写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

これぞクラシックカメラ

 先日「クラカメ雑談会」の報告を行いましたが、各方面から反響の多さに驚きました。皆さんしっかりと読んでいらっしゃるのですね。ありがとうございます。ある人は、顔を合わせたとたんに「○○さんのカメラはクラシックとは呼べないけれど、何を考えているのでしょうか?」とか、「なぜニコンF-501を使うと除名対象になるのでしょうか?」とF-501の設計者から問い合わせがあったりと、さまざまでした。それぞれ僕なりに解説して納得いただきましたが、やはり根本は“フィルムを使うということで甘えがある”のではないだろうかというのが、僕の考えです。たしかに昨今の状況からすると、人様にお見せする写真をフィルムカメラで撮ろうとすると、安全な方へ向かうのかもしれません。でも、所詮は遊びなのです。ですから僕個人としては、写って当たり前のカメラはなるべく避けて、普通はありえないカメラを引き出したりするわけです。これは、決して他の方を非難しているわけではなく、あくまでも僕自身のクラシックカメラで写真を撮ることへの考えであるわけです。参加者それぞれにはそれぞれのお考えがあるのも当然です。とはいっても会期中にクラカメ写真展会場を訪れた方は17,500人以上で、1日あたりに平均すると1,200人を超えるというからすごいものです。噂ではメイン会場の展示よりも脇道展示のクラカメの方が来場者は多かったとか、注目度抜群であることは間違いなかったようです。
 そんなこともあり僕は襟を正して、来年に向けて早々と機材の選定を済ませました。まずカメラは1961年製の「ゼンザブロニカS」で、レンズ交換式なので1920年ごろに製造されたドイツのエルネマン・クラップカメラに付いていた「カール・ツァイス・イエナ・テッサー15cmF4.5」というわけで、コテコテのクラシックで固めてみました。Sボディにテッサー15cmF4.5を取り付けるにはちょっとした工夫があります。まず、標準レンズのニッコール75mmF2.8をバヨネットマウントから外すと、直径57mm・ピッチ1mmのブロニカでいうところのサービスマウントがでてくるのです。このサービスマウントに4×5のリンホフボードが取り付くアクセサリーを用意してあるので、それを介して装着します。ただし、標準75mmと150mmではフランジバックが異なりますので、その差をサービスマウントの長さを中間リングで調整して無限遠がでるようにしました。いかがですか?その外観を写真に示しました。フォーカシングはSボディのピント調節でも行えますが、レンズ側のヘリコイドを伸ばすことでも可能です。

 レンズの絞りはF値表示ですが、まだ大陸絞り表示で、4.5→6.3→9→12→18→25→36と刻まれています。この絞り数値、指標などかなり細かい文字で刻まれており、少し前まではその時代のダブルヘリコイドなど機械加工の微細なのに感心していましたが、僕が歳食ったのでしょうか、最近は昔の人の目は良かったのだなと感心しています。
 撮影は露出計さえあれば、特に問題ありません。唯一、手ぶれを起こさないようにと三脚を使うのが注意点でしょうか。あとノンコーティングレンズですから、わずかに露出は切りつめて行うとフレアっぽさが消えていいのではないかと思うわけです。ちなみにクラカメ雑談会では、古いレンズを付けてデジタルカメラで撮影することはもう1つのルール違反なのです。

シャッターを切った瞬間にバシャーンと轟音を発します。いかにもシャッターを切ったぞという感じです。写した結果は、ピントを合わせたところは大変シャープ。背後のボケ具合はすばらしく素直でクセがありません。撮影データ:ゼンザブロニカS、テッサー15cmF4.5、F9・1/60秒、RVP F、20120624

 さてこちらは少し変わって、写真業界人の写真好が集う「業界写真クラブ」での1コマです。業界写真クラブは、五十音順に東京近郊に撮影地を定めて、写真家先生のご指導を仰ぎながら撮影し、さらに講評会を行うという会ですが、年に2回ほどしかできないためになかなか進まず、10年以上かけてこの時期やっと“に”までたどり着きました。すでに「あいうえおかきくけこ」「さしすせそたちつてと」は写真展まで終えていますが、最終“ん”にたどり着くのはいつのことやら、というわけです。右の写真は去る6月24日の“に”日本橋撮影会後の懇親会で持参のカメラを解説するSさんですが、胸から提げているのは何と手作り4×5二眼レフなのです。当日は、Sさんは4×5フィルムカメラを持参を宣言していましたので、僕も「ゼンザブロニカS+テッサー15cmF4.5」を持込ましたが、皆さんと顔を合わせてみると実に多くの人がフィルムカメラを持参し撮影したのです。その日に目についたフィルムカメラをざっと紹介すると、ベビーローライ(グレイ)、ライカM6TTL×2、ライカM4グレイ(後塗り)、キヤノンNewF-1、ニコンFM3A、ニコンFMブラック、コンタックスT2、コンタックスT3、コンタックスG2、フジカGS645などです。まだあったかも知れませんが記憶できないぐらいたくさんでした。今回は若手の参加が多かったのですが、これだけのフィルムカメラを身近に置いて、デジタルカメラやレンズ、雑誌など最新の物を作っている関係者であるわけですからすごいです。当日初参加のフィルムメーカーの方もびっくりだったと思うのです。ちなみに首から4×5をぶら下げているSさんのお仕事は、デジタルカメラ撮像素子の設計だそうです。