写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

シグマ Photo Pro 5.5を使って

 シグマのデジタルカメラ専用現像ソフトがバージョンアップされ「SIGMA Photo Pro 5.5」として2月21日にリリースされました。タイミングとしては、一連のシリーズ機であるDP3メリルの発売を目前にした時期で、新たな機能として、モノクローム専用のインターフェースが追加されたというのです。モノクロ機能は、過去に発売されたすべてのシグマのデジタルカメラデータでモノクロ対応できるのかというとそうでなく、シグマSD1、SD1 メリル、DP1メリルDP2メリル、DP3メリルなど、最新機種のRAWデータのみ利用可能です。
 デジタルカメラモノクロームというと、最近は「ライカMモノクローム」が、その高画質から注目の的ですが、独自なFOVEONセンサーを使ったシグマのメリルシリーズも大変な高画質で、この時期からソフト的にモノクロ対応したということですから、その実力は大いに気になるところです。まずはさっそくダウンロードし、いままで使っていた Photo Pro 5を5.5にバージョンアップして、手元にある「DP2メリル」で、モノクロ写真を試してみることにしました。
 まず最初に、理解しておかなくてはならないことは、 Photo Pro 5.5を使うことによりモノクロ写真の調子を簡単に変えることができるのですが、モノクロ化することはできても、さらに高画質化できるということではないことです。また当然のこととして、温黒調、冷黒調、さらにはセピア色などとプリント全体の色調を変えることとはまったく別のことで、かつて黒白写真ではあたりまえのようにして行われてきた、撮影時の色フィルター使用による一部の色の調子再現のコントロールを、Photo Pro 5.5を使うことで撮影後にRAWデータで手軽に行えるというものです。フィルム時代の黒白用フィルターとしては、コントラストを上げるために短波長側から、Y2(SY48、480nm以上を透過)、YA3(SO56、560nm以上を透過)、R1(SR60、600nm以上を透過)などのシャープカットフィルターが代表的でした。このうち赤色のRフィルターは疑似赤外写真効果が得られるものとして人気でしたが、このほか緑色で肌の赤味を抑えるポートレイト用のPOフィルターなどもありました。 
 シグマFOVEONセンサーの特徴は、撮像素子にRGBのカラーフィルターを配備していなくても、シリコンそのものの特性を利用し1画素からRGB3色の各信号を取り出せるので、高画素な画像データが生成できるというものです。 Photo Pro 5.5でのモノクロ処理は、RAWデータ上のRGBの色信号を輝度信号としてそのまま出力しているようで、その元のRGBデータをコントロールすることにより、かつての黒白フィルムでのシャープカット色フィルターを使ったような画面効果が現像時に期待できるというものです。もちろんモノクロでお気に入りができない場合には、元のカラーに戻すことも可能です。さていろいろと原理を類推するより、実際に使った例を紹介しましょう。

 5枚のカットを並べてみましたが、同じ場面を同じようにトリミングして、左から 1)カラーモードでオート、2)単純にモノクロにセット、3)赤情報でモノクロに、4)緑情報でモノクロに、5)青情報でモノクロに、画像を生成してみました。本来なら、もっと大きく掲載すれば見やすいのですが、一見して分かるようにと5枚を横に並べて組み合わせ、各画像の下にはカラーポインターを各色に実際セットした状態をキャプチャーし、示しました。この画像からわかることは、赤・青などの原色はその変化がわかりやすいのですが、世の中このような原色だけのものは、ほかには郵便ポストかコカコーラの自動販売機といったところで、なかなかここまできれいに色による濃度変更はうまくいきません。とはいっても、操作そのものはRGBカラーチャートの上をマウスでポイントするだけでよく、その混色も簡単です。ということで、赤にポイントすれば赤色が薄くなり、青色の車が濃くなり、青にポイントすれば赤色部分が濃くなり、青色の車の色が薄くなるなど、色の3原色の原理を知っていればいいのですが、むしろ気軽にポインターをいろいろと変えて直感的に決めるというのでも、十分なことだと思います。画調決定後は、JPEGTIFF-8bitかTIFF-16bitファイルを選択して保存します。ということで、DP2メリルで撮影して、僕のお気に入りモノクロ調子に仕上げた1枚をお見せしましょう。

 灯台の写真ですが、青空を濃いめに落し、灯台を白くして際立たせたいと考えました。 Photo Pro 5.5でモノクロ化した後、赤100ポジションにポインターをセットし、コントラストを少し高めにし、露出をわずかにアンダー側にセット。画面全体にパンチがでて、黒白フィルムとR1フィルターを組み合わせた感じとかなりイメージが近くなりました。

【千葉県館山・洲埼灯台SIGMA DP2 Merill:30mmF2.8、F8・1/1600秒、ISO200、AWB。こちらがオリジナルのカラーです。いかがですか、あなたはカラーのままがいいですか? それともモノクロがいいですか? 僕はモノクロなら、その昔の三菱製紙「月光」のように冷黒調に仕上げてみたいと思いました。ところで、巻頭のDP2メリルの写真は、ピクトリコのモノクロ出力専用IJ紙月光のパッケージの上に載せて撮りました。これもこだわりなのです。 (*^_^*)