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写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ニコン、交換レンズ用の収差測定装置を開発

 ニコンは、カメラ用交換レンズのすべての収差を測定できる計測装置「OPTIA」、および専用の画像シミュレータを開発し、運用を開始したと9月17日に発表しました。「OPTIA」とは、Optical Performance and Total Image Analyzerの略で、ニコンの得意とする半導体露光装置用に開発した収差計測手法をカメラ用レンズ向けに発展させたというものです。半導体露光装置の、露光に使用する光は限られた狭い波長域ですが、カメラ用レンズの波長域は可視域に全体にわたり幅広く、収差の量も格段に大きくなりますが、「OPTIA」は、このようなカメラ用レンズの特性に対応した新開発の収差計測センサーを搭載し、多種多様なカメラ用レンズで、その性能のほぼ全貌を計測可能としたとされてます。ニコンによると、カメラ用レンズの性能は、「解像力」以外に、「ボケ味(あじ)」「質感」「奥行き感」などと表現される、さまざまな特性(「レンズの味」などと呼ばれます)があり、 いままでニコンで評判の高いレンズを、「OPTIA」で収差計測することにより、「レンズの味」と収差の対応関係を明らかにすることができるとしてます。また「OPTIA」と同時に開発した画像シミュレータ(ソフトウエア)は、レンズを試作して実写することと同等のシミュレーションが設計段階で可能になるため、「OPTIA」で明らかになる「レンズの味」と収差の対応関係を使うことにより、「解像力」だけでなく「レンズの味」といわれるさまざまな特性をコントロールしたレンズの開発が可能になるというのです。開発の経緯は、2012年5月にOPTIA本体(ハードウエア)の開発完了。関連ソフトウエアの開発、およびカメラ用レンズの性能評価および検証を開始。2013年9月に「OPTIA」と新開発の画像シミュレータを連携させた「完全運用」を開始したとされてます。
 以上は、ニコンの発表したニュースレリーズからの抜書きですが、従来からの、解像力に加え、MTF、収差特性、質感、奥行き感などを加えて「レンズの味」と呼ばれる部分を定量化して、設計にフィードバックさせようということのようです。これによって、設計者の味付けとは別のレベルで、ニコンレンズの描写特性がある方向(レベル)に統一されるとしたら面白いものです。ただ、レンズの味というのは客観的な部分では言い尽くせない部分も多々あるわけで、たとえばレンズの周辺光量が減衰していると表現上好ましく感じることもあれば、その逆もあるわけです。最近では、通常画素と高画素のカメラでは要求される解像度が違い、過去の名レンズがそのまま通用するのだろうかとも思うわけです。さらにユーザー側にしてみると、最終的な画像を写真にして見ないと、いわゆるレンズの味まで行きつけるのかという疑問はあります。ニコンでは試作して実写することと同等のシュミレーションが設計段階でできるとしていますが、試作され、試写した段階でモニター上での検討に終わるのか、さらにハードコピーを作っても、カラーレーザープリンターの出力などで比較するのか、などと考えると写真の画質を考えるうえで、興味深い技術開発の発表でした。