写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

秋岡芳夫とKAKの写真展

 2月16日から3月24日まで東京都の目黒区美術館で「記憶写真展―お父さんの撮った写真、面白いものが写ってますね」という展覧会が開かれます。どんな写真であるかは、ポスターを見れば雰囲気でお分かりかと思いますが、目黒区のめぐろ歴史資料室が、1950年代から60年代に区内一般の人々が撮影した古い写真をこつこつと集めたプリントの展示会です。戦後日本の高度成長期にさしかかる時代の写真は多くの写真家がさまざまなテーマで作品を残していますが、一般市民が撮影した写真であるところが興味を引く部分です。
 この展覧会場の一室で、特集展示として「秋岡芳夫全集-1 秋岡芳夫とKAKの写真」が開催されています。以前、このブログで紹介しました秋岡芳夫とそのインダストリアルデザイングループKAK(カック)のメンバーが撮影した写真が展示されています。この『KAK』というデザイナー集団は金子至、秋岡芳夫、河潤之介ら、デザイナー3人のメンバーの頭文字をとって付けられて、1953年に立ち上げられました。ミノルタカメラ(千代田光学精工)のカメラデザインをはじめ“minolta”のロゴ作成を手がけたほか、ゼンザブロニカD型、セコニック露出計、浅沼商会の「キング現像タンク」など、幅広く写真機材デザインに関係しているのです。カメラデザインといえば、今日では各社ともデザイン室が重要な部署として作られていますが、当時はヤシカ44がベビーローライの意匠権を侵害しているとして訴えられたり、ゼンザブロニカD型に対しハッセルブラッドへの意匠権侵害のクレームが入るなど、オリジナルデザインへの変革を迫られた時代でもありました。KAKのメンバーはそのデザイン制作過程において多くの写真を残しました。前回2011年の展覧会では、その一部しか展示されませんでしたが、今回はかなりの量が展示されています。カメラという嗜好品において、ライカ、ローライ、リンホフなど海外製品のデザインやロゴが存在するなかで日本製品のデザインがどのように志向されていたのかを知ることができる貴重な展示だと思うのです。なお展示は“秋岡芳夫全集-1”と打たれているわけですから、まだまだ2、3と継続するようです。

 なお、目黒区美術館では会期中に写真家内田芳孝さんによる撮影+現像+プリントまでの銀塩黒白写真のワークショップも開かれます。