写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

写真屋さん看板の原点を発見


 写真屋さん、カメラ屋さん、DPE屋さん。もちろん“屋さん”を“店”に置き換えてもいいのですが、さまざまな呼び名で呼ばれていましたが、最近聞かなくなったのがDPEです。“DはDevelop=現像、PはPrint=焼付け、EはEnlarge=引伸ばし”であるわけですが、ずばりそれが写真店を意味するわけですが、そのようにずばり書かれた古い看板を群馬県伊香保温泉の裏通りに見つけました。この看板の面白いところは、表裏で富士フイルム、さくらフイルムと使い分けています。よく見ると、社名の色使いが、それぞれの企業色になっているところが合理的です。富士フイルムのグリーン、コダックはイエロー、さくらというかコニカはオレンジと思われるかもしれませんが、それ以前の時代には、さくらフィルムはイエローであった時代もあるのです。ちなみにオレンジ色はアグファだったような気がします。そして、このほうろうの看板の登場は社名・商品名の色使いから昭和40(1965)年以前であっただろうと推測します。

 さて、この伊香保温泉は東京から車で2時間足らず。榛名山の中腹、標高約700m付近に位置しています。思い立ったら、すぐにいけることで、往復で疲れてしまうということはありませんので、このところずーっとはまっています。僕のお気に入りは、石段街で、途中石段に与謝野晶子の歌が刻まれているあたりです(写真左)。少し路地裏に入り込むと、射的場やクローズしたバーや写真上に示した写真屋さんの跡などがいまも残っています。また、最近は石段を下に延長して全段で365段となり、登りやすくなりました(写真右)。階段の上には、今も続く歴史ある“斉藤写真館”、伊香保神社、黄金の湯源泉地などがあります。

 伊香保温泉の始まりは、南北朝時代とされています。石段街の始まりは、天正4(1576)年にまでさかのぼれるとされ、現在の石段は昭和55(1980)年からの5年間で、天正以来の大改修が行われたものだそうです。古い温泉場だけに歴史的に興味ある写真が豊富な町です。上の写真は地元の方のご好意により昔の石段街の写真を複写させていただきました。
 かつてDPEは、明らかに写真用語でありましたが、最近は写真とは少しニュアンスの違う“DはDevelop=開発、PはPrint=印刷、EはEnlarge=拡大”と訳されることが多くなりました。また写真を印刷するという言葉の使い方も増えましたが、僕自身は、写真を印刷するという用語はあまり受けれいれられない言葉でして、なぜ写真をプリントするのではいけないのかという気持ちが大です。