写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

キヤノンEFレンズ用ライカMマウントアダプター


 『すべての道はライカに通ず−−妖しく楽しいアダプターの世界』とは、柳沢保正さんの著作ですが、デジタルになって、さらにライブビューになってますますライカでのマウント遊びが楽しさを増してきました。先日、いつもの我がブログ支持者のIさんが、おもしろいものを手に入れたから使ってみてくださいと持参したのが“キヤノンEF/ライカMマウントアダプター”なのです。これは名称に示されるように、キヤノンEFマウントのレンズをライカMマウントカメラに取り付けるためのマウントアダプターなのです。キヤノンEFマウントのフランジバックは44mm、ライカMマウントのフランジバックは27.8mmというわけで、その間をアダプターで埋めて、キヤノンEFレンズをライカMバヨネットマウントカメラに使用可能とするものです。
 ありがとうと、お礼もそこそこに、さっそく自宅へ持ち帰りリコーGXRマウントA12にマウントアダプターを介してキヤノンEF50mmF1.0を取り付けてみました。その瞬間??、あれ!距離リングが動かないということに気づきました。もちろん、完全電子マウントのキヤノンEFレンズだから、絞りリングは動かないのは100も承知でいましたが、ピントリングが動かないというのはあり得ることですが、ショックでした。となるとこのマウントアダプターは、一体何のためにあるのだろうかということなのです。もともとライカのカメラにはライブビューボディはありませんから、もしピントリングが動くとしても、距離目盛りを見て目測で撮って、写った結果を拡大して、細部を確認して再度納得いく合焦ポイントへ調整してもっていくことを繰り返すというやり方になるわけです。しかし、リコーGXRマウントA12のようにライブビューが可能なカメラでは、ピントは見たままで合わせることが可能になったわけです。リコーのライブビューでキヤノンEF50mmF1.0の絞り開放の描写はどんなものと考えたわけですが、絞りは開放だけでもいいのですが、焦点調節ができないのでは致命傷です。しばらく考え込んでしまいました。
 そこで気を取り直して、ほかのEFレンズはどうだろうかとさっそくチェックしてみましたところ、身近にあったEF28mmF2.8とEF28〜135mmF3.5-5.6ISは、レンズ単独でもピントリングを動かすことができることがわかりました。膨大なキヤノンEF交換レンズ群の中にあって、どちらが技術的な主流かわかりませんが、少なくとも一部のEFレンズはカメラボディがなくてもレンズ単体でピント合わせができるのですから、ありがたいことです。さっそくリコーGXRマウントA12にEF28mmF2.8レンズを取り付けてみました(左)。結構サマになる組合せデザインです。ただし絞りは、開放のF2.8だけですが、実用上はかなりの被写体状況をカバーできます。
 それではEF28mmF2.8の実写に臨んで見ましょう。晴天の屋外で、紅葉を狙ってみました。それともうひとつ、何とかリコーのライブビューでキヤノンEF50mmF1.0の絞り開放の描写を試してみたいと考えていましたが、EOSボディに取り付けた状態でマニュアルでピントを任意に設定し、カメラの電源をOFFにすれば距離はそのまま固定されることを見つけました。そこで、EF50mmF1.0の最短撮影距離約0.6mに設定して撮影を試みてみました。以下、その結果です。

キヤノンEF28mmF2.8+GXRマウントA12】絞り開放F2.8・1/3000秒、−0.7EV、ISO200、AWB。28mmレンズでF2.8ということで、撮影距離からすると∞の突き当てでいけそうですが、AFレンズではそういうわけには行かなく、しっかりと×8に拡大して右手前の葉の落ちた枝にピントを合わせると、かなり解像の高い画像が撮影できました。周辺の四隅は絞り開放であっても、まったく減光を感じさせなく、元の光学性能の高さがうかがえます。

キヤノンEF28mmF2.8+GXRマウントA12】絞り開放F2.8・1/125秒、−0.7EV、ISO200、AWB。撮影距離約0.5m、近距離でもかなりの描写特性を示します。左背景のボケ具合も素直です。レンズ自体の最短撮影距離は約0.28mで、レンジファインダーカメラ用レンズの最短撮影距離が、1mか0.7mであるので、一眼レフの交換レンズには基本的な光学性能以外に近距離で撮影できるメリットがあります。

キヤノンEF50mmF1.0+GXRマウントA12】絞り開放F1.0・1/710秒、ISO200、AWB。EF50mmF1.0レンズの最短撮影距離0.6mでの撮影です。フォーカシングは体を前後させて行いましたが、持参の三脚はまったく役に立ちませんでした。もう少しシャープなポイントがありそうだと、さまざまな場面で撮影してみましたが、だいたいこんな感じでした。
 ところでキヤノンEFマウントには、フルサイズ、APS-Cとデジタルのボディがあるわけですから、何でこんなことをするのだろうかと疑問を持たれるかも知れませんが、実際やってみるとわかることですが、動かない被写体に対してはライブビューはかなり精度高くピント合わせすることができます。ある意味、レンズ性能を見直すような感じでもあり、このあたりの確認がしたかったことなのです。また、すでにデジタルでは存在しないボディのミノルタのMD/MCマウントやM42マウントのような交換レンズもライカマウント用アダプターを購入すれば、デジタルで遊ぶことができるのです。

それにしても、これだけおもしろいGXRマウントA12が市場では、9月発売時の出荷分で入荷がさっぱり途絶えてしまったのです。これは大変です。聞くところによるとリコーの工場そのものでなく、パーツ生産の協力工場がタイの水害の影響でダウンしているとのことです。すでに知られている、ニコンソニーに加えキヤノンにも影響はでているようで、次期出荷は来年の3月だというのですから気が遠くなります。