リコーGXRマウントA12が、予定通り9月9日に発売されました。ライカのレンズがあまりにもおもしろく使えるので、ついつい2回も発売前にレポートしてしまいましたが、今回は最後のつもりで「究極のレンズ遊び」と題して、さらにもう一歩つっこんで遊んで見ました。
まずは上のカメラをご覧下さい。左は“パーフェックス・フィフティーファイブ”、1940−1947までアメリカで製造されたライカコピー機です。右は“パクセッテII M”でドイツのブラウンカメラが1951年から製造しました。これらのカメラはどちらもライカスクリューと同じL39マウントのネジ径(39mmφ、ピッチ1/26インチ)なのですが、パーフェックスはフォーカルプレンシャッターで、ヘリコイドはボディ側に付いています。パクセッテは、ビハインド式のレンズシャッターでヘリコイドはレンズ側に組み込まれています。つまりどちらのレンズもスクリューマウント径が一緒なのでライカに取り付けることはできてもピントを合わすことはできないのです。とはいってもパーフェックスのレンズはウォーレンサック・パーフェックス・ベロスチグマット50mmF3.5、パクセッテのシュタインハイル・カサリット45mmF2.8で、どちらもなぜが名称が魅力的な響きのするレンズです。前々からこれらのレンズで何とか写したいと思っていましたが、唯一方法としては、ふだんから親しくしているノンライツRFカメラクラブの会長であり深川精密工房の大澤さんグループがやっているヘリコイドを付けて距離計と連動させる改造を行えばいいのですが、聞いてみると、この2本のレンズの描写はどちらも普通でおもしろくないというのです。あーそーですか、と簡単に引き下がるのもしゃくですから、ライカがライブビューになれば何とかなるだろうと思っていたわけです。そして待つこと4年、ついにリコーGXRマウントA12の発売があり、まずは純正のライカレンズで、それも最高のクセレンズでレポートというのが前回まででした。今回はライブビューの「リコーGXRマウントA12」ならではの描写ということになります。
ここまで書くと、距離計に連動していないレンズがライブビューならピント合わせができるのはわかるけど、ヘリコイドがないレンズはどのようにしてピント合わせのためにレンズを進退するのだろうかと思われて当然です。実は僕はこのためには、特別の秘密兵器を持っているのです。ライカスクリューマウントの「セレナー50mmF3.5フォーカシングマウント」なのです。セレナーは現在のキヤノンレンズの名称の前身で、当然戦後のものでしょうが、当時は引伸ばしレンズのセレナーを撮影に使うとか、接写用に撮影レンズとボディの間に入れて微妙に焦点調節を行なうとかのために使われたのではないかと思われますが、残念ながら同等品、類似品は現在は発売されていません。これがあれば、やはりヘリコイドのない引伸ばしレンズがGXRマウントA12では撮影レンズとして使えることになるのです。これを機会にどこかのサードパーティーでL39ヘリコイド中間リングを作ればひょっとしたら売れるかもしれません。というのは、L39レンズは引伸ばしレンズだけでなく、距離計連動レンズでもボディとの中間にヘリコイド中間リングを入れればマクロレンズとしてすべてのレンズが機能するようになるわけです。それでも正確なピント合わせができるのがライブビュー機能なのです。(※左上写真の関係は、先端から、カサリット45mmF2.8レンズ+セレナーフォーカシングマウント+L39中間リング+ライカMバヨネットマウントアダプター+GXRマウント、となります)
さて、続いて右の写真を見てください。たまたま手元にあった「ニコンF→ライカMマウントアダプター」を活用して、ニッコール50mmF1.4を装着してみました。また、右側はTマウントで普通絞り式のタムロン200mmF5.9をニコンFマウントにしてさらにライカMマウントアダプターを介してGXRマウントに取り付けてみました。この種のマウントアダプターは各社対応品が昔からたくさんでているので、GXRマウントA12をニコンやタムロンの人がAPS-C判ライブビュー一眼として使っても何の問題もないでしょう(^。^)。ここでもうひとつ注目していただきたいには、タムロンのレンズは焦点距離200mmだということです。ライカで135mm以上の焦点距離で望遠撮影を可能にするのはレフボックスとしてのビゾフレックスを使わなくてはならなかったのが、これならば望遠どころか、超望遠も、さらにはズームも使えるわけです。ここがライブビューのおもしろさというわけです。
それでは、リコーGXRマウントA12ボディに、パーフェックスのベロスチグマット50mmF3.5とニッコールSオート50mmF1.4で撮影した結果をお見せいたしましょう。
撮影データは、左)ベロスチグマット50mmF3.5:絞りF3.5・1/15秒、−0.7EV、ISO1600、AWB、右)ニッコールSオート50mmF1.4:絞りF1.4・1/760秒、ISO200、AWB
写した印象ですがベロスチグマットもカサリット(不掲載)もですが、たしかにノンライツの大澤さんがおしゃるように、ピントはバッチリ(ピントのバッチリは、レンズの性能以前にカメラシステムと撮影者の能力に依存するところ大です)で、写ることは写っても癖がなくおもしろくないのです。唯一癖というか、困ったのはベロスチグマットもカサリットも画面全体にフレアがかかるのです。それぞれレンズをばらして清掃処理をすればよいのでしょうが、これは、撮影後画像処理ソフトでレベル補正をすることにより消え、撮影時にマイナス補正をすることでもある程度解消できるため、−0.7EV補正をかけてあります。その点においてニッコールSオート50mmF1.4は大口径であるためにボケ味には、独特な描写があります。それでも、口径食の感じからするとかなりいい描写ではないかと思うわけです。ところで、ニッコールのレンズは妙に黄色く見えます。これはたぶんアトムレンズと思われます。正確には測定していないので断言できませんが、過去にしっかりとしたデータがでていますので、心配は無用でしょう。