写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

リコーがペンタックス事業を買収

 7月1日の午後、写真業界に激震が走りました。リコーがHOYAからペンタックス事業を買収するというのです。HOYAペンタックスを手中に入れたのが2008年ですから、わずか3年ほどの期間でカメラ事業を手放すということになったわけです。それぞれ理由はあるでしょうが、今回のリコーとHOYAの合意では、2011年10月1日を目途に、HOYAが新設する子会社にPENTAXイメージングシステムを吸収分割し、リコーがその子会社の発行株式を100%取得するという形で譲渡するというものです。ここで注目されるのは、HOYAがかつて得たすべてのPENTAX事業すべてをリコーが取得するのでなく、双眼鏡、内視鏡、人工歯根などの事業はHOYAに残るというのです。それらライフケアの分野はPENTAXブランドをそのまま使い、リコーとしては、レンズ交換式のAPS-C一眼レフ、中判一眼レフ(645D)、ミラーレス小型レンズ交換式一眼(Qマウント)と交換レンズ事業をに傾注し、PENTAXブランドを持続させつつ、新たに買収した子会社に、従来からのリコー本体にあったカメラ、コンシューマー事業を移管するというのです。リコーとHOYAPENTAXブランドを使うわけですが、なるほどというわけです。リコーは今秋にGXRにライカMマウントユニットを発売するというわけで、事実上レンズ交換式カメラ分野に再進出を決めていたわけですが、ここで一気に中判から小型ミラーレスまでのラインナップを図ろうというわけです。このあたりの細かいことは、下の図面や専門誌に譲りましょう。
◇左:リコー代表取締役社長執行役員 近藤史朗氏、右:HOYA代表執行役最高経営責任者 鈴木洋氏

 さて、今回の話は2年ほど前にリコーからHOYAに向けて出ていたそうですが、645Dでカメラグランプリ大賞、黒字化、Qマウント小型一眼を持参しての譲渡となるわけです。ところでリコーとペンタックスの間にはおもしろい関係があります。そもそもリコーは、1936年に理化学研究所の発明品の工業化を目指した会社として「理研感光紙」として発足しましたが、1938(昭和13)年頃には「旭光学工業」という子会社を設立してカメラの製造に進出しました。当時のペンタックスは旭光学合資会社で、その後に旭光学工業と名乗るようになるわけですが、このときその「旭光学工業」という社名はリコーが無償で譲ったというのです。リコーは1977年発売の35mm一眼レフカメラ「リコーXR-1」と「XR-2」ではペンタックスKマウントを採用しましたが、これは当時の旭光学工業の松本三郎社長が、その昔の社名譲渡を恩義を感じPKマウントの無償譲渡を決めたというのです。この話は、その昔リコーの方から聞いたわけですが、今日的な買収のメリットに加え、そういうことが今回の買収の裏にわずかでもあるのではないかと思わせるわけです。リコーはXRシリーズでは、39,800円のXR-500でヒットを飛ばしましたが、その後35mmレンズ交換式一眼レフからは撤退したわけですから、今回のペンタックス事業の買収でPKバヨネットマウントが再びリコーに甦ることになります。
 いずれにしてもリコーの近藤社長は長い間事務機をやってきて、コンシュマー製品のカメラでさらなる飛躍をと考えているわけですが、その一方でカメラ・感材から撤退して事務機分野などに特化するコニカミノルタの例もあるわけです。やはり、企業としての創立事業を大切のするのは素晴らしいことだと思うわけです。