写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

コンタックスとツァイスレンズの描写

 うれしいことがありました。3月1日に新宿ニコンサロンで開かれた東京工芸大学芸術学部写真学科の『RECOMEND 2014展』のオープニングパーティーの案内をもらい出向いたのです。レコメンド展とは写真学科の教員10人が、それぞれよいと思う1人の学生の卒業制作作品を推薦し展示するというのが主旨なのです。この推薦された中に、見たような名前がでていたのです。実は、一昨年まで僕は写真学科の非常勤講師をやっていたのですが、そのとき授業の一環として『日本カメラ博物館』を見学し、感想をレポート提出するという課題を毎年だしていました。授業の一環としてとといっても、授業の合間に時間を見つけて、入場料300円を自分で払い、レポートを書くというものです。これは、見学して1日、レポート提出して1日分、さらにレポート内容によって加点するという判断基準でしたが、受講生のうち毎年90%近くが参加していたのです。この割合は、僕の感じではかなり高いと考えていました。見学者の感想はほとんど好印象で、カメラの歴史の深さ、幅の広さなどに感心するというのがほとんどでしたが、僕としては、4年間授業料を払って写真を学ぶなら、少なくてもダゲレオタイプから最新デジタルカメラまでのいろいろなことを現物を見て、知っておくこと、そういうのを見たということが大切で、時間ができて将来必要性や興味がわいたらまた見に来るもよし、という考えでした。
 ある日、レポート提出の時にひとりの女子学生が、博物館で見た「コンタックスRTS」のデザインが気に入ったから、何とかならないかというのです。たしかにポルシェがデザインしたRTSは、いま見ても新鮮で魅力的です。ところが、発売開始が1975年、すでに35年以上たっていて美品はおろか完動品も少ないのが現実なのです。そこを何とかならないか、というわけです。あまり期待しないで、ヤシカ→京セラのOBで明らかにもう使っていないAさんやKさんにお伺いをたててみると、やはり現役時代の記念だから手放せないというのです。あれこれ関係者にあたるうちに、元カメラレビュー編集長の萩谷剛さんにお伺いすると、プラナーT*50mmF1.4付きのコンタックス139クォーツ(1979年発売、写真はプラナーT*50mmF1.7付です)をオーバーホールした美品が手元にあるので、譲ってもいいというのです。それも、相手が写真を学ぶ後輩の女子学生なら2万円でいいというのです。早速、譲渡が成立し、その後萩谷さんからは専用ワインダーも追加で渡されたのです。実は、この時のやりとりはすっかり忘れていたのですが、写真展に行き、名前を見て一気に思い出したのです。そして作品を見て、ひょっとしたら撮影機材はプラナー付きのコンタックスではないかと思ったのです。

プラナーT*50mmF1.4付きのコンタックス139で撮影し、展示された作品“Why is Y is ...”の前で、推薦した吉田成教授と金子由美さん》
 レコメンドした先生にお願いし学生さんを会場で探しだしてもらい聞くと、確かにあの時の女子学生で、しかも機材はずばりその時のコンタックス139クォーツとプラナーT*50mmF1.4だというのです。あれ以来、すっかり撮影機材として手になじみ、故障もなくいまでも使っているというのです。これはうれしかったです。早速、萩谷さんにも報告しましたが、こういう形で眠っていたカメラが役に立てたのはよかったというわけです。ところで、僕自身もうひとつ感心したのは、フィルムカメラで当時のツァイスレンズの描写が、色調、コントラスト、解像からなんとなくわかったことです。デジタルの時代の再現とはひと味違った微妙な色彩の調子なのです。しかし、プラナーだとなぜわかったのでしょうか。僕にとっては、これもうれしいことでした。  ( ^)o(^ )

■お知らせ■撮影データをリサイズせずにアップするフォトレポート「ライカに始まりライカに終わる」は、2014年3月「ライカ京都店」の開店に伴い、“京都ライカブティック”のサーバーから、“メディアジョイ”のサーバーに移転することになりました。トップページのデザインは変わりましたが、今後も、今まで通りのアドレスでリンクしていますので、よろしくお願いします。