写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

「日本大判写真展」2011

こんなタイトルの写真展が2月1日からの埼玉県立近代美術館を皮切りに名古屋、京都、神戸で開かれます。主催は一般社団法人 日本大判寫眞家協会ですが、一般公募の写真展が今年で8回目、「彩光写」展として会員の作品展が17回を数える写真展です。この写真展のおもしろさは、タイトルにあるように大判カメラを使った600×900mmと大型プリントの展示であることです。会場はここ数年は、上野の東京都美術館で行われていましたが、2011年と2012年は都美術館が改修のため休館となっているそうで、光沢印画紙を保護用の板ガラスなしで展示できる会場として埼玉県立近代美術館となったようです。大判写真展は、主宰している写真家玉田勇さんとの関係もあって、ほとんど初回から見に行っています。そして公募展になってからは、審査員を務めさせていただいている関係もあって、東京展が開かれる前には京都展まで出向いたりしたこともありました。

この写真展の魅力は何といっても大判写真としての緻密さが魅力です。一般公募展は中判のブローニーフィルムからの6×4.5から応募可能ですが、会員の「彩光写」展は4×5インチのシート以上で撮影されているのが特長で、見た方の印象は“大判写真ていいね、やっぱりフィルムだね”というあたりに集約されます。これはあたっている部分もありますが、今年はなぜかちょっとしたハプニングがありました。審査段階で、グランプリを2点決めるのですが、今年はなぜか審査員の選択傾向がばらけて集約できないというのです。ははーんと思いました。この写真展のプリントはかなり早い時期から、フィルム画像をデジタルデータ化し、ダースト社の印画紙出力機ラムダでプリントするのですが、公正を期するためでしょうか、全作品を同じようにデジタルデータ化して、同じ出力機で8×10インチの同寸にプリントするのですが、ここで6×4.5も8×10、11×14インチ判もみな同じような画質に見えてしまうのです。見方によっては、適度な拡大比率をもった6×4.5判がきれいにでて、11×14インチ判みたいな本当の大判は縮小されるため、いまひとつの迫力になってしまうのです。このあたりは印刷での写真掲載を経験された方にはおわかりだと思うのですが、ここでは深追いはいたしません。要は、解像度的にはラムダプリンターの200dpi(400dpi)に集約されてしまうわけです。もちろん大きく伸ばせば、フィルムそのものの潜在的なパワーがそのままでてくるわけですから、やはり拡大率の低い大判のほうが緻密な描写が得られるというわけです。さて、写真展のグランプリはどうなったのでしょうか。改めて仕切り直しで、現物の大きなプリントで開期中に判断してもらおうとなりました。倍率の高いルーペで覗いていたアナログ時代なら考えにくいことですが、デジタル時代ならではの画質評価の難しさであるわけです。その結果は、名古屋・京都・神戸でも見られるわけですから、フィルムならではの大判写真の良さを含めて、お近くの方はぜひご覧下さい。なお写真展は来年も埼玉で行われ、その先再来年は改装を終えた上野の都美術館に戻るそうですが、埼玉展も持続できるといいと思う次第です。
◆お便り◆市川さんの最新ブログでのご案内で、むらむらと「行くぞー」気分になりまして、横浜駅から京浜東北線に乗って北浦和駅まで一本で、初めて埼玉県立近代美術館B1の大展覧会場に行ってまいりました。191点の大伸ばしの大判カメラ作品は、それはそれは、大迫力で私に迫ってきました。一点一点それぞれに撮影時の作者の感激が込められていました。小型カメラの世界とは全く違った別世界がそこにありました。玉田勇先生としばらく楽しく歓談できました。お許しえて、先生とご一緒にお作品「合歓咲く里山」の前で写真も撮らせていただきました。ご案内を頂きまして有難うございました。私も、近々4X5を引っ張り出して使わなくっちゃという気持ちになりました。ではまた、ご自愛下さい。(神原 武昌)