写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

キヤノンマウントに終始したコダックのデジタル一眼レフ

CP+2011の会場で、「電子カメラ誕生30周年記念展」と称した特別展示が行なわれたのは前回紹介したとおりですが、その会場でロチェスターから来たコダックデジタルカメラおよびデバイスの主任科学者のKenneth A. Parulskiさんから興味ある情報をもらいましたので紹介しましょう。そもそもその方は、デジタルカメラの初期段階の展示で、AppleのQuickTake100とコダックのDC40さらにNECのPC-DC401が飾ってあることをたいそう喜んでくれまして、初期のデジタル一眼レフの資料がないだろうという事で、とりあえずpdfファイルを送ってくれたのです。「The DCS Story」17 years of Kodak Professional digital camera systems 1987-2004というタイトルで、執筆はjim McGarvey,June2004となっています。つまりコダックのプロ用デジタルカメラ事業が2004年に終息したときに担当者がまとめて公表したようです。最近、Web上にデジタルカメラの最初はコダックであるとして、まったくの実験装置のような写真を良く見かけるようになりましたが、これも同じようなことなのでしょうね。企業において開発してきた技術が、日の目を浴びずに終息するときなども、それまでの成果を世間に開示して歴史にとどめようというのも良くあることです。

それによりますと、コダックは1987年にM1というメガピクセルのCCDを米国政府用に開発していますが、その翌年の1988年に「Electro-Optic Camera」といった最初のDCSを試作しています。このときのカメラボディは、“Stock Canon F1 body With motor drive”となっていますから、その辺にあったモータードライブ付きのキヤノンF1となりますから、キヤノンFDマウントであったわけです。撮像素子はモノクロKAF-1400(1320×1035、6.8μm)で電気的な冷却装置付きであったようです。1989年にはElectro-Opticカメラをさらに改良し、キヤノンNew F1を使った「Camera」(写真右)を試作し、1989年に“Stock Nikon F3 body”を使った「HAWKEYE II Imaging Accessory」を製作して、以後数々の改良を重ね1991年にはニコンF3ボディにカラー・モノクロ切り替えの撮像素子(1320×1035、16μm)を使用した「プロフェッショナルDCS」(後にDCS100と名称変更される)を発売し、以後、ニコンボディ、キヤノンEOSボディの機種が多品種作られ、さらにニコノスRSマウントの「DCS425、435」も軍用に作られたと言うから興味深い話です。

そして日本でも一般に多く市販された2002年の「コダックプロフェッショナルDCS Pro14n Digital Camera」(写真左)はニコンマウントで1400万画素のフルサイズ機として注目を集めましたが、そのときのボディはニコンF80をベースにしていました。さらに2004年には新しい撮像素子を使ったキヤノンEFマウントをということで、DCS Pro SLR/nのX14イメージャーを使い、シグマSD-9のボディを元に作ったことです。コダックキヤノンは古くからクロスライセンスの関係にあったようで、そのようなことからキヤノンマウントの使用もあったようですが、CeBIT2004で「コダックプロフェッショナルDCS Pro SLR/c Digital Camera」を発表してキヤノンファンには喜ばれましたが、このカメラの発表を最後にコダックのプロ用DCSカメラの事業は終わったというわけです。pdf冊子にあるように、コダックは1987〜2004年の17年間の間に、80機種以上のカメラとデジタルカメラバックを開発していたのですからすごいことです。そして冒頭のタイトルにあったように、コダックデジタルカメラキヤノンFDマウントに始まり、キヤノンEFマウントに終わったということはご理解いただけたと思います。コダックデジタル一眼レフとしての新機種は今はありませんが、同じニコンマウントを使いながら、フルサイズ機としてのニコンD3の発売が2007年であったのに対し、それをさかのぼること5年前に発売されていたのですから、デジタルカメラの歴史において一連の技術は大きく評価されていいでしょう。ただしそのイメージャーとして技術的な流れを現在も汲むのは、ライカ判フルサイズのライカM9、さらには中判デジタルのライカS2ペンタックス645Dがあります。いずれも光学的なローパスフィルターを使わないCCDイメージャーとして共通な特徴をもっています。
さて、そんな興味あるレポートがネット上に一般公開されていました。興味ある方はこちらをクリックしてください。そして、最後に『Apple QuickTake100』と『NEC PC-DC401』の関係がわかる方がいたら、それは歴史的に筋金入りのMacファンということになると思うのですが、いかがでしょうか。