写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ニコンZ fc を使ってみました ( Ver.2.1 Final)

 ニコンから改心の作ともいえるミラーレス一眼「ニコン Z fc」が7月23日に発売となりました。基本性能としてはAPS-C判の2151万画素CMOS搭載機となるのですが、従来からのミラーレス機の主軸がフルサイズであったのに対し、ZfcはAPS-Cですが、ミラーレス機の基本である小型・軽量に対してきわめて忠実であり、しかもデザインは1970年代後半から1980年代前半のフィルムカメラ時代の一眼レフニコンFMやFEを踏襲したということで、クラシカルな雰囲気をもつことから発表と同時に話題を呼びました。

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ニコンZfcにZ DX16-50mmF3.5-6.3 VRを装着。16-50mmレンズはフルサイズだと24-75mmレンズの画角に相当。レンズは沈胴状態です≫

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レンズマウントニコンZマウント≫

 植設された電気信号ピンは数、位置とも当然のことですがフルサイズと変わりません。レンズ側マウント部は黒色のエンジニアプラスチックですが、強度的に不足するような感じや違和感はありません。DX16-50mmをニコンZ7に取り付けてみるとグリップ部分とほぼ変わらない長さであるためにパンケーキズームレンズといった感じになります。逆にZ 35mmF1.8SをZ fc に取り付けると大口径中望遠レンズといった感じになりますが、どちらも撮影上画角が変わること以外、AF動作などまったく問題はありません。上の写真でマウント基部内側にはMADE IN THAILANDと記せられています。手元にあるZ 35mmF1.8SはMADE IN CHINAとプリントされています。タイといえば、今となってはニコンのカメラ製造の本拠地であり、DX16-50mmにかけるニコンの意気込みを感じさせますが、冒頭でZ fc を“改心の作”と表現したのはこのあたりにもあります。

ニコンZfcとニコンDf

 Zfcと似たような開発思想を持った機種としては、2013年に発売されたデジタル一眼レフの「ニコンDf」に見ることができます。このときはダイヤル操作に加え非Aiのオールドニッコールレンズが使えるなどの配慮がなされましたが、フルサイズということも手伝って、手に持ったボディは厚く大きく感じられ、さらに各操作部にロック機構が多用されるなどがあり、発売当初は人気を集めましたが、必ずしもヒットした機種とはなりませんでした。そのような中にあって、Dfのミラーレス版とも考えられるZfcの登場となったのです。

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ニコンDfとニコンZfc≫ 左:ニコンDf(2013、サロン・ド・ラ・フォトにて)、右:ニコンZfc(2021、ニコンニュースリリース写真より)

 ニコン Z fcが発表されたのは2021年6月29日、それ以前に一部サイトに新製品として情報が流れていたこともありますが、私の周りを見渡すと、最も注目していたのはDfユーザーグループでした。次に、歓迎していたのは60歳前後の過去にフィルムカメラニコンFMやFEを知る世代でした。私個人としては、FMやFEが発表された時期から知っているのですが、いずれにしてもその時代のカメラ世代は、現在はすでにフィルムカメラから卒業されている方々がほとんどだという認識でした。さらにこの10年ほどの傾向としては、フィルムカメラに価値を見出す大学生の写真ファンにFMやFEのファンが多数存在したと記憶してます。これにはエピソードがあるのですが、いまから7~8年ほど前にかつてニコンFEの設計責任者であった小野茂夫さんがJCIIクラブ25で写真展をやっているところに大学生の集団が10人ほど来たのですが、そのうち8人ほどがニコンFMやFEのシリーズを肩からさげていたのです。小野さんが喜ばれたのは言うまでもありませんが、なぜこのようなカメラを使うのかとか話は弾みましたが、小野さん自身がデジタル一眼レフを使っての写真展を開かれていたので、横にいた私にとっては大変印象的な場面でした。

 私の理解では、ここ10年ほどの学生さんたちにとってはフィルムカメラを使うのはトレンドで、メカニカルなデザインをしているのが新鮮であって、マニュアルフォーカスで必要最低限の機能がついているニコンFMやFEがシンプルで使いやすということと、中古の価格が手ごろだということがあったのだろうと思っていたのです。その点において、最新のミラーレス機で若い層を開拓するのにはニコンFMやFE時代のデザインを現代に再現するというのは、十分に的を得ていると思うのです。

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≪Z fc のトップカバー上部から見てみました≫ トップカバーはチクソモールドによるマグネシウム合金のようですが、底部はエンジニアプラスチック製になっています。カメラを構えたるときに、必ずトップカバーに手が触れますが、わずかに冷っとした感触がメカニカルなデザインにマッチします。

 カメラを手に持った状態だとこのように見えるはずですが、フィルムカメラ時代のFMやFEに似ているといえば似ていますが、よく見るとフィルム巻き戻しノブがあるわけではなく別物であるかことがわかりますが、イメージとして似せているのは操作部のシャッター速度とISO感度にダイヤルを採用したことと、ペンタプリズム的な形状をファインダー部の上部と正面のロゴマークの配置などがうまく処理されています。特にミラーレス機としてはグリップをなくしたこともく大き関係しています。さらにレンズ光軸を左側にシフトしたことにより握りやすくなり、右目でファインダーをのぞいた時に左目を開いて見ることもできます。写真はレンズの沈胴を引き出して、外観的に最も短い35mmの焦点距離にセットしてあります。

 ここでひとつ気になるのがかつてFEやFMを新品で使ったことがある人たちは、年代としては60~80歳以上になっているはずなので、視力が老眼気味の方にはつらい大きさの文字サイズといえましょう。老眼鏡を必要としない若い世代にはまったく問題ないのですが、そのくらい微妙な文字サイズです。という私はもともと近眼でメガネをかけていますので、メガネを外せばよく見えるのです。 

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≪背面の液晶モニターは表裏可変式で裏返して表示できます≫ 左:カバー状態、右:液晶モニター表示状態。とっさの撮影などを考えると、常時背面液晶ディスプレーが見えてる側にセットしておいたほうが無難でしょう。

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≪液晶パネルは裏返してレンズ側から見ることができます≫ 撮影メニューの詳細表示のほか、タッチAF、タッチAF・シャッターも可能で、撮影時のファインダーモニターとして、 自撮りや動画のセルフ撮影には便利に使えそうです。

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≪Zfcに付属してくるストラップ。控えめに存在をアピールしているのが好感持てます≫ 幅は約29mmです。

 実は私は、ボディについてくる純正ストラップはほとんど使いません。それというのもブランド名が各社とも派手にプリントされていて、おしゃれな感じがしないのです。ところが今回のニコンZfcのストラップは細身でわずかに光沢のある黒の変わり織でジグザグ模様となっていて、その中央に“NIKON Z”と刺繍されていてその存在が控えめなのが好感を持てるのです。カメラを首からさげて歩いているとわかるのですが、一番ほかの人の視線を感じるのはレンジファインダー式のライカですが、Zfcもそれに近いものがあるかもしれません。一度、写真を撮る多くの人が集まるお祭りにでも撮影に携行してみればわかることです。いずれにしてもカメラの存在をアピールするのにストラップの文字の大きさや派手さでなく、カメラデザインそのもので誘目されるのがベストであることは間違いなく、Zfcはストラップを含めてトータルにデザインしたのだろうということは十分に理解できます。

■いつもの英国大使館

 まずはいつもの英国大使館正面玄関を発売日翌日の7月24日の撮影です。撮影時には雲が多く天候に不安はありましたが、いつもと同じように、絞り優先AEでF5.6に設定し、屋根中央下エンブレムの部分にピントを合わせ、青空がでたところでシャッターを切りました。

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≪いつもの英国大使館正面玄関≫ Z DX16-50mmF3.5-6.3 VR焦点距離:24mm(フルサイズ35mm相当画角)、絞りF5.6・1/800秒、ISO-AUTO 100、AWB、手持ち撮影。焦点距離35mm相当画角、絞りF5.6は、撮影位置は他機種でもいつも同じにしていますが、このレンズでは絞り開放の描写を見ていることになります。

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≪エンブレム部分を中心に画素等倍にトリミング≫ 壁面のハイライト部分が飛ぶようなこともなく、2100万画素なりの十分な描写を示しているのがわかります。Zfcは撮像素子が小型なAPS-C判の2100万画素ですが、この撮影データをノートリミングでA3ノビに同じインクジェットプリンター(PRO-100)で拡大プリントしましたが、同じ場所で同一条件でフルサイズの高画素機ニコンZ7(4575万画素)やソニーα7RⅣ(6100万画素)の撮影結果と比較してみても、その差はわかりません。

■ランダムな場面での撮影

 Zfcを使うにあたって、最初に考えたことはこのカメラの名称“c”が示すようにカジュアルであって、なるべく気軽にシャッターを押そうということで、基本的にはすべて“AUTO”で撮ろうと決めました。一応Zfcの名誉のために言いますと、メニュー画面から入れば通常のミラーレス機同様にサイレントシャッターなどさまざまなモードで撮影はできます。掲載は、すべてノートリミングです。

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≪オムレツのプレートランチ≫ 焦点距離:16mm(フルサイズ24mm相当画角)、絞りF3.5・1/125秒、ISO-AUTO 2500、AWB、手持ち撮影。カジュアルなカメラならスマホに負けない料理の写真を撮ろうと、撮影に出向いた先のカフェのプレートランチです。テラスのテーブルで食事したために、背後が林で逆光撮影となりましたが、掲載にあたってわずかにトーンカーブをわずかに持ち上げわずかに明るくしました。拡大率によってはそのまま行ける露出結果でした。絞り開放で、背後のガーリックライスの米粒がわずかにぼけていますが、メインのオムレツや野菜は十分にシャープです。光学的には焦点距離16mmのレンズですから、F3.5と絞り開放でも必要十分な被写界深度を得られるのは、画面サイズの小さいAPS-C判ならではの特徴といえます。

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 ≪鰆と茄子の焼き物≫ 焦点距離:35mm(フルサイズ52mm相当画角)、絞りF5.3・1/100秒、ISO-AUTO 3200、AWB、手持ち撮影。懐石料理の1品だけを撮影しました。ランチの時は自然光でしたが、こちらはホテルの食堂ですから人工光源下となります。ダークなテーブルの上にダークなお皿に盛られていますが、押すだけでピント、カラーバランス、露出とも文句なしです。

 かつてフィルムカメラの時代、1989年に発売されたコニカビッグミニは正式名称コニカA4でしたが、文字通りA4サイズが写せることでヒットしました。従来のコンパクトカメラの最短撮影距離は60cmぐらいだったのを一気に35cmまで近づけてA4サイズが写せたのです。折からの海外旅行ブームの走りのころで、飛行機の機内食、さらにはテーブルに並んだお皿を席を立たずに撮れるということが高い評価を得たのですが、以後さまざまな技術変化もありましたが、現在ではスマホで料理写真を撮るのが、食事前のお作法(無作法)にもなりましたが、そのスマホ同様、もしくはそれ以上にきれいな写真が撮れるのは、若者向きのカジュアルなカメラとしては必須事項だと思うのです。その点においてはZfcはまずは合格といえるのでしょう。ここで改めて撮影データを見ると、フィルム時代にあり得なかったことは、撮影感度がISO2500とかISO3200が当たり前のように使われていることで、このあたりがフィルム時代とは決定的に異なる部分で、超高感度域が何のストレスもなく使えるようになったのも、デジタル時代の進歩だと思うのです。

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 ≪ベンチに座る人形≫ 焦点距離:19mm(フルサイズ28mm相当画角)、絞りF5・1/250秒、ISO-AUTO 200、AWB、手持ち撮影。ランチを食べたカフェの庭に小さなベンチがあったので、持参の人形を座らせて記念撮影。雨降り直後の木漏れ日の中にわざと庭を幅広く広角で写して入れることにより、小さなベンチであることがお分かりいただけるようにと考えました。この640ピクセルVGAではわかりませんが、A3ノビクラスまで拡大プリントすると、人形の髪の毛や顔の表情、さらには着物などの繊細な部分が描出されます。

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≪雨上がりの草と落ち葉≫ 焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、絞りF6.3・1/200秒、ISO-AUTO 400、AWB、手持ち撮影。カフェの庭に生えた草と紅葉した落ち葉に陽があたりました。こちらも大きくプリントすれば、葉の葉脈や美しい水の輝きが見えます。

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≪飛び立つ飛行機≫ 焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、絞りF9・1/640秒、ISO-AUTO 100、AWB、手持ち撮影。天候も良く、結果として素晴らしい写りです。

 最近、EOS R5、α1などを使っていて思ったことは、静止物を撮っているだけではそのカメラの実力はわからないというように考えるようになったのです。例えば、サッカーの試合などで選手の動きや、ボールのタイミングにどの程度AFが追随できるかなどを見てみると、静止物を撮影していた時とは違うもう1つのAF性能が見えてくるのです。そんなわけで、いまは飛行機の撮影に凝ってまして、神奈川県の厚木基地、東京都の横田基地、さらには埼玉県の入間基地など転戦してきましたが、なかなか思った写真が撮れませんでした。そのようななかで見つけたのが松本空港で、望遠側で50mm(75mm相当画角)までしかないのに、上に示したような十分な写真が撮れたのです。もともと地方の空港ですから、便数は1日にわずかしかなく、この写真も運よく出発便が撮れたのです。ただ、この時びっくりしたのは、AUTOのまま高速連続撮影の拡張モードH+(約11コマ/秒)にして高速連写しようと飛行機が離陸前にセットしておいたのですが、時間的に余裕があるので電池の消耗を防ぐため1度電源をOFFにしていたのですが、実際に動き出したときに電源をONにしてここだとばかりにシャッターを切ったら、何と1コマ撮りになっていたのです。とっさの判断で、ファインダーで飛行機の姿を追いながら1コマずつシャッターを切った内の納得の1枚が上の写真なのです。結果として数枚使えるのが撮れましたが、正直いって焦りました。後日、いろいろ試してみると、AUTO以外のP・S・A・Mモードでは電源をOFFにしても連写は保持されるのですが、AUTOポジションだけは電源OFFで1コマ撮りに復帰するのです。私は撮影者として意志をもって選んだ撮影モードであり、わざわざ自動復帰しなくても撮影すればわかることなので、自動復帰して欲しくはないのです。それに数カットしか撮れないよりはたくさんとれたほうがいいわけで、このあたりは設計者としては戻し忘れを防止させるための配慮なのでしょうが、私的には小さな親切大きなお世話ともいえるわけで、便利さと不便さは常に相対するわけですが、どのように判断されるかは難しいことです。

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≪オランウータンの子供≫ 焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、絞りF6.3・1/125秒、ISO-AUTO 100、AWB、手持ち撮影。動くものを探しに多摩動物公園に行ってみました。金網越しでない動物を写したいとやっと見つけたのがオランウータンの子供です。動物園の場合、動く動物を写すことは可能ですが、大きな、ゾウやキリンなどはこのレンズでも写せましたがもっともっと望遠が欲しかったです。

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≪水中から顔を出したサイ≫ 焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、絞りF6.3・1/80秒、ISO-AUTO 125、AWB、手持ち撮影。水中から顔を出して、水を吹き出したところ。撮影はAUTOで多少暗い場面だったようで、シャッターが低速となりサイの顔の部分はブレていますが、手前の水槽の縁はブレていないので被写体ブレといえるでしょう。

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≪置物の鳥≫ 焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、絞りF6.3・1/80秒、ISO-AUTO 160、AWB、手持ち撮影。このレンズで撮影していると、ボケ具合を見るのはなかなか難しいので、望遠側で極端に近寄って背後のボケを見てみました。F6.3と暗いレンズですが意図的に操作すればボケ具合を確認することができ、それほど癖のないボケが得られることがわかりました。

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≪旧中込小学校≫ 焦点距離:16mm(フルサイズ24mm相当画角)、絞りF7.1・1/200秒、ISO-AUTO 100、AWB、手持ち撮影。曇天でしたが垣根のわきから撮りました。ズームの最広角側ですが、屋根を見てわかるように直線の再現性はいいようです。

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≪ストリートピアニスト≫ 焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、絞りF6.3・1/80秒、ISO-AUTO 3200、AWB、手持ち撮影。ピクトリコのギャラリーに行った帰りに、JR両国駅構内ステーションギャラリーにご自由にお弾きくださいと置かれた1台のピアノを無心に弾く女性。その迫力にしばし聞き入ってしまい、終わると拍手しましたが、彼女はそのままホームに向かい、飲み物を自販機で買って、来た電車に乗っていきました。普通に写真を撮りましたが、本当は動画だとその場の雰囲気が臨場感あふれて伝わったことでしょう。

●走行する列車を撮ってみました

 もう1つ、AFの動体駆動予測特性を調べるためにいつものように西武新宿線の特急「小江戸号」を撮影してみました。

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オートフォーカスAF-A(S・C自動切り替え)、焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、シャッター速度優先AE、絞りF6.5・1/500秒、ISO-AUTO 160、AWB、手持ち撮影。この場所はうまくいくと特急がほぼ同時刻に上下線ですれ違う場所で、ここ数年は必ずチェックポイントとして撮影してきました。今回は、画角75mm相当ということである程度見えてから連写で撮影した中のぎりぎり手前側まできた時の1枚です。列車の先端を拡大して観察してみると十分に合焦してます。このような場所では、例えば先頭車両前部のスカートの部分の敷石のシャープさで簡単にどのあたりにピントがきているかでも知ることもできます。今回はこの車両が行き去った数秒後に下り線が通過しましたが、もし上下線のすれ違う場面を撮影するとカメラはどのようなAF駆動予測をするか面白いです。それを追いかけるにはもう少し焦点距離の長いほうがうまくいきます。

●打ち上げ花火を撮ってみました

 そのほとんどをプログラムのAUTOで撮影してきましたが、何か特殊な撮影設定が必要な被写体はないかと考えたのが打ち上げ花火なのです。打ち上げ花火は真っ暗な夜空に赤・青・黄・紫などの火炎が見えるのですが、AEで撮影する場合には通常その状態でシャッターを押すと、画面の中に占める黒い空の部分の面積にもよりますが、空に露出が合ってしまい花火の火炎が露出オーバーになることがあるので、通常は-1~2EV程度の露出補正が必要となるのです。ということで、露出補正した結果が以下の作例です。

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焦点距離:22mm(フルサイズ33mm相当画角)、絞りF4・1/30秒、ISO-AUTO 3200、-2.3EV補正、AWB、手持ち撮影、西武園。

 もともと花火の撮影は、三脚を使い、ある程度絞り込んで、長時間を使い光跡から開花までを撮影するのが一般的ですね。この場の撮影は手持ちのワンショットですから、光跡は写りませんが、花火の開いたところだけより手前の観覧車が写り込んだほうがおもしろかったので、この写真を掲載です。

●AFの認識特性

 AFエリアの選択はメニュー画面では上位機種と同じようにシングル、ダイナミック、ワイドエリア等などありますが、ZfcならではのモードとしてオートエリアAFに(人物)と(動物)というモードがあることですが、それぞれのモードに被写体の記憶認識が働くようで、単に人物のみならず花やカップなど形があるものにAFし、一度ピントを合わせシャッターを切るとAFが追随してくるのが使いようによってはすごく便利です。この作動は背面液晶パネルのタッチセンサーを「タッチシャッター/タッチAF」か「タッチAF」にセットして目的の被写体をタッチすると、その被写体を記憶してアングルやズーミングを変えてもAFがかなり敏感に追随するので大変便利です。記憶できるのは人物の顔だけでなく、テーブルの上のカップやグラス、さらには花などと、特に被写体に制約はないようなので、使い方によってはすこぶる便利な機能だと思いました。

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≪めしべをタッチシャッター/AF≫ 焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、絞りF9・1/100秒、ISO-AUTO 100、AWB、手持ち撮影。DX16-50mmレンズで最も近づいて背面液晶で「タッチシャッター/タッチAF」機能を使って撮影しました。

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≪タッチシャッター/AFでフレーミングを変えてもAFがついてきた≫ 焦点距離:50mm(フルサイズ75mm相当画角)、絞りF9・1/100秒、ISO-AUTO 100、AWB、手持ち撮影。「タッチシャッター/タッチAF」機能を使って撮影した後に、フレーミングを少し変えたらAFフレームがついてくるのです。これは面白いと上下左右と動かした後に、シャッターボタンを押しました。これはすこぶる便利な機能ですが、購入時の取扱説明書にはシャッターが切れるとは書いてありますが、AFの追随機能についてはまったく触れていないので、何か得した気分にはなりましたが、はたしてこれでいいのかなとも思ってしまいました。作例では花のめしべにピントを合わせましたが、もっと遠くから狙うのもいいと思います。

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≪顔認識AF・AE≫ 焦点距離:26.5mm(フルサイズ40mm相当画角)、絞りF5.6・1/250秒、ISO-AUTO 100、AWB、手持ち撮影。巻頭の作例英国大使館正面玄関を撮影に行った帰り、オリンピック直前で正門脇の塀に掛けられたランナーのパネル写真を狙って撮りました。当初はパネル中央辺りにピントと露出が合っていたのですが、上部のランナーの顔を認識すると顔にピントが合い、露出も顔が見えるようなほど良い結果となったのです。顔認識AFの追随特性はかなり感度良く、PCパソコン画面で静止画人物の顔はいうまでもなく、動画でも細かく俊敏に追いかけます。

●電子シャッターのローリングシャッター現象の発生ぐあいを見ました

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≪サイレントシャッター(H+)、焦点距離:24mm(フルサイズ35mm相当画角)、絞りF4.2・1/1000秒、ISO-AUTO 1100、AWB、手持ち撮影≫ ニコンDX(APS-C)判の画面サイズは23.5×15.7mmであり、フルサイズの画面サイズは36×24mmですので、フルサイズは縦方向に1.52倍長く、APS-C判は0.65倍短いということになります。つまり同じクラスのCMOSだとすると、シャッターアパーチュアの縦・横方向が短い分だけ有利で、秒間の撮影コマ数もかせげるということになります。そこで、Zfcをサイレント(電子シャッター)モードにして走行する車を狙ってみました。焦点距離、撮影距離は同じでシャッター速度優先で撮影したのがこの写真です。いつもはボックスタイプの軽トラックを撮影してみていますが、今回は中型トラックで一部分しか入りませんが、直線がきれいに斜めに出ているのでこのカットを選びました。ローリングシャッター現象の発生は明らかに認められます。サイレントシャッターは、音楽会、舞台などシャッター音を嫌うところで使うのがベストですが、スポーツで高速に移動する野球のバットやゴルフのシャフトさらには球などでは、像に歪みの出ることが撮影距離やタイミングによってはありますが、サイレントシャッターモードを外せばこのようなことはなくなります。なお、撮影はAF-A(シングル・連続自動切換え)、H+(11コマ/秒)で行いましたが、撮影画面から見るとAFのくいつき(追随)特性はすごく良いということがわかります。

サイレントシャッター時のLED光源明滅ムラの発生ぐあいを見ました

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≪ 左:通常モード、右:サイレントシャッター≫ 絞りF4・1/1000秒、ISO-AUTO 12800、AWB、手持ち撮影。サイレントシャッターとLED光源の問題点を抽出するために、写真用LEDランプをセットして問題点を写しだそうとしたときにみごと失敗し、パソコン室のLED電球の下で中で何気なくカレンダーを写したときにそのものずばりの写真が撮れることをα1のレポートの時に確認しましたが、Zfcでも同じ設定で撮影したらやはり再現できました。この写真でわかることは、最近は舞台や室内の照明光がLEDに変わっていることがありますが、このようなときには「レリーズモード」のサイレントシャッター(電子シャッター)をOFFにすればよいのです。電子シャッターでこのような現象が発生するのは何もZfcだけではなく、他社を含めて現状ではいかんともしがたいのです。

 ■バッテリーの充電機能について

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 各社の一眼がミラーレス機になって一番不思議だったのは、ニコンキヤノンのフルサイズ機でした。それ以前のミラーレス機であるソニーに加え、パナソニック、シグマなどのフルサイズ機のボディ本体での直結充電は一般的なタイプAのUSB端子からカメラ側のUSBのマイクロUSBかUSBタイプCで接続できるのに、ニコンキヤノンだけは専用のACアダプターか特殊なPD(パワーデリバリー)付のバッテリーでしか充電できなかったのです。ところが今回のZfcでは、上の写真を見てお分かりのようにごく普通のUSBタイプA端子の、市販の携帯用充電器、携帯用バッテリー、変換コードなどで充電可能となったのです。最近は車や新幹線、果てはホテルのベッドサイドにもUSBタイプAの電源コンセントができるようになったのです。今回もZfcの撮影で出向いた先のホテルのベッドサイドにはAC100Vが1口、USBタイプAの端子が2口あるのです。夕食を含め一日の行動を終えたときにスマートフォンとZfcを充電して休みましたが、朝にはフル充電されているわけです。これは素晴らしいことです。出かけるときのカメラ機材はなるべく軽くしたいのは当然で、Zfcの小型・軽量、カジュアルボディに通じる部分なのです。

 まさにこの部分がユーザー本位の物作りに戻した部分で、冒頭に記した改心の部分だと思うのです。USB充電が可能になったのはどうやらZ50からのようですが、コネクターは「USBタイプA→マイクロUSB端子」でした。さらに驚いたのはZfcではUSB給電もできるようになったのです。USB給電とはボディ本体外からの電源供給が可能で、カメラ内バッテリーの消耗を減らすことができる機能であり、タイムラプラス撮影や動画撮影の時に効果を発揮できるようです。今回のZfcでは新たに電圧・電流を制御できる回路をボディ内に持たせたのでしょうか、急速充電だけでなく、供給電源に見合ってじっくり時間をかけるのでもいいわけで、ここは大きく評価されてよい部分だと思います。なおボディとUSB電源をつなぐと、カメラ側USB端子口右わきにオレンジ色のLEDが点灯するので充電開始を知ることができ、その状態でカメラ電源をONにすると充電は中止され、給電状態となり背面液晶パネル左下電池マークの右わきにACコンセントのアイコンが表示されるのです。

■マウントアダプターと外付けストロボ

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左:ミラーレスといえばマウントアダプターを使うことによりオールドレンズが使えるわけです。さて何のレンズを付けるかですが、ボディが小型であることとAPS-C判ということで実際の画角は装着したレンズの1.5倍相当になるわけで、手元にある小型のレンズだとライカスクリューマウントのコシナフォクトレンダーのスパーワイドヘリアー15mmF4.5(22mm相当画角、1999)、キヤノン25mmF3.5(37.5mm相当画角、1956)があり、いずれもフルサイズだと周辺光量の落ち込みが大きいのですが、APS-C判なら周辺がカットされるのでそのような心配はなくなります。とはいっても重さで見ると、Z DX16-50mmF3.5-6.3 VRが131g、マウントアダプターを付けたスパーワイドヘリアー15mmF4.5が165g、同じくキヤノン25mmF3.5で210gとなります。したがって16-50mmよりZfcに取り付ける状態ですでに重いのです。ここはやはり最新の専用のZ DX16-50mmF3.5-6.3 VRを駆使して撮影する方がZfcには似合うと思うのです。ただし望遠系のレンズを付ければ1.5倍望遠的になるのでAPS-C判なら効果的なのです。もしクラシック系のレンズの描写そのものを楽しみたいのなら、やはり有効画面全体で描写を楽しんだほうが良いわけで、この場合にはZシリーズのフルサイズ機を求めることをお勧めします。したがって、ここではマウントアダプターを付けてライカスクリューマウントの“ニッコールS-C 5cm F1.4”を装着して姿写真としました。

右:スピードライトSB400。ニコンZ50のユーザーにZfcのことを尋ねたらストロボを内蔵していないからだめだという人がいました。それならばということで2006年にD200用に購入した外付けストロボの「ニコンSB400」を装着してみました。バウンス状態にして室内で撮影してみましたが、無影できれいに撮れました。それにしても高感度がむりなく使えるようになったデジタルカメラでは、ストロボの存在も忘れていましたが、室内の人物や料理の撮影ではバウンス機能を働かせれば大変有効で、便利なシステムアクセサリーです。なお最新モデルとしては、より小型化されたSB300があります。

■終わりに

 今回のZfcでの撮影は、基本的にAUTOつまりプログラムAEで行いました。実は、私はカメラの性格を知りたいときはいつもプログラムAEで撮影しています。もちろん特定の意思をもって撮影するときは、その限りではないのですが、カメラに対して開発陣がどのような考えを持っているかがわかるのです。カメラのプログラムラインはさまざまな要素が加味されるのですが、明るさ、撮影レンズの焦点距離、被写体までの距離、静止物か動体か、被写体の輝度分布や色傾向など、各カメラメーカーのノウハウを集約させた部分として『絞り値とシャッター速度』が決まるのですが、最新のデジタルカメラではさらに『感度の自動可変』の要素が加わり露出が決まるので『絞り値とシャッター速度と感度』が自動的に変わるのです。そのプログラムでの結果では、自分のイメージする写真が撮れないときに、目的にかなった組み合わせを行うわけです。実際はさらにAF「ピント位置」などの要素も加わるのです。
 そこで注目したのが、レンズの明るさがズームで絞り開放でF3.5~F6.3と暗いわけで、どのようなプログラムになっているかということでしたが、ほとんどのカットが絞り開放近くで撮影されているのが興味ある点です。唯一「飛行機」写真はF9・1/640秒と絞られていますが、高輝度な場面だからでしょうが、ズームレンズの絞り開放あたりを常用とするあたりはレンズ性能の向上を改めて知らされました。また、友人のカメラマンのHさんから指摘されましたが動物園のサイの写真では被写体がぶれたというが、明らかに屋外の明るいところなのに「1/80秒・ISO100」というのはおかしい。もっと感度とシャッター速度が上がっていても良かったのではというのです。まったくその通りなのですが、その辺りはブラックボックスなので、どのようにしてこのようになったかはわかりません。

 発表と同時に品薄が伝えられたZfcですが、幸いZ DX16-50mmF3.5-6.3 VR付のズームキットを注文していたために、発売日当日に無事に入手できました。今回は入手翌日にいつもの英国大使館正面玄関を撮影したのちに、ランダムな被写体撮影ではかなり幅広く動きました。同時に身近にいる人々にカメラを見せてどうだろうかと聞いてみると、多くの人が購入の意欲を示したのでした。やはり、小型・軽量、かつてのフィルムカメラをイメージするノスタルジックなデザインは、俗に“ニコ爺”と呼ばれる高年齢層にまずは受けたようです。写真を志す若い女性たちに見せると第一印象で“わーっカワイイ”という言葉が返ってくるのですが、さらに写真に興味ある女子大学生に聞くと十分に欲しそうな視線を感じるのですが、ぐっと我慢して触らないで細かく見ないのです。なんでだろうと聞くとやはり価格が高いというのです。中古がでてくるのを静かに待つという人まで現れる次第で、今後どのようにしてニコンが狙う若い女性層に受けるかが焦点となるわけです。いずれにしても、いままでの新型カメラではあり得なかった反応なのです。とある販売店の話では、Zfcの予約時の女性比率は5%だったそうです。今や写真の専門大学に占める女性の割合は50%を超えているとされていますが、そのあたりにまだまだギャップがあるわけで、今後の伸びしろは十分にあるとみなすことができます。

 最後にもしZfcが小型・計量(ボディ+DX16-50mm+バッテリー+SDカード+ストラップ=600g)ということで長期にわたり好評を持って受け入れられるなら、APS-C判がフォーマットとして認知されることであり、作品主義の人々には単焦点のレンズが受け入れられるでしょうが、私的にはD300(2007)が発売されたころにでたDX18-200mmF3.5-5.6(2009)の高倍率ズームの万能なところが好きでしでたが、高感度に強いミラーレス用にさらなる小型化されての登場を待つわけです。

■おまけ

 Zfcを眺めていた時にどうもしっくりと手になじむなと思っていたのですが、ひょっとしてとわが家のカメラ収蔵庫から引き出してきたのが戦前の「ライカⅢa」なのですが、両機種を突起物を除いた横幅の寸法が何と、Zfcが134mm、Ⅲaが133mmなのでほとんど同寸法なのです。偶然なのか、それとも意図したことなのでしょうか。

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 かつて小型・軽量の一眼レフオリンパスOM-1(1972)を設計したオリンパス米谷美久さんは、持ちやすくするためにその横幅をライカのⅢ型と同じにしたと公言していました。そこで当時のOM-1の公称寸法を見てみると横幅136mmなのです。もしバルナック型のライカが理想のカメラ横幅寸法だとすると、ニコンZfcの横幅が134mmなので、よりバルナック型ライカの横幅に近いのです。Zfcの寸法は偶然なのか、意図したことかはニコンの設計者に聞かなくてはわかりませんが、すばらしいことです。ちなみにZfcのデザインの規範になったとされるニコンFEの登場は1978年でキャッチフレーズは“シンプルニコン”で横幅は公称142mmでした。もうひとつ加えるならアサヒペンタックスME(1976)の横幅は132mmであり、当時の技術者であったオリンパスの米谷さん、旭光学工業の野村勝彦さんの技術者としての意地を感じさせます。  (^_-)-☆

 

※ Ver.1  2021.08.06     Ver.2  2021.08.10      Ver.2.1  2021.08.12