写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

富士フイルム、黒白フィルムを再生産「ネオパン100 ACROSⅡ」として発売

  富士フイルムは、かねてから再登場のうわさの高かった黒白フィルムの再生産を「ネオパン100 ACROSⅡ」として行い、2019年秋に35mmサイズ、ブローニーサイズの2種類を発売する予定と発表しました。
 富士フイルムによると、黒白フィルムの需要の減少と、生産に欠かせない原材料が入手困難になったため、黒白フィルムの販売を昨秋に終了したが、フィルム愛好家をはじめフィルム独特の風合いによる写真を好むSNS世代の若年層の方を中心に、当社の黒白フィルムの販売継続を望む声が多く寄せられたことを受け、あらゆる角度から販売再開に向けた検討を進めてきたそうで、入手困難になった原材料の代替品の研究や新たな原材料に合わせた製造プロセスの抜本的な見直しにより、このたび、黒白フィルム「アクロスⅡ」の開発に成功したというのです。
 「ネオパン100 ACROSⅡ」は、感度ISO100の超高画質な黒白フィルムとして、世界最高水準の粒状性と立体的な階調再現、優れたシャープネスを備えており、風景・山岳写真、ポートレート、製品写真、建築写真から、長露光撮影の天体・夜景写真など幅広い分野の撮影に適しているそうです。
【ネオパン100 ACROSⅡの特長】
 独自の「Super Fine-Σ粒子技術」を採用することにより、感度ISO100の黒白フィルムとして世界最高水準の粒状性を実現。従来品「ネオパン100 ACROS」に比べハイライト部の階調をメリハリのある設計とし、立体的な階調再現が可能。

 ということですが、どのようなパッケージかは今現在発表されていません。(13:00現在)

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その後写真は追加発表されましたが、CG画像で、まだ現物は印刷できていないようです。

講演会「平成のカメラ」フィルムからデジタルへの変遷を回顧する

 日本カメラ博物館では講演会『平成のカメラ フィルムからデジタルへの変遷を回顧する』を6月29日、午後1時~3時まで行います。講演者は私・市川泰憲ですが、平成の時代というと平成元年の1989年から平成31年の2019年までです。この間、写真とりわけカメラ技術はどのような進歩があったか。私自身、昭和は1926年(昭和元年)12月25日から1989年(昭和64年)1月7日までのうち、42年間生活してきましたが、カメラや写真に関してすべてを実体験してきたわけではありません。その点において、平成元年の1989年から平成31年の2019年まで 間の写真界にはズバリ身を置いていましたし、その間に登場したカメラはそのほとんどを手にしたことがあるといっても過言ではありません。この31年間の写真界の動きカメラの進歩を見直してみると、さまざまな興味深いことが見えてきました。

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≪平成元年の1989年カメラグランプリに輝いた“ニコンF4と1989年に発売のキヤノンEOS-1

 まず平成元年(1989年)は、フィルムから電子カメラ(デジタル)への芽生えをわずかに意識させる年でしたが、その前年に登場したキヤノンソニーコニカの2インチフロッピーを使う電子スチルカメラはことごとく惨敗して、そこからの約10年間はフィルムカメラ全盛の時代でした。そんな中で、1989年カメラグランプリに輝いたのはニコンF4ですが、同年発売のキヤノンEOS-1は翌年のカメラグランプリを逃しました。なぜか、その真相をお話しましょう。

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≪お話は、その年のメインのカメラに加え、その年の大きな流れを作ったカメラの流れを紹介する裏ページに分かれます。上のパワーポイントのページは、“新規格フィルムAPSが残したもの”と題した年の、裏ページです。

 そして1992年にはハネウエル社特許事件が和解しました。この間失ったもの、得たものは各社それぞれで、改めて見直してみます。加えて元東京大学生産技術研究所教授・小倉磐夫先生の功績、カメラや写真が単に技術の進歩としてかかわるのでなく、さまざまな社会現象と共に歩んでいるのです、松本サリン事件と写真、ソニーが提案したフィルムカメラシステム、新規格フィルムAPSが残したもの、メガピクセルデジタルカメラの登場、横田めぐみさんと写真、黒白感光材料の生産推移とカメラ生産、フォトマスター検定の開始、阪神淡路大震災とカメラ、東日本大震災と写真の意義、タイの洪水とカメラ生産、熊本地震とカメラ製造、自撮り棒の流行とその起源、アメリカの写真事情、フランスの写真事情。ダゲレオタイプから180年の2019年、100年を迎えたカメラ企業、皇室の皆様はカメラ好きなど等、その年々に登場した最新カメラを紹介すると同時に写真の周辺社会まで幅広く掘り下げてお話しします。

 なお、当日は31年間の写真技術と周辺の流れがわかる一覧表を参加者全員にプレゼントし、お話にはサプライズ映像をいくつか盛り込み、令和元年記念特別プレゼントも用意いたしました。また講演終了後、3:30~5:00まで、博物館で皆様とお話合いする時間も設けました。

≪場所≫日本カメラ財団6階会議室(千代田区一番町25番地 JCIIビル)≪お申し込み≫日本カメラ博物館、電話:03-3263-7110≪受講料≫300円(当日受付日本カメラ博物館入館料300円も含みます)≪受付定員≫100人≪詳細≫News release

 

■2019年度PHOTONEXT技術アカデミー

 2019年6月18日(火)には、パシフィコ横浜にて行われれるプロ用写真機材ショーである「PHOTONEXT」にて併催される日本写真学会の“2019年度PHOTONEXT技術アカデミー”にて「最新ミラーレスカメラ事情」と題して、最近使ったソニーからパナソニックまで、フルサイズミラーレス一眼を中心に、それぞれに期待される部分、現状での問題点など、私なりに感じたことを、お話しします。詳しくは、日本写真学会イベントページをご覧ください。こちらもよろしければ、お申し込みください。学会主催ならではの踏み込んだお話ができればと思っています。

キヤノン カメラ付プリンター発売!

 キヤノンマーケティングジャパンは、内蔵カメラで写真を撮ってすぐにプリントできるインスタントカメラプリンター「iNSPiC ZV-123」「iNSPiC CV-123」を2019年6月6日より順次発売します。
 インスタントカメラプリンター「iNSPiC ZV-123」、「CV-123」は、撮影して、すぐにプリントできるカメラ機能付きプリンターとされてます。プリンター部分には米国Zero Ink Technology社のZinkフォトペーパーを採用し、紙とインクが一体となった専用のフォトペーパーに簡単にプリントが可能。用紙はシール紙なので、好きなものに貼ることができ、切り貼りすることで手帳に写真付きの記録を残したり、メッセージカードやオリジナルグッズなどの創作をしたりすることができます。また、撮影した写真をその場でプリントできるため、スマホ専用のカメラ非搭載の従来モデル「iNSPiC PV-123」(2018年9月発売)よりインスタント性が向上しているというわけです。上位モデルのZV-123はスマートフォンからのプリントにも対応。

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 Zinkフォトペーパーは熱現像方式で、過去にもわれわれの身近なところでは、ポラロイド、ブラザー、HP、LGなどのプリンターにも採用されていました。また、最近ではコダックブランドのカメラ+プリンターも発表されており、今回の注目したいところは、キヤノンとしては単なるカメラでなく、インスタントカメラプリンターとしたところであり、過去にはシングルユースカメラの「写ルンです」を富士フイルムが「レンズ付フィルム」としてカメラの分類から外した例もあり、今回は逆に分類としてはカメラでなく、プリンターとしたところがミソです。

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 それというのも、2018年デジタルカメラ全生産実績が19,504,810台(カメラ映像機器工業会統計)であったのに対し、富士フイルムのインスタックスカメラは別枠で1,000万台(富士フイルム発表)ということで、キヤノンとしてはこの現実を看過できないということなのでしょう。

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≪Zink Photo Paperを用いた製品。左:LGプリンター(2014年、米CESにて)、右:コダック・カメラ付プリンター(2018年、仏サロン・ド・ラ・フォトにて)≫ 

平成最後のカメラは「キヤノンEOS Kiss X10」 令和最初のカメラは「リコー シータZ1」か

 2019年4月30日の天皇陛下退位の日をもって平成の元号は終え、5月1日からは令和元年となります。そこで改めて確認しますと、平成の年度に発売された最後のカメラは4月25日の「キヤノンEOS Kiss X10」となりました。また令和の元号のもとに最初に発売されるであろうカメラは、5月24日発売が予定されている「リコー シータZ1」であると予測されます

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キヤノンEOS Kiss X10≫ EOS Kiss X10はAPS-Cの2410万画素イメージセンサーの一眼レフで、2017年に発売されたEOS Kiss X9の後継機として発売されました。一眼レフでありながら、ミラーレス一眼機を意識した作りで、ライブビュー時には瞳AFによる撮影も可能。4K動画による約830万画素のフレーム切り出しによるJpegによる4Kフォト、4Kタイムラプラス動画もできる。エントリー機でありながら、デュアルピクセルCMOS AFによる0.3秒の高速連写が可能で、光学ファインダー時5コマ/秒、ライブビュー時3.5コマ/秒、常用最高感度はISO25600相当まで可能。ダブルズームキット112,000円(EF-S18~55mmF4-5.6 IS STM、EF-S55~250mmF4-5.6 IS STM付き)

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リコー シータZ1≫ 新開発のレンズユニットと1型と大型の裏面照射型CMOSを2枚使った360°カメラシータシリーズの最高級機。6720x3360ピクセルの静止画像のほか、4K3840×1920/29.97fps/56Mbps、2K 1920×960/29.97fps/16Mbpsの動画撮影ができる。センサーを大型化したことにより画質が大幅に向上した。電子手ブレ補正機能付き。価格は約113,000円。

 なお、平成元年に発売されたカメラは、サムライZ-L、ニコンTW20、コニカA4ビッグミニ、ペンタックスズーム70X、ニューマミヤ6 のほか、キヤノンEOS-1、キヤノンEOS630、ソニーハンディカムCCD TR-55などでした。

 

キヤノン レンズに和名で花の名「Sumire」をつける

 キヤノンは、PLマウントのシネマカメラ用単焦点レンズ7本を「Sumire Prime」シリーズとして発表しました。

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 最初に、ニュースレリーズが届いた時に、Summicronみたいな名前だなと思いましたが、よく読むと花の名前「スミレ(violet)」だったのです。過去に、和名で花の名前が付けられたレンズは聞いたことがなく、珍しいネーミングです。

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 「Sumire Prime」は、14mmT3.1、20mmT1.5、24mmT1.5、35mmT1.5、50mmT1.3、80mmT1.3、135mmT2.2の7本で、大口径非球面レンズやUDレンズ、UDレンズの性能をさらに向上させたスーパーUDレンズを採用したキヤノン独自の光学設計により、芯がありかつ柔らかな映像描写を実現し、高い解像感を特長とするEFマウントの単焦点レンズシリーズに対し、PLマウントの単焦点レンズシリーズ「Sumire Prime」は、背景に広がる柔らかなボケが被写体を優しく浮かび上がらせることによる、美しく印象的な映像描写が特長です。また、両シリーズに共通した暖色系のトーンにより、人物の表情を柔らかく、自然に描く映像表現が可能としています。来たる2019年4月8日(月)から11日(木)まで、米国ラスベガスで開催される「NAB Show 2019」で先行展示されます。

 また「Sumire Prime」レンズは、PLマウント⇔キヤノンEFマウント間の交換サービスも開始されるそうです。