写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ニコン・ASML・ZEISS 訴訟和解へ

 ㈱ニコンと、オランダのASML Holding N.V.およびドイツのCarl Zeiss SMT GmbHは、2019年1月23日(日本時間)、露光装置およびデジタルカメラの特許に対するすべての訴訟手続の包括的和解に関し、基本合意覚書を締結したと発表しました。

 基本合意覚書は法的拘束力を有し、3社間で行われている、欧州、日本、米国国際貿易委員会(ITC)を含む米国における全ての訴訟が対象です。3社は、本年2月に、和解およびクロスライセンスに関する最終契約を締結し、3社間のすべての訴訟を取り下げる予定としています。基本合意覚書の条件には、ASMLおよびZeissからニコンに対し、総額150百万ユーロ(約190億円)の支払いが含まれ、最終契約の締結日から10年間、液浸露光装置の年間の売上高の0.8%に相当する金額のライセンス料を相互に支払うクロスライセンスの合意も今回の基本合意覚書に含まれているとされている。

 2017年4月24日付けニコンのニュースレリーズによると、ニコンは、オランダのハーグ地方裁判所にてASMLに対し11件の特許侵害訴訟を提起し、また、東京地方裁判所へも提訴しました。そして、ASMLの液浸露光装置に使用されている光学部品の製造を行っているZeissに対してはドイツのマンハイム地方裁判所へ提訴した、としていますが、当時は「デジタルカメラ」への記述はありませんでした。

ASML、Zeissによるニコンの特許侵害の背景(2017年4月24日付ニコンニュースレリーズより)
・1990年代、ニコンは世界第一位の半導体露光装置メーカーとしての地位を確立しました。
 ・2001年12月、ニコンは、当社の特許権を無断で使用していると主張し、米国においてASMLを提訴しました。

・2004年には包括的な和解に至り、ニコンはASML/Zeissとクロスライセンス契約を締結しました。このライセンス契約では、出願日の早い特許は恒久的なライセンス、出願日が遅い特許のうち一部の特許は2009年12月31日までの期間限定ライセンスとされました。
・このライセンス契約のなかで、ニコン、ASML、Zeissは、2010年1月1日から2014 年12月31日までの5年間を、お互いに特許訴訟を行わない不争期間とすることで合意しました。
・しかしながら、この不争期間中に行われた特許侵害行為について、ニコンは、ASMLとZeissに対して損害賠償を請求することがクロスライセンス契約により可能となっています。
ニコンは、ASMLが不争期間を利用し当社特許を侵害した製品を製造、販売したことを、訴訟において明らかにしていきます。
・2009年12月31日にクロスライセンス契約におけるライセンスが終了した後も、ニコンは新たなライセンス契約についてASML、Zeissとの合意を試みました。しかしながら、ASMLとZeissが当社の特許技術の価値に見合ったライセンス条件を受け入れることはありませんでした。ニコンは、ASMLとZeissが当社の特許技術を無断で使い続けていると確信しており、特許権を行使するため今般新たな訴訟手続きを開始しました。

明けましておめでとうございます。

 今年は久しぶりに近所の神社へ2年参りをしてきました。それというのも、昨年2018年は、何かと私にとっては問題多き年でした。それを振り切って、一気に2019年に行こうというつもりで2年越しの神頼みです。そして、今年は年男なのです。このお正月を明けると、2月28日から3月3日までのパシフィコ横浜で行われる「CP+2019」での大役など、相変わらずカメラ生活どっぷりなのです。

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私のカメラショットは、カメラ任せでどれだけ写るかというのが課題です。

 お参りをすました後の境内社務所で、早速、子供たちの新年奉納お囃子を最新EOS Rでパチリ。24-105mm、Fvモード:F4・1/60秒、ISO3200、AM 0:10、まずまずの滑り出しです。本年もよろしくお願いいたします。

2019年CP+「上級エンジニアによるパネルディスカッション」がおもしろい

 2018年も残すところわずかとなりました。今年は、写真業界にとってさまざまなビッグな動きがありました。

 すでにご存じの通り、ニコンキヤノンのフルサイズミラーレス一眼分野への参入であり、引き続き2019年にはパナソニックとシグマがライカカメラ社と協業しライカのLマウントでフルサイズミラーレス機をだすというのです。これらの動きに加えて、富士フイルムが1億画素の中判ミラーレス機GFX100を、リコーがGRⅢと新型の登場を予告してます。このような近年にない活気を呈するカメラ業界ですが、カメラと写真映像のワールドプレミアムショーとうたった「CP+2019」が2019年で10年目を迎え、2月28日から3月3日までパシフィコ横浜で開かれます

 そして恒例の『上級エンジニアによるパネルディスカッションも10周年を迎え、私もモデュレーター(当初はコーディネーターとも呼ばれてました)としてお手伝いして10回目となります。個人的には、この時のためを目指して、新型の「ニコンZ7」、「キヤノンEOS R」を使い込み、準備を進めてきました。2019年は、参加上級エンジニアも従来からのオリンパスキヤノン、シグマ、ソニーニコンパナソニック富士フイルム、リコーの8社に加えレンズ専業メーカーとしてタムロンが加わり9社になり、フルサイズミラーレスの技術条件であるショートフランジバックに加え、大口径マウント内径など新たなスペックが追加され、交換レンズの問題は、より幅広く話題を展開できるようになりました。

 すでに『上級エンジニアによるパネルディスカッションへの事前予約も開始されていますので、ぜひお見逃しないようにお申込みください。

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事前予約のお申し込みはこちらへどうぞ

11月のパリ写真月間を報告 2018

 11月のパリは、サロン・ド・ラ・フォト、パリフォト、フォトフィーバーなどの写真イベントが目白押しです。ここ数年駆け足ですが、パリの写真イベントを見てきました。そこには、表現としての写真が、日本とのかかわりにおいて大きくは変わらないように見えますが、少しずつ静かに動いていることを実感したのが2018年でした。いつものカメラばかりのレポートだと思われるかもしれませんが、フランスのカメラ事情に加え、私なりの解釈で写真の表現系の部分もレポートしてあります。

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≪パリ6区にある、サンジェルマン地区で行われる「フォトサンジェルマン」には36ものギャラリーや写真関連施設が写真を展示しました≫

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≪2018年は日仏友好160周年。東京都とパリ市が友好都市となって36年、ということで、フランスと日本、パリ市と東京都、アンスティチュ・フランセがさまざまなイベントを行いました≫

 今回のレポートで特に注目していただきたいのは、1866年に創設されたフランスアカデミーを訪れることができ、いまから179年前の1839年8月19日にダゲレオタイプ」の公開講演がF.D.Argoによってフランス科学アカデミーで行われた会議室を見学することができたのです。このダゲレオタイプ発表の場面は古い文献にイラストで見ることはできますが、実際にその場が180年近く経った今もそのままの姿で、運用されているのに驚きました。2019年は写真術「ダゲレオタイプ」発表からちょうど180年、その記念すべき年を直前に、写真を学ぶ人にはまさに聖地ともいえる場所に訪れることができ、偶然ですが、当時のイラストと同じ場所からアカデミー会議場の写真を撮ることができました日本カメラ財団情報提供の項に公開されていますので、ぜひ報告をご覧ください。 (^_-)-☆

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≪ルイXIV世の名の刻まれた銘板のある、歴史ある建造物のなかにフランスアカデミー会議場があります≫

フォトキナ2019は中止、世界のカメラショーは?

 12月4日朝、写真業界人の間に少しオーバーですが激震が走りました。去る9月29日に隔年開催を終えたばかりのフォトキナが、次回からは5月に毎年開催で、2019年5月8日(水)から11日(土)からだとアナウンスされていたのが、2019年は中止で、2020年5月27日(水)から30日(土)までに延期するとケルンメッセ事務局から12月3日付でニュースレリーズが発信されたのです。実は、この日に一部の写真業界団体には、フォトキナ2019の案内が郵便物で届いたばかりで、その封筒を開けたばかりのところに、次回フォトキナは2020年にというWebでニュースレリーズが届いたので、びっくり仰天というわけです。これに対して、“やはりねというような声があがりましたが、結果としては2018年9月開催から、わずか7か月後にフォトキナ開催という期間的な短さに問題があったのでしょうが、参加企業にとっては新製品のあるなしにかかわらず、出展に関する費用的な問題は大きく、次回参加を決めかねている企業は多数ありました。

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≪ケルンメッセ入り口に貼られた、次回参加を呼びかけるパネル。2018年9月28日撮影≫

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≪次回の参加表明した企業を並べて、参加を呼びかけるパネル部分を拡大してみました。9月28日現在です≫

 今回の延期は、ドイツ写真工業会と協議してというようなことも書かれていますが、やはり無理があったということなのでしょう。航空券、ホテルをキャンセルなど、皆さん大変ですが、中にはいろいろ予定を組みキャンセルできない人もいるようです。2018フォトキナに関しては、こちらに詳しくレポートがあります。

アメリカPMAショーはどこ行った

 実はその時、の脳裏を横切ったのは、1924年に発足の歴史をもつアメリカの写真業者団体であるPMAの主催する写真機材ショー“PMAショー”の結末でした。かつて、世界の大きなカメラ関連ショーといえば、ドイツのフォトキナと並びアメリカのPMAショーだったのです。それが、PMAショーが単独で開催されたのは、2010年のアナハイムコンベンションセンターが最後で、2011年には2度 の延期により事実上の休止であり、2013年にはアメリカのコンシューマー・エレクトロニクスショー(CES)と併催で「PMA@CES2013」という形でCESの一部スペースを使う形で再スタートしたのでが、2015年にDigital Imaging/Photography Preseneted by PMAという形で関係していましたが、2016年の時点ではPMAという文字はまったく見ることができなくなり、その後はPMAそのものの団体が消滅してしまったようです。

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 ≪2015年のCESにて、Digital Imaging/Photography Preseneted by PMAと関係していたように看板はでていましたが、このコーナーにはカメラメーカなどはいなく、実態はなかったのです。キヤノンニコンもカシオ、リコー、サムスンなどすべてはCESの方のコーナーに出展していたのです

 もちろん、フォトキナがこのような結末をたどるとは、努々思いませんが、なぜか延期で、PMAショーを思い出しました。PMAショー、CESに関してはこちらに詳しいレポートがあります。

●日本のカメラ、写真機材ショーは

 現在日本で行われているカメラ、写真機材ショーは「CP+」と「Photo Next」ですが、そのスタートは、1960年で、来年で60年を迎えるのを記念して日本カメラ博物館クラブ25では、「日本のカメラショー60年」展を開催しています。カメラショー以前の歴史から、さまざまな資料と、カメラショーカタログを展示してCP+」と「Photo Next」へ至る経緯を12月25日まで展示しています。会期中には担当学芸員によるトークショーも開かれますので、これを機会にお出かけください。

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≪日本カメラショーからCP+」と「Photo Next」まで≫

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≪カメラショー第1回目、第2回目第4回目第7回目カタログ。パネル展示より≫

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≪内部概観。各ショーのカタログはJCIIライブラリーで閲覧することができます≫

 詳しくはこちら。