写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

カメラの皮ケース

 最近カラーボディのカメラが流行っています。歴史をたどれば100年以上前のトロピカルタイプのカメラにまでさかのぼることができるのでしょうが、近年の流れを見てみますと、1980年代のフィルムカメラの時代にコンパクトカメラがいくつかでて、デジタルの時代になってからはコンパクトもレンズ交換式のミラーレスも一眼レフもカラーボディの存在はあたりまえとなりました。では、そのカラーボディは誰がもつの?ということが先日カメラ仲間で話題になりました。それによると、ミラーレスの白いボディーは若い女性に人気で、意外や赤やショッキングピンクは一眼レフを含めてある程度お歳を召された女性や中高年の男性がもっているというのです。そこで若い女性は、一眼レフのキヤノンニコンの黒いボディをもつというのです。たしかにと、なんとなく納得できる分析でした。
 さて、今回はそのカラーボディーとともにもうひとつ話題を提供しているのが、カメラケースですが、カラーのカメラケースはいうまでもなく、かなりしっかりとした古典的な皮のカメラケースまで用意されているのです。先日、使用したソニーNEX-7にも立派な皮ケースが用意されているのでびっくりしました。カメラはかなり軽快なデザインと仕様でも、やはりそういう要求があるのでしょうか。システムアクセサリーを手軽に増やせるということもあるかも知れませんが、ユーザーレベルでもちょっとした流行なのかも知れません。ということで、僕のお気に入りのカメラ皮ケースをお見せいたしましょう。僕のお気に入りのカメラケースは実は2つあります。ひとつは“ライカM3”のハード速写ケース、もうひとつは下の写真に示した“グラフィック35”の皮ケースです。

 Graphic35は、アメリカのGRAFLEX社が1955〜58年に製造した35mmレンズシャッター機ですが、10年ほど前にアンティークショップから購入したときは、ケースは明るい肌色をしていたのですが、特別に陽にあてたわけではありませんが、徐々にあめ茶色に色づいていくのです。右の焼き印は内側の部分に押されているので、わりと変色していませんが、それでも最初のころとはまったく違うように色付きしてきました。とはいっても、ケースがいいからグラフィック35を購入したのではなく、カメラそのものがデザインと機構的にもすごく魅力的であったからです。ひとつは、フォーカシングの方式で、右上の写真でおわかりのように、レンズ鏡胴基部にある黒い2つのレバーをシーソー式に動かすことにより上下合致距離計連動でピント合わせができるのです。そしてデザインとしては、シボ革はグレーで上品で、明るい革ケースの色ともマッチします。さらに、写真からおわかりのように絞り値と赤・深緑・黄・オレンジ・ピンク・ブルー・薄緑と色分けされた深度表が連動するのです。この色配分はすばらしくお洒落です。僕の予算の2倍していましたが購入を決めました。実はカメラの購入を決めたら、ケースがあるからと店の奥から引っ張り出してきて渡してくれたのが、この革ケースなのです。レンズはグラフレックスグラフラー50mmF2.8。グラフィック35は、その後1959年にグラフィック35エレクトリック(ドイツ製)、1935年には炭酸ガスボンベでフィルムを巻き上げ、シャッターセットするグラフィック35ジェットに発展していますが、そのジェットは日本の興和が製造を担当しました。ところでこのグラフレックス社は、戦前の大型二眼レフのグラフレックスや報道用のスピードグラフィック大判などで知られるわけですが、グラフィック35はグラフレックス社の歴史のなかで唯一のアメリカ製35mmカメラであり、皮ケースにはTOP GRAIN / GENUINE COWHIDE / MADE IN U.S.A. と誇らしげに焼き印されています。