写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

フジフイルムX-E1を使ってみて

 2012年2月に発売された「FUJIFILM X-Pro1」に引き続くミラーレスカメラ「FUJIFILM X-E1」が11月17日に発売されました。X-Pro1X-E1の大きな違いは、前者が背面液晶に光学ファインダーとEVFの切り替え式であったのが、X-E1ではEVFと背面液晶だけになったことでしょう。撮像素子はどちらも同じ1,630万画素のX-TransCMOSであり、 X-Pro1ではEVFが約144万ドット液晶であったのが、X-E1では約236万ドットの有機液晶にスペックアップされています。少しタイミングがずれましたが、この時期使う機会に恵まれましたので、ざっと紹介してみましょう。実は、先行したX-Pro1は「ミラーレスでライカレンズを使う」というレポートを“京都ライカブティック”のHPで行っていますが、この時と何が違ったかなどと、考えてみるのも楽しいことです。まず手に持って操作しての印象ですが、X-E1のほうが素直に使える気がしました。それというのも僕個人のファインダーピント合わせでは、EVFのほうがなんとなく身についたという感じで、先日も別の撮影のときフルサイズ一眼レフで、光学ファインダーをのぞきながら、親指でMFアシストの拡大ボタンはないのかと探している自分に気づき、びっくりしました。マニュアルフォーカスのピント合わせでは、そんな動作が日常的になったのかと一人でにやにやと笑う始末です。それでは、さっそく実写結果をお見せしましょう。レンズはXF35mmF1.4Rです。撮像素子のサイズがAPS-Cですので、35mm判換算焦点距離約53mm相当の画角となります。

【いつもの英国大使館正面玄関】F5.6・1/800秒、ISO200。画素数は、4896×3264ピクセル。ピントは、屋根中央下部の紋章に合わせましたが、フォーカスポイントが、縦7列、横7列の49ポイントあるので、細かく簡単に設定できました。絞りリングは1/3EV刻みでセットできます。

【上の写真の紋章部分を画素等倍に拡大】1,660万画素、35mm判換算焦点距離53mm相当画角ということを割り引いても、かなりシャープに写っています。つまり約53mm相当の画角ということで、それだけ撮影倍率も高いわけですから、エンブレムは高解像に見えるので、その部分はある程度考慮する必要はあります。なお、このシーンからではありませんが、さまざまな場面で確認しましたが、APS-Cという画面サイズが手伝ってか、XF35mmF1.4Rはほとんどディストーションは感じません。

【ボケの具合をチェック】F1.4・1/4000秒、ISO200。前ボケにきわめてわずかな方向性を感じ、背景左側の後ボケにはごくわずか2線ボケのような描写を示していますが、総じてボケはきれいです。フォーカスしている背後の植木は、スポット的なポイントですが、十分にピントが合っており、大きく拡大してもシャープです。絞り開放で、こういう使い方が気軽にできるのがこのカメラの特徴なのでしょう。AFスピードは、 X-Pro1より速い感じがしました。

【絞り開放時のチェック】F1.4・1/56秒、ISO200、-1.3EV補正。イルミネーションが入った左の透明板のトナカイにピントを合わせてありますが、拡大してもしっかりとした描写です。ほかの場面でもそうでしたが、点光源である右側のLEDランプは口径食の影響が少ない描写です。
 1本の交換レンズしか使っていないのですが、「X-E1」は専用レンズの“XF35mmF1.4R”との組み合わせではかなり高画質の得られるシステムであることがわかりました。もちろんほかのレンズとの組み合わせではだめだということではありません。単に試用していないということだけです。「ミラーレスでライカレンズを使う」のときは、わざと古い1970年製のライカMマウントの第2世代ズミクロン35mmF2レンズを、X-Pro1ソニーNEX-7、リコーGXR+A12マウントに共通して使いましたが、結果としてはどの機種が優れているというような結論は見出せませんでした。もちろん機種によっては画素数が多い分だけ、いいわけですが、A3ノビ程度に拡大プリントしてもそれぞれの差はなかなか判断しにくいというのが結論でした。これは、ズミクロンのレンズ性能や、プリンターと用紙が同じで、さらにプリントの拡大率が統一されたので画質の平均値を同じにしたのだろうと考えられるわけです。ただ、フィルム時代と異なり、デジタルの画質は、大きくしないとその差が引き出せないのも事実のようです。結果、高画素や高画質をうたうカメラのサンプルプリントは単に大きく見せることしかできないと考えるわけです。フィルムのアナログプリントなら、4×5や8×10のフィルムで撮影して光学プリントで引伸ばしたなら4切ぐらいに伸ばしても、緻密さから大判フィルムを使ったプリントであることがわかるわけですが、デジタルはプリントシステムが違うから、大きくしないとその差が見えてこないのではないかと、僕は考えるわけです。それともうひとつ、「 X-Pro1」と「X-E1」の撮像素子はAPS-C判でも、ボディと交換レンズシステムは、外観的にむりをしていないから、それだけに機構や光学系に余裕をもった設計や描写ができると考えられるわけです。大きさと重さ、これは単純に寸法と質量を数値で示しただけではわかりません。使う人が手に持ったときに、どう感じるかは、個人差もあるのです。

今年もご愛読ありがとうございました。2013年もよろしくお願いいたします。