写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

キヤノン インクジェットで襖絵を高精細複製

  キヤノン株式会社は特定非営利活動法人 京都文化協会と共同で取り組んでいる「綴プロジェクト(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)」の第7期2作品目として、ミネアポリス美術館が所蔵する、江戸時代の画家 狩野山楽(かのうさんらく)筆とされる「四季耕作図襖」全16面の高精細複製品を、旧嵯峨御所大覚寺門跡へ寄贈すると4月3日に発表しました。
 「綴プロジェクト」は2007年から京都文化協会が主催し、キヤノンが共催している社会貢献活動で、キヤノンの入力、画像処理、出力までを先進のデジタル技術を京都の伝統工芸の匠の技と融合させ、屏風や襖絵、絵巻物など古くから日本に伝わる高精細な複製品を制作して、海外に渡る前の所有者へ寄贈するなどを行ってきているというものです。
 「四季耕作図襖」は、四季を通じた耕作のようすが襖16 面(写真右は、襖16面のうちの1面で、冬:田起こしと苗床の4面のうちの左1面です)にわたって描かれており、もともとは大覚寺寝殿竹の間に飾られていたとされ、現在はアメリカのミネアポリス美術館に所蔵されています。「綴プロジェクト」では、ミネアポリス美術館の協力のもと、「四季耕作図襖」の高精細複製品を制作し、大覚寺へ寄贈することで、作品の里帰りが実現するというわけです。これにより16面の襖が約250年ぶりに元あった場所で再現されることになります。「四季耕作図襖」全16 面の高精細複製品が飾られた大覚寺寝殿竹の間は、2014年には春と秋にそれぞれ約2ヵ月間、その後も定期的に特別公開される予定です。
 <公開期間>2014年4月4日(金)〜6月2日(月) 9:00〜17:00(入門は16:30 まで、寺内拝観料必要)<公開場所>旧嵯峨御所大覚寺門跡(京都府京都市右京区嵯峨大沢町4)正寝殿竹の間<関連情報>綴プロジェクトホームページ:canon.jp/tsuzuri

 最近、僕が見た写真展では、鎌倉・ジタン館(4/7まで、鎌倉市津483-46 tel 0467-32-9658)の永島明さんの個展『心象風景を』は、作品はいずれも日本古来の手すき和紙にカラーで、まるで水墨画のようにプリントされたもので、永島さんらしい力強くも静かなプリントでしたが、インクジェットという枠を超えて、新たな写真表現としてチャレンジしているところが、何か共通点を感じました。