントのずれを確認できました。それにしても、手持ちで絞り開放F1.4の描写、これだけの拡大に耐えるというのもすごいです。

■アウトフォーカス部の口径食を見てみました

 それぞれのレンズの口径食をいつもの場所で撮影してみました。手前の丸いポールの頭にピントを合わせていますが、焦点距離によって段階的に撮影距離を変えてあります。ふだんこのシーンの撮影ではマイナスの露出補正を加えるのですが、テスト撮影段階で露出補正なしでも問題ないと判断しました。

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50mmF1.2≫ 75mm画角:絞り開放F1.2・1/100秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影、撮影距離:約70cm。最近は“ボケフォト写真”と称して点光源のアウトフォーカス部分を玉ボケ、丸ボケ、シャボン玉ボケ、バブルボケ、レモンボケとか言って、うまく作画の中にこれらのボケを取り入れて画面を構成するのが流行っています。それぞれのレンズの焦点距離や絞りの設定値、フォーカス位置、点光源の位置などにより、その形状は変わりますが、その形状などによりそれぞれのレンズのもつ残存収差などがわかるとされています。このカットからは、左端にレモン(ラグビーボール)型をしたのがありますが、これはレンズが球面であるために中心部と周辺部から入る光が異なるために楕円になり、このような現象を口径食と呼んでいます。なおそれぞれの円の色は、元の光源の色に依存するわけでレンズ性能から導かれた色ではありません。この場面では、ビルから掲げられたネオンサイン、街灯、信号、車のテールランプなどが複雑に関係して描出されています。この円形はそれぞれをよく見るとエッジが強調されて見えますが、このような場合には2線ボケがあり、球面収差過剰補正型のレンズに現れるとされています。(新宿)

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35mmF1.4≫ 52.5mm画角:絞り開放F1.4・1/125秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影、撮影距離:約50cm。丸いポールはいつも人物の頭とか顔だと思って撮影しています。このような雑踏の中でのボケを生かしたポートレイト撮影もいいですが、一番簡単にきれいなボケが得られるのはクリスマスのイルミネーションを背景にするのが良いでしょう。(新宿)

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17mmF1.4≫ 25.5mm画角:絞り開放F1.4・1/80秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。撮影距離:約30cm。この丸いボケを小さくするには絞り込めば良く、焦点距離が短くなれば良いこともこれらの撮影結果からわかることです。このカットからは面白い像を見ることができます。右端のビルに紫色に矢印が重なったように見えますが、これはコマ収差が発生していると考えられます。この収差は絞り込むことにより解消されますが、APS-C非球面レンズを使い17mmF1.4とかなりスペック的に頑張ったためだと考えられますが、10万円以上さらには100万円以上のレンズでも発生を確認したことはありますのであまり気にすることではなく、日常にこのようなシーンの撮影はあまりないでしょうし、むしろ昨今のボケフォトブームにのって積極的に画作りに取り込んでいくのも面白いですね。(新宿)

■中国製レンズに何を期待するか

 発売からすっかり時間が経ってのレポートとなってしまいました。この間コロナ禍ということもあり、3本のレンズを持って遠くに撮影にでるようなことはできませんでしたが、仕事に出かけるときにはカバンの中にZfcと3本のTTArtisanを入れて機会あればと持ち歩きました。しかしなかなかシャッターを切るようなチャンスは巡ってきませんでしたが、興味ありそうな人にはカメラとレンズを渡して操作してシャッターを切ってもらいました。皆さんが口をそろえたように言うことは、ヘリコイドの摺動が滑らかで、ピントが合わせやすいということでした。機械加工の技術レベルの高さを知るわけですが、本質的なところでの画質はどういうレベルにあるかということになりますが、その点に関しても問題ないことは実写結果から十分にお判りいただけると思うのです。

 今回のTTArtisanレンズ3本の実写は、最初に撮影した英国大使館の撮影の時は晴天でしたが、以後天気の良い日と私の撮影できるタイミングがなかなかうまく合わないのです。それでも薄曇りで撮影を強行していたら、やはりしっくりこないのです。そこで所沢航空公園では改めて青空の日に撮影したのを加えましたが、やはり天候1つで写った写真の印象は大きく変わるのです。操作上のマニュアルフォーカスは致し方ないとして、画質はこれといって不満はないのです。

 中国製のカメラとレンズというと、私の手元にはクラシックカメラの位置づけで1960年代に製造された距離計連動機の「上海Ⅱd」があります。レンズは上海50mmF3.5ですが、純粋に中国企業が設計・製造したカメラとしてコレクションしています。以後フィルムカメラ時代には二眼レフや一眼レフのシーガルなど多くの機種があり、デジタルカメラの初期にはコンパクトカメラ分野に進出もありましたが、スマホの台頭によりコンパクトデジタルカメラの衰退とともにすっかり中国製カメラは影を潜めてしまいました。そのような中で徐々に顔を出してきたのがミラーレス機の登場に伴った中国製交換レンズです。今をさかのぼる2016年の2月に行われたCP+2016には、従来からのKIPONに加え、中一光学が出展していて、その時ちょっと使わせてと拝借して撮影したのが以下の2枚です。

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≪KIPON IBELUX 40mmF0.85≫ ルミックスG1:絞り開放F0.85・1/125秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。当時マウントアダプター製造メーカーであったキポンがレンズ分野に進出したばかりでした。ちょっと拝借してこれだけ撮れるのに驚きました。APS-CとM4/3用で販売価格は当時8万円ぐらい。(2016CP+にて)

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≪ミタコンSeed Master 135mmF1.4≫ ソニーα7R:絞り開放F1.4・1/320秒、ISO-AUTO1000、AWB、手持ち撮影。中一光学の試作品で、発売するなら受注で13万円ぐらいと伝えられ、やはり試作という50mmF0.95も借りて使いましたが、この時期改めて見直すとどちらもよく写っていて、いずれもその後発売されています。(2016CP+にて)

 この大きさではわかりにくいですが、どちらもピントは左目に合わせていて、拡大するとまつ毛がしっかりと解像しています。いずれにしても10万円前後はするものの、当時はよく写ると感心したものです。しかし、今回は少し事情が異なります。操作感が良好で、良く写るのは当然のこととして、とにかく価格が安いのです。それも光学ガラスには高屈折率低分散ガラス、非球面レンズまで使い、さらに白梨地仕上げの金属製となれば、昨今の各社最新レンズのうたい文句と変わる部分はありません。もちろんAFに非連動という問題は残りますが、最近はマニュアルでのピント合わせも気にならないという若者世代もいるので、話は難しいです。ただ写真を撮ることが趣味であり嗜好性の高いものですから、所有することによる満足感、もちろん高額だから、有名ブランドだから、逆に安いからと、価値観は人それぞれなわけですから一概には判断は下せません。

 そんな話をあるレンズ専業メーカーの役員を務めた方と話していたら、写真レンズだからまだ大丈夫な感じがしますが、工業用のセキュリティー分野のレンズは、かつては日本が圧倒的なシェアを持っていたのに、わずか4年ほどの間に中国企業に席巻されてしまったのが今だというのです。セキュリティー用レンズに対して、写真用は規模が小さいからビジネスとしてはうま味が少ないから参入はほどほどではないだろうか、それだけに写真用のレンズ分野に参入するためにはそれなりの志が必要だというのです。

 志といえば、日本のレンズメーカーもそれなりの歴史的経緯と企業理念をもって写真レンズを製造していると理解していますが、中国企業もいくつかそのようなことをアピールしているのです。最近ではズミクロン35mm8枚玉を現代に復刻させた“光影鏡頭實驗室 LIGHT LENS LAB”の周さん、また今回取り上げたTTArtisanレンズも、元はライカレンズ好きが7人集まって7 Artisan(7工匠)というレンズ会社を興し、さらにそこから分かれて独立したのがTTArtisanつまり銘匠光学(DJ-OPTICAL)と聞いていますが、設立からわずか数年の会社がこのようなレンズを作り上げる下地が中国にでき上っているのも驚きです。

 現在、ミラーレス機のAF対応の交換レンズは、ニコンキヤノンサードパーティーからのはなく自社ブランドだけですが、ソニー富士フイルムの交換レンズには国内外の複数のレンズメーカーが参画しています。もちろんこれはAF対応のレンズであって、その背景には何らかのライセンス供与の問題があるだろうということは素人でもわかることですが、その間隙を埋めているのがここで取り上げたTTArtisanレンズなど単焦点のマニュアルフォーカス式の交換レンズではないかと思うわけです。これからのレンズ交換式カメラが、どのように展開されていくかは未知数ですが、単に光学性能や製造技術だけでは語れなくなっているのがミラーレス機の交換レンズだと思うわけです。 (-.-)

おまけ:ほぼ1月以上マニュアルでのピント合わせで撮影を行ってきましたが、それなりに確実なピント合わせの撮影テクニックを会得することができました。まずファインダーをのぞき、ピントを合わせたい所にAFフレームを持っていきます。次にファインダーから目を離して拡大(+)ボタンを2回ほど押してから、再度ファインダーをのぞき目的のところでピントを細かく合わせてシャッターを切ります。シャッターを切るときの注意点は水平にカメラを構えることが大切です。本来ならば、もう一度フレーミングの確認を行いたいのですが、手持ち撮影では縮小(-)を押すと微妙にピントがずれるのでそのままシャッターを切ったほうが、しっかりとピントが合うのです。もちろん、絞り込んだり、三脚を使っての撮影ではこの限りではありませんが、マニュアルフォーカスで大口径を生かすには大変有効な撮影法だと思います。この方法に慣れるとかなり便利で、ニコンZfcだけでなく他のニコンZ機、キヤノンのEOS Rシリーズなどでも使えるテクニックです。

 

リコーGRⅢxを使ってみました

 リコーから40mm画角レンズを搭載したRICOH GRⅢxが2021年10月1日に発売されました。フィルム時代1996年のGR1以来、小型センサーの2005年GRデジタル、APS-Cの大型センサーのGRになってからも一貫して焦点距離28mm画角を守ってきたGRが40mm画角レンズを組み込んだというのは驚きです。この間2001年のGR21など派生機種はありましたが、“GRⅢx”ではGRシリーズの一貫した28mm画角から、40mm画角に変更されたのです。基本的に単焦点レンズを組み込んだコンパクトカメラは、フィルムカメラの時代から、28mm、35mm、38mm、40mm、45mm、50mmと種々ありました。

 実は焦点距離28mmの画角というのは好き嫌いは別にして広角すぎるきらいがあり、使いこなしは難しく、フィルムカメラの時代には28mmという広角レンズがついたコンパクトカメラは売れないというジンクスがあったくらいです。そのジンクスを破って超広角28mmを付けて成功した“リコーGR”の画角が40mmなったわけですから話題性は十分です。

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≪リコーGRⅢとGRⅢx ①≫ 外観的にGRⅢとGRⅢxは、まったくと言っていいほど区別はつきません。左がGRⅢで、右がGRⅢxです。そこでGRⅢは、私なりにカスタマイズした緞通の組みひもストラップと外付けの“フォクトレンダー28/35ミニファインダー”を付けた状態で濃紺をバックに撮影し、高級感をだしてみました。形状的にはどう見ても同じですね。

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≪リコーGRⅢとGRⅢx ② 仔細に見ると≫

左)まったく同じとはいえ上下に置いてみると、GRⅢのレンズ鏡胴前面にはGR LENS f=18.3mm 1:2.8、GRⅢxにはGR LENS f=26.1mm 1:2.8と印字されています。つまりAPS-C画面サイズでは18.3mmが28mm画角、26.1mm が40mm画角になるのです。

右)さらによく見ると、GRⅢとGRⅢx のレンズ鏡胴部の長さが少し違うのです。レンズ鏡胴部前面を対向させて置くとわかりますが、レンズ鏡胴外枠の上下中心部で鏡胴部長はボディ前面からGRⅢは6.8mm、GRⅢxは8.5mmで、 その差はわずか1.7mmなので目視的にも、ケースなどを流用するにしても、まったく無視できる違いでしかありません。

■40mmレンズの意味するもの

 ライカに端を発する標準レンズの画角は、広角=35mm、標準=50mmという関係が古くから成り立っていました。ここに40mmという画角を間に入れてみると、35mmより5mmぶん長く、50mmより10mm広角だということになります。かつてフィルムカメラの時代に35mm一眼レフ用の交換レンズではSMCペンタックス-M40mm F2.8やヘキサノンAR40mmF1.8などが薄型のパンケーキレンズとして知られていました。いずれもフィルムカメラの時代の話であって、焦点距離的には準広角という感じですが、実際は標準レンズとして位置づけられているのが多いのです。

 35mmカメラの標準レンズは焦点距離何ミリかとはよく議論されてきました。デジタルの時代になるとセンサーサイズ(画面サイズ)も変わるので、画角的には等価な値を示してみても、実焦点距離が異なるために各絞り値における被写界深度も異なるわけで、GRⅢの28mm画角がGRⅢxでは40mm画角になったことで、それだけ標準レンズに近づいたというか、人間の見た目の画角に近くなったいうことです。それでは人間の目は35mm判フルサイズ(ライカ判)で焦点距離にすると35mmだという学説がありますが、自分は28mmだ、いや35mmだ、自分は50mmだと考えている人もいるし、年代によって視野が狭くなるということも言われていますが、基本的に撮影者はお気に入りの画角を使えば良いわけで、それが自分にとっての標準レンズとなるのです。

■押すだけであっても、自分用にカスタマイズする

 開梱して少しだけ自分好みにカスタマイズしました。現代のカメラは高級ミラーレス機からコンパクトカメラまで、基本的に押すだけで良いわけで、オートのままでどれだけしっかりと映るかというのが、各社技術陣の腕の見せどころです。GRⅢxもその例外でなくモードダイアルを見ると、P・Av・Tv・Mのモードがあります。私の撮影では、GRシリーズはP(プログラムAE)モードでなるべく済ますようにしています。もちろん例外もあり、近接した物撮りでは絞り込んで撮影するようにしていますが、それもプログラムシフトで自由に絞り値を変えられるからです。

 とはいっても、いくつか自分用に最初から設定しておくようにしています。①まず最初にセットしたのが「自動水平」。デフォルトはOFFですがONにすれば手振れ補正と併用しても±1°までの斜めを水平に自動補正してくれます。②モードダイヤルのU1にクロップ50mm画角を設定、U2にクロップ71mm画角を設定、③プログラムラインをノーマルから開放優先へセット。GRⅢではノーマルにしていましたがGRⅢxでは少し背景にボケを出したいからGRⅢxではAF性能もアップしているだろうと考え、AF性能を見るためにも開放優先に設定してみました。このほかアウトドアモニターをノーマルから「プラス1」にセット。これは今回屋外でスナップを撮ろうとすると考えたからです。

 これらの設定で撮影時に目に見えてわかるのは、クロップの50mm画角と71mm画角です。これは、設定してみると大変便利で、40mm画角(6000×4000ピクセル)、50mm画角(4800×3200ピクセル)、71mm画角(3360×2240ピクセル)と3焦点カメラとして使えるのです。クロップは言葉を変えるとトリミングというわけで、望遠側になってもボケ量は同じで、データ的には不利なような気がしますが、71mm画角でもA3への拡大はカバーしますので普段使いのカメラとしては必要十分です。

■GRⅢとGRⅢxのクロップによる画角を比較してみました

 遠景を動くことなく撮影するために、この場面だけ三脚を使用しました。

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≪左:28mm画角のGRⅢ、右:GRⅢxの40mm画角≫ 風景だけで比較を見るのは難しいので、菖蒲田の奥に建つあづま屋を中心に配置した屋根の長さからするとGRⅢxのほうが約1.5倍長く(大きく)写ってます。これは、どちらが良いかというようなことではなく、もっと大きく写したいときは近づけばよく、小さく入れたいときは後ろに下がれば良いわけですが、右背後の山の切れ方は、画角と撮影距離によっても変わってくるでしょう。

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≪左:35mm画角のGRⅢ、右:GRⅢxの50mm画角≫ 人間の目は35mmライカ判の撮影レンズに相当すると何ミリかというのでは、生理光学的にはライカ判で焦点距離約35mmとされています。

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≪左:50mm画角のGRⅢ、右:GRⅢxの71mm画角≫ GRⅢxは71mm相当画角ということで十分望遠感がでています。どちらもデータ量(画素数)的には同じなのでA3~A3ノビぐらいはカバーします。

■40mm画角で、いつもの英国大使館正面玄関を撮影してみました

 私のレポートの実写は英国大使館の正面玄関を、晴天の日、朝10時半ぐらいに撮影することに決めてます。撮影位置も同じで、絞り値もF5.6と決めています。

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≪英国大使館正面玄関≫ 26.1mm(35mm判で40mm相当画角)、絞り優先AE、F5.6・1/1000秒、ISO200、AWB。久しぶりの青空です。まずは恒例の被写体からということで、いつもの時間に、いつもの距離で、屋根中央直下のエンブレムにピントを合わせてあります。わずかに露出がアンダーで空の色が濃いいと感じるかもしれしれませんが、これは天気が良すぎて、被写体コントラストが高いからでしょう。APS-C判ですが、画素数は2400万画素あるのでこの被写体ではまったく問題ない描写をするのは前回のニコンZfcでも了解している部分です。ところで、この場面を撮影するのには、水平を出して、屋根中央直下のエンブレムにピントを合わせるのですが、ミラーレス一眼や一眼レフではフォーカスポイントをそこに持っていくのですが、GRⅢxでは背面液晶に写ったエンブレム部分を指でタッチすることにより行いました。最新の機種ではほとんど同様な動作で行えますが、本機では小型・軽量なため右手でカメラを構えた状態で、親指でピントを合わせたいところにタッチして、人差し指でシャッターボタンを押すという動作が自然に行えるのです。もちろん片手でもよいのですが、左手でしっかりと押さえておくことも大切です。ちなみに私の手指は、大きいほうではなく小さめです。

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≪英国大使館エンブレムを画素等倍まで拡大してみました≫ 前回のニコンZ fcと同様にGRⅢxはAPS-Cフォーマットです。2400万画素は必要十分でありますが、A3ノビぐらいに拡大プリントしてもまったく問題ない画質です。このシリーズでは、フルサイズを含めた各機種を同様な撮影を行い、拡大して見せていますのでご覧ください。キーワードは、#写真にこだわる、#カメラ機種名(ニコンZ fcなど)などです。

■私のリコーGRシリーズの構え方

 私が実践しているGRシリーズカメラでの撮影法です。いずれもブレなくしっかりと撮影するときの構え方ですが、自作のネックストラップを使います。トップの写真にも出ていますが、GRⅢからGRⅢxに付け替えて使いました。このストラップは、学生服とジーンズの町で知られる岡山倉敷の児島に行ったときにジーンズショップで求めた緞通の組みひも端物ですが、軽くて丈夫で布の肌触りがよいので常用しています。

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左)背面液晶をしっかりのぞいて撮影するとき、自分の目の視度にだいたい合った距離で腕を伸ばし切らない状態で短く止めます。ストラップを首にかけ腕を突っ張らせて背面LCDファインダーをのぞいてシャッターを切るのです。首で押さえているために、ブレはほとんどありません。右)ノー・ファインダー・ローアングル撮影の時は、ストラップを長くしてお腹の辺りで下に押さえるようにしてシャッターボタンを押すのです。この方法でもブレのない撮影が期待できます。40mm画角の左右実写範囲の把握が必要となりますが、わずかに水平から上に向けての撮影など、多少の慣れは必要となりますが、撮影できた写真は、子供の視点からの撮影とか言いますが、相手に気づかかれない撮影にも向いていて新鮮な写真が撮れます。

■ランダムな被写体で撮影

 40mm画角になったGRⅢx、どんな感じで写るのだろうかとランダムに撮影してみました。

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≪ミストシャワー≫ 26.1mm(40mm画角)、絞りプログラムAE、F3.5・1/800秒、ISO200、AWB。夏も終えたのにミストシャワーが降り注いでる先に男性がベンチに。これはいいと近づきましたが、左端の立て看板のないところまで行きたかったのですが、ミストでレンズが濡れる気がしましたので断念。そんなとことで考えていたらマラソンの女性がきたので1枚。すかさず2枚目を切りましたが顔をそむけられてしまいました。隠し撮りとは別のものですが、正面きった街中スナップはこのへんに難しさを感じた次第です。

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≪銀レフ的日傘の2人≫ 26.1mm(40mm画角)、絞りプログラムAE、F5・1/1600秒、ISO200、-1.7EV、AWB。遊歩道を歩いていたらまるで銀レフのような傘をさした人がベンチで休憩していましたので、銀色の傘が飛ばないようにマイナスの露出補正をかけました。最初は銀レフ雨傘を主題にと考えていましたが、画面に変化がないので対向位置にマラソンランナーが来た時のカットです。もっと近づいて、中にはどんな人がいるのだろうかとあれこれ考えたのですが、すぐに歩き出したのでわかりましたが、お母さんと小学生低学年の男の子でした。わりと閑散としていましたので、もっと近づけば良いのでしょうが、40mm画角でもこれ以上はというギリギリでした。

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≪ハトのお立ち台≫ 26.1mm(50mm画角にクロップ)、絞りプログラムAE、F5・1/400秒、ISO100、-1EV、AWB。いつ行っても、彫像の上にハトが数羽止まっています。像が黒いのでストレートに露出補正なしで撮影すると、背景の緑に引っ張られてオーバー気味となるので-1EVの露出補正を加えました。いつもだと像の頭と顔には白いハトの糞が目立つのですが、この日は清掃されたばかりのようできれいでした。

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大王松 26.1mm(40mm画角)、絞りプログラムAE、F4・1/1000秒、ISO200、AWB。松の中でも最も葉の長い種類とされる大王松です。それぞれの葉のシャープさ、光沢感とともにいい感じで描出されています。

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不動明王   26.1mm(40mm画角)、絞りプログラムAE、F4・1/1000秒、ISO200、AWB。近所のお寺の石仏群を撮影して、シャープさと背景のボケ具合を見るために、一番端にに並んでいる不動明王を斜めから撮影してみました。この状態で、不動明王像で顔認識したのは驚きました。この画面で見てもわかりにくいかもしれませんが、背後に行くにしたがって徐々にボケていく感じがあり、大きく伸ばすと奥行き感が明瞭に示されるでしょう。

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≪ホテルの門章≫ 26.1mm(40mm画角)、プログラムAE、F3.5・1/800秒、ISO200、AWB。わりと近接の被写体で背景のボケの具合を見るために撮影してみました。天候が良く、メインの文章がキラキラと金色に輝いていた結果、かななり明るいとみなされ、絞りはF3.5と絞られていますが、ボケ具合は素直でGRⅢより少し良いかなという感じです。

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≪水咲奈々さん≫ 26.1mm(40mm画角)、プログラムAE、F2.8・1/40秒、ISO500、AWB。水咲さんの個展「みずあかり」にお邪魔したときに撮影させていただきました。ピュアWプリントという反射と透過で見られるインクジェットプリントですが、カメラ側と背景からの光量バランスがよかったせいか露出補正なしで適正な感じに撮影できました。

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≪坂の途中にある喫茶店 26.1mm(71mm画角にクロップ)、プログラムAE、F2.8・1/125秒、ISO125、AWB。この場所は連日スナップ写真に明け暮れているYさんの好きな撮影ポイントです。窓際のカウンターに読書したり、PCを操作しながらコーヒーを飲むところがいいのです。ワイド側で迫るのもいいですが、あえて遠巻きに撮影してみました。ピントは店内中央奥に合わせました。

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≪新宿歌舞伎町への道≫ 26.1mm(40mm画角)、プログラムAE、F2.8・1/60秒、ISO200、AWB。絞り開放の夜景ですが、奥行きのある道にある看板を見ると深度もあり、パンフォーカス的にそれぞれがきれいに解像していてかなりシャープです。

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≪ハイビスカスの花≫ 26.1mm(40mm画角、マクロモード)、プログラムAE、F4・1/1000秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。40mm画角でマクロモードでどこまで近接できるか試してみました。薄日でかなり風が吹いていましたが、エイヤットばかりに何回かシャッターを切ったうちの1枚です。十分近接でき、合焦部の描写もシベの繊毛が見えるくらいで鮮明で、アウトフォーカス部の花びらのエッジには色にじみもなく専用マクロレンズで撮ったかと思うぐらいです。 手前の赤い部分にピントを正確に合わせるにはマニュアルフォーカスも有効だと思いますが、AFの精度はなんとなく向上しているような印象をもちました。

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≪ハイビスカスの花芯を画素等倍に拡大≫ 上の写真を画素等倍に拡大してみました。マクロレンズも顔負けするほどの描写です。フィルムカメラの時代から、昆虫や花の接写撮影には焦点距離28mm程度のハーフサイズ用レンズを35mm一眼レフで使うことがマニアに知られた撮影テクニックでしたが、APS-C焦点距離26.1mmレンズで繰り出すとこのような写真が撮れるのですから素晴らしいです。三脚を使い絞り込むと、さらに被写界深度が増し画質も向上するのでしょうが、手持ちのプログラムAEでこの程度まで撮れるならいうことありません。

■GRシリーズはスナップ用カメラから万能カメラへ

 デジタルになってからのリコーGRシリーズは、大まかに流れを見ると2005年のGRデジタル(1/1.8型、800万画素)、2011年のGRデジタルⅣ(1/1.7型、1000万画素)、2013年のGR(APS-C、1690万画素)、2021年のGRⅢx(APS-C、2400万画素)と進化してきましたが、当初は小型センサーで28mm相当広角というと、ある意味でパンフォーカス的な使い方が考えられたわけですが、APS-Cの大型センサーを使うようになるとパンフォーカス的な効果を楽しむよりは、私の使い方としてはしっかりとピントを合わせて絞り効果を組み合わせて作画するという方向に変わってきたのです。
 またGRから28mmに35mm相当のクロップ撮影ができるようになり、GRⅡで28mmに35mm/47mmクロップが加わり、さらにGRⅢで28mm/35mm/50mmと進化し、GRⅢxでは40mmスタートとなりクロップも50mm/71mmとなりました。
 このクロップ撮影ではどの焦点距離画角を選択しても被写界深度、ボケ具合、パースペクティブ感など光学的には同じわけで、それなら撮影後にトリミングしたらいいじゃないかという話がでてきてもおかしくないのですが、撮影時にその視野(画角)でフレーミングするのとではまったく意識も異なるわけでして、クロップの意義はあるのです。同様なクロップ機構を組み込んだものとしては“ライカQ2”(フルサイズ、4,730万画素、28-35-50-75mm画角)が知られています。いずれも高画素のデジタル機ならではの技術であり、28mm単焦点画角機として使うよりは、撮影範囲はぐんと広がる事は間違いないのです。実際、私は50mm画角にしてカメラや交換レンズなどの物撮りもGRⅢで行っています。というか昨今のコロナ禍における生活環境からすると、外部での撮影や集合の記念写真を撮る機会が極端に減っていますので、改めて撮影済みのSDメモリーカード開くとカメラの物撮りが多いことを再認識した次第です。
 それでは28mm画角のGRⅢと40mm画角のGRⅢxとどちらがいいのかとなりますが、私としてはカメラのショーなど引きのない大きなブース全体を28mm画角で収めたいのでGRⅢがいいかなと思うのですが、スナップ撮影も昨今の雰囲気からすると28mmでぐっとよって撮影するのもむずかしくなり、一般撮影では28mm画角はかなり接近しないと余分な部分が入りすぎるのも事実で、その点においてはGRⅢxの40mm画角も普通に撮影する限りにおいては大変な魅力なのです。それぞれの機種にクロップ機能を加えて考慮するとさらに決断は鈍ります。 (^^♪

ニコンZ fc を使ってみました ( Ver.2.1 Final)

 ニコンから改心の作ともいえるミラーレス一眼「ニコン Z fc」が7月23日に発売となりました。基本性能としてはAPS-C判の2151万画素CMOS搭載機となるのですが、従来からのミラーレス機の主軸がフルサイズであったのに対し、ZfcはAPS-Cですが、ミラーレス機の基本である小型・軽量に対してきわめて忠実であり、しかもデザインは1970年代後半から1980年代前半のフィルムカメラ時代の一眼レフニコンFMやFEを踏襲したということで、クラシカルな雰囲気をもつことから発表と同時に話題を呼びました。

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ニコンZfcにZ DX16-50mmF3.5-6.3 VRを装着。16-50mmレンズはフルサイズだと24-75mmレンズの画角に相当。レンズは沈胴状態です≫

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レンズマウントニコンZマウント≫

 植設された電気信号ピンは数、位置とも当然のことですがフルサイズと変わりません。レンズ側マウント部は黒色のエンジニアプラスチックですが、強度的に不足するような感じや違和感はありません。DX16-50mmをニコンZ7に取り付けてみるとグリップ部分とほぼ変わらない長さであるためにパンケーキズームレンズといった感じになります。逆にZ 35mmF1.8SをZ fc に取り付けると大口径中望遠レンズといった感じになりますが、どちらも撮影上画角が変わること以外、AF動作などまったく問題はありません。上の写真でマウント基部内側にはMADE IN THAILANDと記せられています。手元にあるZ 35mmF1.8SはMADE IN CHINAとプリントされています。タイといえば、今となってはニコンのカメラ製造の本拠地であり、DX16-50mmにかけるニコンの意気込みを感じさせますが、冒頭でZ fc を“改心の作”と表現したのはこのあたりにもあります。

ニコンZfcとニコンDf

 Zfcと似たような開発思想を持った機種としては、2013年に発売されたデジタル一眼レフの「ニコンDf」に見ることができます。このときはダイヤル操作に加え非Aiのオールドニッコールレンズが使えるなどの配慮がなされましたが、フルサイズということも手伝って、手に持ったボディは厚く大きく感じられ、さらに各操作部にロック機構が多用されるなどがあり、発売当初は人気を集めましたが、必ずしもヒットした機種とはなりませんでした。そのような中にあって、Dfのミラーレス版とも考えられるZfcの登場となったのです。

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ニコンDfとニコンZfc≫ 左:ニコンDf(2013、サロン・ド・ラ・フォトにて)、右:ニコンZfc(2021、ニコンニュースリリース写真より)

 ニコン Z fcが発表されたのは2021年6月29日、それ以前に一部サイトに新製品として情報が流れていたこともありますが、私の周りを見渡すと、最も注目していたのはDfユーザーグループでした。次に、歓迎していたのは60歳前後の過去にフィルムカメラニコンFMやFEを知る世代でした。私個人としては、FMやFEが発表された時期から知っているのですが、いずれにしてもその時代のカメラ世代は、現在はすでにフィルムカメラから卒業されている方々がほとんどだという認識でした。さらにこの10年ほどの傾向としては、フィルムカメラに価値を見出す大学生の写真ファンにFMやFEのファンが多数存在したと記憶してます。これにはエピソードがあるのですが、いまから7~8年ほど前にかつてニコンFEの設計責任者であった小野茂夫さんがJCIIクラブ25で写真展をやっているところに大学生の集団が10人ほど来たのですが、そのうち8人ほどがニコンFMやFEのシリーズを肩からさげていたのです。小野さんが喜ばれたのは言うまでもありませんが、なぜこのようなカメラを使うのかとか話は弾みましたが、小野さん自身がデジタル一眼レフを使っての写真展を開かれていたので、横にいた私にとっては大変印象的な場面でした。

 私の理解では、ここ10年ほどの学生さんたちにとってはフィルムカメラを使うのはトレンドで、メカニカルなデザインをしているのが新鮮であって、マニュアルフォーカスで必要最低限の機能がついているニコンFMやFEがシンプルで使いやすということと、中古の価格が手ごろだということがあったのだろうと思っていたのです。その点において、最新のミラーレス機で若い層を開拓するのにはニコンFMやFE時代のデザインを現代に再現するというのは、十分に的を得ていると思うのです。

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≪Z fc のトップカバー上部から見てみました≫ トップカバーはチクソモールドによるマグネシウム合金のようですが、底部はエンジニアプラスチック製になっています。カメラを構えたるときに、必ずトップカバーに手が触れますが、わずかに冷っとした感触がメカニカルなデザインにマッチします。

 カメラを手に持った状態だとこのように見えるはずですが、フィルムカメラ時代のFMやFEに似ているといえば似ていますが、よく見るとフィルム巻き戻しノブがあるわけではなく別物であるかことがわかりますが、イメージとして似せているのは操作部のシャッター速度とISO感度にダイヤルを採用したことと、ペンタプリズム的な形状をファインダー部の上部と正面のロゴマークの配置などがうまく処理されています。特にミラーレス機としてはグリップをなくしたこともく大き関係しています。さらにレンズ光軸を左側にシフトしたことにより握りやすくなり、右目でファインダーをのぞいた時に左目を開いて見ることもできます。写真はレンズの沈胴を引き出して、外観的に最も短い35mmの焦点距離にセットしてあります。

 ここでひとつ気になるのがかつてFEやFMを新品で使ったことがある人たちは、年代としては60~80歳以上になっているはずなので、視力が老眼気味の方にはつらい大きさの文字サイズといえましょう。老眼鏡を必要としない若い世代にはまったく問題ないのですが、そのくらい微妙な文字サイズです。という私はもともと近眼でメガネをかけていますので、メガネを外せばよく見えるのです。 

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≪背面の液晶モニターは表裏可変式で裏返して表示できます≫ 左:カバー状態、右:液晶モニター表示状態。とっさの撮影などを考えると、常時背面液晶ディスプレーが見えてる側にセットしておいたほうが無難でしょう。

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≪液晶パネルは裏返してレンズ側から見ることができます≫ 撮影メニューの詳細表示のほか、タッチAF、タッチAF・シャッターも可能で、撮影時のファインダーモニターとして、 自撮りや動画のセルフ撮影には便利に使えそうです。

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≪Zfcに付属してくるストラップ。控えめに存在をアピールしているのが好感持てます≫ 幅は約29mmです。

 実は私は、ボディについてくる純正ストラップはほとんど使いません。それというのもブランド名が各社とも派手にプリントされていて、おしゃれな感じがしないのです。ところが今回のニコンZfcのストラップは細身でわずかに光沢のある黒の変わり織でジグザグ模様となっていて、その中央に“NIKON Z”と刺繍されていてその存在が控えめなのが好感を持てるのです。カメラを首からさげて歩いているとわかるのですが、一番ほかの人の視線を感じるのはレンジファインダー式のライカですが、Zfcもそれに近いものがあるかもしれません。一度、写真を撮る多くの人が集まるお祭りにでも撮影に携行してみればわかることです。いずれにしてもカメラの存在をアピールするのにストラップの文字の大きさや派手さでなく、カメラデザインそのもので誘目されるのがベストであることは間違いなく、Zfcはストラップを含めてトータルにデザインしたのだろうということは十分に理解できます。

■いつもの英国大使館

 まずはいつもの英国大使館正面玄関を発売日翌日の7月24日の撮影です。撮影時には雲が多く天候に不安はありましたが、いつもと同じように、絞り優先AEでF5.6に設定し、屋根中央下エンブレムの部分にピントを合わせ、青空がでたところでシャッターを切りました。

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≪いつもの英国大使館正面玄関≫ Z DX16-50mmF3.5-6.3 VR焦点距離:24mm(フルサイズ35mm相当画角)、絞りF5.6・1/800秒、ISO-AUTO 100、AWB、手持ち撮影。焦点距離35mm相当画角、絞りF5.6は、撮影位置は他機種でもいつも同じにしていますが、このレンズでは絞り開放の描写を見ていることになります。

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≪エンブレム部分を中心に画素等倍にトリミング≫ 壁面のハイライト部分が飛ぶようなこともなく、2100万画素なりの十分な描写を示しているのがわかります。Zfcは撮像素子が小型なAPS-C判の2100万画素ですが、この撮影データをノートリミングでA3ノビに同じインクジェットプリンター(PRO-100)で拡大プリントしましたが、同じ場所で同一条件でフルサイズの高画素機ニコンZ7(4575万画素)やソニーα7RⅣ(6100万画素)の撮影結果と比較してみても、その差はわかりません。

■ランダムな場面での撮影

 Zfcを使うにあたって、最初に考えたことはこのカメラの名称“c”が示すようにカジュアルであって、なるべく気軽にシャッターを押そうということで、基本的にはすべて“AUTO”で撮ろうと決めました。一応Zfcの名誉のために言いますと、メニュー画面から入れば通常のミラーレス機同様にサイレントシャッターなどさまざまなモードで撮影はできます。掲載は、すべてノートリミングです。

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≪オムレツのプレートランチ≫ 焦点距離:16mm(フルサイズ24mm相当画角)、絞りF3.5・1/125秒、ISO-AUTO 2500、AWB、手持ち撮影。カジュアルなカメラならスマホに負けない料理の写真を撮ろうと、撮影に出向いた先のカフェのプレートランチです。テラスのテーブルで食事したために、背後が林で逆光撮影となりましたが、掲載にあたってわずかにトーンカーブをわずかに持ち上げわずかに明るくしました。拡大率によってはそのまま行ける露出結果でした。絞り開放で、背後のガーリックライスの米粒がわずかにぼけていますが、メインのオムレツや野菜は十分にシャープです。光学的には焦点距離16mmのレンズですから、F3.5と絞り開放でも必要十分な被写界深度を得られるのは、画面サイズの小さいAPS-C判ならではの特徴といえます。

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 ≪鰆と茄子の焼き物≫ 焦点距離:35mm(フルサイズ52mm相当画角)、絞りF5.3・1/100秒、ISO-AUTO 3200、AWB、手持ち撮影。懐石料理の1品だけを撮影しました。ランチの時は自然光でしたが、こちらはホテルの食堂ですから人工光源下となります。ダークなテーブルの上にダークなお皿に盛られていますが、押すだけでピント、カラーバランス、露出とも文句なしです。

 かつてフィルムカメラの時代、1989年に発売されたコニカビッグミニは正式名称コニカA4でしたが、文字通りA4サイズが写せることでヒットしました。従来のコンパクトカメラの最短撮影距離は60cmぐらいだったのを一気に35cmまで近づけてA4サイズが写せたのです。折からの海外旅行ブームの走りのころで、飛行機の機内食、さらにはテーブルに並んだお皿を席を立たずに撮れるということが高い評価を得たのですが、以後さまざまな技術変化もありましたが、現在ではスマホで料理写真を撮るのが、食事前のお作法(無作法)にもなりましたが、そのスマホ同様、もしくはそれ以上にきれいな写真が撮れるのは、若者向きのカジュアルなカメラとしては必須事項だと思うのです。その点においてはZfcはまずは合格といえるのでしょう。ここで改めて撮影データを見ると、フィルム時代にあり得なかったことは、撮影感度がISO2500とかISO3200が当たり前のように使われていることで、このあたりがフィルム時代とは決定的に異なる部分で、超高感度域が何のストレスもなく使えるようになったのも、デジタル時代の進歩だと思うのです。

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 ≪ベンチに座る人形≫ 焦点距離:19mm(フルサイズ28mm相当画角)、絞りF5・1/250秒、ISO-AUTO 200、AWB、手持ち撮影。ランチを食べたカフェの庭に小さなベンチがあったので、持参の人形を座らせて記念撮影。雨降り直後の木漏れ日の中にわざと庭を幅広く広角で写して入れることにより、小さなベンチであることがお分かりいただけるようにと考えました。この640ピクセルVGAではわかりませんが、A3ノビクラスまで拡大プリントすると、人形の髪の毛や顔の表情、さらには着物などの繊細な部分が描出されます。

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≪雨上がりの草と落ち葉≫ 焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、絞りF6.3・1/200秒、ISO-AUTO 400、AWB、手持ち撮影。カフェの庭に生えた草と紅葉した落ち葉に陽があたりました。こちらも大きくプリントすれば、葉の葉脈や美しい水の輝きが見えます。

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≪飛び立つ飛行機≫ 焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、絞りF9・1/640秒、ISO-AUTO 100、AWB、手持ち撮影。天候も良く、結果として素晴らしい写りです。

 最近、EOS R5、α1などを使っていて思ったことは、静止物を撮っているだけではそのカメラの実力はわからないというように考えるようになったのです。例えば、サッカーの試合などで選手の動きや、ボールのタイミングにどの程度AFが追随できるかなどを見てみると、静止物を撮影していた時とは違うもう1つのAF性能が見えてくるのです。そんなわけで、いまは飛行機の撮影に凝ってまして、神奈川県の厚木基地、東京都の横田基地、さらには埼玉県の入間基地など転戦してきましたが、なかなか思った写真が撮れませんでした。そのようななかで見つけたのが松本空港で、望遠側で50mm(75mm相当画角)までしかないのに、上に示したような十分な写真が撮れたのです。もともと地方の空港ですから、便数は1日にわずかしかなく、この写真も運よく出発便が撮れたのです。ただ、この時びっくりしたのは、AUTOのまま高速連続撮影の拡張モードH+(約11コマ/秒)にして高速連写しようと飛行機が離陸前にセットしておいたのですが、時間的に余裕があるので電池の消耗を防ぐため1度電源をOFFにしていたのですが、実際に動き出したときに電源をONにしてここだとばかりにシャッターを切ったら、何と1コマ撮りになっていたのです。とっさの判断で、ファインダーで飛行機の姿を追いながら1コマずつシャッターを切った内の納得の1枚が上の写真なのです。結果として数枚使えるのが撮れましたが、正直いって焦りました。後日、いろいろ試してみると、AUTO以外のP・S・A・Mモードでは電源をOFFにしても連写は保持されるのですが、AUTOポジションだけは電源OFFで1コマ撮りに復帰するのです。私は撮影者として意志をもって選んだ撮影モードであり、わざわざ自動復帰しなくても撮影すればわかることなので、自動復帰して欲しくはないのです。それに数カットしか撮れないよりはたくさんとれたほうがいいわけで、このあたりは設計者としては戻し忘れを防止させるための配慮なのでしょうが、私的には小さな親切大きなお世話ともいえるわけで、便利さと不便さは常に相対するわけですが、どのように判断されるかは難しいことです。

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≪オランウータンの子供≫ 焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、絞りF6.3・1/125秒、ISO-AUTO 100、AWB、手持ち撮影。動くものを探しに多摩動物公園に行ってみました。金網越しでない動物を写したいとやっと見つけたのがオランウータンの子供です。動物園の場合、動く動物を写すことは可能ですが、大きな、ゾウやキリンなどはこのレンズでも写せましたがもっともっと望遠が欲しかったです。

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≪水中から顔を出したサイ≫ 焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、絞りF6.3・1/80秒、ISO-AUTO 125、AWB、手持ち撮影。水中から顔を出して、水を吹き出したところ。撮影はAUTOで多少暗い場面だったようで、シャッターが低速となりサイの顔の部分はブレていますが、手前の水槽の縁はブレていないので被写体ブレといえるでしょう。

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≪置物の鳥≫ 焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、絞りF6.3・1/80秒、ISO-AUTO 160、AWB、手持ち撮影。このレンズで撮影していると、ボケ具合を見るのはなかなか難しいので、望遠側で極端に近寄って背後のボケを見てみました。F6.3と暗いレンズですが意図的に操作すればボケ具合を確認することができ、それほど癖のないボケが得られることがわかりました。

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≪旧中込小学校≫ 焦点距離:16mm(フルサイズ24mm相当画角)、絞りF7.1・1/200秒、ISO-AUTO 100、AWB、手持ち撮影。曇天でしたが垣根のわきから撮りました。ズームの最広角側ですが、屋根を見てわかるように直線の再現性はいいようです。

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≪ストリートピアニスト≫ 焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、絞りF6.3・1/80秒、ISO-AUTO 3200、AWB、手持ち撮影。ピクトリコのギャラリーに行った帰りに、JR両国駅構内ステーションギャラリーにご自由にお弾きくださいと置かれた1台のピアノを無心に弾く女性。その迫力にしばし聞き入ってしまい、終わると拍手しましたが、彼女はそのままホームに向かい、飲み物を自販機で買って、来た電車に乗っていきました。普通に写真を撮りましたが、本当は動画だとその場の雰囲気が臨場感あふれて伝わったことでしょう。

●走行する列車を撮ってみました

 もう1つ、AFの動体駆動予測特性を調べるためにいつものように西武新宿線の特急「小江戸号」を撮影してみました。

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オートフォーカスAF-A(S・C自動切り替え)、焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、シャッター速度優先AE、絞りF6.5・1/500秒、ISO-AUTO 160、AWB、手持ち撮影。この場所はうまくいくと特急がほぼ同時刻に上下線ですれ違う場所で、ここ数年は必ずチェックポイントとして撮影してきました。今回は、画角75mm相当ということである程度見えてから連写で撮影した中のぎりぎり手前側まできた時の1枚です。列車の先端を拡大して観察してみると十分に合焦してます。このような場所では、例えば先頭車両前部のスカートの部分の敷石のシャープさで簡単にどのあたりにピントがきているかでも知ることもできます。今回はこの車両が行き去った数秒後に下り線が通過しましたが、もし上下線のすれ違う場面を撮影するとカメラはどのようなAF駆動予測をするか面白いです。それを追いかけるにはもう少し焦点距離の長いほうがうまくいきます。

●打ち上げ花火を撮ってみました

 そのほとんどをプログラムのAUTOで撮影してきましたが、何か特殊な撮影設定が必要な被写体はないかと考えたのが打ち上げ花火なのです。打ち上げ花火は真っ暗な夜空に赤・青・黄・紫などの火炎が見えるのですが、AEで撮影する場合には通常その状態でシャッターを押すと、画面の中に占める黒い空の部分の面積にもよりますが、空に露出が合ってしまい花火の火炎が露出オーバーになることがあるので、通常は-1~2EV程度の露出補正が必要となるのです。ということで、露出補正した結果が以下の作例です。

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焦点距離:22mm(フルサイズ33mm相当画角)、絞りF4・1/30秒、ISO-AUTO 3200、-2.3EV補正、AWB、手持ち撮影、西武園。

 もともと花火の撮影は、三脚を使い、ある程度絞り込んで、長時間を使い光跡から開花までを撮影するのが一般的ですね。この場の撮影は手持ちのワンショットですから、光跡は写りませんが、花火の開いたところだけより手前の観覧車が写り込んだほうがおもしろかったので、この写真を掲載です。

●AFの認識特性

 AFエリアの選択はメニュー画面では上位機種と同じようにシングル、ダイナミック、ワイドエリア等などありますが、ZfcならではのモードとしてオートエリアAFに(人物)と(動物)というモードがあることですが、それぞれのモードに被写体の記憶認識が働くようで、単に人物のみならず花やカップなど形があるものにAFし、一度ピントを合わせシャッターを切るとAFが追随してくるのが使いようによってはすごく便利です。この作動は背面液晶パネルのタッチセンサーを「タッチシャッター/タッチAF」か「タッチAF」にセットして目的の被写体をタッチすると、その被写体を記憶してアングルやズーミングを変えてもAFがかなり敏感に追随するので大変便利です。記憶できるのは人物の顔だけでなく、テーブルの上のカップやグラス、さらには花などと、特に被写体に制約はないようなので、使い方によってはすこぶる便利な機能だと思いました。

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≪めしべをタッチシャッター/AF≫ 焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、絞りF9・1/100秒、ISO-AUTO 100、AWB、手持ち撮影。DX16-50mmレンズで最も近づいて背面液晶で「タッチシャッター/タッチAF」機能を使って撮影しました。

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≪タッチシャッター/AFでフレーミングを変えてもAFがついてきた≫ 焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、絞りF9・1/100秒、ISO-AUTO 100、AWB、手持ち撮影。「タッチシャッター/タッチAF」機能を使って撮影した後に、フレーミングを少し変えたらAFフレームがついてくるのです。これは面白いと上下左右と動かした後に、シャッターボタンを押しました。これはすこぶる便利な機能ですが、購入時の取扱説明書にはシャッターが切れるとは書いてありますが、AFの追随機能についてはまったく触れていないので、何か得した気分にはなりましたが、はたしてこれでいいのかなとも思ってしまいました。作例では花のめしべにピントを合わせましたが、もっと遠くから狙うのもいいと思います。

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≪顔認識AF・AE≫ 焦点距離:26.5mm(フルサイズ40mm相当画角)、絞りF5.6・1/250秒、ISO-AUTO 100、AWB、手持ち撮影。巻頭の作例英国大使館正面玄関を撮影に行った帰り、オリンピック直前で正門脇の塀に掛けられたランナーのパネル写真を狙って撮りました。当初はパネル中央辺りにピントと露出が合っていたのですが、上部のランナーの顔を認識すると顔にピントが合い、露出も顔が見えるようなほど良い結果となったのです。顔認識AFの追随特性はかなり感度良く、PCパソコン画面で静止画人物の顔はいうまでもなく、動画でも細かく俊敏に追いかけます。

●電子シャッターのローリングシャッター現象の発生ぐあいを見ました

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≪サイレントシャッター(H+)、焦点距離:24mm(フルサイズ35mm相当画角)、絞りF4.2・1/1000秒、ISO-AUTO 1100、AWB、手持ち撮影≫ ニコンDX(APS-C)判の画面サイズは23.5×15.7mmであり、フルサイズの画面サイズは36×24mmですので、フルサイズは縦方向に1.52倍長く、APS-C判は0.65倍短いということになります。つまり同じクラスのCMOSだとすると、シャッターアパーチュアの縦・横方向が短い分だけ有利で、秒間の撮影コマ数もかせげるということになります。そこで、Zfcをサイレント(電子シャッター)モードにして走行する車を狙ってみました。焦点距離、撮影距離は同じでシャッター速度優先で撮影したのがこの写真です。いつもはボックスタイプの軽トラックを撮影してみていますが、今回は中型トラックで一部分しか入りませんが、直線がきれいに斜めに出ているのでこのカットを選びました。ローリングシャッター現象の発生は明らかに認められます。サイレントシャッターは、音楽会、舞台などシャッター音を嫌うところで使うのがベストですが、スポーツで高速に移動する野球のバットやゴルフのシャフトさらには球などでは、像に歪みの出ることが撮影距離やタイミングによってはありますが、サイレントシャッターモードを外せばこのようなことはなくなります。なお、撮影はAF-A(シングル・連続自動切換え)、H+(11コマ/秒)で行いましたが、撮影画面から見るとAFのくいつき(追随)特性はすごく良いということがわかります。

サイレントシャッター時のLED光源明滅ムラの発生ぐあいを見ました

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≪ 左:通常モード、右:サイレントシャッター≫ 絞りF4・1/1000秒、ISO-AUTO 12800、AWB、手持ち撮影。サイレントシャッターとLED光源の問題点を抽出するために、写真用LEDランプをセットして問題点を写しだそうとしたときにみごと失敗し、パソコン室のLED電球の下で中で何気なくカレンダーを写したときにそのものずばりの写真が撮れることをα1のレポートの時に確認しましたが、Zfcでも同じ設定で撮影したらやはり再現できました。この写真でわかることは、最近は舞台や室内の照明光がLEDに変わっていることがありますが、このようなときには「レリーズモード」のサイレントシャッター(電子シャッター)をOFFにすればよいのです。電子シャッターでこのような現象が発生するのは何もZfcだけではなく、他社を含めて現状ではいかんともしがたいのです。

 ■バッテリーの充電機能について

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 各社の一眼がミラーレス機になって一番不思議だったのは、ニコンキヤノンのフルサイズ機でした。それ以前のミラーレス機であるソニーに加え、パナソニック、シグマなどのフルサイズ機のボディ本体での直結充電は一般的なタイプAのUSB端子からカメラ側のUSBのマイクロUSBかUSBタイプCで接続できるのに、ニコンキヤノンだけは専用のACアダプターか特殊なPD(パワーデリバリー)付のバッテリーでしか充電できなかったのです。ところが今回のZfcでは、上の写真を見てお分かりのようにごく普通のUSBタイプA端子の、市販の携帯用充電器、携帯用バッテリー、変換コードなどで充電可能となったのです。最近は車や新幹線、果てはホテルのベッドサイドにもUSBタイプAの電源コンセントができるようになったのです。今回もZfcの撮影で出向いた先のホテルのベッドサイドにはAC100Vが1口、USBタイプAの端子が2口あるのです。夕食を含め一日の行動を終えたときにスマートフォンとZfcを充電して休みましたが、朝にはフル充電されているわけです。これは素晴らしいことです。出かけるときのカメラ機材はなるべく軽くしたいのは当然で、Zfcの小型・軽量、カジュアルボディに通じる部分なのです。

 まさにこの部分がユーザー本位の物作りに戻した部分で、冒頭に記した改心の部分だと思うのです。USB充電が可能になったのはどうやらZ50からのようですが、コネクターは「USBタイプA→マイクロUSB端子」でした。さらに驚いたのはZfcではUSB給電もできるようになったのです。USB給電とはボディ本体外からの電源供給が可能で、カメラ内バッテリーの消耗を減らすことができる機能であり、タイムラプラス撮影や動画撮影の時に効果を発揮できるようです。今回のZfcでは新たに電圧・電流を制御できる回路をボディ内に持たせたのでしょうか、急速充電だけでなく、供給電源に見合ってじっくり時間をかけるのでもいいわけで、ここは大きく評価されてよい部分だと思います。なおボディとUSB電源をつなぐと、カメラ側USB端子口右わきにオレンジ色のLEDが点灯するので充電開始を知ることができ、その状態でカメラ電源をONにすると充電は中止され、給電状態となり背面液晶パネル左下電池マークの右わきにACコンセントのアイコンが表示されるのです。

■マウントアダプターと外付けストロボ

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左:ミラーレスといえばマウントアダプターを使うことによりオールドレンズが使えるわけです。さて何のレンズを付けるかですが、ボディが小型であることとAPS-C判ということで実際の画角は装着したレンズの1.5倍相当になるわけで、手元にある小型のレンズだとライカスクリューマウントのコシナフォクトレンダーのスパーワイドヘリアー15mmF4.5(22mm相当画角、1999)、キヤノン25mmF3.5(37.5mm相当画角、1956)があり、いずれもフルサイズだと周辺光量の落ち込みが大きいのですが、APS-C判なら周辺がカットされるのでそのような心配はなくなります。とはいっても重さで見ると、Z DX16-50mmF3.5-6.3 VRが131g、マウントアダプターを付けたスパーワイドヘリアー15mmF4.5が165g、同じくキヤノン25mmF3.5で210gとなります。したがって16-50mmよりZfcに取り付ける状態ですでに重いのです。ここはやはり最新の専用のZ DX16-50mmF3.5-6.3 VRを駆使して撮影する方がZfcには似合うと思うのです。ただし望遠系のレンズを付ければ1.5倍望遠的になるのでAPS-C判なら効果的なのです。もしクラシック系のレンズの描写そのものを楽しみたいのなら、やはり有効画面全体で描写を楽しんだほうが良いわけで、この場合にはZシリーズのフルサイズ機を求めることをお勧めします。したがって、ここではマウントアダプターを付けてライカスクリューマウントの“ニッコールS-C 5cm F1.4”を装着して姿写真としました。

右:スピードライトSB400。ニコンZ50のユーザーにZfcのことを尋ねたらストロボを内蔵していないからだめだという人がいました。それならばということで2006年にD200用に購入した外付けストロボの「ニコンSB400」を装着してみました。バウンス状態にして室内で撮影してみましたが、無影できれいに撮れました。それにしても高感度がむりなく使えるようになったデジタルカメラでは、ストロボの存在も忘れていましたが、室内の人物や料理の撮影ではバウンス機能を働かせれば大変有効で、便利なシステムアクセサリーです。なお最新モデルとしては、より小型化されたSB300があります。

■終わりに

 今回のZfcでの撮影は、基本的にAUTOつまりプログラムAEで行いました。実は、私はカメラの性格を知りたいときはいつもプログラムAEで撮影しています。もちろん特定の意思をもって撮影するときは、その限りではないのですが、カメラに対して開発陣がどのような考えを持っているかがわかるのです。カメラのプログラムラインはさまざまな要素が加味されるのですが、明るさ、撮影レンズの焦点距離、被写体までの距離、静止物か動体か、被写体の輝度分布や色傾向など、各カメラメーカーのノウハウを集約させた部分として『絞り値とシャッター速度』が決まるのですが、最新のデジタルカメラではさらに『感度の自動可変』の要素が加わり露出が決まるので『絞り値とシャッター速度と感度』が自動的に変わるのです。そのプログラムでの結果では、自分のイメージする写真が撮れないときに、目的にかなった組み合わせを行うわけです。実際はさらにAF「ピント位置」などの要素も加わるのです。
 そこで注目したのが、レンズの明るさがズームで絞り開放でF3.5~F6.3と暗いわけで、どのようなプログラムになっているかということでしたが、ほとんどのカットが絞り開放近くで撮影されているのが興味ある点です。唯一「飛行機」写真はF9・1/640秒と絞られていますが、高輝度な場面だからでしょうが、ズームレンズの絞り開放あたりを常用とするあたりはレンズ性能の向上を改めて知らされました。また、友人のカメラマンのHさんから指摘されましたが動物園のサイの写真では被写体がぶれたというが、明らかに屋外の明るいところなのに「1/80秒・ISO100」というのはおかしい。もっと感度とシャッター速度が上がっていても良かったのではというのです。まったくその通りなのですが、その辺りはブラックボックスなので、どのようにしてこのようになったかはわかりません。

 発表と同時に品薄が伝えられたZfcですが、幸いZ DX16-50mmF3.5-6.3 VR付のズームキットを注文していたために、発売日当日に無事に入手できました。今回は入手翌日にいつもの英国大使館正面玄関を撮影したのちに、ランダムな被写体撮影ではかなり幅広く動きました。同時に身近にいる人々にカメラを見せてどうだろうかと聞いてみると、多くの人が購入の意欲を示したのでした。やはり、小型・軽量、かつてのフィルムカメラをイメージするノスタルジックなデザインは、俗に“ニコ爺”と呼ばれる高年齢層にまずは受けたようです。写真を志す若い女性たちに見せると第一印象で“わーっカワイイ”という言葉が返ってくるのですが、さらに写真に興味ある女子大学生に聞くと十分に欲しそうな視線を感じるのですが、ぐっと我慢して触らないで細かく見ないのです。なんでだろうと聞くとやはり価格が高いというのです。中古がでてくるのを静かに待つという人まで現れる次第で、今後どのようにしてニコンが狙う若い女性層に受けるかが焦点となるわけです。いずれにしても、いままでの新型カメラではあり得なかった反応なのです。とある販売店の話では、Zfcの予約時の女性比率は5%だったそうです。今や写真の専門大学に占める女性の割合は50%を超えているとされていますが、そのあたりにまだまだギャップがあるわけで、今後の伸びしろは十分にあるとみなすことができます。

 最後にもしZfcが小型・計量(ボディ+DX16-50mm+バッテリー+SDカード+ストラップ=600g)ということで長期にわたり好評を持って受け入れられるなら、APS-C判がフォーマットとして認知されることであり、作品主義の人々には単焦点のレンズが受け入れられるでしょうが、私的にはD300(2007)が発売されたころにでたDX18-200mmF3.5-5.6(2009)の高倍率ズームの万能なところが好きでしでたが、高感度に強いミラーレス用にさらなる小型化されての登場を待つわけです。

■おまけ

 Zfcを眺めていた時にどうもしっくりと手になじむなと思っていたのですが、ひょっとしてとわが家のカメラ収蔵庫から引き出してきたのが戦前の「ライカⅢa」なのですが、両機種を突起物を除いた横幅の寸法が何と、Zfcが134mm、Ⅲaが133mmなのでほとんど同寸法なのです。偶然なのか、それとも意図したことなのでしょうか。

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 かつて小型・軽量の一眼レフオリンパスOM-1(1972)を設計したオリンパス米谷美久さんは、持ちやすくするためにその横幅をライカのⅢ型と同じにしたと公言していました。そこで当時のOM-1の公称寸法を見てみると横幅136mmなのです。もしバルナック型のライカが理想のカメラ横幅寸法だとすると、ニコンZfcの横幅が134mmなので、よりバルナック型ライカの横幅に近いのです。Zfcの寸法は偶然なのか、意図したことかはニコンの設計者に聞かなくてはわかりませんが、すばらしいことです。ちなみにZfcのデザインの規範になったとされるニコンFEの登場は1978年でキャッチフレーズは“シンプルニコン”で横幅は公称142mmでした。もうひとつ加えるならアサヒペンタックスME(1976)の横幅は132mmであり、当時の技術者であったオリンパスの米谷さん、旭光学工業の野村勝彦さんの技術者としての意地を感じさせます。  (^_-)-☆

 

※ Ver.1  2021.08.06     Ver.2  2021.08.10      Ver.2.1  2021.08.12