写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

「リコーGR」の人気はどこまで

 去る8月9日~12日まで東京ビッグサイトで「コミックマーケット96」が開かれていましたが、そこで面白いものを見つけました。右下の写真にある「佐藤評論」という冊子なのですが、リコーGRへの思いを綴ったものが大半を占めますが、B5判で表紙1~4を別にして62ページで構成され、内容としてはかなりまじめなのです。

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 私が驚いたのは、上の写真に示すように、「写真工業」でリコーGR1を特集した1997年4月号の表紙デザインをそっくり使っていることです。当時この雑誌を編集していた私にとっては驚きですが、GR1と雑誌「写真工業」に対する思いがこのような形で、再現されるとは編集冥利に尽きるといっても過言ではないでしょう。

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≪表紙だけでなく本文のタイトルや見出しも写真工業のレイアウトデザインをそのまま踏襲しているのです。はたしてこれはパロディーかオマージュか。佐藤さんに連絡をとり聞いてみると、佐藤さんは写真工業を休刊後に知りファンになったそうです≫

  内容としてはどうやら、制作者の佐藤成夫さんが、リコーGR-1の試作機をネットオークションで手に入れてから、GRシリーズ研究への火が付いてしまったようです。その試作機が「佐藤評論」の表紙に写真工業的に埋め込まれているのです。佐藤さんは、試作GR1と市販GR1を仔細に比較して、試作GR1を動かそうと、サービスへ出向いたり、GRファンミーティングに出向き、当時の試作関係者らしき人に直接コンタクトを取り修理ができないと知った『幻のカメラを追って:リコーGR1編』の第1部に始まり、第2部『GR1というカメラ その成立と制約』、第3部『筆者とGRシリーズ』と起承転結させているのです。特に第2部のGR1というカメラ その成立と制約の項では、機構的に、光学的に、特許図面までを引用して検討され、さらに他社コンパクト機の光学系までを複数例題に出すなど本格的です。巻末には、参考文献として写真工業、カメラレビューなどのカメラ誌に加えて、業界紙カメラタイムズ、特許公報などから分析検討を加えていて、単なるカメラエッセー集ではないことを明示してます。

 なお、佐藤評論をご覧になりたい方は、

https://njcp.booth.pm/

https://shop.comiczin.jp/products/list.php?category_id=7990

に、アクセスしてみてください。現在は、新刊登録されていないため購入できませんが、やがて通信販売が開始されるとのことです。ちなみに佐藤評論№7の価格は1,000円で、発行日はコミックマーケット96に合わせて2019年8月12日発行となっています。いずれにしてもリコーGR1と写真工業はこのようなユーザーを持ち得て幸せなことです。 (^_-)-☆